ヘイ!タクシー!   作:4m

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女子会06

左から私、千枝ちゃん、ひなちゃん、桃華ちゃんの順で全員がシートに座り、ひなちゃんがカードをスキャナーにタッチした後で画面に表示されている指示に従い、右下にあるコイン投入口へと100円玉を入れた

 

「わぁ、レースの車のシートってこんな感じなんですね・・・」

「中々セミバケなんて座る機会なんてないよな、確かに」

 

すると軽快なBGMがシート備え付けられている左右のスピーカーから聞こえるのと共に画面がデモ映像から白く変わり、車選択画面へと移動して国内、海外問わず様々な社名が表示される

 

「へぇ〜、こんなに種類があるのね」

「えっと・・・これは、こうやるんですか・・・?」

「そうそう、ハンドルを回して選んでアクセルで決定するの」

「あ、この車にいたしましょう。いつも乗っている車にそっくりですわ」

「ちなみに右がアクセル、左がブレーキ」

 

桃華ちゃんがベンツのカテゴリーで車を選んでいる最中さらっとおっそろしい事を言っている隣で、シートから少し体を乗り出してひなちゃんは千枝ちゃんに操作方法を教えていた

千枝ちゃんが教えられた通りにハンドルを動かして車を選んでいく

 

「どれがいいんでしょう・・・速いとか遅いとかってあるんですか?」

「ちょこっと違いはあるけど、今は好きなの選んで大丈夫だ」

「沢山ありますね・・・」

 

色々な会社の車を吟味していた千枝ちゃんだったが、一つの車の前でカーソルが止まった

 

「ん〜・・・と、ちぁい・・・ちえい・・・さー?」

「おお、VIPカーいったか。そうだ、チェイサーだそいつは」

「チェイサー・・・」

 

千枝ちゃんはボソッと車名を呟くと、右足を動かしてアクセルを踏み車を決定する

 

「え、なに?千枝ちゃんチェイサー?」

「あ、はい!車の名前に私の名前も入っているので・・・」

「じゃあ私もセダンにする〜」

 

みんなが車を選び終わったみたいなので、私も国産車の中から一台を選ぶ

あら、初めて乗った車じゃない

こんなに懐かしいのも入ってるのね、じゃあこれにしよ

 

「ふむ・・・どれにするかな」

 

ひなちゃんのプレイ画面に''挑戦者登場''の文字がデカデカと表示された後、コース選択画面へと移る

都内県外等様々なコースが出揃っている中で、首都高速を選ぶひなちゃん

 

「やっぱここかな・・・」

「これだったら千枝ちゃんも桃華ちゃんも道知ってるかもしれないね!」

「う、運転したことはないので・・・!」

 

千枝ちゃんの心配を他所にロード画面へと入り、みんなが選んだ車が表示される

 

「私たちは''GUEST''なんだ・・・ってひなちゃんのS14カッコいいズルい!」

「そりゃカード持ってんの私だし・・・」

「この1から6のレバーはどう使うんですか?」

 

千枝ちゃんがハンドルの左に設置してあるシフトレバーをガチャガチャと動かす

 

「千枝ちゃんの車はオートマだからこれ使わないわ大丈夫」

「なんだかムズムズしてドキドキしますわ・・・櫻井家の名に恥じぬよう頑張りませんと!」

 

また画面が白くなると、選んだ車がコースへ並んですでに走っている状態で表示され、カウントダウンが始まった

 

「ああ〜、なんだか面白くなりそう!」

「こ、これは!普通の高速道路ではありませんか!皆さまいけませんわ!安全運転で走行しませんと!」

「右がアクセル・・・!左がブレーキ・・・!」

「久しぶりだ、この人数で対戦するのは」

 

各々が戦闘態勢に移行する中カウントダウンがゼロになってデモ走行が終了し、踏み込んだアクセルに合わせてエンジンの回転数が跳ね上がり爆音が響いて、メーターの針が右へ振れるのと同時にスピードが上がっていく

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「ねぇねぇ零次さん、ひなさんが好きなものってなんなの?」

「車」

 

小物屋に入った俺たちは、店内のテーブルやラックにゴチャッと置いてある様々な商品を手に取ってプレゼントを探していた

雑貨屋と言ったほうが正しいのか、小さなガラスの置物や小さいポーチから大きなバッグ、筆記用具にポスターやカレンダーといった日用品や小さなミニカーのおもちゃなどの商品が所狭しと並んでいる

 

みりあに尋ねられたが返答が気に入らなかったのか、商品が置かれているカウンターを挟んで、そのカウンターに置かれているムスッとした表情の猫のぬいぐるみと同じような表情を俺に向けていた

 

「確かにひなさん車も好きだけどっ!もっと何か可愛い物とかないの!!」

「うーん、そうは言ってもなぁ」

 

不機嫌さ全開でみりあが抗議してくるが、正直言って思い当たる節が多過ぎて迷ってしまう

枕元にはぬいぐるみが置いてあるし、その近くの棚にはおもちゃもある

車は好きだけどみりあが言う通りプレゼントするならもっと何か可愛らしいものを・・・

 

「ひなさんも女の子なんだよっ!零次さんも可愛いものにしよ!」

「ああ・・・え?俺?」

「うん。零次さんも買うんでしょ?」

「え?あ、いや俺は」

「え?」

 

みりあは''この人何言ってんの?''みたいな不思議そうな表情を俺に向けてくる

俺としては、みんなが帰った後に夜ご飯でも奢ってあげようかと思っていたんだが、今そんなこと言ったら今度こそそっぽを向かれかねないので、そのまま言葉を飲み込んだ

 

「・・・そうだな、プレゼントか」

「お誕生日なんだよ?零次さんもプレゼントあげたら、きっと喜んでくれるよ!」

 

みりあが一点の曇りもないまなこでこちらを見ながらそう答える

ニコッと一つ笑い店内の奥へと入っていったので、俺も後に続いてついていき棚に置かれている小物を見ながら色々と考える

ふと思い返してみると、ひな先輩に改まって何かを贈るなんて考えたことがなかった

 

いつも、何だかぶっきらぼうな先輩

いつもキリッとした表情をして、テキパキ仕事をこなして、怒られることもあるけどなんだかんだ色々出来て頼ってしまう先輩

料理が上手で面倒見がよくてこの人には出来ないことなんてないんじゃないかと思うくらい

 

''ひなさんも女の子なんだよっ!''

 

ボーっとした表情で棚にあった赤いミニカーを手に取って、仕事をしているひな先輩のことを思い出す

よく合間にチョコレートのお菓子を摘んでいたり、新しい服を買ったら自分が休みの日に着て姉さんに見せに来たりと、確かに意識してなかっただけで思い当たる節が沢山ある

普段仕事してる姿と、ガレージでだらんとしている姿くらいしか見たことなかったし、出掛けるなんて尚更だった

会社で飲みには行ったりはするが

考えてみてもひな先輩、男の俺から見ても中々に可愛いと思うし

 

「あぁぁー!零次さんっ!」

「ん?ああ、違う違う。これはただ400Rがカッコいいなーって思ってただけだ。別にこれ買うわけじゃない」

「ほんとにぃ〜?」

 

俺が手に持っているミニカーをジロっと見ながら、みりあは疑問の声を上げる

 

「零次さんはその車が好きなの?」

「ああ。イカすよな・・・最新の車だし高くて今は手出せないけど、いつかは乗ってみたい。ホラホラ、プレゼント選ぶんだろ。早くしないと」

「私はね・・・これっ!」

 

そう言ってみりあは、後ろに組んでいた手を解いて俺に向けて商品を掲げる

 

「おお、可愛いじゃないか」

「でしょー!これから寒くなるし、ちょうどいいかなって!ひなさん実家が寒い地方だっていうから!」

 

みりあの手には、モコモコの毛があしらわれた暖かそうな青い耳当てが握られていた

値札をみても値段は手頃だし、これなら変に気を使わせることもないだろう

 

「零次さんも早く見てきなよ!私は少しこの辺りを見てるから!」

「ああ、わかった」

 

みりあに言われて俺はミニカーを置き、その場から離れる

結局、何を贈ればいいんだろう?

再び色々歩き回った結果、やっぱりしっくりくるのはアレしかないと思いその場所へと向かった

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

''残り5km''

 

と画面に表示され、ついついアクセルを踏み込む力が強くなる

スピーカーからBGMとエンジン音が爆音で響く中、私は昔のようにハンドルを両手で握りしめ、高速の直線上にいる黄色い一般車両をぶつからないよう縫うように避けていく

 

「あ、あ、あー!危ない、ぶつかるっ!なんでっ・・・!あっとっ!あー!あぶっ!危ないー!」

「何で皆さんそんなに速いんですのっ!負けるわけにはいきませんわ!わたくしの車が一番速いに決まってますもの!」

 

千枝ちゃんと桃華ちゃんがシートの背もたれから上半身を少し起こして画面に食らいつき、ハンドルに胸を押し当てて必死に先頭を走るひなちゃんに迫っていく

 

当の本人はというと、涼しい顔をしながら片手でハンドルを握り慣れた手つきで右へ左へとオーバーアクションで一般車を避けて、後ろの私たちに追い越しのチャンスを与えるが、画面には無情にも残り1kmの表示が見え、残りの距離数がkmからm単位に変わり、みるみるうちにその数字が減っていく

普段ひなちゃん簡単そうにやってたけど、結構難しいわねこれ

 

「あ、相手の前に出ろ!?あともう少しで追いつけるんですのよ!ひなさんを追い抜かすんですの!!」

 

画面にはさらに''相手の前に出ろ!''と表示が中央に現れ、その横で500mからのカウントが始まる

 

「あともうすこ・・・少しで!あ、いや!あともうちょっと!!あ、あぁぁ!あああー!!あー・・・」

「はっはっは」

 

ほぼ並んでひなちゃんの横に並ぶが、二人の意気込みも虚しく、それぞれの筐体の画面には順位が表示され、ひなちゃん1位、千枝ちゃん2位、桃華ちゃん3位、そして私が4位で終わった

ひなちゃんがハンドルから手を離し、頭の後ろで手を組んで笑っている

 

「なんでそんなに速いんですの・・・ひなさんずるいですわ。前を走る他の車を弾き飛ばして邪魔するんですもの」

「もう少しだったのに追いつけなかった・・・ひなさんお上手です」

「大丈夫よ千枝ちゃん!私より上手な運転だったわ。凄い滑るんだもんこの車」

 

コース自体はひなちゃんの配慮であまりコーナーがなくストレートの多いところを選んだため、テクニックの差がそこまで開くこともなく、四人楽しくレースを終えることが出来た

が、しかし、二人はひなちゃんに負けたのが相当悔しかったらしく、自分が選んだ車が画面に表示されたあとのコンティニューして続行するか?のYES、NOでひなちゃんの顔を窺いながら反応を待っていた

 

「そうか、よかったらちょっと教えてあげる。おお、来るか。それならこっちおいで、おいでおいで」

「私はちょっと疲れたから休憩する〜、肩凝るのよね〜、ひっさびさのセミバケ」

 

私はシートから降りると、後ろに設置されている横長のベンチへと腰を下ろした

ゲームが設置されているコーナー自体が広々としていたため、特に窮屈な思いをすることなく背もたれに寄りかかり、ひなちゃんたちの様子を見守る

他に待っている人もいなかったため、二人はひなちゃんの近くへと寄り添う形で教えてもらっていた

 

あんなに楽しそうにしてるひなちゃんを見るのは本当に久しぶりかもしれない

いつもだったら夜に何かレイジ君も誘ってご飯を食べに行くくらいだったのに、今年は違う

ハンドルを持って文字通り手取り足取り教えている姿を見ていると、彼女たちには感謝しかない

いつもひなちゃんには迷惑をかけることが多いから、楽しんでもらえて良かった

それも、私の大好きなアイドルたちのおかげで

レイジ君にもちょっと感謝ね

 

「そうそう、曲がるときはハンドルをこう・・・少し振りながら曲がると曲がりやすくなる。こうやって、ふいっふいって」

 

そんなひなちゃんたちの様子を見ていると、私の横をスタッスタッと通り過ぎ、私が座っていた筐体へと向かう人が一人

 

女性だ。スラっとしたスタイルに可愛らしい白いカーディガン、青のロングスカートが似合う少し身長の高い女性

ベレー帽の様な帽子を被り、サングラスとマスクをしているため表情はわからないが、私より若い?ひなちゃんと同じくらいだろうか

 

その女性はそのままシートに座り、100円玉を入れる

ひなちゃんが持っているのと同じカードを筐体へとかざすと車が表示され、赤い外車が選ばれた

結構このレースゲームって女の人に人気があるのかしら?

ひなちゃんたちもそれに気付き、チラチラと気にしながらプレイを続行していた

しかし、そんなひなちゃんたちのプレイ画面に''挑戦者登場''の文字が表示され、ひなちゃんたちはその女性へと顔を向けると、「よろしくお願いしますね」と女性が澄んだ綺麗な声で言うのと同時に頭を一つペコっと下げた

 

「では、せっかくですからわたくしたちも!」

「うん!やってみよう!」

 

千枝ちゃんも桃華ちゃんもさっきと同じ筐体へと戻り、同じようにゲームを始めた

ちょっと気になったので、ひなちゃんの筐体のシートに近付いて様子を見る

 

「他のカード持ってる人とやるのは久しぶりだ。さて・・・ん?お?」

 

千枝ちゃんと桃華ちゃんの参戦が確定し、レース前走るメンバーが画面に表示されると、その女性の名前にひなちゃんが固まる

 

「な・・・ん?え・・・?」

 

相当驚いているのかひなちゃんが改めて千枝ちゃん越しに女性を見ると、その女性はもう一度こちらに向けて頭を下げた

 

「ネメ・・・かお・・・」

 

ひなちゃんが衝撃を受けている中無情にも、レースへのカウントダウンが始まる

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

残り1kmという表示がこんなにも恨めしいと思ったのはいつぶりだろう

自分のすぐ先、数十メートルを走るカウンタックにどうしても追いつけない

 

「全然追いつけないですわ!やはりまだまだ練習が足りません!」

 

私の声を代弁するように桃華ちゃんが叫ぶ中、相手の前に出ろと私を煽るように文字が中央に出てくる

さっきとは違う、ハンドルを両手でしっかりと握りしめて、アクセルを目一杯踏み込むが、どうしても追いつかない

 

「わっ!やっぱりダメでした・・・お二人速すぎです・・・」

 

結果そのままあっけなくレースは終わり、私は二位。あとは先程と変わらなかった

コンティニューの画面で力が抜け、だらんとシートの背もたれに寄りかかる

 

「あなたが、''Hina''さんですね?」

「あんたが・・・''ネメかおり''さんか」

 

「はい!」とネメかおりさんは私の後ろまで来て、つけているマスクを外して嬉しそうに挨拶した

 

「''かおり''でいいですよ。一度お会いしてみたかったんです!私!」

「お知り合いなんですか?」

 

千枝ちゃんと桃華ちゃんもそばに来て、一緒に話を聞く

 

「いつも、私の分身と戦ってくれてたんです!お店の王冠を取って取られて取って取られて」

「あなたがいつもひなちゃんが言ってたネメかおりさんかぁ〜」

 

私たちに会えたのがそんなに嬉しかったのか、子供のように笑いはしゃいでいるかおりさん

私よりもおそらく年下、しかし私よりも身長が高い

薄茶色の髪の毛は、ベレー帽に隠れていて見えないが中で編んでいるように見える

シュッとした顔立ちに、サングラスをしているもののかなりの美人であることがわかった

 

「すいません、突然お邪魔してしまって。楽しそうに遊んでいたのでつい・・・」

「いや、こっちも会えてよかった。どんな人なのか少し気になってたから」

「こちらこそ、一緒に遊んでくれてありがとうございます。お二人もありがとう、佐々木千枝さんに、櫻井桃華さん」

「私たちのこと知ってるんですか?」

「有名だもの!」

 

またまた嬉しそうに千枝ちゃん桃華ちゃんと握手するかおりさん

ふと私と姉さんにも顔を向ける

 

「あの・・・もしかしてお二人も、アイドルなんですか?」

「「いやいやいや」」

 

姉さんとシンクロしながら手を横に振る

 

「そんな、お二人も凄く可愛らしいのに・・・」

「可愛いだってさひなちゃん!」

「お世辞をどうも」

 

私たちが話していると、千枝ちゃんと桃華ちゃんが何やらムズムズした様子で見ていた

 

「あ、あのかおりさん!よかったらもう一度やりませんか!」

「わたくしも!このままでは引き下がれませんわ!」

「本当!?いいですよ!やりましょうやりましょう!」

 

やはりこの人、どことなく子供っぽい印象が目立つ

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「ここか?たるき亭の隣じゃんか」

「ゲームセンターにいるって言ってたから、多分ここだと思うけど・・・」

 

みりあと共にガレージへと戻ってみたが、四人の姿が見当たらなかったのでしばらく待っていると、みりあに通知が入る

なんだか走り書きのような文面でゲームセンターにいるとだけ書かれていたので、みりあの推理の元、ここへとたどり着いた

 

「ここにもよく来るのか?」

「うん!遊びに来るんだよ!みんなどこ・・・あ!」

 

みりあが指差したその先、ゲームセンターの隅にある広々とした一角に、よく見知った人影がゲームの筐体のシートに寄り掛かって画面を見ていた

筐体の席は全て埋まっていて、それぞれの画面が動いていることから、対戦でもしているのだろうか?

 

「美空さーんっ!」

「ん?あら、あらあらあら!みりあちゃーん!」

 

みりあがそんな姉さんに駆け寄っていき、少ししゃがんだ姉さんと抱き合う

 

「なんで!?今日来れないんじゃなかったの!?」

「ビックリさせようと思ったの!ねぇねぇ、ビックリした?」

「ビックリもビックリよ〜!」

 

きゃ〜とまた姉さんと抱き合うみりあ

それよりも、こっちの様子が気になる

 

「で、こっちはなんなんですか?」

「ああ、何だかひなちゃんの知り合いが偶然居て、一緒に遊んでんの」

 

ゲームでは、知らない女性とひな先輩、千枝と桃華が四人揃ってデットヒートを繰り広げていた

カウンタックにS14にチェイサーにAMG GTと国内海外の車が入り混じ、四人真剣な表情で楽しんでいた

 

ネメかおりって何だ?

 

「おお!今回はひなちゃんの勝ちね」

「みりあもやーる!みりあもやーる!!」

「なら交代だみりあちゃ・・・みりあちゃん!」

「ひなさん!お誕生日おめでとう!」

 

シートから降りたひな先輩の手を握り、上下にブンブンと振りながら嬉しそうにするみりあに、ひな先輩もつられて笑う

ひな先輩はそんなみりあをシートへと誘導すると自分のカードを筐体へとかざし、みりあがレースへと参戦する

 

「よろしくね!お姉さん!」

「あら、赤城みりあさん!こちらこそよろしくね」

 

隣にいたベレー帽とサングラスをかけた怪しい女性が挨拶すると、すぐにレースが始まった

この人は一体何者なんだ?

 

「ふぅ・・・久しぶりに楽しかった」

「お疲れひなちゃん」

 

シートの後ろのベンチに三人座って、ゲームをしてる四人を見守る

 

「三人で出掛けるなんて久々ね、いつ以来かしら。隣にはよく来るけどねぇ〜」

「まさかゲーセンにいるとは思わなかったですよ。ひな先輩」

「ああ、こんなに充実した誕生日は久しぶりだ。ありがとう」

 

ひな先輩が珍しく、面と向かってお礼を言う

するとひな先輩はすぐゲームの画面へと視線を戻し、例の女性の画面へとのめり込むと、そこはそう曲がればいいのか・・・などとぶつぶつと呟きながら太ももの上に肘をつく

そんなひな先輩の様子を見ながら姉さんが俺に小声で言う

 

「負けず嫌いだから」

「・・・そうっすね」

「ん?何だ?何か言った?ん?」

 

俺と姉さんを交互に見比べながら、ひな先輩は不思議そうな顔をする

それが何だかおかしくって、姉さんと笑いあった

 

「楽しかったねっ!」

「結局一回も勝てなかった・・・」

「もう少しなんですわ・・・もう少しで何かが掴めそうなのに!」

「みんなとっても上手だったわ!抜かされるのも時間の問題ね」

 

レースが終わり、勝ち残った女性のボーナスプレイに三人が集まって運転の仕方を学んでいた

中々に女性の教え方が上手い、何か先生の様な職業をしている方なのだろうか?

要点をまとめ、わかりやすいタイミングで三人へと伝える

 

「いた!かおり〜!ここにいたのかー!」

 

突如、ゲームセンターの入り口付近から声が聞こえる

振り返ってみると、赤毛の長い髪が特徴的な小学生くらいの女の子がこちらに向かって近付いてきた

 

「もうかおり!おやぶんが呼んでたぞ!そろそろ時間だって!」

「あ、やだ!もうそんな時間!ごめんねたまきちゃん。すぐに行きますって伝えておいてもらえる?」

「わかったよ、すぐ来るんだぞ!」

 

''たまき''と呼ばれたその子はそれで納得したのか、駆け足で出口から出ていくのと同時に、女性も慌ててシートから降りる

 

「ごめんなさい!私、これからちょっとお仕事で・・・また時間があったら遊びましょう?」

「わかりましたわ!次こそは、追い抜ける様に努力いたします!」

「今日は楽しかったです。ありがとうございます!」

「いえいえ、私も楽しかったわ。そういえば、あなたたちはチームか何かなんですか?」

「「チーム?」」

「ええ、このゲームはチームロゴを作ることが出来るんですが、一緒にやってたからてっきり作ってるのかなって」

 

千枝と桃華がひな先輩に尋ねる様に顔を向けるが、ひな先輩は首を横に振る

 

「何も考えてなかった。私の周りでやってる人もいなかったし」

「作ろうよっ!!」

 

そんな中、みりあが声を上げた

 

「みんなのチーム!今日楽しかったもん!」

「そうですね、せっかくの機会ですから」

「名前は・・・何にいたしましょう」

 

困惑するひな先輩を置いてけぼりにして、次へ次へと話が進んでいく

三人のアイドルがひそひそと相談している様子を姉さんが楽しそうに見ている中で、女性は今か今かと発表を待っていた

 

「それじゃあ・・・!」

 

みりあが取りまとめると、三人で声を揃える

 

「「「チームかまぼこ!」」」

「美味しいですよね!かまぼこ!!・・・かまぼこ?」

 

女性が首を傾げている傍で、俺たち大人組三人はズルッと体勢を崩す

 

「あの・・・もしかして、かまぼこを生産している会社に勤めていらっしゃるんですか?」

「「「いやいやいや!」」」

 

ひな先輩からも三人にツッコミが入る

 

「もう・・・ちょい可愛い名前にしない?その、ほら。プリンセスブルー・・・みたいな」

「ええ、でも。あの場所見たらそんな感じしたんだもん!体育館より可愛いよね!」

「いや、まぁ、うん・・・そうだけど、、、うん?」

 

はたまた首を傾げるひな先輩の傍、その女性が慌ててゲームの隣にある筐体へと向かう

 

「じゃあとりあえずそれにしましょう!これをこうして・・・こう!」

 

女性がその筐体を操作すると、女性のカウンタックのフロントガラスに''チームかまぼこ''というロゴが入る

 

「じゃあ、よろしくね。また機会があったら遊びましょう!すみません、ちょっと急いでて・・・!それではまた!」

 

そう言い残すと女性は一礼して、さっきの女の子と同じように慌ただしく出て行ってしまった

 

「まぁ、かおりさんも登録しちゃってたからとりあえずこれにしよう。これを、こうして・・・こうだな」

 

ひな先輩も同じようにフロントガラスにロゴを入れる

その様子を見ていた三人は嬉しそうに笑い合っていた

三人も同じようにひな先輩に教えてもらいながら名前を入れる

ひな先輩から廃車カードを貰って車を作ったのか

 

「さて、そろそろ帰りましょうか。にしても荷物があるから若干大変ね」

「俺の車は、他に四人しか乗れないですよ」

 

どこかに寄ってきたのか、駄菓子が入ったデカデカとした袋を荷物置きから持ってくるメンバーたち

荷物は運べるかもしれないが人は運べない

 

「それなら心配御無用ですわ」

 

どうぞこちらにとゲームセンターから出ると、一台の黒い車が目の前に止まる

 

「先程、お迎えを呼んでおきましたの。これで皆さまガレージへ戻れますわ」

「いや、それにしたって・・・」

 

その他とは明らかに異彩を放つその車は、さっき桃華が乗っていたスーパーカーの5人乗り4ドアクーペ型。総額1000万越えの高級車だった

企業のエンブレムがフロントバンパーの真ん中でキラキラと輝き、綺麗にワックスがけされたその車は、普段は近づくことすら躊躇ってしまうようなオーラを纏っている

 

「生で初めて見た」

「さぁさぁ、どうぞどうぞ」

 

そのトランクに駄菓子を積むという明らかに上下の差がありすぎる贅沢なことをした後に四人が乗り込み、ドアが閉まる

 

「やだぁ!私もAMGGT乗るぅ〜!」

「姉さんしょうがないじゃないですか!気持ちは痛いほどわかりますが姉さんはこっち!」

「いやぁぁぁ!!」

 

子供のように叫ぶ姉さんと俺を背に、気持ちいいほどエンジンをふかして走り去っていくベンツに少し嫉妬しながらも、俺は姉さんをスカイラインの助手席に押し込んだ

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「あの、ひな先輩」

「ん?」

 

プレゼントのお渡し会が終了してみんなが帰り、片付けも終わってソファーでゆったりしているひな先輩に話しかける

 

「あの・・・」

「なんだ、早く言え」

「・・・お誕生日おめでとうございます」

 

みんなから貰った手編みの手袋や耳当てが並んでいるテーブルに、俺が買ったプレゼントが置かれる

 

「いつもお世話になっているので、何かと思ったんですが、何だかこれがしっくりきて」

「・・・ぬいぐるみか」

 

買った猫のぬいぐるみのムスッとした表情がひな先輩を睨みつけていた

 

「いや、ごめんなさい!深い意味は無いんです!ひな先輩沢山ぬいぐるみ持ってるからこういう表情のやつないなぁとか思って!」

「・・・いや」

 

ぬいぐるみをクルクルと回して四方八方から観察していたひな先輩が、ぬいぐるみを胸元で抱きしめる

 

「可愛いじゃないか。ありがとう、大事にする」

 

・・・また何か鉄拳制裁が飛んでくるかと思ったが、意外とすんなり受け入れられた

こういうのが流行ってるのか・・・?

 

「・・・何だ」

「え、あ、いや。別に」

「ふむ・・・よいしょっ。・・・ありがとうだニャー」

 

ひな先輩が持っているぬいぐるみの右手を持ってこまねくように動かし、そう言った

 

「・・・和ませようと思ったんだけど、私が馬鹿みたいじゃないか」

「・・・いえ、大丈夫です。和みました」

 

何だか今日は、ひな先輩が少しお茶目に見えた




ネメかおり

謎の人物
スラっとしたスタイル、可愛らしい声、薄茶色の髪、編んでいるのかはベレー帽でわからない。ショートカットではなさそう
高身長(ここだけ妙に筆圧が強い)、時折子供のような態度を見せる
胸がデカい(ここだけ妙に筆圧が強い)

教え方が上手い、先生か何かをやっていた?
たまき、という妹?かどうかはわからないが仲間がいる。呼び捨てだったので妹か?
おやぶん?がいる。組織か何かか?今度巴ちゃんにでも聞いてみよう

''ネメかおり''が本名かどうかはわからない
本人が言うには、もっとカッコいい名前にしたかったがプレイヤーネームの文字数に制限があり一部略したらしい

千枝ちゃんと桃華ちゃんを知っていた、アイドルに詳しい?
詳しいことは謎

〜ひなこの日記より抜粋〜
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