ヘイ!タクシー!   作:4m

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ある日のマザーベース03

「えっと、これが···こうで」

「待て待て李衣菜、この''C-3''ってのがこっちだ。この穴に差し込むんだ。最近のおもちゃってこんなに複雑か、すげーな」

 

たくみに教えられながら、りーなはパチンパチンと部品をはめていく。

透明な道がどんどんと長くなっていって、そのまままた折り返して長くなるから、テーブルの上に小さなウォータースライダーみたいなのができていた。

 

「えっ?これホントにはまる?」

「はまるって、やり方だやり方···ああもう、ここにこうやってやんだよ。勢いも大事だぜ、バチンッてな」

 

りーなはこういうのが苦手なのか、その透明なプラスチックの道を右から左から回転させながら、たくみと一生懸命作っていた。

そんな様子を見ながら、ぼくはみんなのお手伝いをするために聞いてまわる。

ただ座って待ってるのはダメだってパパも言ってたし、そうしてあげるとママたちも喜ぶんだ。

 

「あ、いーよいーよ~。座ってて~」

「ぼくも手伝うよ」

 

らんこちゃんが作っていたそうめんが出来上がっていたから、それが入っていたザルを持ってテーブルへと向かう。

らんこちゃんはその他にも食器を用意してたりして忙しそうだったから、持っていってあげたら喜んでくれていた。

食器は落として割れたら大変だから、パパからもあまり持たないようにって言われてる。

 

「お、こっちこっち。ここに置いて」

「わかった」

 

りょうさんに言われてぼくは、そうめんマシーンを置くテーブルの隣に置いたテーブルにそうめんを持っていった。

りょうさんは飲み物を用意している。

二つテーブルをくっ付けたから、これでみんな座って食べられるはずだ。

 

「偉いぞー、しょうね~ん」

「しゅーこちゃんも手伝いなよ」

「シューコちゃんはホラ、監視役だから」

 

そう言うしゅーこちゃんはベッドに座りながら、運んできた食器とか飲み物とかをそれぞれ座るところに分けている···ように見えた。

ベッドから一歩も動いてないんだもん。

 

「周子殿!これとこれもお願いするでありますよ!」

「うぇっ、ちょっちょっと、めんつゆ割るの苦手なのよあたし」

「お水はこれであります!」

 

あきおねーちゃんが持ってきた大きなめんつゆとお水がドンッと目の前に置かれたしゅーこちゃんは、''さぁさぁ''とあきおねーちゃんに言われた通りにおつゆを作り始めたのだった。

ここまで頼まれたのだから何もしないわけにもいかず、しゅーこちゃんはうんうんと唸っている。

 

「濃いめでたのむぜ、夏樹は?」

「アタシも同じくらいかなー。お、だりー、これで完成じゃないか。いいね」

「やっと出来た···。あ、私は少し薄めでお願い」

 

次から次へと注文が入ってきて、みんなが落ち着いていく中、反対にしゅーこちゃんがドタバタしてきているのだった。

そうめんのお椀を覗き込みながら、ちょっとめんつゆを入れたりお水を入れたりしながら作っている。

 

「よし!これでいいーんじゃねーか?あとは下の土台のとこに水入れて完成だぜ」

「すごーい!たくみすごいよ!」

「だろー?」

 

目の前には、たくみとりーなのおかげで完成した流しそうめんマシーンがどーんと置いてあって、その奥でたくみがえっへんって腰に手を当ててこっち見てる。

まるでウォータースライダーみたいに上から下まで、パパのガレージの螺旋階段と同じようにコースがぐるぐると下っていってる。

下にはお水が入った土台があって、そこに取れなかったそうめんが流れていく作りになってるみたい。

 

とにかく凄いカッコよかった。

 

「さぁさぁ、皆さんお待たせしました~。どうぞ座って座って~」

 

らんこちゃんがエプロンを外して、ぼくたちのいるテーブルへとやってくる。

長い髪を手で纏めて、ヘアゴムで根本を軽く縛ると、頭の上で綺麗にお団子になっていた。

髪が長いままだと、食べるときに滑り落ちておつゆとかの中に入っちゃうんだって。

 

「蘭子ちゃんあたしの隣に来なよ。ホラホラ、空けてあげる」

「ありがとう~。あ、おつゆもありがとう!」

 

らんこちゃんはしゅーこちゃんの隣に座ると、しゅーこちゃんからおつゆのお椀を受け取っていた。

たぶんこれしゅーこちゃん、隣に座らせたのはおつゆが減ったららんこちゃんに作ってもらう為に座らせたんじゃないかな。

 

「ではみなさん、お待たせしました!」

 

らんこちゃんの声に合わせて、みんなが席に座ったまま手を合わせると、ちょっとだけ顔を伏せて···

 

『いただきます!』

 

号令と同時にお箸が動き始めたのだった。

 

「よっしゃ!電源入れっぞ!とりあえずディーラーは李衣菜っつーことで」

「私!?上手くできるかな···?」

「流すだけだよ。李衣菜の分も残しておくからさ」

 

りょうさんがそう言った瞬間に、たくみが流しそうめんマシーンの電源を入れた。

 

「わっ、すごーい!これなら家の中でも十分流しそうめんできるじゃん!ね?」

「うん、すごい」

 

ゆいママが驚いている間にも、マシーンは土台のところからお水を吸い上げて、スロープに流し始める。

流れていく水はそのスロープをつたってまた下の土台の中に落ちて、それを吸い上げてまた上から流れていく。

これならずっと流しそうめんができる、そんな仕組みになっていた。

 

「はい、流しまーす」

 

りーながザルの中からそうめんを取ると、上でくるくる回ってるヤキニクマンの横あたりから、スロープの上に落とす。

すると、チョロチョロという水の音と一緒にスロープの上をスルスルと流れ始めるのだった。

 

「よしっ、いけっ、お前がファーストバイトだ」

「たくみん、結婚式じゃないんだから~」

 

たくみがぼくを見ながら''いけ、いけっ''と顔でマシーンを見るから、みんなもぼくが取るまで食べない。

このまま何もしないのもしょうがないので、ぼくはたくみに言われた(?)通りにスロープを流れてくるそうめんを箸で取り、自分のお椀に入れるのだった。

 

「···うん、おいしい」

「よしっ、よかったな蘭子!」

「私茹でただけだから···えへへ」

 

そうめんが口に入ると、しゅーこちゃんが作ってくれたおつゆと混ざった甘じょっぱい味が広がって···。

うん、なんていうかわからないけど、凄くおいしかった。

 

「みんな、どんどん食べてね。はい行くよ行くよー」

 

りーなが次から次へと流し始めると、みんなそれぞれが自分のお椀に取ってやっと食べ始めた。

 

お部屋の中に少し風が吹き始めて、窓際に吊るしてある風鈴がチリンチリンと鳴っていた。

みんな美味しそうに食べてるけど、ぼくのお椀にたまに入れてくるからたくさん食べないと。

 

「う~ん、おいし~!やっぱサイコーに夏ってカンジ~!」

「唯ちゃん、水着来てくればよかったじゃん」

「もうそんなワイワイはしゃげる歳じゃないんで私~。周子ちゃんがやればいいじゃーん」

「ビニールプールどっかいっちゃったんよ~」

「あれ?前に仁奈たちが零次さん家に持っていってなかったか?」

 

ママたちが集まってごはんを食べると、大体こんな風にお話が止まらなくなる。

誰が今はこうなった、アレがあそこに売ってた。

保育園は楽しいか、好きな子はできたのか。

ぼくの事も含めて色々なお話が飛び交ってみんな本当に楽しそうに話すのだった。

 

でも、好きな子がいるのかっていうお話が苦手。

なんでかママたちみんなぼくがそのお話をすると、一斉に黙って聞くから何だか恐いんだもん。

特にゆいママがすごく聞いてくるんだ。

 

「でも、仁奈ちゃんがもう19だよ?信じられる?来年成人だよ?」

「そうだよなぁ、あれからもう10年だぜ?ここまで腐れ縁が続くとは···」

「歳は取るもんじゃないね拓海。アタシもさ、しみじみ思うようになってきてね。この歳になるまでみんなでまだワイワイできるのは、何かの奇跡なんじゃないかなってさ」

「なつきちやめてよ~。それはもう私たちの世代でも効いてくる言葉なんだからさぁ」

 

りーながそう言った瞬間、みんなが''あぁ~···''って頭を抱えるのだった。

ぼくには何でみんながそうやって''あぁ~''ってなるのか全然わからなかった。

みんなぼくより歳上で大人なのに、何か困ることでもあるのかなぁ。

 

「ま、私以外まだ皆さん20代ですから!まだまだやれることはやれるであります!かくいう私も、アイドルではありませんがまだまだザバゲーに興じるだけの体力はありますからな!」

「違う、違うのよあっきー。''もう''私たちはアラサーなの。なんていうかもうね、20代っていうのがね、いかに尊い時期だったかってのがね、いま身に染みてわかんの」

 

りなりながそう言うと飲み物を飲んで、はぁ~とため息をついていた。

そんな様子にみんなが頷いてた。

 

「まだ学生の頃はかわいいで済んでたけどさ、今のあたしなんてただのだらしないおばさn」

「し、周子ちゃん。それ以上はね、それ以上は···」

 

らんこちゃんが小さく手を前に出してしゅーこちゃんを止めていた。

なんだかみんなにとっては重大な問題らしい。

だけど、こうやって大人たちが集まって困っているときの対処法をぼくは知っている。

夜にかえでママやさなえおばさんにパパがやってあげてたとこを見たんだ。

 

「まぁまぁしゅーこちゃん、いっぱいやりなよ」

 

ぼくはペットボトルを持っていってしゅーこちゃんのコップに注いであげると、それを見ていた他のメンバーたちが笑い始めた。

 

「くっくっく···おい坊主~、どこで覚えたお前~」

「パパがやってた」

「零次さっ···ふふふっ、顔似てるから余計おっかし···っ」

 

席に戻ると、隣に座っていたりょうさんが口をおさえて笑ってた。

 

「ふふふっ、少年、さんきゅっ。大人になっても付き合ってね」

「あたりまえじゃん」

「男だね、君。ねぇ、周子のこと好き?」

「好きだよ?」

 

りょうさんが聞いてきたので、ぼくは答える。

そんなぼくたちのやり取りを見て、しゅーこちゃんは笑ってた。

 

「ねぇねぇ!ゆいのことは?」

「好き」

「私のことは?」

「りょうさんのことも好きだよ」

「罪な男だな~、お前」

 

たくみもそう言って笑う。

大人ってよくわからない。

ぼくはそうめんを食べ始めた。

 

「零次さんもねぇ~、罪な男だよホンット。あたしたちの青春さ、常にあの人と一緒だったからさ。結局今でも家とか行くじゃん?変わらないね~、相変わらず。みんな変わらないわ」

「この寮に来たこともあったよね?懐かしいなぁ~」

 

しゅーこちゃんとらんこちゃんがそう言う。

パパからも聞いたことがあった。

 

「そうだねー、周子ちゃんと蘭子ちゃんと他のメンバーもいてゲームしたねー。あの時はみくも小梅ちゃんもいてさ。なんかさ、よかったよねあの頃。今より全然忙しくてさ、たまに思い出して···なんかしみじみしちゃうんだよね~。戻れないかなぁ~って悲しくなる。若かったもんやっぱ」

「形があるものにはいつか終わりが来るもんさ、だりー。だから今できることを全力で楽しむのもロックだぜ」

「まーた集まればいいぽよ~。場所はあるんだからさっ」

 

みんなそう言いながら、そうめんを食べていく。

たまにさっきのしゅーこちゃんみたいに飲み物を注いでって頼まれるから、ぼくはやってあげた。

みんな笑ってた、だけどぼくも楽しかったからそれでいい。

 

風鈴の音がチリチリンって鳴って、お昼は過ぎていった。

ご飯が終わって、みんなで片付けて、今はお部屋でゆっくりしてる。

なつきちがギターを持って、しゅーこちゃんとらんこちゃんがおはなししてて、他の人たちは新しい歌の歌詞を考えてた。

 

「そういえばお前ら、これから346に行くんだろ?時間大丈夫か?」

 

たくみが部屋の時計を見ながらそう言った。

 

「そうだね~、そろそろ出よっか?周子ちゃんどうする?」

「アタシここにいよっかな~、外暑いし夕方帰る」

「ゆっくりしてってね?私も何だか久しぶりで嬉しいんだ~」

 

らんこちゃんがそう言うと、お言葉に甘えまーすとか言って、しゅーこちゃんは床に寝転がって携帯を見始めちゃった。

 

こうなるともう動きそうにない。

ぼくとゆいママは準備をすると、玄関へ向かうのだった。

 

「じゃあ蘭子ちゃん、ごちそうさまでした!お邪魔しました~、みんなまたね~」

 

ゆいママがそう言うと、みんなが手を振って見送ってくれた。

とととっと玄関まで来てくれたらんこちゃんにぼくもご挨拶する。

 

「おじゃましました。ばいばい、やみのま」

「ふふふっ、はーい。闇に···飲まれよ!あ、最後にいーい?」

「うん」

「へへっ、んー···ちゅっ」

 

らんこちゃんはぼくの前でしゃがむと、ぼくにちゅーしてくれた。

らんこちゃんの唇はね、ぷるぷるしてるんだよ。

 

「あー、忘れてたぽよ~!んちゅっ」

 

それを見てたのか、中からりなりなが走ってきて同じようにちゅーしてくるのだった。

 

「罪な男だな~坊主!はっはっは!」

 

部屋の中でたくみが笑っていると、りょうさんも立ち上がってこっちに来る。

 

「ちゅっ。大好きだよ、また来てね」

 

りょうさんはほっぺたにちゅーして、頭を撫でてくる。

みんなそれを見て笑ってる。

ちょっと恥ずかしいけど、みんな楽しそうならそれでいいかな。

 

「むむむ~、ゆいママちょっとジェラシーかも~。いいもん、私はこの後も一緒だし!じゃあね~」

「ばいばいみんな」

 

ぼくがそう言うとみんなまた手を振ってくれた。

 

今回はたまたまみんな集まれたみたいだけど、いつもは忙しいから中々会えない。

本当に久しぶりだった。

またこのメンバーでいつ会えるかわからないけど、みんな元気ならそれでいいや。

いつか会えるもんね。

 

「あれ?蘭子、やみのまっていえば、あのダークソードは?」

「あれはもう実家に送ったもん!」

 

何やらやり取りしてる中、ぼくたちは玄関の扉を閉めて、廊下を歩いていく。

 

「さて、ご飯も食べたことだし、346に行こっか?」

「うん。誰かいるかな?」

「いるよきっと。うーん···梨沙ちゃんとか?」

「いるねきっと。ゆいママもレッスンする?」

「あれはちょっと···スパルタすぎてゆいはムリかも···。現役時代ならまだしも···」

 

ゆいママは考え込んでしまった。

とにかく、今は346プロに行こう。

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