子どもとはいえないプロポーション
うっすらと頬を赤く染めている
嫌がっている様子は微塵もない
疑いもなく自分からこちらへと近づいてくる
「こ、こんばんわ···零次さん···」
羽織っているバスタオルがはだけないように胸の前で手を組んで、俺の前に立ち塞がるゆかり
肩と、胸の上半分、両腕と両足
それ以外の部分を白いバスタオルでくるんだだけの、肌色と白色のツートンカラーの体に、俺は思わず少し目を逸らした
「突然···申し訳ありません」
「···いや」
もう女の裸を見たくらいでギャーギャー騒ぐ歳じゃないが、今回ばかりは普通とは状況が違ってくる
無理やり誘ったわけでもない、誰かに強制されたわけでもない
誰も、身内や知り合い以外入ることが出来ない無人島、ドッキリとかの番組ってわけでもない
もしそういうテレビの企画なら、俺が同じカメラに映っている時点で大問題になる
まず、そのセンもあり得ないだろう
「···あいつらは?」
「下の、大浴場に···」
一緒に行けばよかったんじゃ、と言おうと思ったが、ゆかりの気持ちを考えてグッとこらえた
たとえ広いとはいえ、お互いに裸同然の格好になる閉ざされた空間に男女が一組
逃げようと思えばいつでも逃げられる状況なのに、尚も側に近寄って俺の手を取り、一人用のシャワーで一緒に頭からお湯を被る
雪美の時とはわけが違う
心も体も、成熟しているというか、成熟したばかりというほうが正しいくらいに瑞々しく輝いていて、恐らくそれに伴って知識も···あるだろう
自分がここにいたら一体どういうことをされる可能性があるのか、本人が一番わかっているはずだ
「じゃあ俺は風呂に···入ります」
「はい···よろしくおねがいします」
それでもなお、ゆかりは歩みを止めない
俺の後をてくてくと、広い浴槽の中についてきて、隣へと腰をおろす
ゆかりを見ると濡れた髪と肌、そこに滴る水滴がよりゆかりの魅力を引き立たせ、艶かしい雰囲気を醸し出す
ほんの少しだけ触れている肩から、ゆかりの体温が伝わってくるのだった
「···そんなにくっつくな。ダンプカー二台分以上のスペースがあるんだ。他に座れる場所なんていくらでもあるはずだ」
「それは私の勝手ですよ?ここに座りたいから座ったんです」
ゆかりはそう言い切ると、自分の腕を回して、右手を握ってきた
右腕の、丁度関節辺りに、ゆかりの胸の横側が添えられるように当たってくる
俺から離れる気は微塵もないようだった
「とにかく、よしたほうがいい。こんな言い逃れられない状況。そういうように···そう、''勘違い''されても何も言えなくなるぞ」
「''勘違い''?何の勘違いです?」
「それは···あれだよ、''そういうこと''のだ。わかるだろ?絶対お前だってわかってるはずだ」
「私、今は羽目を外しているおバカさんなので零次さんが何を言っているのかわかりません」
ダメだ、言えば言うほどゆかりは迫ってくる
タオルの上からだが、いつの間にか俺の右腕は既にそのゆかりの胸の中に抱き抱えられて、その吐息が上腕の部分に当たっているのだった
「どうして私はダメなんですか?雪美ちゃんはよくて、私はダメ?」
「···それ、どこで聞いたんだ」
「ご本人から」
あいつ···何でもかんでも言いふらしてるんじゃないだろうな
「お前···考えてみろ、まだ全然ガキだぞ?少なくとも俺にそんな趣味はない」
雪美に欲情なんてしてたらそれこそ現実と漫画の区別がついてないただの変態だ
まだ女の体にもなってない子どもなんだから、あの難しい年頃の娘がじゃれついてきてくれるだけありがたいと思う
嫌われるよりはマシだ
「だってそうだろう?それに比べてお前は···」
「私は?」
また、ゆかりは接近してくる
「私は、何ですか?」
上半身を倒すように俺の方向に寄りかかってきて、顔を俺の肩まで伸ばし、まるで···そう、千枝の時のような、キスをする一歩手前のように近づいてくる
「お前は···」
「私のことを、''女''だと。そう、意識してくださっているのですか?」
少しだけ体をずらして、ゆかりから距離を取ろうとするが、ゆかりはそれを許さずにジリジリとにじり寄ってくる
こいつ、もうわかってやがる
「なんでなんだ」
「なんで···?ふふふっ、零次さんったら変なことをおっしゃるのですから。私が今回のこの旅行に行くと決まってから、何の準備もせずにここに来たと思っているのですか?せっかく二人きりになれる絶好の機会ですのに」
やはり、俺の考えは間違ってはいなかった
頭脳的というか、狡猾というか、ゆかりは他人より一歩抜きんでて行動するのが上手い
普段は爪を隠して、一歩後ろで行動する
そしてそのタイミングが来たら、一気に踏み込んでいく
誰にも気づかれないまま、目標を確保する
まるでスパイのような、そんな計算高い才能
「それに私だって、興味があるとはいえどんな男性に対してもこんなことをするわけではありませんよ?私だって···初めてなのですから」
「···それは」
「それは、零次さんも薄々、感づいていられるのではありませんか?そもそも、ここまでしておいて気づいてもらえないというのは、いくらなんでも私も傷つきます。そう···」
今まで背け続けてきたその''話題''、千枝の行動に対してもハッキリと返事はしていない
そんなことはありえない、ありえないはずだと自分に言い聞かせ、ひたすらに避け続けてきた一つの課題だった
そんなこと···いくらなんでもありえない
「私たちのために、仕事ではなく、人間として、人として寄り添い、困ったときも悩んでいるときも傍に居てくれて、そんな時は遠くにいても迎えに来てくれる。色々な事を知っていて、私たちも経験したことがないことを沢山教えてくれました。それがとても嬉しくて、楽しくて、もっとあなたを知りたいと、思うようになったんです」
「誤解だ、そんな大層なやつじゃないさ」
「気がつけば、そんなあなたの姿を目で追うことが増えて、送ってもらったり迎えにきてもらったり、車の中で二人きりでお話するのも嬉しくて。段々とあなたのことを···考える時間が増えていきました」
ゆかりは心の内をさらけ出していく
ここぞとばかりに、胸の内の感情を、惜しみ無く吐き出す
気がつけば俺の右手は、ゆかりの心臓の辺りに当てられていて、その手のひらからはタオルの繊維とゆかりの胸の柔らかい感触、そして何より、ゆかりの心臓の鼓動が激しく脈打っているのがわかった
「鼓動がもう止まらないのです。あなたを想うと全身がむず痒くなって、お腹の辺りが疼いてくる。切なくなって、体が何かを欲しているような、そんな感覚になるんです。これが何なのか、零次さんに教えてほしい···」
「···ゆかり」
「これはきっとあなたのせい、零次さんが全部悪いんです。他のアイドルの方々もきっとそう、どうしても惹かれてしまう。そんなあなたの魅力に」
「ゆかr」
問いかけるより先に、ゆかりの顔が一気に近づいてきた
首もとに腕を回されて、その顔が耳元へ来たかと思うと、耳たぶが生暖かくて柔らかい感触に包まれたのがわかった
その耳を挟んでいる唇の力に緩急をつけられて、ゆかりは吸ったり緩めたりを繰り返し、時折場所を変えて好きに味わっていく
ゆかりの呼吸する音がすぐ側で聞こえて、胸に押し当てられていた俺の手は、いつの間にかゆかりを支えるように腰に回されていた
「零次さんは···こういうのは、お嫌いですか?」
耳元から口を離し、ゆかりは吐息のかかる距離で、そのいつもの可愛い笑顔を浮かべて俺に問いかけてくる
ズルい、やはり女の子はズルい
隙なんて見せようものなら一気に踏み込んでくる
俺は何と返事をしたらいいのかわからなかった
覚悟を持って打ち明けてくれたゆかりの気持ちを、踏みにじりたくなかった
「···ゆかり」
「···なんでしょう?」
ゆかりの腰に手を回したまま、俺はゆかりと向き合う
ゆかりの顔をよく見てみると、その目はもう既にトロンとしていて抵抗する様子もなく、もう自分の体の全てを俺に預けている
何をされても文句を言わない、そんな雰囲気を醸し出しながら、その水滴が滴る肌も髪も、俺に密着させてくるのだった
「まず体を洗う、このままじゃいい加減のぼせる」
「···お供しますね」
掠れたような声でそういうゆかり、再び俺の耳にしゃぶりつこうとしてくるが、その唇を手で押さえてなんとか離す
とりあえず···とりあえずだ、頭に血が上っていることもあったので、湯船から上がって体を洗うことにした
ゆかりの手を引いて洗い場へと一緒に行く
このままじゃ色々ともたない、そっちと違ってそんなに若くないんだから
「よいしょっと···」
そばにシャワーが備え付けてある鏡つきの壁の前に座り、呼吸を整える
一体どうしたらいいんだろうか、理性がもうもちそうにない
その豊満な体を今すぐ抱いてしまえと本能が告げている
鼻の先がツンとして、妙に呼吸が深くなっていく
···ダメだ、ゆかりはまだきっと経験がないはずだ
そんな、本能に任せるようなことをしたら、ゆかりはきっと痛がって、もしかしたらトラウマになってしまうかも
「なあゆかり、やっぱり···」
そう言って振り返ると、そこには一糸纏わぬ姿というか、さっきまで巻いていたバスタオルを外し、生まれたままの姿そのままのゆかりが立ち尽くしていた
ずっとそのままはやはり恥ずかしかったのか、数秒そうしていただけですぐにしゃがみこんでしまう
「ご、ごめんなさい。全部見られるのはやっぱり···まだちょっと恥ずかしくて」
「いや、普通そうだからそう落ち込むな」
でもそのおかげで、ゆかりの···なんというか、普段隠れていた部分が全部見えてしまった
その膨らんだ胸の中央部分、左右とも同じように小さくて、その周りにはほとんど''輪''がない綺麗なバストトップと、髪の毛や眉毛と同じ色の、股の部分を隠すように生えていたアンダーヘアなど、他にも体の様々な部分が雪美と違って女の子だった
そんな大事な場所を、ゆかりは両腕と両手でうまく隠しながらしゃがんでいる
「だから···お前も今こっちを見るな」
「何でですか?」
「なんでもだ、近づくな。近···近づくなって」
「そんな隠さなくてもいいではないですか」
近づくなと言っているのに、背後から四つん這いになってゆかりが近づいてくるのが足音でわかる
こういう特殊な状況だからなのか、いつも以上に気分が高揚してしまっていて、その反応が俺の体にも分かりやすく現れてしまっているのだった
ゆかりに知られるわけにはいかないと、上半身だけ後ろに向けて腕を伸ばして止めようとするが、その手が胸やお腹に当たってもゆかりはそれでもなお近づいてくる
そして俺の背中にピッタリくっつくと、俺の肩越しに前側を覗き込んで来るのだが、俺は気づかれないようにサッと手でその部分を隠した···はずだった
「まぁ···」
ゆかりは思わずそう言葉を漏らしていた
そもそも下半身はタオルを巻いていたので直接見られることはなかったが、ゆかりは手を口元に当てて、ほんのり顔を赤くしながら俺と目を合わせしばらく見つめ合う
ほんの少しタイミングが遅かったようだった
「あの、男の方ならそうなってしまうのは仕方ありませんし、私も知識はあるので···その、そうなっていただかないと私も困ってしまうので···嬉しいです」
「···そうか、とにかく体洗う」
俺はそれだけ言うと、ゆかりを背中から離して壁に掛けられているシャワーヘッドを取り外し、お湯を出して体にかける
まったく落ち着かない、するとゆかりも隣にあるバスチェアに腰をおろし、同じようにシャワーヘッドを手に取るのだった
「じゃあ···私も、その···体を洗って、綺麗にして···、その···準備しておきますね」
お湯を出して、ゆかりはそのシャワーを頭の上に持ってくると、目を閉じて髪の毛を洗い始める
お互いに落ち着かない、それはもう雰囲気でわかった
頭を洗い終わって、体を洗い始めても、湯気越しにお互いにチラチラと目線が動いては、目が合った瞬間にサッと逸らす
ゆかりはもう感情が漏れ出していて、目を逸らした瞬間にその艶やかな唇から、甘い声の混じる吐息が聞こえる
もう間違いない、ゆかりが俺を求めているのをひしひしと感じる
体も、ゆかりは股下に手を入れて、他の部位よりも入念に洗っているのだった
わからない、それは俺の勘違いなのかもしれないけど、ゆかりの視線はもうほとんど俺の体に向けられているのと変わらなくなっていた
そして俺が自分の背中に手を伸ばしたタイミングで
「れ、零次さん···」
ゆかりからその合図が飛んできた
「お背中···お流しします」