職場懇談会
俺の職場では月に一度、月末になると職場懇談会というものが開かれる
先月の売り上げや利益、その他職場で困ったこと、必要な物はないか、不足しているものはないかなどの話し合いが行われる
幸いにも今日はみんな揃っているため、仕事を少し早く切り上げ、事務所と工場を閉め開催されていた
いつもはお昼休憩などに使っているスペースを使い、社長、姉さん、ひな先輩、俺がそれぞれ椅子に座り、目の前には会議用の資料が配られていた
それを元にひな先輩が話を進める
「ということで、売り上げ、利益共に前年度は目標を達成しました。これからはやっぱり売り掛けを何とかして徐々に積み上げていくしかないかと思います」
「単価も芳しくなかった感じね、まぁリースが多かったから」
姉さんが足を組み、資料を手に持ち答えた
「ほら、そこは年度末だったから。一応来店はいますけど、結局代車貸して帰っちゃう方もいましたし」
「社長〜、リフト一機追加してくださいよ〜。車検部品出ししたら上げっぱになるんですから〜」
「む、無茶言わないでくれよ美空君・・・これでもギリギリでやってるんだから」
「二柱のワイドがほしい欲しいホシイ〜」
駄々をこねる姉さんを社長が何とかなだめ、その場を押さえていた
それを呆れた様子でひな先輩も見ている
確かに、作業場所の確保は重要で、リフトを増やしたいのは山々だがスペースがないのだ
設備投資もやはりお金がかかり、そう簡単に決めるわけにもいかない
「まぁ、リフト云々はしょうがないとして他には?」
「洗車機止まる」
「先月直したばかりじゃない」
「エラー出して止まる」
今度はムスッとした表情のままひな先輩に視線を向ける姉さん
「・・・わかった、また見てもらうように手配するから」
「や〜ん、ひなちゃんありがと!」
「じゃあ、次は私から」
そう言うとひな先輩は、俺が貰ってきたファイルをテーブルに出す
「・・・何これ?」
「私達に仕事の依頼」
次にファイルから書類を出し、テーブルに並べる
姉さん、社長がそれぞれ手に取り、興味深そうに眺めていた
「ふむふむ、つまり・・・私たちにお抱えの運転手になれってこと?」
「私が目を通した限りはっきり書かれてるわけじゃないけど、つまりはそういうことだと思う」
「ふーん・・・」
姉さんと社長は資料を手に取ってパラパラとめくってテーブルに戻し、また別の資料を取って眺めていた
「社長どう思います?」
「うむ・・・確かにこれから暇な月にはなるが・・・繁忙期はどうかな?」
二人して唸りながら考え込んでいる
そんな姉さんを不思議に思い尋ねてみた
「てっきり姉さんならすぐ飛びつくかと思ったんですが・・・」
「そりゃ飛びつきたいわよ。アイドルと四六時中一緒にいられるなんてこの世のパラダイスじゃない。でも・・・仕事と考えるとねぇ」
「零次君はどう思うんだね?」
突如社長に話しかけられる
「どうやら、最初に目をつけられたのは零次君のようだ。君自身はどうだい?ここまで入れ込まれるのは理由がありそうだが?」
姉さんもひな先輩も、資料を持ちながら俺に目を向け、出かたを伺っていた
「正直、俺にはわかりません。なんでそこまでこだわるのか、一体専務は何を考えているのか」
資料をテーブルに戻し、両膝に手を置いて俺は続ける
「でも、彼女たちに言われました。一緒に仕事ができる日を楽しみにしていると。専務は適当に人を選ぶようなことはしない人で、きっとあなた達は新しい何かを教えてくれるって。俺は、そこに賭けてみてもいいんじゃないかと思います」
専務に言われたこと、アイドルに言われたことをそのまま先輩方に伝える
みんな黙って聴いてくれていた
「でも、人手不足なのは本当みたいですし。力になれるのなら、手を貸してあげてもいいのではないかと」
「確かに、報酬は悪いものじゃない」
「はい」とひな先輩が姉さんに資料を渡す
「え!?ちょ、こんなに貰っていいの?一回当たりの単価どうなってんの?」
「距離によって多少上下はするみたいだけど、燃料代も万が一の費用も負担してくれてるみたいだし、あっちも割と本気みたい」
「ふむ、ではこういうことかね?」
社長が切り出し、今度はみんな社長に視線を向ける
「仕事は受ける方向で、基本は私たちには私たちの仕事があるのでどうしても無理ならばその時は断ることも視野に入れる。零次君主体で進めて、時には雛子君や美空君に手伝ってもらうこともあるかもしれない。ということでいいかな?」
「俺は、それで構いませんが」
「私も特に異議はないです。なんだか面白そうだし!」
「みんなが言うなら・・・私は姉さんに賛成ですが、無理な時は本当に断りますからね」
「・・・では、決まりかな?」
社長は手に持っていた資料をテーブルに置く
「青葉自動車工業は、美城プロダクションの運転手役を引き受けることにする」
社長がそう言うと、小さく拍手が起こった
「じゃあ、他に無いなら職場懇談会はこれで終了です。お疲れ様でした」
ひな先輩の号令に合わせて、みんなが自分の資料を手に取り椅子から立ち上がった
テーブルの上を片付けたあと、姉さんは自分の荷物を取りに奥の更衣室へ行き、ひな先輩はパソコンをシャットダウンするためにデスクへ戻る
俺は社長室へ戻ろうとする社長を引き止めた
「社長」
「ん?何かね?」
ドアノブに手を掛けた社長が振り返る
「この仕事、最初から受ける気満々でしたね?」
「何のことかな?はっはっは」
社長はそう笑いながら、社長室へと入っていった
俺も自分の荷物を取りに自分のデスクへと戻る
「零次」
帰る支度をしていると、ひな先輩が上着を着ながら俺に話しかけてきた
「これから忙しくなるぞ」
「ええ、わかってます」
受けてしまった以上、何があるのかわからない
仕事もそうだが、美城プロと何よりアイドルとの関係が上手くいくのか全く予測ができない
様々な不安が押し寄せてくる中、これから戦っていくのだろう
「それと、今夜は付き合え」
「え?」
そう言うとひな先輩は顎で俺の後ろを指す
恐る恐る振り返ってみると
「レ・イ・ジくん」
「わひゃぁぁ!」
いつの間にか姉さんに背後を取られていた
「レイジ君さぁ、あ〜んまりアイドルのことくわしくないよねぇ?」
「いや、まぁ・・・そんなに興味があるジャンルではなかったというか、そもそもそんなにテレビとか見なかったから・・・」
「ダメよ〜。これからお仕事する相手のことは''最低限''知ってお・か・な・い・と」
「あ、もしもし小川さん?・・・三人予約できます?はい、そうですね。・・・はい。ええ、代行は結構です」
目をキラキラさせ、猫撫で声でそう言いながら迫ってくる姉さんをよそに、ひな先輩はいつもよく行くというたるき亭に電話を掛けていた
それを聞いた姉さんはますます目を輝かせ、バッグを片手に持ち俺の腕を掴む
「さぁ!行きましょう行きましょう!まずは瑞樹ちゃんと愛梨ちゃんの話から!早く車ガレージに置いて!いや、待って、まずはKBYDの話からにしましょう!」
「ちょっ!姉さん!ひな先輩、何とかしてください」
「だから今夜は付き合えって言ったろ?」
自分の車の鍵を指でクルクル回し、少し笑いながら、ひな先輩は事務所のセキュリティを作動させる為に出入り口へ向かう
「おお、みんな悪いね。さぁさぁ事務所を閉めようか」
社長も揃い、俺は姉さんに手を引かれ、事務所を出た
みんなが順次車に向かい、会社を出て行く
幸い歩いて向かえる距離にあるので車を置きに帰る
さてさて、帰るのは何時になるのかなぁ・・・
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「はい、前向きな返答をありがとうございます。つきましては、後日の社員大会にて発表させていただきます。青葉社長にもご来賓の席をご用意させていただきますので、ぜひご出席を。はい、日程は書類にてご連絡させていただきます。それでは失礼します」
次の日、早速青葉社長から連絡が入った
携帯電話の通話終了ボタンを押し、デスクに戻り、携帯を置く
パソコンを操作し、人事部の担当者にメールを送り、青葉自動車社長が社員大会に参加する旨を伝えた
一通りの事務作業を終えると、椅子に深く腰掛け額に手を当てて目を閉じる
これで当初予定していた大会の目録を変更することなく進めることができる
「お疲れのようだね」
聴き慣れた声が聞こえ、体を起こし来賓用の椅子へ視線を向ける
いつの間にか、今西部長がそこに座っていた
「入るときに声を掛けたのだが、気づいてない様子だったから、勝手に入らせてもらったよ」
「・・・今西部長」
「彼から、良い返事はあったかな?」
ふふっと笑いながらそう尋ねる部長に、専務はため息を一つつき、答えた
「予定を変更しなくても済みそうです」
「変更するも何も、最初から来ることが分かっていて予定を組んでいたのではないのかね?」
「私も、相手の心のあり様まではわかりません。計画が予定どおりに進むことに安堵したまでです」
そう言った直後、専務のパソコンからメール着信の通知が入る
無事、人事部に話が伝わったようだ
「あとは、彼女達次第。アイドル達がどう思うか、彼らと接することで何を学んでいくのか。君はそこに期待しているのではないかね?」
「・・・コーヒーでよろしいですか?」
「今日は、お茶をもらうよ」
どのような表情で言ったのかわからないが、どこか楽しそうな返事をパソコンのモニター越しに聞き、言われた通りにお茶を入れ今西部長に差し出した
「ほう、茶柱が立っているね。これは縁起がいい、はっはっは」
再び椅子に座り直そうとしてる時に、今西部長のそんな嬉しそうな声が聞こえた
整備明細書
デリカ D5
ご用命事項
前から何かコトコト音がする
作業内容
試乗確認、現象あり
Fからコトコト音確認
F右タイロッドエンドガタ大 要×
F右タイロッドエンド×
サイスリA
作業者 海道
T様、ご入庫ありがとうございました!