「ひぃぃぃうぅぅぅぅ・・・!!」
「ら、蘭子。まだタイトル画面だから、腕を離してくれないだろうか。痛い」
「ほわぁ・・・最近のゲームはよく出来てるにゃ。画面がすごく綺麗にゃ」
テーブルの上に手を置いて、上半身を乗り出すようにみくがテレビ画面に食いつく
「飲み物、持ってきました。皆さんどうぞ、零次さんからです」
「お菓子も持ってきたぞ。零次サン、飲み物サンキュー」
「あ、ゆかりちゃん!どうでしたか?散らかってませんでしたか!?」
食堂へと繋がる扉からはゆかりと涼が、廊下へと繋がる扉からは響子が入ってくるなりゆかりへと詰め寄る
ゆかりはそんな響子に状況を説明している最中に、涼は中央のテーブルへお菓子の乗ったお皿を置いていた
「へぇ・・・、そんなところにあったんだ・・・。・・・うん、わかったよ。ごめんね、外寒かったでしょ?」
小梅は誰かと連絡しているのだろうか
響子が入ってきた扉の向こうで誰かと会話しているのが聞こえてくる
小梅の姿がギリギリ見えないので、携帯を使っているかどうかがわからない
きっと仲間のアイドルとでも話しているんだろう
「それにしても、零次サンやるねぇ。んー?んーー?」
俺が座っている横に腰掛けて、涼は肘で俺の脇腹をつつきながら、ゆかりへと目配せをしていた
それに気づいたゆかりは少し顔を赤らめながらも、俺と涼の方に顔を向けて照れ笑いしていた
響子はそれを不思議そうに見ている
「零次さん、お待たせ。早く・・・やろ・・・!」
廊下へ繋がる扉が開き、小梅は足早に俺たちが座っているソファーに近づいて涼の隣へ腰掛けた
今現在俺は、寮のリビングのソファーに座り、みんなが画面に注目する中でコントローラーを握っていた
寮に帰った際に、小梅がどうせならみんなでやろうと言い出したので、リビングの大きなテレビに繋ぎ、見たい人だけ集まってと号令を掛けた
何人かは部屋でちょっとやりたいことがあるとまだ降りてこなかったが、ぼちぼち集まって今のメンバーとなった(蘭子にはただみんなでゲームするとだけ伝えて引きずり出してきたらしい)
ソファーの配列もガレージと同じようにコの字になっていたため、それぞれに好きなように腰掛けていた
「ゲーム機にもホコリが溜まってますね・・・後で乾拭きしておかないと」
「頼むから好き勝手いじるなよ・・・ゲームなら後でやらせてやるから」
俺がそう言いながらコントローラーを操作し、ゲームをスタートさせロード画面に入る
ゲーム機を覗き込んでいた響子はそのまま近くのソファーに座り、同じく隣に腰を下ろしたゆかりからジュースを受け取っていた
ーーーーーーーーーー
「あひゃうぅぅぅぅ・・・!!!」
「わぁ・・・!このゾンビ、100点満点の倒れ方だよ・・・!」
ゲームが進み、初めて武器を手に入れた直後に襲いかかってきたゾンビに何とか弾を命中させ、その場に倒れ込ませた
蘭子はゾンビが出てきた瞬間から息を殺すような悲鳴を上げ、飛鳥の左腕に抱きつきながら目をチラチラさせて画面を見ていた
あにゃにゃ・・・と苦い顔をしながら少し顔を引いているみく
うわぁ・・・と苦笑いを浮かべている響子とその隣で何食わぬ顔をしながら静かに眺めているゆかり
うへぇ・・・と顔を逸らしながら小梅の嬉しそうな表情を見て複雑そうな顔をしている涼と反応は様々だった
まだこれ序盤の序盤だと思うけど大丈夫か?
「主人公の後ろにカメラがあって画面が見えるから、何が背後から迫ってくるかわからないにゃ・・・」
「これは杏から聞いた事がある、''TPS''というらしい。ボクには何のことだかよくわからなかったが」
「怖いことにはかわりないよね・・・あ、もう服凄い汚れてる・・・洗濯が大変そう」
それぞれが感想をもらすがそれでもゲームは続いていく
とあるビルの1階駐車場、屋上に脱出用のヘリが来るため屋上まで上がってこいという
出入り口ゲートの監視所の中にいたゾンビを無視し、ゲートをくぐり、奥にあったエレベーターのボタンを押す
「つ、ついに!この無限の闇から帰還か!長き戦いだった・・・」
多分恐らく絶対違うと思うが何も言わないでおいた
そしてエレベーターが下に到着し、チャイムがなると同時に中にいた大量のゾンビが駐車場へと流れ込んでくる
「あふゅいぃぃぃぃぃ!!」
「おうおうこれはちょっと厳し・・・ああヤバい」
慣れない操作に戸惑っていると、あっという間に組み伏せられ二人のゾンビに噛みつかれてしまった
「こいつらに構ってるヒマないな、エレベーターへ走れ零次サン!」
「わかっ・・・てるけどよし!よしよしよし、ダッシュダッシュダッシュ・・・」
レバガチャで何とか主人公の女性がゾンビを殴り倒して振り払い、起き上がると同時に操作してエレベーターへと走らせる
急いで中のボタンを押してエレベーターを動かすと、束の間の休息が訪れた
「はぁ・・・息つく暇もないな」
「いいね、凄いよ・・・。パニックホラー感・・・マシマシで、ゾンビも可愛いし・・・」
「みくだったらこんな状況絶対ゴメンにゃ・・・。途中で会ったオジサンみたいにトラックの荷台に隠れてるにゃ」
「みく」
「なんにゃ」
「ホラ、パス」
「何でみくがやるにゃあ!!」
「俺ばっかりやってても面白くないだろ?」
せっかくこんなそうそうたるメンバーが揃ってるんだ、そうやって楽しんだ方が絶対面白い
「ああ・・・エレベーター着いちゃったにゃまったく・・・、えっとこれで移動して・・・カメラがこれで・・、中々難しいにゃ」
「は、早くしないとヘリコプターが・・・!」
「わ、わかってるにゃ・・・!」
蘭子に諭されながらみくは慣れない操作ながらも、瓦礫などが散乱している屋上を進み、スポットライトをこちらに向けて待機しているヘリへと近づいていくが、突然ヘリのテールローター部分が爆発し、屋上の隅へと不時着してしまう
「あぁ!せっかくのヘリコプターが・・・ってアイツはなんにゃ!?」
カメラが元に戻り主人公の女性が前を向くと、そこにはさっきまでヘリがホバリングしていた場所あたりからこちらに向かって身長が2m近くある''何か''が、暗闇の中からゆっくりと近づいてくる
「は・や・く!何とか・・・!そうにゃそうにゃ車に乗るにゃ!!」
女性は屋上に停めてあった車に乗り込むが、中々エンジンがかからない
「かからないにゃー!!」
「みく、落ち着くんだ!前に小梅と見た映画ならゆっくり回せば大丈夫だった!」
「だったらアスカチャン代わって欲しいにゃあ!」
「零次さん何とかしてくださいよ」
「無茶言うなよ響子・・・」
それでも何とかエンジンが掛かり車を発進させてその''何か''にぶつけるが、それを受け止めて車を止めようとするばかりかフロントガラスを突き破り室内に手を突っ込んで首を掴んでくる
「ぎゃあぁぁぁ!!アクセル踏んでもダメにゃ!」
「もっと、もっとだみく!!」
「踏んでるにゃ!!あ、あぁー!!車が屋上から・・・!」
そうこうしているうちに車が屋上から落下する
「早く車から出るにゃ!」
「普通だったら死んでるよな。シートベルトしてないしサ」
「わぁ・・・!この人がこのパッケージに写ってる人・・・かなぁ。すごく・・・カッコいいね」
何とか女性が車から脱出するも、落ちた衝撃で車が爆発し、その炎に包まれながら、口が首元まで裂けたその大男がゆっくりと近づいてきていた
ーーーーーーーーーー
「うーん・・・えっと、ここがこうで・・・ここがこうだから・・・あれぇ?」
「蘭子ちゃん、そこは下に動かすのでは?」
「あ、本当だ。ゆかりさん、ありがとう!」
ゲームが進んで、今は街にある地下鉄の制御室へと来ていた
その途中で大男に何度か襲われたが、みんなでギャーギャー言いながらも何とか回避して脱出用の地下鉄を動かすのを目標にここまでたどり着いた
地下鉄の運航ルートを切り替えるための操作盤がパズルのように複雑なため、知恵を出し合いながらシリンダーを回して線路を切り替えていく
こういうところならゲームをやったことがない人でもできる。現に戦闘シーンなんかは俺やみくなどが担当していた。意外とゆかりも上手かった
「ここをこうして・・・これで、どうか!」
出来上がったのか、操作盤の決定スイッチを押すと、奥の壁にある路線図が光り出し、到着ルートを光が順に追っていく
「お願いお願い・・・」
間違っていれば光が途中で途切れて最初から解き直しだ。これも3回目くらいの挑戦である
「あと二つ、あと一つ・・・!やったぁ!やったよ飛鳥ちゃん!」
「すごいじゃないか、蘭子」
「ふっふっふ、我に不可能はないのだ!」
蘭子が嬉しそうにコントローラーを持ちながら両手を上に上げるのと同時に、光が出発地点から到着地点まで結びつくと、その道筋が緑色に点灯し、電力が供給された
「後は戻るだけだよね・・・それなら私にも出来そう・・・」
「・・・わっ!」
「ひゃうぅぅぅん・・・!!」
後ろから掛けられた声に今度は逆に両手を胸の中に隠して縮こまり、蘭子は小さく悲鳴をあげていた
「・・・まゆ、あまり蘭子を驚かせないでくれないか」
その後ろで、まゆちゃんが面白そうにクスクス笑っている
「すみません。あまりに楽しそうだったので、つい」
「おうおう、やっとるなぁ。これが最新のホラーゲームってやつかいな」
蘭子たちが座っているソファーの後ろで、まゆちゃんと笑美が興味深そうに画面を見つめている
「あ、部屋から出てきたってことは・・・」
「はい、明日の準備は終わりました。響子ちゃん、色々とアドバイスありがとうございます」
「いえいえ。プロデューサーさん、喜んでくれるといいね」
「そんな、まゆ恥ずかしい・・・」
まゆちゃんもチョコレートを渡す準備をしていたのか、響子に諭されてテレテレと頬を赤く染めていた
「周子はん。ほらほら、そんな恥ずかしがらんと」
「い、いいってば紗枝はん。わざわざ見せに来なくたって・・・」
そんなやりとりが聞こえるとリビングの扉が開き、着物姿の紗枝と周子が姿を現す
「あら、周子さん。とってもお綺麗です」
「やめてよ〜ゆかりちゃん。あんまりこういうカッコしないからさー、似合わないでしょしゅーこちゃんには」
「零次さんどう思います?」
俺に振るのか
「あー、なんだ・・・いいんじゃないのか?普段と全然イメージ違うっていうか。立派な京娘って感じで。似合ってると思うけどな俺は」
「や、やめて・・・ってばぁ・・・えへへっ」
手を前に出して必死に顔を隠していた周子だったが、その口元はほんの少し照れたように笑っていた
「零次サン、もっと素直に褒めてやったらどうだ?嫁に来てくれ!ってくらい言えばいいんじゃないの〜?」
案の定、涼が突っ込んできた
また火種になりかねない
「言わんてそんなの」
「零次さん・・・ああいう感じが好み・・・なの?」
「着物は私もあまり着たことがありません。今から準備するとなると・・・着るのは夏頃・・・」
「えっ、ゆかりちゃん着物買うの?」
ほら見てみろ、真面目に捉えそうな奴らが突っ掛かってくるんだから
とりあえず小梅の誤解を解いてゲームに戻ると、そろそろ脱がせてほしいと周子が真面目に紗枝に頼み込み始めたので、二人は一旦退室していった
「キーピック・・・いい響きですね。鍵が無くても開けられるっていうのが便利そう」
「まゆ、犯罪だけは堪忍やで」
「これでここのアイテムは全部取ったんじゃないか蘭子。後は戻るだけだ」
飛鳥にそう言われ、蘭子も来た道を戻っていく
しかし、普段そういう物を避けてきたという蘭子にはこの先の''お約束''という展開が理解できていないようだ
歩きやすいように道筋にいる敵は片付けておいたため、蘭子も安心しきった表情でプレイを進めていく
「よしよし!後はこの扉を開き、我が同胞の元へ戻るだk」
ドシンッ!!と、突然今まで何事もなく通り過ぎていた道路の上から大男が舞い降りて、重い足音を響かせて蘭子へと迫ってくる
「いやぁぁぁぁ!!!ダメェェー!!飛鳥ちゃんやってぇぇぇ!!!!」
「ちょ、ちょっと蘭子!ま、まてっ!あいつロケット砲みたいなの持ってないか!?」
「とりあえず逃げるにゃあ!!」
「あっはっは!面白いゲームやなぁこれ。・・・そういえば零次さん」
「ん?」
笑美が唐突に尋ねてくる
「今日は泊まってくんやろ?」
「は?いやいやそれはいくらなんでもダメだろ。帰る帰る、帰るぞ」
「でももうこんな時間やで?」
笑美が壁に掛けられていた時計を指差す
マジか、気付いたらもう11時を回っていた
「消灯は10時だけど、寮母さんが気を使ってリビングの電気はつけといてくれたんや。玄関の鍵も閉めてしまったし、寮母さんも泊まっていくん思ってたって言うとったで?」
・・・どれだけ俺は信頼されてるんだ
まぁ、周りの状況を見て言ったんだと思うが
「まぁ、出るだけなら裏口から出れるからいいんやけども」
「ぼちぼち合間見て帰るさ。こいつらにも悪いし」
「そうか、私は別にどっちええやけどもここまできたら。あっ、次私にもやらしてやらして!」
気付いたらこんな時間まで没頭していたのか
こんな風に集まってワイワイゲームするなんて久しぶりだ
「やぁ!これどこ行けばええんや!!誰か教えてくれっ!」
「そこを左に曲がって、次が右にゃ!」
「左ってどっちの左や!!こっちか!?あぁ!操作が上手くいかへん!自分が中に入ったほうが上手く動けるんやけども!」
こいつらといると、ホント退屈しないな