もこたん→青ニート←その他大勢   作:へか帝

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 この作品の登場人物はヤンデレとは少し違うかなーと思ってヤンデレタグは付けてないんですよね。言うほど病んでもデレてもいないし。

 ギラつく大きな感情デレとか、にじみ出る執着心デレとか、抑えきれぬ独占欲デレとか、迸る母性デレとか、そういうんです。


屋台

 

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「食い物の感想くらい素直に言えねえのか」

これ位のほうが気兼ねなくて好きなのよー

 

 うなぎの串焼きを頬張ってご満悦といった風に舌鼓を打つヘカーティアの笑顔を見やりつつ、俺は彼女の意味不明な言語に付き合っていた。

 

 俺はこの黄色い女神の案内に従って連なるように進み、森を抜けた先で俺たちは一軒の屋台を見つけた。せっかくの機会だと思い、積もる話もあるかと俺のおごりで屋台へと寄っていた。

 

 しかしいくら村に近い場所とはいえ、こんな村はずれの夜道に営業とは酔狂な店主だ。ひょっとすると店主は何らかの怪物かもしれないが、それでもわざわざ好き好んで人も襲わずに屋台を引くような奴だ。

 

悪いようにはされんだろうという打算があった。そうでなくとも、相手はヘカーティアと不死者の俺。大事にはなるまい。

 

 もっとも、せっかくの屋台でも俺はとっくに飲み食いのできない体。だから食事をしているのはヘカーティアだけだった。きっと食欲をそそるうなぎとたれの香りが辺りに広がっているのだろうが、それも俺にはわからない。

 代金は旅の途中、妹紅と別れるときに折半した路銀から賄える。どうせ俺は宿にも泊まらん。手放すにはいい機会だった。

 

 しかし、窮地を脱する手助けをしてもらった礼としてこの屋台に来たわけだが、この月の女神は話が通じない。人選を完全に誤った。同一人物なのに。いや、同三人物か? わけがわからなくなるな。

 

 けれどもこちらから掛けた言葉はしっかりと理解しているようで、後日ヘカーティアと話すと前に話した内容が確かに通じていたのがわかる。

 こうしてみるとヘカーティア側からの発言が意味不明なだけで、一方通行ながらも意思の疎通は成功しているわけだな。言葉は通じるのに会話不可能という奇妙な状態だ。

 

 唐突に暴れ出したりしない以上、気が触れているわけでもないらしい。とはいえ、やはりどこかで回路がバグっているのは間違いないだろう。

 まあ、俺もこのけったいな風体の女神とは知り合って長い。

 

引き裂かれたおにぎり

「……。あー。店主、米がほしいってよ」

 

 度合いにもよるが、こうしてこの黄色い女神の意図を汲めるときもある。今のはかなりわかりやすかった。

 

空を飛ぶ為の培養を行う為に一度半輝する度に四度回転する鶴を裂く為の壺中の裏側に表出させる為に空を飛ぶ為に行う培養する為の一二回回転する度に8℃反転する為の燐

 ──あ、ちょうちょ」

「……んなもん飛んでねぇぞ」

 

 そしてこれは全く意味がわからないパターンのものだ。

 流暢に妙な言葉を並びたてていたヘカーティアが、唐突にそれを中断して明後日の方向を見る。釣られて俺も視線の先を見てみたが、夜の闇が広がっているだけ。

 

 店主のヘカーティアを見る怪訝な視線が、他人のことながら痛い。中途半端に意味の通る発言をするせいで頭がおかしくなりそうだ。

 しかし、わざわざ口にした以上、彼女にとっては何らかの意味がある言葉……のはず。本当にそうなのか? わからん。

 やっぱり気が触れているのかもしれない。そう思って視線を戻しかけ──思わず二度見した。

 

 ヘカーティアの視線の奥。それは先ほどまで滞在していた森の、遠い空の上に見えた。その正体を確認するためおそるおそる遠眼鏡を取り出して覗いてみる

 ──三対六枚の、空を覆う純白の翼。

 

 そっと指の『幻肢の指輪』が嵌めたままであることを確認する。大丈夫、この指輪を装備していれば大丈夫だ。

 遠眼鏡のレンズの向こうに見えたのは、翼を展開した神綺の姿。彼女は未だに俺を探していた。

 

 あの魔界神の種族は俺も知らない。やれ熾天使だの堕天使だの魔界で噂されていたが、真相は謎に包まれている。無限の広さを内包する魔界をゼロから創造するほどの力の持ち主だ。正体など想像もつかない。

 

 その彼女が大仰な翼を展開してまで俺を探している。あの調子では一度どこかで顔を合わせない限りは魔界に帰ることはないだろう。だが今は会うべき時ではない。あの物騒な拘束具の世話になるのは御免被る。

 

 さて、気を取り直して。

 今相手にすべきは魔界の主ではなく、女将が差し出した山盛りのお米が盛られた茶碗をご機嫌に受け取る三界の支配者の方である。

 

 この日本からみて異邦の女神とは、ずっと近すぎず遠すぎず、そして持ちつ持たれつつの程よい距離感の付き合いを続けられている。今となっては、この女神がこの世界で一番の顔馴染みになる。

 こいつと同じ時節に知り合った奴らももちろんいるが、そいつらは皆死ぬか消えるかしてこの世を去っていった。

 かつての世界が終わり、俺がふとこの世界に降り立っていたように、この女神も気づけばそこに居た。

 案外、俺を除けばこいつが世界で一番古い存在かもな。

 

 そもそもとして、俺の扱う無数の魔術と信仰から生まれる奇跡、そして罪の炎たる呪術は彼女の権能の範疇に収まるらしく、それらは彼女にとってとても良い方向に働くため、ただ俺が存在すること自体が彼女にとって大変好ましいそうだ。

 

 これについては他者の信仰が存在証明の通貨となる神々にしかわからん感覚だ。何度か本人から熱弁されたが、未だにピンとこない。

 

 さてヘカーティアはその由緒や格式の高さからは信じられない程に話のわかる神だ。たとえば今現在身を寄せているギリシアの系譜についても、ヘカーティアから口伝に聞くだけでも恐ろしいほどに傲慢なド外道たちのエピソードには、本当に枚挙に暇がない。

 

 

 そうした話を聞いているだけでも、俺が偶然に縁を結んだ神がこいつで良かったと何度思ったことか。

 しかし困ったことに、俺が彼女と知り合ってしまったことによる大きな不便も、実はあったりする。

 

 彼女は例え人間に面と向かって侮辱されようとも、即刻首を飛ばしたり地獄に突き落としたりしない程度に有情な女神だ。他の神々が相手ではそれはそれは恐ろしい目に合うだろう。

 

 

 そんな温厚さと良識を兼ね備えた彼女だが、そんな彼女が一発で激昂する逆鱗というものがある。

 これが誰にとっても当て嵌まることなのかは分からないが……俺は、一度だけそれをやらかしたことがある。

 

 

 すなわち──彼女以外の月の神を信仰することである。

 

 

 ■

 

 

 俗にスペルと呼ばれる魔法群には、覚え方が二種類ある。一つがソウルに活版印刷をするように記述を刻み込み、それを自身のソウルに取り込んで使用する方法。

 

 もう一つが、スペルそのものを修行によって完全に記憶、習得する方法。後者は例え不死者にとってさえもかなり時間のかかる悠長な手段だ。

 

 通常の人間が学んだとして、生涯で三つから四つほどが限界。それが生ある人間が時間の許す限り没頭して学べるスペルの数。特別な天才であれば若くしてそれに辿り着き、あるいは超えることもあるだろうが大きく逸脱することはない。

 

 それほどまでに完全な記憶には時間が掛かる。好き好んでそれをやるのは、求道者たる生粋の魔術師や呪術師くらいのものだ。

 

 苦難の道を乗り越えるための武器としてそれらを求める不死者たちにとっては、そんな悠長なことをしている暇も余裕もない。だから不死者の間では、邪道とされるソウルを用いた記憶方法が一般的なのだ。

 

 ただ目的を失って久しい俺にとっては、この悠長な方法とやらは都合がいい。どうせ、やることも無い。師はなくとも、幸いにして教材は各地から集めた無数のスクロールがある。

 

 しかし、いくら時間をかき集めて研鑽を重ねて習得しようとも──いつか忘れる。俺が不死者だからだ。 

 だから、そうなったらまた手持ちの点字聖書や呪術書を引っ張りだしてはせっせと勉強に励むわけだ。

 

 どれを覚えていて、どれを忘れたか。それさえ分からないから、確認するために人気のない場所で片っ端から発動させている。

 

 悲劇は、そのとき起きた。

 奇跡の物語をひとつずつ振り返っていた時のこと。作業が佳境に入った頃だった。  

 

 『暗月の光の剣』という、月の魔術の光を刃に宿す奇跡がある。これはロードランの暗月の神グウィンドリンを信奉する物語。彼に忠を誓い、彼の下で裁きの剣として精力的に活動を続けることで賜ることのできる奇跡だった。

 

 さて。グウィンドリンは月と魔術と裁きの神である。そして、ヘカーティアもまた月と魔術と裁きの神であった。

 世界を異にするこの二柱は、何の因果か、その権能の多くが綺麗に重なっていた。

 

 俺が『暗月の光の剣』を使おうと触媒のタリスマンに祈りを込めた刹那──俺の目前に三色三柱の女神が一斉に出現した。

 

 

 

許さない
 
どうして?
かなしいわ
        

 

 

 女神たちは空間を障子のように突き破り、星の瞬く銀河の穴から上半身を乗り出して現れた。

 

 一人が背後から鈍い金色の鎖を蛇のように絡みつかせて拘束し、一人が俺の手首を掴んでタリスマンを引きちぎり、一人が俺の顔を鷲掴みにして視界を遮りながら、もう片方の手で心臓に五指を突き立て握りしめる。

 

 突然だった。

 俺はわけもわからないままに、それでもなんとか状況を確認しようとした。

 指の隙間から見える景色に意識を集中すると、僅かに外の景色が見える。辺りは顕微鏡のレボルバーを回したように、天地も関係なくぎゅるりと巡っていた。

 

 ヘカーティアが顔を覆う手を解いたとき、初めに目に入ったのは遥か遠方──星の海原に浮かぶ青い星だった。

 俺は月面にいた。

 

 

 

 

 ■ 

 

 

 

 今思い出しても恐ろしい記憶だ。

 長い不死人生色んなことを忘れてきたが、あれは間違いなく五指に入る恐怖体験だったと確信できる。

 

 宇宙の仕組みなんか大して知りもしないが、いくら不死とはいえ生身の人間が月面に立って無事でいられるようには思えない。ヘカーティアの力でなんとかなっているのか、月によく似た別の場所だったのか。詳しいことは本人に訊かないと分からないが、彼女に興味を持っていると誤解されてまた誘拐されるのも恐ろしい。

 俺は彼女の前でこの話はしないようにしていた。

 

 あのとき、俺は眼前の光景に対する驚愕から後ずさりしようとして、後ろに引いた足のかかとが何かにぶつかった。俺の背後には、一脚の黒い椅子が月の白亜のような白い大地に鎮座していた。

 

 強い怒り、深い悲しみ、絡みつくような嫉み。三柱の女神は青い地球を背にしながら、三者三様の表情を浮かべていた。

 三柱の神は、俺を椅子に押し込もうとぐいぐいと身を寄せながら詰問してきた。あの黒い椅子は状況からしてどう考えても普通の椅子ではなく、俺はそれに決して腰かけまいと全力で抵抗しながら事情を説明した。

 

 一瞬『フォース』や『神の怒り』で彼女らを弾き飛ばすことも脳裏をよぎったが、それをしてしまえばいよいよ彼女と敵対し、後戻りができなくなる気がしたので、対話による解決に俺は挑戦した。

 

 不幸な事故であったこと、些細な誤解からすれ違いがあること、俺の短慮を誠心誠意詫びるなど、こちらの考えを決死の覚悟で拙いながらも懸命に伝えた。

 最終的には今後一切ヘカーティア以外の月の神に祈りを捧げないことなどいくつかの約束を交わした末に、俺は元の場所に還してもらうことができた。

 

 果たして、あの黒い椅子に座っていたらどうなっていたのか。ともあれ、今も彼女と変わらずに友人でいられることに感謝である。

 

 そういった事情で俺はもう暗月の奇跡を使うことはできない。使ったらもうどうなるかわからない。

 彼女と領分を同じくする罪の女神ベルカの奇跡も、恐らくアウトだろう。

 

 ベルカの奇跡には数の不利を覆す『因果応報』や『沈黙の禁則』など、他とは一味違う変わり種の奇跡が揃っているのだが、背に腹は代えられまい。

 それに『沈黙の禁則』については後世の聖職者が屈辱と嫉妬をブレンドした後ろめたい『深い沈黙』という闇の奇跡を生み出しているので、そちらで代えが利くだろう。

 

 不安だったのは紫が所持している『青の印』に呼応して救援に駆けつける約定の件だった。あれは暗月誓約がルーツにあるから、ともすればこれもアウトか……と思ったのだが、これに関しては問題なかった。信仰が介在しないからだろうか。まあ問題がないのなら遠慮は必要ないだろう。

 

 さて。黄色い女神様もようやく完食したらしい。結局大したことは話さずじまいだったが、まあ夜の屋台で飯を奢ってやれたしこれで良しとしよう。彼女の満足気な顔を見れば、当初の礼をするという目的も確かに果たせたというものだ。

 銭の入った嚢を丸ごと店主に渡して、屋台を後にする。

 ヘカーティアとは、軽く手を振って別れの挨拶とした。どうせ言葉も通じないしな。 

 

 ふと、空を見る。上空に神綺の姿は見えない。もう安心だろう。

 そう思って隠密用に装備していた指輪たちを外していき、しかし最後のひとつだけが指に吸い付くようにして外れなかった。

 

「これもなあ……」

 

 紺珠、紅玉、月輪の三つが小さく埋め込まれた指輪。『寵愛と加護の指輪』──だったものだ。あえてこれに名を着けるとすれば『三つの星の指輪』とかだろうか。

 

 元来『寵愛と加護の指輪』は、哀れな"抱かれ"の指輪。彼は孤独の中で女神フィナの寵愛を信じ続けた末に手酷く棄てられ、陰惨な末路を辿った。これはその哀れな男が遺したもの。

 孤独に苛まれながらも見出した唯一の希望に縋り、それを追い続けた果てに破滅した彼の生涯は、しばしばこう例えられる。

 

 "炎に向かう蛾のようだ。"

 

 ……とんだ皮肉だ。かつてそう人を嘲っていたのは、他でもない抱かれ自身であったというのに。

 女神フィナは蝶のように移り気で、この指輪にあった寵愛による凄まじい加護の力も喪われて久しい。

 

 そして、俺が持て余していたこの力の無い指輪に目を付けたのが、他でもないヘカーティアであった。

 俺が月に誘拐されたときに交わした約束の一つがこれだ。この指輪を、いついかなるときも身に着けておくこと。彼女が俺を赦す条件にそうした約束が含まれていた。

 

 そもそも本来の『寵愛と加護の指輪』はゲーム中において、その寵愛から一度身に着けると外すときに壊れる……という特性があった。

 すなわちそれは、壊すことでしか外すことができないということを意味している。

 ではこの『三つの星の指輪』の場合はどうか。外せない。そして、壊れもしない。外すことができないのだった。

 事実上の呪いの装備である。しかもこの指輪、どういう効果があるのかよくわからない。

 

 俺が多数所持する特別な指輪群は、同時に装備できる数が四つまでと決まっている。

 『静かに眠る竜印の指輪』などが分かりやすいが、指輪の中に繊細な魔法が丸ごと秘められている。それらの干渉による効果の破綻が発生しない限度が四つだった。

 

 そしてこの『三つの星の指輪』、外せない呪いの装備のくせに、貴重な一枠を占領していやがる。

 約束の品とはいえ、これのせいでよく歯がゆい思いをしたものだ。

 だが、もしも壊すなりして外した場合。

 ひょっとして、ひょっとすると俺はまた月に誘拐されるのではないだろうか。そんな疑念がよぎるので、本気で外そうとしたことはまだない。

 

 

 

 




フォント機能で遊んだ罪をここに告白します。どうしても読みたかったら誤字報告のページで読んでみてね。

忘却の椅子
 ギリシア神話に登場するハデスが自分の妻をNTRにやってきた英雄たちのおしおきに座らせた椅子。これに座っている間はあらゆる記憶を失い、自力では何一つできない痴呆に陥ります。加えて座った部分が椅子と融合し、立ち上がるにはおしりの肉をそぎ落とさないともう立てないみたいです。怖いですね。
 
 へかちゃんは青ニートのこと愛しているのは全時空と全宇宙で自分一人だけで良いと思っているし自分以外の記憶から青ニートが抹消されて自分だけが彼の存在を知っていればいいと思ってるし青ニートが知っている神も自分だけでいいと思ってるけど良識のある神様なのでそんなこと実行しないし口にも出さないのでヤンデレではないです(?)
 
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