ヘイ!タクシー!   作:4m

23 / 235
自由研究03

「じゃあ青葉自動車さんには伝えてあるから、気をつけて行ってきてね」

「はい、ありがとうございます」

「行ってくるでごぜーます!」

「行ってきまーす!!」

 

12日の朝、千枝たちは346プロに集合し、人もまだまばらな本館でちひろさんから説明を受けたあと地図を渡された

 

「本当に三人だけで大丈夫?何なら送って行くけど・・・」

「大丈夫でごぜーますよ!」

「何かあったときの為に、青葉自動車さんまでの道も知っておきたいですし、歩いて行きます」

「ありがとう!ちひろさん!」

 

そう言って荷物を持ち、ちひろさんに見送られながら正面玄関に向かう私たち三人

今回参加するメンバーは、私、佐々木千枝と

 

「楽しみでごぜーますね!他の会社に通うなんて初めてでごぜーます!」

 

いつものうさ耳のパーカーではなく、今日は動きやすい格好でとのことなので、練習着のジャージを身につけた市原仁奈ちゃん

 

「今日はお姉さんいるかなぁ?また会えるといいなぁ!」

 

同じく、赤城みりあちゃんである

 

正面玄関が開き外へ出ると、今日の空は蒼く晴れ渡っており、風も殆どなく、とても過ごしやすい日和となっていた

二人もこれからの体験に思いを馳せて、私が持っている地図を横から覗き込み、楽しそうに笑っている

かく言う私も、楽しみで浮き足立っているのは事実だ

 

「あら、みんな早いわね」

「あ!瑞樹おねーさん!おはようごぜーます!」

「おはようございます!あのね、今日は自由研究なの!私たちが北崎さんのところへ行くんだよ!」

「あらあら楽しそうね、羨ましいわ!」

 

正門付近で、入ってきた瑞樹さんとバッタリ出会った

二人は瑞樹さんを見つけると駆け寄り、楽しそうにこれからの予定を伝え合う

瑞樹さんはこれからクイズ番組の収録、レッスンにインタビューとこれまた忙しそうだった

 

「でもよかったわね。台風が丁度逸れてくれて」

「うん!天気予報で、今日は晴れるって言ってたよ!」

「おはようございます、瑞樹さん」

「おはよう千枝ちゃん、今日は二人のことよろしくね」

 

そう言って頭を撫でて一言、北崎君にもよろしく伝えておいてと言い残し本館へと歩いていった

 

「やっぱりカッコいいなぁ〜」

「仁奈もあんな大人になりてーでごぜーます!」

 

私の中でも、瑞樹さんは憧れのアイドルの一人だ

落ちついた佇まい、綺麗な歌声にダンス、そして私たちなど他の同僚や後輩に対する態度など挙げればキリがない

 

「この道路を真っ直ぐ行けばいいんだよね?」

「はい!地図にはそう書いてあるですよ!千枝ちゃんはどう・・・千枝ちゃん?」

 

私もあんな大人になれるのかなぁ

 

「どうしたの?千枝ちゃん」

「え?あ、ごめんなさい」

 

みりあちゃんの声で我に帰ると、気づけば二人に流されるように道を歩いていた

 

「どうしたでごぜーます?」

「いや、なんでもないよ・・・!ちょっと、どんなとこなんだろうなぁって思ってただけで」

「確かに、普段どんなことしてるんだろうね?北崎さん」

 

信号待ちをしている間、みりあちゃんの一言から、私たちは北崎さんの普段の行動を振り返り色々と推理が始まった

 

「やっぱり、たくさん車を運転してるんじゃないかな!ほら!いつも乗ってるアレみたいなの!」

「でも・・・''ふろんと''って言ってたでごぜーますよ?ふろんとってなんでごぜーますか?」

「詳しいことは私にもわからないけど、本館のお姉さんみたいに玄関の側に座ってるとか?」

 

信号が青になり、信号器のブザーと頭の中の木魚がシンクロしながらクエスチョンマークが三人の頭の上に浮かぶ

 

「でも、お子ちゃまなんでごぜーますよね?」

「いや、それは梨沙ちゃんが言ってるだけで・・・」

「車を運転しててふろんとで玄関の側に座っててお子ちゃまな人?」

 

うーん・・・とますます首を傾げるみりあちゃん

部門内でも北崎さんの謎については深まるばかりで、言ってしまえば私たちは『アイドルを送迎するドライバー』としての北崎さんしか知らない

今回の訪問についても、噂を聞きつけた多数のアイドルから並々ならぬ期待の眼差しを受け送り出された

他の小学生組も参加したいと言う子は少なくなかったが、生憎仕事の都合上今回のメンバーとなった

できればデレポで実況してほしい、どんなお菓子が好きか聞いてきてほしい、普段は何をやっているか聞いてほしい、趣味は?好きなヒーローは?好きなアイドルはいるのか?ファストフードは食べるのかなど、質問を考えるという点ではさほど困らなかった

 

「左に曲がって・・・ここで、ごぜーますかね?」

「あ、看板に青葉自動車工業って書いてあるよ!」

 

気がつくと、いつの間にか目的地の目の前へと辿り着いていた

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「お、お邪魔しまーす・・・」

 

三人恐る恐る、青葉自動車工業の敷地内へと足を踏み入れた

横にスライドするタイプの鉄製の門が備えられている正門をくぐり、コンクリートで舗装された、ポツリポツリと車が脇に止まっている大きな駐車場を抜け、会社の名前が貼ってある事務所のような建物の前にたどり着く、その横には大きなシャッターが三つある横に長い建物が並んでいた

 

「お、おはようございまーす・・・」

 

ドアを開け私が先頭になりながら中に入ると、すぐ左には簡単なテーブルとソファ、右には受付用のカウンターが二つ並んでおり、その後ろにもう一つデスクがある

それぞれのデスクの上ではパソコンが起動しており、カラカラと音を立てて動いていた

 

「誰もいないのかなぁ?」

 

みりあちゃんが私を追い越して通路を進み、その奥に衝立を介して隠れていた場所に目を向ける

さっきのとはまた違う社員の休憩用なのだろうか、横に長いソファーと机、テレビが備え付けられていた

 

「こっちにもいねーです」

 

その反対にある、冷蔵庫や電子レンジがある小さな台所にも人の気配はなかった

通路の突き当たりにはドアのない入り口が一つあり、そこを抜けて左右にT字に通路があったが暗くてよくわからない

 

「まだ皆さん来てないとか?」

「でもドアの鍵開いてたよ?」

 

人の気配はするが人がいない

台所の隣にある、ちょっと豪華な絨毯と机、革製のソファーがある部屋にも誰もいなかった

 

「どうしようか?」

「ちひろさんに電話してみる?」

 

そう言ってみりあちゃんが携帯を取り出したその時、部屋の隅にあるドアが開く音がした

 

「いやー、まだQR捨ててなくて良かったですね」

「ええ、これで一応教材は確保できたと思・・・あら、あらあらあら!」

 

中に入ってきたのは、北崎さんと黒髪ショートカットの綺麗なお姉さん

どちらもツナギ姿で、何か仕事をしていたのか軍手をつけていた

 

『おはようございます!(ごぜーます!)』

 

揃って挨拶をすると、お姉さんが駆け寄ってきた

 

「おはよう!いやいや、よく来たわね!今日は歩いてきたの?」

 

お姉さんが私たちと同じ目線までしゃがみ込む

 

「はい、青葉さんの場所も知っておきたくて・・・」

「青葉さんですって!しっかりしてるわねぇ、言ってくれれば迎えに行ったのに〜」

「北崎さん!おはよう!」

「おう、おはよう。悪いな、誰もいなくて」

 

遅れてきた北崎さんに、みりあちゃんが挨拶をする

話を聞くと、みりあちゃんが言っていたお姉さんは今はいないみたいだ

 

「さぁ、こっちこっち。荷物はここに置いておいてね」

 

私たちはさっきの衝立の向こうのスペースまで案内された

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「佐々木千枝です。今日はよろしくお願いします!」

「赤城みりあです!今日はよろしくお願いします!」

「市原仁奈です!よろしくお願いするでごぜーます!」

 

荷物を置いた後、丁度社長さんも戻ってきたようで、カウンターの側に集まり、円状に並んだ後朝礼が行われた

私たちが挨拶すると、小さく拍手が起こる

 

「さて、今日は知っての通り美城プロダクションから自由研究ということで三人が来てくれた。二人ともサポートをよろしく頼む。わからないことがあったらこの二人に聞いてね」

『はい!』

「うむ!元気がいいねぇ!今日は存分に学んでいってくれたまえ!」

 

はっはっはと笑う社長さんにつられて北崎さんとお姉さんもクスッと笑っていた

 

「今日は雛子君は遅れてくるようだ。何か連絡事項は?」

「今日は特に入庫もないので、基本二人でサポートに入ろうと思います」

「うん、では今日もよろしく頼む。朝礼は以上だ」

 

社長さんがそう言うと、北崎さんとお姉さんが頭を下げたので、私たちも同じように頭を下げる

社長さんはそのまま奥の社長室に向かい、北崎さんは近くのパソコンを触っていた

お姉さんが近づいてくる

 

「じゃあ今日は一日よろしく!私は海道美空って言います。海道さんでも美空さんでも好きなように呼んでね」

「じゃあ・・・美空さん。よろしくお願いします!」

「いや〜やっぱり可愛いわね!あ、ちょっと待ってて」

 

美空さんは奥のT字のスペースへ走っていき、戻ってくると手には小さいサイズの青色のツナギが抱えられていた

 

「一応これ用意してみたんだけど、ちょっと着てみてくれる?」

「わぁ!ありがとうお姉さん!」

 

お姉さんからツナギを受け取り、三人で着てみると驚くくらいにサイズがぴったりだった

 

「ぴったりでごぜーます!」

「すごーい!」

「ほんとだ・・・!」

「よかった〜、一応公式のプロフィールに合わせて注文したんだけど不安だったの。三人ともよく似合ってるわ!」

 

三人でお互いにツナギを見せ合い、見比べてみても全く違和感がなかった

普段着るステージ衣装並みにしっかりしていた

 

「じゃあ、いよいよね。工場はこっち」

 

すると美空さんはさっき入ってきた工場のドアを開ける

私たちはノートとペンとカメラを持ち、美空さんに続いて工場へと入っていった

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。