『かんぱーい!』
その号令が、様々な声が重なりあった状態でガレージに響き渡ると、それぞれのテーブルで''いただきます''が巻き起こり、一斉に手をつけ始める
肉の焼けるいい匂いと、食欲をかきたてる音がテーブルに広がり、箸が進んでいく
「あ、ご飯が足りなくなった人はセルフサービスでよろしく」
ひな先輩の言葉に、これもまた返事がそれぞれ返ってくる
「今日はお疲れ様でした!」
「うん、お疲れ。こんなに大きいライブは久しぶりだったから、少し緊張したけど・・・楽しかった」
「トライアドで歌うの久しぶりだったよなぁ、凛は最近ソロが多かったし」
「奈緒いっつも凛の番組チェックしてるもんね〜、やるたびに私にトーク送ってきてさ。この前楽屋でね・・・」
「ちょっ!!それはダメだ加蓮!その話は言わない約束だろ!」
他のテーブルからも、それぞれを労う言葉が飛び交い、今日のライブの思い出話に花を咲かせていた
「こらっ!志希!もうちょっと焼かないとダメだって!ほぼ生じゃないのアンタ!」
「志希ちゃん的にはこれくらいが丁度いいのだ〜」
「牛肉だから、大丈夫だとは思いますけど・・・」
「わ、私はちゃんと焼かないと心配なので・・・」
「卯月ちゃんも?私もなんだ!これ大丈夫だよね?」
「ごめんなさいね。すぐに慣れるわ、いつもこんな感じだから。美穂のそれは結構いい具合なんじゃないかしら」
一部のメンバーは少し違うみたいだが
「うむ、誠に美味である!」
「本当だ、これほど上質なものは中々食べたことがない。しかし、これだけの量を確保するとは、彼もまた選ばれし者だったということか」
「クジで当たったらしいよ?」
どうやら喜んでもらっているようだ
テーブルの上からは次から次へと肉が減っていく
俺のスペースの少し横あたりから、リビングを跨いでひな先輩のスペースにかかるまで、大きく分けて3つのテーブルに分けられており、LiPPSとPCSで一つ、トライアドプリムスと未央、悠貴、愛梨、アスタリスク、俺で一つ、千枝、梨沙、幸子ちゃんに紗枝、蘭子に飛鳥、藍子、ひな先輩で一つ、後の大人組が下と、こうしてみるとそうそうたるメンバーが集まっているのがわかる
「野菜が少ないのが難点だったな」
「そんな、零次さん。いきなり押し掛けたのは私たちですし」
「とときんの言う通り!気にしないでレイさん!」
「それなら買ってくるか?近場なら何とか・・・」
「いや、奈緒。忘れてるかもしれないけど停電中だからね今」
凛からツッコミが入る
「そうにゃ。外もまだ天気が荒れてるし、あまり危ないことはダメにゃ。・・・って李衣菜ちゃん!それみくが育てたやつにゃ〜!」
「ご、ごめんて・・・美味しそうだったからさ」
「でも、悠貴とかは成長期なんだし、バランスよくしないとやっぱダメじゃね?陸上部だっていうし」
「いえ、あの・・・私ちょっと野菜が苦手で・・・」
あはは・・・とバツが悪そうに俯く悠貴だったが、オカン猫はそれを見逃さなかった
「悠貴チャーン?好き嫌いはダメにゃ。ほら、ここにあるから遠慮せずに食べるにゃ。みくも玉ねぎは食べてあげるから」
「ほら悠貴。これ焼けてるぞ。遠慮せずに食べろ。ほらほら」
「あ、ありがとうございます!」
そんなみくの言葉をかき消すかのように、俺が取り分けた肉にもぐもぐと食らい付いていく悠貴だった
みくに視線を戻すと、俺のことをジトーッとした目で見つめている
っていうかいいのか?玉ねぎ食べて
「なんだよ」
「零次さん。なーんだか悠貴チャンに甘くなーい?」
「・・・別に、そんな事ない。加蓮も食え、遠慮するな」
「私はちょっと休憩。見てて面白いし」
加蓮のイタズラスイッチがオンになったのが何となくわかった
「確かに悠貴は可愛いからちょっかい掛けたくなるのはわかるけど〜、もうちょっと日頃私たちにも構ってくれてもいいんじゃない?いつも返事がそっけないし〜」
「JKと何話すっつーんだよ」
「ホラ見てこれ」
すると加蓮が懐から携帯を取り出すと、トークの画面に切り替え両隣にいる凛と未央に見せる
「こんな淡々とした返事ある?せっかく2ショットとかレッスン風景とか送ってあげてんのに返事が''ああ''とか''おう、頑張れ''とか一言しかないの」
「そんな!しぶりんだけじゃなく、かれんにまで浮気していたなんて!」
「おい、人聞きの悪いこと言うな!」
メンドくさい奴らが嗅ぎつけるんだから!
「あら〜、シキちゃんの知らないところで修羅場ってるかんじ?あたしも混ぜて〜」
「こ、これが、三角関係ってやつかな!卯月ちゃん!」
「あら、凛と加蓮がこそこそやってるとこはたまに見てたけど、そういうことだったのね零次さん。私というものがありながら」
ほら見たことか
「違う、何でもない。黙って食べなさいほら」
「あれ?でもこれいつもの零次さんの連絡用のアカウントじゃないよね?名前違うし」
ちょっとロックさん。今そこにツッコまれるとマズいんすよ
「そ、何を隠そうしぶりんとかれんは、お互いの連絡先を知っているイケナイかんけーなのですよ!」
「おいこら本田おい!」
未央の一言を皮切りに、興味を持ったメンドくさい方々御一行が俺たちのテーブルに集まってきた
「ねぇ、零次さん。モノは相談なのだけれど」
「仕事の相談なら営業日にしていただけないですかね、奏のお嬢ちゃん」
「フレちゃんもショッピングして持ちきれなくて困ることあるんだ!家に送ったらお金かかるし〜」
「お前はもうちょっと包み隠すということをしないのか」
後ろから俺の両肩あたりに迫り、囁く様に連絡先を寄越せと言わんばかりにプレッシャーをかけてくる二人
「いいでしょ〜、ね?レイさん。ね、おねがーい。こんなに女の子に迫られることなんて滅多にないよ〜?だから・・・オ・ネ・ガ・イ」
''きゃる〜ん''なんていう効果音が聞こえきそうなひと昔前のアイドルの様に、両手を顔の前で組み、顔を少し斜めにして、これまた媚びる様な目線を俺に向けてくる未央だった
気のせいか、ウィンクするたびに顔の周りに三つ星が飛んでいるように見える
「なんか、アイドルみたいでムカつく」
「いや、バリバリ現役なんですが。もー、いいじゃ〜ん。私たちとレイさんの仲なんだしさー」
「どんな仲だよ・・・」
俺を指差しながらそう言う未央だが、周りを見ても一向に引く様子がない
いつの間にか一ノ瀬志希も座っている俺の背後に四つん這いで迫り、頭で俺の背中をずりずりと擦り始め、私も構えとちょっかいをかけてくる
「はぁ。悠貴、何とか言ってやってくれ」
「え?あの、えっと・・・私も、えへへ」
助けを求めようとしたが、悠貴もポケットから携帯を取り出し、上半分で口元を隠しながら、恥ずかしそうに期待の眼差しを俺に向けていた
「・・・はぁ」
これ以上引きずると何をされるかわからない
俺は半分諦めて自分の携帯を取り出そうとしたその時
「レイジく〜ん!ちょっと上からビール持ってきてくんな〜い?」
下から姉さんの声が聞こえてきた
ひな先輩に''どうします?''と問い掛けるように顔を向けたが、ひな先輩は行きたくないと無言で顔を横に振った
「悪い、ちょっと下行ってくる。後でな」
「絶対だよ!絶対だかんねレイさん!言質とったからね!」
「はいはい。ほら、パス」
「んにゃ〜ん」
背後にいた一ノ瀬志希の首根っこを掴んで、とりあえず横にいた悠貴に渡すと、俺は冷蔵庫へ向かい、ビール瓶を一本取り出した
「あら悠貴ちゃん」
「志希さん、大丈夫ですか?」
「うん。悠貴ちゃんの太ももモチモチ〜」
「こら!食べてすぐ横にならない!」
悠貴の膝に倒れ込んだ志希に注意する美嘉姉ちゃんの横をすり抜けて俺は階段へと向かっていく
「おっと、悪いな」
「いえいえ。もう少しずれますね」
卯月が退けてくれた通路を通って螺旋階段を降りると、奥でアッハッハ、ワッハッハと楽しそうに談笑している様子が見えるが、いかんせんどのメンバーも顔を真っ赤にしている様子からすこぶるめんどくさそうである
美優さんに至っては今にもぶっ倒れるんじゃないかと言うほどに目が据わっており、他のメンバーも次から次へとグラスにビールや日本酒を注ぎながら会話が弾んでいる
近づくほどにはっきり分かる酒の匂い
「おお!レイジくんありがとー!でねー、やっぱやるならタオル必要って話!」
テーブルの上には、既に開けたあとの缶ビールの空き缶が散らばり、高そうな日本酒が開けられて、それを一人静かに注いで高垣さんが満足そうに飲んでいた
「おっす少年!今ここ空けるからちょっと待ってくれよ!ナナ先輩ここ空けてほら!自分のやつ持って☆」
「ナナは菜々ですよ〜、えへへっ!はい!ウ〜サミ〜ンうふふっ!」
「ちょっと、JKに酒飲ませたんすか」
「違うぞ☆ナナ先輩は''ウサミン茶''を飲んでただけだぞ☆」
とりあえずそのヤバそうな飲み物を飲んだ安部菜々さんを、佐藤さんはとりあえず横にした
「とりあえず、北崎君も一杯引っ掛けていきなさい!ホラ!早苗ちゃんの隣にどうぞどうぞ!」
「あ、はぁ・・・」
川島さんに誘われるがまま、俺は早苗さんの隣に座った
座ったのはいいんだが
「・・・早苗さん?」
早苗さんの返事がない
自分の缶ビールを持ったまま、ソファーに深く腰掛けて座り込み、俯いたまま動かなかった
おかしいな、さっき楽しそうな声が聞こえたんだけど
「ちょっと、大丈夫ですか?」
ゆさゆさと軽く揺すってみると、ゆっくりと顔を上げ始めた
「あ、レイジくんしーらない」
姉さんがそう言った次の瞬間、缶ビールを持っているのとは逆の手で俺の腕をガシッと掴んだ
「あんらぁ〜ん?零次君じゃな〜い。うっふっふっふ〜」
「ちょっ!早苗さん!うっ・・・酒くさっ!」
「アッハッハッ!」
姉さんがソファーの背もたれにのけ反りながら笑っているが、その間にも俺の腕を掴んでいた手が徐々に俺の首元へとまわっていく
「ほらほらいらっしゃいな〜、お姉さんと一緒に飲みましょうよ!ん、ん、ぷはー!」
「なっ、意外と力強い・・・!どんだけ飲ませたんすか!」
「早苗ちゃん、ライブがあるからって色々禁止してたから。それが爆発しちゃって」
「もう最初から凄い勢い・・・だったんでしゅ」
美優さんはもはや呂律が回っていない
「あ゛、あっはぁ〜。ゔっ・・・しょっと、」
「早苗さ・・・ちょっ!下!」
おもむろに立ち上がった早苗さんだったが、立った瞬間にその腰から下に履いているものがスルッと床に落ちて、最後にそのベルトのバックルの金属音が静かに響く
「あら!早苗ちゃん可愛い下着ね〜」
「言ってる場合じゃないですって姉さん!」
「暑かったんだもんいいじゃないの〜、ああ〜あらあらおっと」
「うおっ!」
今度はそのふらふらの足取りのまま、俺の膝の上に倒れ込む様に座ったので、慌てて抱き止めた
「あら、優しい〜。ちょーどいいわここ。んくっ、ん、ぷは〜」
「ちょっと、早くどいてくださいよ」
「あ゛ぁ〜、もうこのまま何もかも忘れて一日中セックスしたい」
何言ってんだこの人!
「早苗ちゃん、溜まってるわね〜」
「見てないでどけてくださいよ!」
「あ、レイジくんもタオル使ったほうがいいかもよ」
「いりません!」
「あ゛っはぁ〜、ん、んっ、あ、なくなっちゃったもう〜。んん、ん!」
早苗さんが駄々をこねる様に身体を擦り始めたため、いよいよ引き剥がしにかかる
「あら?立ち上がったん〜!うふふ、ベッドどこぉ〜?」
「とり、あえず!ここで寝てください!」
「あぁあんっ」
抱きかかえたあとそのまま立ち上がり、早苗さんが俺に抱きついて落ちないうちに缶ビールを回収、座っていたベッドに横にする
「ああ、待ってぇ〜。さみしい〜」
「はい、これ!」
「うん?うふふ・・・」スヤスヤ
「はぁ、まったく・・・」
その辺の適当な酒瓶を抱かせると、驚くほどあっさり寝息を立て始めた
「根を詰めてたから''コン''っと寝る。ふふふ・・・」
何なんだ今日は一体