のみき&良一誕生日SS これからの道   作:白羽凪

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のみきside #3

「...え?」

自分でもよくわからない声だった。

何故だろうか。あの流れなら告白以外何も無いんだろうと分かってたのに、そうとわかって私は、何も感じなかった。

 

本当は恥ずかしいはずなのに、何も湧いてこない。

 

...なるほど、私、本当に何も知らないんだ。

 

 

「ずっとこのまま、友達としての関係でもいい、俺はずっとそう思ってた。...けど、羽依里が来て、しろはが変わって、誕生日が来てまたひとつ大きくなって大人に近づいて、俺もそろそろ踏み出さなきゃダメなんだって、思わないわけないだろ...!」

拳を握っている良一は心無しか震えていた。私は何も言えないままただその言葉の続きを聞く。

 

 

「いきなりこんなことを言い出して、悪いと思ってる。...けど、それでも俺は、お前が...野村美希って女の子が好きなんだよ」

「...あ」

 

ようやく自分の心の整理が追いついてきた。

だからこそ、目の前の良一に何か返さなければならない。例えそれはyes、noで無くても。

 

「そ、それは、しろはを思ってた時の気持ちとは違うのか...?」

「ああ、違う」

「あぅ...」

 

ここに来てようやく恥ずかしいという感情が体を支配する。けど、今ここで逃げ出してしまったら私は...。

 

...私は、もうこれまでのようにはいられなくなる。それだけは嫌だった。

 

「...大人になるって、やっぱり分からないから。だからせめて、俺は自分の未来にのみきがいて欲しいんだよ」

「そ、それは島の人の1人というのではダメなのか?」

「じゃなきゃ告白なんてしねーよ。...それに、俺が将来ずっと島に残っているかどうかさえも分からねえんだし」

「...島を出るつもりなのか?」

「分からねえって言ってるだろ」

 

お互い不器用なのか、真っ直ぐな会話すら成り立たない。

それどころかモヤモヤは増すばかりで。考えたら考える分だけ難しい沼に足を踏み入れてしまっているみたいで。

 

未来、恋。

大人になるって、こんなに苦しいものだったなんて。

ただの誕生日だと思ってたのに、...もう、そんなことも言ってられないんだ。

 

...もし、それが、恋が1番の原因だなんていうなら私は...。

 

 

「...ない」

「は?」

 

 

「大人になんて...なりたくない...!」

 

 

私はその場を走って家に向かった。後ろから何度も良一の声が聞こえたが、振り返ることはしなかった。できなかった。

今良一の顔を見てしまったら、わけもわからず泣き出しそうで。

 

ただ今は涙を流さないようにひたすらに夜の冷たい風をきって自分の家へと走った。

 

 

 

 

---

 

 

部屋に帰って、倒れるようにベッドに寝転んで、私は顔を枕に埋めてたださっきのことを思い出していた。

 

「...逃げちゃダメだって、分かってたのにな...」

力なくぽしょりと呟いた。でもこれで、私はきっとこれまでのようなただ何も感じないまま楽しいと思えていた日々は過ごせなくなるだろう。

今は別にそれはどうでもよかった。自業自得だって分かってるから。

...でも、これも...

 

 

「大人になるって...こういうこと?」

さっき声に出したことをもう一度復唱する。

大人になるって...こんなに辛いものだったんだ。

これまで過ごしてきた子供時代のようにただ無心で楽しいと思える生活はこれからどんどん無くなっていく。

気がつけば、何が楽しかったかさえも忘れてしまうんじゃないだろうか...?

 

「...やっぱり、嫌だ」

答えは変わらない。

 

「そうじゃない」と自分に言い聞かせてもいつまでも心は晴れない。

 

 

...これも、恋のせい?

 

 

思考をめぐらせ、何度も何度も考える。

それでも答えは出ない。私はもう私自身がわからなくなっていた。

 

 

「...分からないよ、良一」

 

そんな気持ち悪さを紛らさせたかったのか、私は瞑目してそのまま眠りについた。

結局、難しいことなしで私が良一の事をどう思ってるか考えることも出来ないまま、私の意識は深く深く落ちていった。

 

 

 

 

---

 

 

 

それからまた次の週に入ったが、私は良一の近くにいることすらできなくなっていた。私は無意識のうちに良一を遠ざけていた。

 

向こうもそれに気づいているみたいで、何度か目配せしてくるその視線が、とても悲しかった。

でも、何も分からない。何も出来ない。

ただ、楽しいはずの毎日に良一がいない。

それが寂しいことだけは胸に刻まれていった。

 

 

おかしいな、突き放してしまったのは私の方なのに。

 

 

 

 

そんな感じで日はどんどん進んでいった。

1日、また1日。気がつけばまた次の週末になろうとしていた。

 

そんな金曜日のこと。

 

 

学校からの帰りの船、窓側の席に座り、肘をついてぼんやりと窓から外を眺めていると、私の左側に誰かが立った。そのまま私に声をかける。

 

「ねえ、のみき」

「...ん、なんだ。しろはか」

 

私に声をかけてきたのはしろはだった。その声色はどこか心配そうにしているといった雰囲気を感じる。

 

ああ、やっぱり気づかれてしまうか。

それはそうだろう。あれだけ不自然な関係になって、距離も離れて...、ずっと見てきたみんななら分からないはずがない。

 

けれど、かといって弱さをさらけ出すのも嫌だった。変なプライドがあったのかもしれない。

そんなわけで、私はとにかく平静を装ってしろはに答えた。

 

 

 

「どうした、何か用か?」

「...うん、ちょっと」

 

しろはは何か言いたげだったが、同時に躊躇っていたのだろう、口ごもっていた。

けれど、そんなのも一瞬。しろはは覚悟を決めて私の目を真っ直ぐ見つめた。

 

 

 

 

「...のみき、話があるの。後で時間、いい?」

私はうんとうなづくしか無かった。

 




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