のみき&良一誕生日SS これからの道   作:白羽凪

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間に合え...


のみきside #4

「それで、急にどうしたんだ?」

船から降りてすぐ、私としろはは港から外れた方に歩いていった。ちょうど建物の陰に隠れたような場所で私達は足を止めた。

 

「のみき、最近おかしくない? 大丈夫?」

「具体例がないが...、うん、特に何も無いぞ」

 

しろはがなんのことを言っているのかは一瞬でわかった。だからこそ、それに嘘をつく。

 

「ごめん。なんの事かちゃんと言った方がよかったね」

しろはは伝わってないと踏んだのか平謝りをする。そうなってしまった以上、ここで話を引くことは出来ない。

 

...まあ、初めから隠し通せるような仲じゃないしな。

それに、嘘をつくのは苦手だ。

 

「...いや、いい。なんの事くらいかは私自身、分かってるつもりだ。...良一のことだろ?」

しろはは1度短くうんと頷いた。

 

「その...良一は何か言ってたか?」

「いや、何も聞いてないよ。ただ...2人の距離が、ちょっと遠く感じちゃったから、変だなって」

「ははっ、そうだよな。...本当に、変だ」

 

自分を嘲るように乾いた笑いを飛ばす。

それを見ているしろはが、あまりにも心配そうにこちらを見ているものだから、すぐに引っ込めたけど。

 

...ずっと、わからないまま、か。

 

でも、そうか。目の前にいるのはしろはだ。

その...パートナーとして鷹原がいる訳だし...そう考えれば人生の先輩にあたる...のかな?

 

「...なあ、しろは」

「うん?」

「しろはは...鷹原と付き合ってて、何を思うんだ?」

「......は?」

 

しろはは目を丸くして、しばらく呆気にとられていた。やがてその焦点が定まると、今度は頬を少し赤らめる。

 

「な、何って...、どう答えればいいの? これ」

「悪い。私にもよく分からない。...ただ、あれだ。しろはは鷹原とこうしていきたい、とかそういう要望があるのかなと思っただけだ」

「そう...いうやつね...」

 

しろははうーんと悩んで、浮かんできた言葉を一つ一つ口にした。

 

「その...、ずっといたい、とか、将来がどうこう...とか、そういうのは何も考えてないよ。羽依里とは、今一緒にいたい、って思って一緒にいるだけだよ。...考えたって未来のことなんてわからないんだから、...せめて2人で、今を歩きたいなって。...待って、今のなし...!」

「...そうだよな。...そうだよな! そんなこと考えたって、結局未来なんて分かりやしないんだ」

 

しろはに言われて気がついた。

いくら大人になっていってると言っても、私はまだ子供だ。

恋愛の酸いも甘いもしらないし、将来のことも知らない。

でも、恋愛が大人のものだって、いったいいつ、誰が決めたんだろうか。

 

そんな当たり前のことさえ、私は考えれていなかったんだな。

 

なら...もういいか。

しろはになら、ちゃんと打ち明けれるから。

 

 

「...なあ、しろは。聞いてくれないか?」

「う、うん...? いいけど...」

1人でカーッとなっていたしろはは、私に話を振られると平常の表情でこちらを向き直した。

 

 

 

「その...良一に、...こ、告白、されたんだ....」

 

 

 

 

しろはは、一瞬だけ無言になり、うんと頷いて顔を上げた。

そして、笑った。

 

「うん、だと思ってた。じゃなきゃ、こんなに悩んだりしないよね、のみきは」

「そんなことはない。私だって...強くはないからな」

 

言って気が楽になったのか、私は少し心の底から笑えた。

胸にあったつっかえが、どこか外れるような感覚を体が覚える。

 

今なら、自分の気持ちもわかるかもしれない。

 

「...それでな、告白されたのはい、いいとして...」

「なんて答えればいいか分からないんだね?」

「そうだな」

 

もし受けたらどうなるか、断ったらどうなるか、そうした未来しか見えなくて、考えるのが嫌になる。

将来なんて、分からないはずなのに。

 

 

そんな葛藤を抱いていると、しろはは私の肩を正面からポンと叩いた。

 

「...ならさ、のみきの気持ちを教えて欲しいな」

「私の...気持ち?」

「うん」

 

しろはは優しい目を私に向けた。そこにはどこか母のような温かさを感じる。

 

「のみきはさ、良一の事、どう思ってるの?」

「それって...」

 

「うん。簡単な話だよ。のみきが今、良一のことが好きなのか、そうじゃないのか。...私が羽依里と一緒に理由、さっき話したよね。簡単な話なんだよ。私は、羽依里が好きだから、一緒にいるの。未来なんてわからないから、今一緒にいたいから。それだけなんだよ。...だから、のみきもそうなんじゃないかな」

「あっ...」

 

 

私が、良一をどう思っているか。

告白されてから、1度もそんなこと考えれなかった。

しろはに言われて初めて分かった。

 

私は...良一が...

 

 

 

---

 

 

小学校の頃から、私たちはずっと一緒にいた。

そんな中で、1人大人しそうな少年がいた。

...私は、そいつがその時から気になっていた。

 

気がつけば、もう高校生になっていた。

私達はそれでも一緒にいた。人がだんだん変わろうと、それでもみんな互いを受けいれて。

そんな中、1番変わったのは良一だった。

観光客の迷惑になるくらい夏場はすぐに脱ぐし、何を持ってかHな本は天善のところにもっていくし...。

それでも、人一倍優しい、それだけは変わらなかった。

 

あいつは...妹思いで、他人に優しくて、馬鹿で、ドジで、それが可愛くて、結局放っておけなくて。

 

 

...だから、私は良一が...

 

 

 

 

 

私は、三谷良一が、好きなんだ。

 

 

 

---

 

私の告白を受けて、しろははさっきより優しく微笑んだ。

「...ね、簡単でしょ?」

「...ああ、そうだな。なんでこんなに悩んでたんだろうな」

 

気がつけばあたりは夕焼けに染っていた。どうやら随分と長いこと話していたみたいだ。

冬の空気はまだ冷たい。けれど、私はどこか温かさを感じていた。

 

「...ねえ、のみき」

「なんだ?」

「明日は、良一の誕生日だね」

 

そういえば...もうそんな時期だったか。

 

「そうだな。ちょうど私の一週間後だ。鷹原は来るのか?」

「勿論来ると思う」

「そうか...。...なあ、しろは」

「ん?」

 

ずっと悩んで、答えを得た。

だから、私は...。

 

 

 

 

 

 

 

「明日さ、良一に伝える。私の気持ち」

私は、心の底から笑った。

 




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