外を見るとすっかり夜は更け込んでいた
海から波の音が微かに聞こえてくる
電気が煌々と室内を照らし
合わせてクーラーが室温を保つ
疲れは風呂に入って大分楽になった
ただ、緊張は取れなかった
ラフな格好に着替えて、ベッドの上にいる
「部屋で待てってか···」
夜になっても俺はまた借りてきた猫のようにベッドの上で一人縮こまっていた
今夜は風呂には誰も突撃して来なかったが、それぞれの準備が終わるまで部屋で待っていてほしいというお嬢様方のご命令だった
何をしようとしているのか予想がつかない
遊ぶというのなら、またあの遊戯室に集まればいい話だし···
とにかく、落ち着かなかった
どうしてもゆかりとの一件が頭の中をよぎっていく
「零次様ー。いらっしゃいますかー?」
「···はーい、いらっしゃいますー」
まず最初に聞こえたのは琴歌の声だった
返事をしてやると、同時に部屋の扉がゆっくりと開く
そして頭からゆっくりと、俺の部屋にひょこっと顔を出してくる琴歌
ほんの少し扉の隙間から見えた肌色の肩が、さっきの夕食時とは違うベクトルのファッションだということがわかった
「では···失礼いたしますね」
おずおずと、扉を開けて入ってくる琴歌
目に入ってきたのが、というか目に入らざるを得ないそのビジュアルがまず目を引いたのだった
「···寒くない?大丈夫?エアコン効かせまくってるけどこの部屋」
「だ、大丈夫です!今日はその···暑くなるみたいなので!」
これはどうコメントしても捉えようによってはセクハラに該当しかねない
それ程までに琴歌の格好はなんていうか、ヒラヒラしていた
ネグリジェ···というものなのだろうか、前に美嘉姉ちゃんが泊まりに来たときにこんな感じのを着ていたような気がする
そこまできわどいものではなく、ワンピースのように上から下まで一枚の薄いピンクの布で体が覆われていて、とても歩きやすそうではあった
しかし、どう反応したらいいのか、正解が分からなかった
「もうすぐお二人も···来ると思いますので。し、失礼いたします!」
琴歌はスタスタとベッドまで歩いてくると、そのままベッドへとよじ登り、近くまで来てペタンと座り込んだ
風呂に入ってきたのか、琴歌からは少しいい匂いがする
「···」
「···」
会話に困る
妙な雰囲気が漂う中、どう言っていいのか分からず、沈黙が続く
「それ···、いいな。かわいいと思うぞ」
「本当ですか!?」
絞り出したのがそんな感想だった
気のきいた言葉が他にもあると思うが、今の俺にはそれしか思い浮かばなかった
「これは星花さんとゆかりさんとの三人で選んだのですわ。せっかく旅行に行くのですからと、お二人もとても素敵なものを選んでいましたの」
琴歌は裾の部分を持って、少し広げながら自分のネグリジェを俺に見せびらかしてくる
そのスカートの部分からチラチラと見える生足が琴歌が脚を組み替える度に見え隠れし、それに伴って奥のきわどい部分も見えそうになっていたので琴歌にさりげなく伝えると、恥ずかしそうに裾を押さえて足を隠す
「やっぱり仲いいんだな、そりゃあ一緒に旅行にも行くわな」
「他のアイドルの方々も仲良くしてくださいますわ。遠征の時などは本当に色々なお話を聞かせていただいて···」
琴歌にはそれが、とても新鮮でワクワクするらしい
それは自分にはない考え方や、女性の魅力の高め方など様々で、今回のネグリジェも美嘉姉ちゃんの雑誌を参考に、雑誌のはもっと薄い生地だったらしいが人前で着ることも考えて少し生地の厚いものを選んだという
「もう来ても良い頃合いなのですが···」
琴歌と話してそこそこ経ったころ、琴歌はそう切り出した
その時を狙っていたかのように、タイミングよく部屋の扉を叩く音が聞こえてくるのだった
「いらっしゃいますわよー!」
お前が返事すんのかい
扉が開き、恐る恐る中に入ろうとしてくる相手の頭が少し見えた
琴歌の時と同じように、ゆっくりとその頭と続けて見える肩まわりで似たようなファッションだとわかる
「お邪魔致します。こちら、持ってきましたわ」
「まぁ!ありがとうございますわ!」
入ってきたのは星花だった
その手には大きなペットボトルとプラスチックのコップが握られている
「星花さんもよくお似合いですわ。その靴下もとても可愛らしくて素敵で」
「そんな、誉めすぎですわ。ではこちらはここのテーブルの上に置いておきますわね」
星花は部屋に入ってくると、ベッドの隣に置いてあるテーブルの上にペットボトルとコップを置いた
コップはいくつか重ねられた状態で、ちゃんと人数分揃っているようだった
「では···その···、わたくしも失礼しまして···」
星花も琴歌と同じ様にベッドの上に上がり、俺の目の前にちょこんと座る
ギシッとベッドは音を立てるが、ベッドのサイズがそもそも大きいため、三人乗ってもまったく窮屈に感じない、まだまだ余裕があった
目の前には同じ様な格好をしたお嬢様が二人揃っている
琴歌はピンクっぽい服装だが、星花は少し水色が混ざったような色合いのネグリジェだった
どちらも同じものなのか、星花も変に薄い生地というわけではなく、色を変えて揃えたであろう同じくらいの動きやすそうな服装だった
「ゆかりさんも、もう少しで来られるとおもいますわ。お菓子を持ってくるとおっしゃっておられました」
「これでやっと、''合宿''を体験できるのですね!皆さんで夜遅くまでこうやって遊んでみたかったのですわ!トランプももちろんご用意してあります!」
琴歌が取り出したのは、プラスチックケースに入った普通のトランプ···に見えるが本当に普通のトランプだよな?
何百万もするような代物ではなくて
「これはこの前に、お仕事で一緒になった奈緒さんからいただいたものですわ!トランプを探していると相談したら、たまたま二つ手に入ったから一つ差し上げると親切にしてくださって···。確か、''凄いな凄いです''···?という名前のトランプだとか···。まだまだ世の中には知らないことだらけですわ」
あいつはまた何かのグッズを仕入れてきたのか、見たところ特にマジックトランプというわけでもなさそうだが···
特に説明書みたいなのもないし
「とにかく!私はこうやって皆さんで集まってベッドの上などで飲み物やお菓子をつまんで遊んでみたかったのですわ!また一つ夢が叶いました!」
ケースからトランプを取り出すと、琴歌は意気揚々とトランプを混ぜ始める
ゆかりが来るのを今か今かと楽しみにしているのか、もうすでにトランプを配り始め、ゆかりが座るであろう場所にもトランプを置いていく
この感じだと最初はババ抜きのようだ、ジョーカーが一枚ケースに残されている
「···あの、琴歌さん。提案があるのですが···」
「提案ですか?」
自分に配られたトランプを手元におさめた星花が琴歌に向かってそう言った
「その···ただトランプで競い合うだけでは昨日と変わらず新鮮味がないので、あの···ば、罰ゲーム···なんていうのをしてみてはいかがかと···」
「罰ゲーム···」
提案した内容は、負けた者に対する罰ゲーム
若者のノリなら当たり前の流れだったが、二人の様子がなんだか違っていた
星花が目配せすると、何かを感じ取ったのか琴歌が自分のトランプの束で口もとを覆い隠し、星花に何かを訴えかける
星花と琴歌の間に、妙な空気が流れていた
星花もそれに気づいたのか、琴歌のその視線にゆっくりと頷く
一体何なのだろう、何を企んでいるのか
「すみません、遅くなりました」
静かに開いたはずの扉の音に、琴歌と星花の背筋がとたんにピンと伸びた
部屋の出入り口のほうを見ると、袋に入ったお菓子を両手に持ったゆかりが部屋に入ってくる姿が見える
「ゆかりさん!さぁ、こちらへどうぞ!さぁ!こちらへ!」
「はい、失礼しますね。お菓子は···このテーブルの上に置いておきますね」
それを知ってか知らずか、ゆかりは変わらない態度でテーブルにお菓子を置くと、二人と同じようにベッドの上に上がり、自分のトランプが置いてある場所へちょこんと座った
四人で円を描くように、時計まわりに俺、ゆかり、星花、琴歌と並んで準備は整えられたようだ
ゆかりも他二人と同じ様なネグリジェを着ていて、その色は純白と言っていいほど綺麗な白色だった
三人で選んだというのは本当のようだ
「なんか···落ち着かないな」
「あら、どうしてですか?」
ゆかりから質問が飛んでくる
「ほら、だって、こんな雑誌に載ってるような格好した三人が目の前にいるんだからさ。肩も出てて薄着で、セクシーだし」
「ありがとうございます。褒め言葉として受け取っておきますね、零次さん」
冷静に返事を返してくるゆかりと、少しモジモジしはじめる星花と琴歌
その二人の様子を見ていたゆかりは何か思うところがあるのか、ほんの少し頷くような仕草をする
なんだ、やっぱり何かあるのか
女の子はそういうところはやはり鋭いのか
だとしたら、他二人の行動に疑問が出てくる
今日一日の行動を見ても、俺に近づいてくるような仕草をする
···いや、思い違いかもしれない
深くは、考えないようにしよう
「では、賽は投げられました!最初はババ抜きです。負けた方は···罰ゲームですわ」
「罰ゲーム···」
その一言に、ゆかりは何かに気づく
何かを···思いついたような、ババ抜きの戦略を考えているようには見えない
何か別の、それとは違うことを考えているように見える
だがそれは今はわからない、まずはこの勝負に専念しよう
ーーーーーーーーーー
「私の···勝ちですわ!」
喜んでいる琴歌と、呆然としている俺
自分の手に残っている一枚のジョーカー
他の三人の手の中にはもう一枚もトランプは残っていない
ベッドの上で円になって座っている俺たちの中心には、捨てられたトランプが乱雑に散らばっていた
「さすがです、琴歌さん」
冷静に褒め称えるゆかり
···なんだ?物凄くここまでいく流れが妙にスムーズに感じる
気のせいだろうか、しかしもう誰が見ても完璧に俺の負けであった
「では、零次様。罰ゲームですわ」
星花からそう宣告される
くっ、忘れてたと思ったのに
ゲームを始めた時点でその条件は飲んでいるようなものなので、もう言い逃れは出来ない
覚悟を決めることにしよう
「僭越ながら、私からお伝えしますね」
一番最初に抜けたゆかりがそう言い放つ
一体何を言われるのか、またガレージでのお泊まり会の時のような変身ポーズは勘弁してほしい
「零次さんは、琴歌さんを抱き締めてあげてください」
···はい?
琴歌の顔が途端に真っ赤に染まり始める
星花の様子も、モジモジと落ち着かない
「···それって罰ゲームか?そんなセクハラみたいなの、琴歌が罰ゲームを受けてる側になるんじゃないのか?」
「いえ、これは零次さんの罰ゲームです」
「そうは言っても琴歌だって困るだろうし···」
言ってることとは逆に琴歌の様子はというと、俺に改めて正面から向かい合い、ほんの少し手を広げて、俺が来るのを今か今かと待っているように見える
やっぱりおかしい、何かこいつらに意図を感じる
俺をからかってるのか··?
いや、そんなノリには到底見えない
「零次さん、琴歌さんも待っています。さぁ、どうぞ」
ゆかり···お前まさか、一体どこまで···?
しかしもしそうだとしても、その話を聞いた上でのこの琴歌の態度
おそらく琴歌一人だけに話すことはないだろう、そうだとしたら星花だって···
「零次様···」
「···ああ、わかった」
言われた通りに俺は琴歌を自分の胸の中におさめて、その背中に手を回す
女の子の華奢な体の感じ、首もとの肌が見える部分から香るボディーソープの匂い、手から伝わってくる普段着とは違うネグリジェの薄い布の感触
胸元に当たる、その柔らかい二つの膨らみ
同じ女でもお風呂場のゆかりの時とは全く違う、琴歌の特徴がとても伝わってきた
ダメだ、また妙な空気になってきてる
「はわわ···!琴歌さん···!」
目を覆い隠そうとする星花だが、その顔に当てた指の隙間からしっかり俺たちの姿を見ている
「···もういいか?」
これ以上はさすがにマズいと思い琴歌に聞いてみるが
「いえ、あの、もう少し···」
琴歌も俺の背中に手をまわして余計に俺を抱き締めると、ぐいっと体を引き寄せられてより密着させられる
「琴歌」
「···」ギュッ
···離れない、離そうとすると余計抱き締めてくる
もう一度引きはなそうとしても、俺の胸に顔をグリグリと擦り付けて子どものように離れたくないと駄々をこねる琴歌
よく耳を澄ましてみると、琴歌の息づかいが少し荒くなってきているのがわかった
「零次様···あの、わたくしたち···実は···」
星花が俺たちを見てそう切り出すと、続けてゆかりのほうにチラチラと目線を向けるのだった
···そうか、その態度は、そういうことなのか
「···なら、わかっただろ琴歌。男っていう生き物にそう簡単にひっついたりしちゃあ···」
ヌルッとその瞬間、胸の中にあった琴歌の顔が上に向いた
その表情は···そう、風呂場で見たゆかりと同じ、そのトロンとした目と息づかい
それは個人としては違うがゆかりも琴歌も同じ、''女性''としての本能が覚醒しはじめてる証拠だった
「零次さんは···やっぱり優しいですよ」
ゆかりが呟く
それに合わせて琴歌は、自分の背中にまわされていた俺の手を掴み、なんとネグリジェの下のスカートの中へと引っ張っていく
「お、おいおい琴歌···」
「その···ど、どうぞ。お好きに···してくださって···」
そして手に触れたのは、明らかに普段履かないであろう装飾が施された下着だった
花柄というかレースというか、お嬢様の普段の生活がどういうものかはわからないが、俺の過去の経験からこういう''改まった''格好は、勝負に出るときに主に···着けているものだった
「···ん···」
そこから感じる、手のひらに伝わってくる琴歌の暖かい体温と、一定の場所に触れたときの反応
嫌がる様子は全くなく、むしろ俺に身を委ね始めている
「···はぁ···はぁ···」
それを見ているゆかりと星花の反応が変わってきた
その場の空気が甘ったるい雰囲気に包まれていく
鼻の先をツンとするようなムズムズする感覚が襲いかかってくる
「···零次様」
今度は星花がゆっくりと近づいてくる
ベッドの上に固まって置いてあったトランプを押しのけて、四つん這いになってにじりより、俺のもう片方の手をとって自分の胸の中央にあてがうのだった
「これが嫌がっているように見えますか?零次様。こうしていて、感じてください。その···わたくしの鼓動と、感情を」
星花の心臓が恐ろしいほど早く脈打っていて、その普段は絶対しないであろう行動の様子から星花の覚悟が伝わってくる
もうトランプはどうでもよくなっていた
星花のほうを見ている隙に、俺の右頬に柔らかくてシットリとした感触が短く押し付けられた
「どうでしょうか···、少しは···上手になりました?···なんて」
唇に人差し指を当ててそんなことを言う琴歌
完璧にお膳立てされた状況だ
人の体温を感知して、最適な空調に整えるエアコン
隔絶された無人島に、外部の侵入を許さない要塞
しかし俺たち四人以外の人間は、明後日の朝まで来ない
何をしても何をされても誰にも何処にも漏れることはない
計算されつくした俺たちだけの世界になっていた
「それとその···この下着はどうですか?やりやすいとは···思うんですが···」
「···やりやすい?」
「はい···その···これは···、ぬ、脱がしやすい···種類のものだそうで···」
琴歌がそう言うと、星花に当てられていたその手も、星花のネグリジェの中へと入れられた
指が引っ掛かりやすく入れやすい、ほんの軽い力でスルスルと下に下ろせる伸縮性のある素材を使った生地で、姉さんたちが読んでいたファッション雑誌でも特集されているのを見た
そこに書いてあったのはそう···その下着のコンセプトで、''脱がしやすいという、心づかい''···だったような
「れ、零次様はその···、私たちとの···エ、エッチなことは···お嫌いでしょうか···?」
ズルいな、やっぱり···女の子はズルい
準備が、用意周到に整えられて誰も文句を言う人がいない
俺たち四人が動きまわっても落ちることがない広々としたベッドの上
ゆかりも星花もジリジリと距離を詰めてきて、琴歌と同じ様に密着してくる
その顔はもう準備万端で、琴歌と同じ様に目元がトロンとして、俺の着ているTシャツの中に手を入れて体を触ってくる星花と、首もとを甘噛みしてくるゆかり
体をクネクネと動かして、俺の指が引っ掛かっている下着を脱がそうと自分で動く琴歌と星花
みるみるうちに俺の指が腰、お尻、太もも、股下、そして女の子の部分へと流れるように触れていく
すでにその部分はもう、シットリと濡
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