---良一side---
2月9日。今日は一応俺の誕生日と言う訳だが...。
非常に気まずい。まー、仕方ないわな。
先週土曜。俺はのみきに告白した。
なにか焦ったんだろうか。せっかくの誕生日を台無しにする感じでの告白だった分、今では少し後悔してる。
...いや、焦りだったな。
誰かが悪い、とかじゃないが...、羽依里としろはが仲良くしてるのをみて、きっと羨ましいと思っちまったんだろう。
ただ、別にあの二人を追っかけたかったわけじゃない。そんなんで好きな気持ちが湧くわけなんてない。
...俺は本当に、いつからかのみきの事が好きになってたんだ。
その口実に誕生日を使うって...まあ、最悪だわな。
結局それからのみきからの返事はないし、距離も掴めない。受けるべき当然の罰といえばそうかもしれないな。
そうして、日付は俺の誕生日になったわけだ。
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誕生日会はいつも通りだった。
しろはのところの食堂を貸切にしてもらえるのはありがたいけど、随分と慣れてしまったことに申し訳なさを感じる。
まあ、そんな感じで時間は過ぎていく。そんな中で、羽依里がこっちに寄ってきた。なにやら話したそうにしてるので2人で外に出ることにした。
「よお、どうしたんだ?」
「お前、のみきと何かあったのか?」
「早速かよ...」
羽依里ももう随分と島の人間のことが分かってきたみたいで、俺とのみきのぎこちなさにすぐ気づいたようだ。
「まーいい。どうせ気づかれると思ってたしな。簡単な話だよ、俺がのみきに告白した。そんだけ」
「え、おい。急じゃないか?」
「自分でも思う」
呆れ笑いをひとつ浮かべて、俺は近くの電柱に背を持たれさせた。
でも、心の底から笑えるほど、俺の心は穏やかじゃない。
「...なぁ、羽依里。お前はさ、しろはといてどう思ってるんだ?」
「どう思うって...よくわかんないこと言うんだな、お前」
「一応恋愛の先輩だからな、聞きたいんだよ、色々と」
羽依里は難しい顔をすることなく答えた。
「そっか...。まあ、特に難しいことは考えてない。俺はしろはが好きだから、しろはといて楽しいから、隣にいたいから付き合ってる。そんな簡単な理由じゃいけないのか?」
「いや、全然いいんじゃねえの?」
「聞いてきた割には他人事だな」
「別にそういうわけじゃねえけどな。...俺の選択が、焦りすぎだったのかなって考えちまうんだよ。それでのみきを傷つけることになってたら、さすがに男として恥ずかしいだろ?」
告白したことに後悔はない。
けど、それが傍から見てただの焦りだったらと考えると躊躇ってしまう。
「...なあ羽依里、俺のこの選択って間違えてたかな?」
「告白したことか?」
「まあな」
「そうだな...。聞くけど、お前は本当にのみきのことが好きなんだな?」
「ああ、間違いねえよ。...こんだけ長いこといて、ここまで胸が痛いのは初めてだ」
俺はぎゅっと唇を噛んだ。そのまま真剣な眼差しを羽依里に向ける。
「じゃあ、いいんじゃねえの? 俺もそんなもんだったし。それにお前、将来がどうとか、進路がどうとか考えてるんだろ?」
「それはそうだな」
「いらないんだよそんな事。恋なんて好きなのかそうじゃないかだけだろ。お前が好きで告白したら、それでいいんじゃねえの? 似合わないぞ、そんな思い詰める顔は」
「だよな...。すぅぅ...」
俺は1度深く呼吸をして、思い切り来ている服の1番内側に手をかけた。そしてそのまま上に引きあげる。
「羽依里! 掛け声くれ!」
「あ、ああ! ...裸祭り!!んんーー」
「パーーーーージ!!!」
俺が上裸になった瞬間、食堂の窓から、いつもの鋭い水弾が俺の体を撃ち抜いた。
「いってぇ!!!?」
「海水浴場外での上裸は禁止されている! というか、こんな真冬にするな馬鹿! 風邪でも引いたらどうするんだ! 急いで服を着ろ!!」
「羽依里? 後で覚えててね?」
中から罵声と冷たい声が聞こえる。俺たちは肝と体を冷やしながら食堂に戻った。
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誕生日会が終わり、俺はぶらぶらと島を歩いた。
が、何故かのその足は鉄塔に向かっていた。
鉄塔にたどり着く。見上げるとやはりのみきがそこにいた。
「あっ...」
のみきは俺を見るなり、少し顔を赤らめながら鉄塔をおりてきた。けれど、逃げる様子はない。
次第に距離が近づいてくる。その距離が人2人分空いた時、のみきが口を開いた。
「な、なんだ。またここに来たのか?」
「ま、まあな。ただの散歩」
互いに声が上ずる。それに先に吹き出したのは俺だった。
「ぷっ」
「何がおかしい?」
「いやー...俺も不器用なもんだな。2人きりになっちまうとどうも心が落ち着かねえ」
「本当だ。...全く、前もそうだったよな」
「悪い悪い。...なあ、のみき。少しいいか?」
「だめだ」
「は?」
のみきは腕を組んで、ふんっと鼻を鳴らした。
その後、少しもじもじしながらはっきりと言葉を紡ぐ。
「その...な。この間、答えを返せなかったからな。...ちゃんと言っておこうと思う」
「お、おう...?」
「その...私は、三谷良一という人間が好きだ。...恋愛なんてまだよく分からないが、付き合って欲しい」
その答えは、あっさりと帰ってきた。
だからこそ、何も言葉が出ない。リアクションもできない。
ただ1つ、言えることがあるとすれば...。
「待ってくれ。そのー...先週は、ろくに言えなかったからな。先に言わせてくれ」
「そうだ。あとひとつ。今日、ちゃんち言えてなかったことがある」
声が被ったが、そのまま互いの言葉が交わされる。
「「のみき(良一)、誕生日おめでとう」」
ここまでご愛読ありtとうございました。