2月の2日。今日は私の誕生日だ。
といっても、あまり代わり映えはない。島の同期のメンバーに祝ってもらって、それくらい。
変わったことといえば、鷹原がその輪に参加したことくらいか。
去年の夏、鷹原が加藤のばあちゃんの遺品整理に来てたことは知っていた。
実際、夏休みの間出会うことは無かったし、帰るその日にすれ違ったくらいだったから、どうせもう会うことは無いと思ってた。
...けど、どうだ?
気がつけば、しろはと仲良くなっていた。どころか、どうやら恋人であると聞かされた。それが去年の冬くらいの話。
もちろん話を聞くだけ聞いて、私は倒れた。自分でも思うがこういう話については本当にうぶだ。
でも、もうそれだけじゃ済まされないような年齢になったってのも、少しは分かってる。
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「...よし。特におかしな所はないな」
誕生日会が終わったあと、私は鉄塔に登って宛もなく島全体を見渡した。光は少ないが、代わりに頭上にはいっぱいの星が広がっている。そんなここでの光景が、私は好きだ。
なんて、気を抜いた瞬間のこと。
「っくし! ...しかし、流石にこの時期はな」
私は思わずくしゃみをしてしまった。
なんたって寒い。結構着込んでいても、海風の影響もあってかこの島の冬は寒い。
ふと吹いた風の冷たさに目をつぶる。やがて風が止んだところで目を開けると、少し遠くの田舎道に鷹原としろはが手を繋いで歩いているのを見かけた。
「やっぱりあの二人か...。まあ、今日は土曜だし、鷹原も泊まっていくんだろう...。...あれ? でもあの方角に進んでくと確か...」
鷹原の家だったような...。
そう言おうとした瞬間に私の顔はかぁーっと真っ赤に染った。それと同時に、それが何を意味するのか瞬時に理解する。
ま、まさかしろはとお泊まりというやつか!? いくら彼氏彼女とは言ったって、そこまでの関係に発展してるなんて知らなかったぞ!? しかも...しかもそれを自分の誕生日に見せつけられる私ってどうなんだ!?
「すぅぅ......はぁ」
1度深い呼吸をして、冷静さをどうにかして取り戻す。多少顔はまだ熱いが、心が冷めれば次第に熱も冷めていくだろう。
冷め...冷め...。
ダメだった。どうしても心の方が冷めない。自信が急いでいる訳でもないのに、あの二人を見ていると何故かもやもやして仕方がなかった。
元々しろはは、ああやってよく笑うやつでは無かった。私たちと距離を置いているわけでもなかったけど、どうしても越えられない線があった。一緒にいるのに、友達とわかっているのに、みんなその線が越えられないままでここまで成長した。
そんな時、鷹原がサラッと現れてみては、すぐにしろはの心を射止めた。詳しく、何があったかは誰も知らず教えられず。ただ、しろはがよく笑うようになったという事実だけが目の前に存在している。
実際、それを変に追求する必要は無いと思ってる。しろはが幸せならそれでいいし、幸せに出来るのなら鷹原を応援してやりたい。...でも、もう少しすれば、私たちはみんな大人になるのだ。その将来に恋愛がどう付きまとうのか、私には分からない。
だからこそ、思う。
「鷹原は...この先、どうするんだろうな」
「高校卒業したらそのままこっちに移り住むって聞いたぜ?」
「やっぱりそうか...え、ひゃあ!?」
鉄塔の下の方から聞こえてきた声に、私は思わず飛び上がってしまった。そして恐る恐る下を見るとどこか似合わなそうな革ジャンを着た良一が立っているのが見えた。
「なな、なんだ。良一か...」
「おう、良一さんだぞ。というか、やっぱりここに居るんだな」
「当然だろ」
「...ったく、今日くらいは休んだっていいんじゃねえのか? こんな寒い中毎日毎日ここにいると、いつ風邪ひいてもおかしくないぞ?」
良一が少し心配そうにこちらを見上げる。
その気持ちは少しありがたかったが、何も私は使命感だけでここに来ているわけじゃない。だからこそ、その心配は無用だった。
「いいんだ、別に。...それに、ここに来ると気分が落ち着いてな。家で休むよりもこっちの方が休めるかもしれない」
「本当かよ....」
「すまん、半分嘘だ」
私は少しバクついている心を押さえつけるために、無理に笑って見せた。けれどどうしてか良一の表情は変わる気配はない。流石に少し焦りを覚える。
「...どうした?」
「ん? ああ。そう言えば俺達が高校生でいるのも、あと1年とちょいしかないんだなって思ってさ。そう考えると、なんか1秒1秒が愛しく思えないか?」
「なんだいきなりそんなこと。ここにきて進路の話か?」
「別にそういうわけじゃねーよ。...ま、一旦降りたらどうだ。それにもうこんな時間だし、これ以上はいいんじゃねーの?」
良一に促されて時計を確認してみる。どうやらいつもより長い時間鉄塔の上にいたようだ。
さすがに不審なものも感じられないので、鉄塔から降りて良一の真正面に立つ。けれど、その視線までは合わせないでおいた。今視線を合わせたら...なぜだろう、きっと動揺してしまう気がしたから。
私が鉄塔から下りると、良一は気まずそうに尋ねてきた。
「...なあ、のみきって、恋愛って興味あるか?」
「...は? 本当にどうしたんだ?」
「別に何もねーよ。...ただ、最近の羽依里としろはを見てて、ああいうの、ちょっといいななんて思ってしまうんだよ。...そういうこと、お前にはあるのか?」
こんな時に、また恋愛の話だ。
良一だってわかってるはずなのに。私が、こういった話に弱いことくらい。聞くだけ聞いてすぐに赤面ダウンすることくらい。
けど、何故かやめろとは言えなかった。
別に良一の口からなにか聞き出したいわけでもなかった。自分の恥ずかしさがない訳でも無い。けれど、NOは自ずと選択肢から消えていった。
ああ、でも一つだけ理由があるとするのなら。
「...ある、んだと思う。ああいうのが、羨ましいなって。...でも、私には関係の無い事だ。さ、帰ろ帰ろ。これ以上は帰り道も暗くなるぞ」
私はどうにかしてこの場を切り抜けようと御託を並べて取り繕おうとした。
そうして振り向く。そのまま一歩足を踏み出そうとした瞬間、私の方に手がかかった。
「...待ってくれ」
「なんだ、なんなんだ本当に。ちょっと待ってくれ、本当にどうしたんだ?」
何故か、今日の良一はいつもと違う。誰が見てもそう思えるほど、今日の良一の様子はおかしい。なにか熱にでもうなされているのだろうか?
それが恋にまつわることだと認めたくない私は、そう嘯くしかなかった。
私は振り返らない。でも、手をかける良一を振りほどくこともしないまま、次の言葉を待った。
やがて、良一の口から言葉が発せられる。それは、私が今1番欲しくない言葉だった。
「...のみき、付き合ってくれ」
そう言えばこの垢、学校で垢バレしてるんですよね。
だからといってどうということはないです。
趣味に全力を費やすことに恥を覚えるやつにバカにされたくないです。
だから今日も書くのみです