ヘイ!タクシー!   作:4m

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接触18

潮風が吹き、頬を撫でる

四人砂浜の上で太陽に照らされて汗をかく

腕で汗を拭い、ブルーシートに座る

楽園のような島に、俺たち四人だけ

いまだに実感が湧かない生活だ

のんびりできるといえばできるが

 

「零次様ー!」

 

こいつらが問題だった

これまたウマすぎる昼食を取った昼下がり、俺たち···というよりノリノリの三人プラス保護者の俺と言ったほうが正しいかもしれない

雲一つない眩しい太陽の下、自分の体の魅力を最大限際立たせるような可愛らしい水着を身に纏い、ハジける笑顔で楽しそうに目の前でボールを打ち上げて遊んでいるアイドル三人組

どれも超がつく程のお嬢様、その中の一人が俺の名前を呼ぶと、他の二人もそれに合わせて俺に手を振る

 

端から見れば、なんて羨ましい状況なんだと言われるだろう、絶対そうだと思う

しかし当事者からしてみれば、どうも気分が乗らない

それは、昨晩の出来事が大いに関係していた

ゆかりとの···それは、やっぱり本人はああ言っていたが、傷付けてしまったのではないかと後悔している

相手も相手だし、それなら同い年のイケメン俳優とかのほうが俺から見ても絵になっていると思う

···見たくはないが

 

それと本人がいいと言うからまだいいが、押しきられた形とはいえ大事な大事なご令嬢にこんなことをしてしまったのだから···

もうなんでもかんでも親に報告する歳ではないとは思うが、あの時自分からやめることもできたと思うと、申し訳なくなる

でもやめたらやめたでゆかりがどんな精神状態になっていたのかと考えるとそれもそれで恐い

 

「零次様ー!」

 

また掛け声が聞こえる

その掛け声の主が両手でボールを持った状態で走って駆け寄ってくる

さっき波打ち際で遊んでいた際や泳いでいたおかげでその頭の先から髪の毛、体、足の先まで海水が滴り、艶々した肌色が若々しいその肢体をより魅力的に彩る

白のシンプルなビキニの水着が必要最低限の部分のみを隠しているため、余計にその部分が目立っている

走る度に、その抱えているボールの上に乗っかっている胸が揺れる

プロポーションは完璧、さすがはアイドルだ

 

「零次様っ。さぁ、零次様も一緒に遊びましょう!日陰ばかりにいては勿体ないですわ!」

「お前たちのその体力はマジでどこから来るんだ」

 

砂浜に差したパラソルの中にいる俺を琴歌が腕を掴んで引きずり出そうとしてくる

琴歌の細くて小さな指の感触が今日はやけに体から伝わってくるように感じる

意識しているからなのだろうか、なんだか大人げない

···お子ちゃまドライバーか

 

「それは日頃の鍛練の賜物ですわ!零次様も日頃の運動不足を解消するチャンスです!」

「重い物は持ってるんだけどな。エンジンとかミッションとか、タイヤとかメンバーとかな」

「ですが踊ったり歌ったりはしないですし···」

 

するわけないだろうが、結構限られてくるぞそれをやる人種は

琴歌が引かないので渋々立ち上がり、パラソルの外へと出る

日差しが強い、やはり絶好の海水浴日和だろう

俺たちのその姿を見た残りの二人も駆け寄ってきて、一緒にやろうと誘ってくるのだった

 

「零次様がいれば百人力ですわ、次はわたくしとチームを組んで戦いましょう」

 

琴歌とは対照的な黒をベースにしたビキニ

どちらかといえば少し紺色が混ざった印象かもしれない

大人しめな感じだが、年長者としてやっぱり成熟はしている

琴歌やゆかりと比べると大人の雰囲気を醸し出しているが、どこかその子どもっぽいところが出ているのはこういう場にいるからなのだろうか

 

「そうです、一緒に遊んでください。何だか···寂しいです」

 

そう言いながら俺の手首を軽く掴んでくるのは、俺の悩みのタネの張本人

二人とは違うフリルのようなものがついた水色のビキニ

普段来ている服に色合いを合わせたのか違和感がない

変にイヤらしくなく、年相応に可愛く見えていいと思う

 

だけど、昨日の残像が頭の中をチラついてくる

今は隠されている体のその部分も昨日の夜は布一つなく丸見えで、触ったり掴んだりした感覚まで甦ってくる

ゆかりの体の重さから匂いまで、意識していないのにゆかりを見ただけで思い起こされるため反射的に目を反らした

 

「···まぁ」

 

それを悟られないように、っていうか他二人には思い付きもしないだろうし悟られようがないんだけど、二人の様子がどこかおかしい

ゆかりが俺の手首を掴んでいる様を見て、口元を覆って少し驚いているように見えるのだ

少し顔を赤らめて、ゆかりと俺を交互に見ている

 

もしかして、ゆかりから何か聞いたのだろうか?

一緒に風呂に入った···くらいは伝えたのかもしれない

あのポーカーの最中にどうやら俺は疲れて寝てしまったらしくて、起こされた時にはすでにテーブルの上は片付けられ、琴歌が俺の体を揺すっていた

それから俺たちはその部屋を出て、眠かった俺は支えられながら廊下を歩いて、自分の部屋に戻って···

 

確か···ゆかりがその時に部屋に入ってこようとしていたようなしていないような···

二人はそそくさと自分の部屋に入っていったのは何となく覚えている

 

話したとすれば俺が寝ている間かもしれない

 

「···わかった、じゃあまずは星花から組む」

「わ、わたくしですか!?」

 

自分で言ったんだからそこまで驚かなくても

不意を突かれたような表情で俺を見ていた

 

「ではビーチバレーですわね!零次様、やりたいですわよね!」

「わかった、わかったからやるから。やりたいやりたいビーチバレーやりたい。もう、超ビーチバレーやりたいわ」

 

琴歌の熱気に押されて、ボールを持ち駆け出していく琴歌を追うようにゆかりも駆け出す

俺はというと、ゆかりと入れ替わるように俺の手首を掴んできた星花に手を引かれるようにビーチへと出···ていくはずだったが、星花は自分の腕を俺の腕に絡めるようにして引っ張っていこうとするのだった

 

「星花、なんっ、ちょっ、わかったわかったから」

 

ゆかりとは違う感触が、二の腕に当てられる

ふわっとした弾力が布越しに伝わって、嫌が応にも意識せざるを得ない状況になる

何か違う、こいつ昨日と何か違う

環境の違いだからなのか、羽目を外すと言っていたことなのだろうか

昨日とは違う少々な強引さが目立っている

 

「零次様はわたくしのチームなのですから、こちらにいなくては」

 

それはわかってるけどそんなあいつらに見せつけるようなことしなくてもいいじゃないか

 

一体何があったんだ?

こいつらは何を知っているんだ?

女子たちだけで何を話した?

 

二人並んで浜辺に立つと、その星花との一部始終を見ていた琴歌とゆかりが口元を押さえて互いに顔を見合わせる

そして何か打ち合わせることがあるのかこちらに聞こえないようにヒソヒソと話すと、構えて俺たちに向きなおった

 

「来ますわよ零次様、わたくしたちの力で打ち倒しましょう」

 

何かそれ年長者ペアにしては大人げなくないか?

しかし星花は同じように構えると、やる気満々の様子で俺を見る

こんなんだから俺は梨沙にお子ちゃまドライバーだとかなんだとか言われて···

 

「では零次さん、いてこまします」

 

そう言ってゆかりがあっち側でサービスエースへと入ってボールを構えていた

 

···確かにこのままナメられるのはシャクに触る

そうだ、こんな小娘たちにこれ以上好き放題やられてたまるか

普段でさえ振り回されっぱなしなんだ、ここで大人の威厳ってやつを一発見せつけておかないと

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「う~ん···」

 

私がリビングに戻ると姉さんが頭を捻りながら腕を組み、ソファーに座って何やら考え込んでいた

 

「なしたの、車は?」

「プラグ変えて、エアクリ変えて、燃調いじって」

 

今日はもうな~んもやる気しないといつもと変わらない抜けたような声でテーブルの上に置いていた缶ビールを片手にソファーにふんぞり返っていたのだった

バルコニーから下を見てみると、姉さんのスカイラインがボンネットを開けたままの状態で放置されている

すぐそばの作業台の電気すら消してない

 

「だらしなさすぎ、色々と」

「いいじゃない夏休みくらい~。どうせこんな姿見せる男も見られる男もいないんだからさ~。レイジ君もいないし!ひなちゃんだって上下ジャージだしー」

「着ないよりはマシ」

 

そんなブラもつけないグレーのタンクトップ姿で下はパンツ一枚だけの状態なんてだらしない以外のなにものでもない

そう本人に言っても''暑いんだも~ん''とか言ってまるで効果がない

ソファーの脇に脱ぎ散らかしていた衣類を避けて歩く

 

「女しかいないんだからたまにはサッてことで~。はい、一杯どうぞっ」

 

テーブルの上に乗っている缶ビールを一つ手に取るとそのまま私へと渡してくる

 

「···」

 

私はそれをスルーすると、キッチンへと進んで行くのだった

 

「連れないねぇ~」

 

やれやれ~と私に渡すはずのビール缶をテーブルに戻し、再び自分のビールを口にしてソファーにふんぞり返っているのだった

 

キッチンのシンクの上にある戸棚を開けて、中から柿ピーとポテチの袋を一つずつ取り出し、ついでに少しだけシンク周りを掃除してからテーブルへと戻ると、すでに飲み干してしまったであろう自分の缶ビールの空き缶をテーブルの端に置き、私に渡すはずのビールに手を伸ばそうとしていた

 

「あっ、あら~さんきゅ」

 

掴みとる寸前に私が取り上げると、代わりに柿ピーをその手に握らせてやった

つまみが欲しかったのかそれはもう喜んで受け取って袋を開けていた

中に入っている小袋を取り出すと、まだ飲み足りないのかキッチンへ歩いていこうとしていた

 

「日本酒ってまだあったっけ?こっちの棚~?」

「ちょい、ちょいちょいちょい、まずあの電気消して」

「えぇ~ん?あとじゃダメ?」

「ダメ、今。じゃないと日本酒はなし。場所も教えない」

 

ぶーぶーと本人からブーイングが聞こえる

あなたが悪いんじゃんと一言告げると、本人は渋々バルコニーへと歩いていく

何をするのかと思ったら、自分が持っている柿の種を一旦テーブルに置いてバルコニーの柵に寄りかかるのだった

 

「ここら辺かなぁ···、もうちょいこっちか」

 

丁度自分の体をその下で煌々と光っている作業台の上の作業灯があるあたりにもっていく

そして真下を見るように、落ちないように少し乗り出して顔を下に向けると

 

「わっ!!」

 

と、下に向かって大きな声を張り上げる

するとどうだろう、下で光ってた作業灯が消えたではないか

私もバルコニーに寄りかかってその様子をポテチの袋を開けながら眺めていた

 

「どう?音声で反応して電気をつけたり消したりできるやつ付けてみたの!便利じゃない?めっちゃ便利!」

 

ポテチの袋から一枚取り出して、無言で口に運ぶ

本人は酔っているのかそんな私の冷たい視線を気にすることなく日本酒を探しにリビングへと赴こうとするが、私が一声掛けて止めた

 

「下、今下にしかない、あのいつもの冷蔵庫。上にはない」

 

そう言うと本人は''えぇ~···''と一声漏らして、またまた何をするのかと思ったらあれだけめんどくさがってた癖に渋々そのまま流れるように下へ繋がる螺旋階段を降りていくのだった

まったく、結局下に降りていくんだったら横着せずに最初から行けばいいのに

そしてせめてそのままボンネット閉めてくればいいのに

ああ、まったく、はいそのまま冷蔵庫開けて一升瓶取る、そしてそのまま作業灯のメイン電源を切る、そしてはいそのままボンネット···には行かずにまた階段を上ってリビングに戻って···こない

 

「はぁ~疲れた疲れた。夏休みだってのに重労働。一杯やろうかぁ~」

 

途中にある零次のスペースで止まりそのまま零次のベッドに座り込むと、ベッドの前のテーブルに酒瓶を置いて一人で酒盛りを始めているのだった

 

「あら~、こんなところに靴下~。タオルケットの中に~?ハンカチ~!まぁ~ったくここで一体ナニをしていたのやら~。チョー女の子っぽいものばかり、楽しそうなことばっかりしてぇ~···私も混ぜてくれたっていいじゃな~い!」

 

零次がいないからって好き勝手漁り始めている

ベッドの上やらテーブルの上やらに色々と置かれているあの子たちの持ち物

やはりあまり帰ってこない分案の定零次のスペースに小物が増え続け、一応あの場で寝泊まりできる状態にはなっているものの、知らない人が見たら趣味を疑われるレベルにはなっていた

 

家の方もそうなっているのか、久しぶりにここに帰ってきた時はその様子を見ても特に何も言わないで黙ってそこそこに片付けてから帰って言ったのだった

 

「···?」

 

んぎゃーんぎゃーと姉さんがベッドでゴロゴロしているのを眺めていたら、こっちのリビングのテーブルに忘れていった姉さんの携帯が震えた

チラッと画面を見てみると、''クロ''という人物からトークアプリに着信が入っている

 

「姉さーん、メッセージ来てんですけどー」

 

しかし声を掛けても、持ってきてーんとかふざけたことを抜かすのでそのままにしておいたらまたギャーギャー言い出した

私は渋々姉さんの携帯とポテチの袋と缶ビールを持って零次のスペースへと向かうことにする

こういう時にほっとけばいいのに結局世話を焼いてしまうところが自分の悪い癖である

 

「ありがとーんひなちゃ!ここ、座って。どうぞどうぞ座って~」

 

大分酔いが回っているのか、合コンで目当ての男が来た時の女みたいにクネクネクネクネ動いて私が座るであろう場所のベッドの枕元付近をポンポン叩いていたので否応なく座るのだった

ここで嫌だと否定するほうがめんどくさい

 

「誰ー?あら~クロ~。ごくろはんごくろはん」

「何?何か調べてもらってたの?」

「そっ。レイジ君のニセモノの話~、ママも気になってたみたいだし~」

「ママが?」

 

それは智絵里ちゃんと行った時だろうか、最近まわりで噂になっている零次と同じ色、同じ車が美城プロダクションの周りをうろついいているという話

たまたまだと片付けるにはあまりにも目撃情報が多く、確かに気になっていた

千枝ちゃんもそんなことを言っていたし

 

「で、何かわかったの?」

「うーん···、わっかんない。わからないことがわっかんな~い!あっはっはっは~!」

 

携帯を零次のベッドにぶん投げてまた酒瓶を手に取って口から流し込んでいた

ダメだこれは、会話にならない

私も缶ビールの蓋を開けて飲むことにした

ポテチの袋をテーブルに置いた

 

女だけの空間ねぇ、そんなところに常にいるような環境の零次は一体どんな心境なんだろうか

私たちは年上で上司って感じだけど、あの子たちは···零次の事を慕っているみたいだし

若々しいな、あいつはそういう事は避けているみたいだけど、気持ちを汲み取ってやるのも男ってもんだぞ

 

「んっ、んっ···プハー!あぁ~!いいなぁ~、男女でバカンス!いいなぁー!あー!私もセックスしたーい!!」

「ヤるとは限らないでしょ」

「わっかんないよー?そんな状況滅多にないじゃない?無人島で男女が···っていうか男はレイジ君一人で他は美女お嬢様三人でしょ?もう迫られたら断る理由ないじゃん。逆に断ったらお嬢様方が気の毒で可哀想になるやつやん」

「そりゃあそうだけど···」

 

まぁ···男を見せるところではあるけど、それが名家のお嬢様なら確かにしり込みする気持ちは何となくわかる

親公認とかそういう関係なら別として

 

「ん?ひなちゃん脱ぐの?」

「別に···暑くなってきただけ」

「これでパンツ仲間~。えっ、その下着かわいい~。どうする?もうすっぽんぽんになる?女しかいないんだからさ~」

 

アホは放っておいて私は缶ビールに口をつけた

そんな状態になるのは今のところ風呂の中だけで十分だ。

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