ヘイ!タクシー!   作:4m

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クリスマスと仕事と魔法の馬車04

「・・・というわけで、単価もジリジリ上がってきてますが、なにぶん入庫の台数が多いので残業もちょいちょい増えてます。これは毎年のことですが、それでもやれるところはキッチリやりましょう。私からは以上です」

「ふむ・・・こればっかりは仕方ないねぇ。みんなには迷惑かけると思うが・・・」

「まぁ、売れるものは売っているので今のところは黒字ではあります。消耗品等はなんだかんだで必要になってくるので」

 

終業後、社長も交えての職場懇談会

ひな先輩が資料を片手に淡々と説明を続けていた

目の前のテーブルには粗利、利益、車検の単価、点検等の入庫台数一覧が書かれた資料が並べられており、次から次へと回覧しては戻してと現状を把握しながら会議は続いていく

 

確かにひな先輩の言う通り忙しいといえば忙しいが、利益的にはプラスに働いているので損はしていない

ここまで来ると後は残業をいかに減らすかということだが、そうは言っても仕事が入ってくるので、そこが難しいところである

 

「だが、頑張ったぶん忘年会はパーッとやろうじゃないか!零次君も頑張ってくれているみたいだしね。ハッハッハ!」

 

社長が美城プロとの詳細資料に目を通しながらそう言って高笑いしているところで姉さんが手を上げていた

 

「社長!お話があるんですが!」

「おお、何かね。洗車機は調子良くなったはずだが・・・」

「洗車機の話は今はいいんです!」

 

ひな先輩も察したのか、資料を置いて姉さんの隣に座る

 

「先日、美城プロから23日にクリスマスパーティがあるので参加しないかとお誘いを受けました。その時は無理だと断りましたが、諦め切れません!!」

「そうだったねぇ。今西君からも連絡が来ていたが、私も難しいと伝えてしまったよ。どうだね?実際のところ今の状況は?」

「変わりありません。入庫も予定通り進んでいます。主に車検ですが、初回が多いです。多分そんなに悪いところは出ないとは思いますが台数が多いのでどうしても作業が増えます」

 

ひな先輩が車検の入庫台数と単価のグラフが書かれた資料に目を通しながら社長に伝える

何十万キロと走った車ならまだしも、初めての車検、つまり今回の議題に上がっている初回車検ならそんなに走行距離が多いわけではない車が大体なので、簡単なオイル交換等で作業が終わってしまうことがほとんどである

 

しかし、台数が多いとなると、その後の検査員によるテスター等を使った検査作業、車検完了の書類の作成などの作業は初回だろうが何だろうが関係なくあるためそれに時間が掛かってしまう

それに加えて検査後の室内清掃、洗車等も含めると台数が増えるほど手間がかかり、結果的に全部終わるまでの時間がトータルで長くなるということなのだ

 

「でも必要な作業だから、やらないわけにはいかないだろう?時間があったら私も手伝いにいくから、ね?」

「そうは言っても社長〜。検査の書類は私がやるとして、どうしても人手が足りないですよ〜。ね、ひなちゃん何とかならない?」

「あの三人は?」

「あいつらはあいつらでクリーニングなり店がかき入れどきだから忙しいんだって。お歳暮とか牡蠣の販売も丁度時期だから沢山注文が来るとか言ってたし・・・」

「なら私も無理、みんな海外だし」

 

万策が尽きたのか、ぐで〜っと項垂れる姉さんだった

そのままひな先輩のほうに倒れ込もうとするが、資料をまとめて同時に立ち上がった為、そのままソファーに倒れ込む

 

「とにかく、やることやらないと終わらないです。なので残念ですが、その件は一旦保留ということでいきましょう」

「うむ、そうだな。誠に残念だが、今西君にもそう伝えておこう。では、今日の職場懇談会は以上とする。ご苦労だった」

「「お疲れ様でした」」

「・・・お疲れ様でしたー」

 

一人不貞腐れたように姉さんが返事を返し、ゆっくりと更衣室へと消えていった

姉さんの気持ちもわからないではないが・・・今回ばかりは仕方ないだろう

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「それにしてもどうしようね〜、みりあちゃんの話を聞いても相当忙しいみたいだし」

「うん、ひなさんにダメ!って言われちゃったよ?」

 

レッスンが終わり、辺りもすっかり暗くなった夕方、別館の自販機が置かれている休憩スペースで、未央とみりあはペットボトルを片手に椅子に座ってため息をついていた

 

「プロデューサーたちもそうだけどさー、忙しいのはどこも一緒なんだねー。年の瀬だから仕方ないんだけどさっ」

「未央ちゃんも忙しいの?」

「ふっふっふ、こう見えても未央ちゃん、色々なところから引っ張りだこなのだよ〜。舞台に年末の特番、おまけにレッスンときたもんだー・・・はぁ」

 

未央は一口スポーツドリンクを飲むと、あーあ・・・と天井を見上げながら目を細める

 

「こんなにあっちこっち動き回ってちゃ、GPSでも埋め込んでおかないと、サンタさん私の位置わからないと思うんだよねー。どうよ赤城の奥さん、そっちのチョーシは」

「私まだ結婚してないよ?私も忙しいけど・・・みんなも忙しいよね」

 

みりあは携帯を取り出して、いつものトークアプリを立ち上げるも、仲のいいグループの会話は5日前で止まっている

デレポの内容もほぼほぼ8割が仕事の関係になっており、それぞれがいかに動き回っているかがわかった

みんなも頑張っているのだから、自分だけわがままを言うのはどうかと、少しみりあは考え始める

 

「ま、忙しいのはいいことだって言うけどさっ」

 

飲み終えたペットボトルのキャップをしめ、未央は下から上へと放り投げる形で自販機の隣に設置されているゴミ箱へ入れようとしたが、縁に当たって跳ね返り、乾いた音を立てて地面へと転がっていった

 

「おっとっと」

 

未央が慌てて取りに立ち上がると、転がっていったペットボトルが不意に持ち上げられる

 

「未央、行儀悪いよ」

「あ・・・!しーぶりーん!!」

 

凛はペットボトルを持ったままバンザイする形で、未央にそのまま抱きつかれる

背中に学校の鞄を背負っていたため、未央の手は腰回りに回されていた

 

「久しぶりじゃ〜ん。今日は制服なんだ〜」

「学校から直接来たから・・・もう」

 

抱きつかれたまま胸のあたりで頬擦りを始める未央を、凛は突き放す訳でもなくバンザイしていた手だけおろし、素直に受け入れた

ペットボトルを持っている手とは逆の手で背中をポンポンと叩くと、未央は「えへへ・・・」と凛の胸の中に顔を埋める

 

「お、未央じゃん。久しぶり」

「なんだなんだ?どういう状況なんだこれは?」

「・・・!かれん!かみやん!なになにトラプリのみなさんお揃いで!」

 

そんな凛の後ろから、同じように学生服に身を包んだ加蓮と奈緒が顔を出す

やぁやぁと手を上げる二人に、未央は凛から離れて嬉しそうに近づいていった

 

「みりあも、久しぶり」

「うん!凛ちゃんも元気そうでよかったよっ!他のみんなには最近会ったの?」

「さっき別のスタジオで莉嘉に会ったよ。みんなに中々会えなくて寂しいって」

「莉嘉ちゃんに!?いいないいなー!あ、私もね!時間があったからさっき桃華ちゃんと一緒に零次さんのところに行ったんだよっ!それでね・・・!」

 

離れていった未央と入れ替わるようにみりあが凛に近づき、目をキラキラさせて積もる話を語る

そんな楽しそうなみりあを、凛は少し上から見下ろしつつ優しく頭を撫でると、みりあはえへへっと顔をふにゃっとさせて笑顔を浮かべ、されるがままに撫でられていた

 

「零次さん元気だった?」

「うん!なんかねっ!最近カップ麺にハマってていつも同じ物を食べてるって!」

「それ、元気は元気だけど健康的ではないような・・・」

 

凛が苦笑いしていると、後ろから未央達がやってくる

 

「零次さんの話?」

「で、どうだったんだよ。パーティーの話は」

「それがねかみやん、みりあちゃん達どうもフラれちゃったみたいでさ〜・・・」

「・・・あの男」

 

そう言って携帯を取り出し、これでもかというほどの高速フリックで文字を打ち込み始める加蓮を慌ててみりあは止め、事情を説明する

 

「・・・なるほどね〜」

 

今度はトラプリを交えて休憩スペースの椅子に座り、加蓮が自販機から飲み物を取り出しながらそう呟いていた

 

「サンタも流石に仕事ばかりは片付けてくれないか」

 

それに続いて奈緒が切り出すと、みりあは黙って頷く

 

「・・・ふむ」

 

飲み物を取ってきた加蓮がみりあの隣に座ると、また携帯を取り出して素早く文字を打ち込んでいった

 

「加蓮さん、零次さんたちは忙しいって・・・」

「ああ、違う違う。あの人にじゃなくて・・・」

 

そして打ち込み終わったのか、携帯を懐にしまい飲み物を一口飲む

 

「味方・・・っていうか、ん〜サンタは多い方がいいかなってね〜、せっかくのクリスマスなんだしっ」

 

何かを企むようにふふっと笑いながら、またペットボトルに口をつける加蓮を、みりあを含む他のメンバーが不思議そうに見つめていた

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