もこたん→青ニート←その他大勢   作:へか帝

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 あらすじにタイトル以上のことはなにもないって書いたのにタイトル以上のことが次々と起こってしまうんだぜ!
 青ニートくんなんですぐ女難に遭ってしまうん?


黒い太陽

 日蝕。太陽が月で隠れ、空を照らす光が隠れる事象。それが起きた。

 何十年かの周期で発生する出来事だ。多分、普通なら一回分の人生で見れる回数には限りがあるんだろう。俺は何分死なないんで、だからどうしたという感想しか湧かない。

 ただ、この時代を生きる民衆にとってはそうではない。彼らにとって太陽は絶対だ。太陽は何者にも侵すことのできない揺るぎない存在。日蝕はその認識が崩れ去ってしまう一大事。

 

 言ってしまえば、ただ天体の並びが引き起こすだけの現象だ。そうと知っている者がいないから騒ぎになっているが、次の日になればいつも通りの太陽が昇る。ほんのお祭り騒ぎのようなものだ。俺はそう思って気にも留めていなかった。

 だが、翌日も日蝕は続いた。

 

 こうなると話が変わってくる。異常な事態だ。日蝕は続いても数分間で、日にちを跨いでも継続することはありえない。

 日蝕は翌日もそのまた翌日も続き、遂には太陽が隠れて一週間を超えた。太陽の光は人に届かず、日中にも夜ばかりが続く。

 夜に太陽を隠しているはずの月が昇っているのを見たとき、ようやく俺はこれが皆既日食ではない何かだと確信を持てた。

  

 風穴が空いたように黒い大穴が穿たれた太陽をよく眺めていると分かることがある。

 太陽の前に"何か"がある。そして、それは月ではない。

 

 基本的に受け身の姿勢を貫くのが俺のスタンスだが、それに気づいた妹紅は"何か"の正体に興味津々で、俺は半ば引きずられるように調べを進めることになった。

 最も影響が大きいのは都。そこまで足を運んで訪ねて回れば、どうやら妖怪の仕業であるらしいことがわかった。

 

 伝承の妖怪の名は『空亡』。

 蒼天を漆黒で塗り潰し、お天道様さえも差し置いて天の頂きに君臨する大妖。

 闇を放つ暗黒の太陽の如き姿で大地を睥睨し、大地に燦燦と降り注ぐ宵に捕らわれれば、人も妖も関係なくたちまち惨たらしく喰い殺されてしまうという。

 都でも多くの被害者が出たようだ。往来に人通りはほとんどなく、数少ない通行人は雨も日差しもないのに傘を差して歩いていた。

 

 もちろん、妖怪の退治屋として俺たちにも討伐の話は回ってきた。 

 相手は文句の付けようもない大妖怪。だが、どの退治屋も手をこまねいている。なにせやりようがないのだ。標的の居場所は天空。地上に生きる人間には手の出しようがない。

 

 まあ、そうでなくとも、俺は今回の件に手を出すつもりは毛頭なかった。

 俺たちの目的は世直しでもなければ、退治屋として名を上げることでもない。たとえ不死とて、不用意にリスクを背負う理由はないのだ。

 どうせ、誰かが何とかしてくれるさ。そうでなくとも、時間が解決するだろう。いいね、不死は気楽で。

  

「……そういうわけだから今回の話はナシだ、妹紅。とっととここを離れるぞ」

「うん。それはまあ、いいんだけどさ。……師匠は何をそんなに焦ってるの?」

 

 矢継ぎ早に事情を説明して一刻も早く都を離れようとする俺を、妹紅は怪訝そうに見ていた。

 師匠という呼び方についてだが、呪術を教え始めたことをきっかけに妹紅は俺をそう呼ぶようになった。師匠なんて柄じゃねえが、名前の無い俺を呼ぶには都合が良かったんだろう。だが今はそれどころじゃない。 

 

「昼間はいいんだ、昼間は。昼間なら、奴は太陽を隠す為に空に昇っているからな。でも今は時間が良くない。陽が沈んで夜になればきっとあいつは降りてくる」

 

 聞き取り調査を続けていくうちに、あまり嬉しくない情報が出揃っていた。実を言えば、人々の語る妖怪の話には、過去の経験に心当たりがある。もちろんあんな巨大な闇の球とご対面したのは初めてだが、あの中心には本体がいるはずだ。そして、俺はその本体と知己である可能性が高い。

  

 かつて殺したはずの存在だ。不死でもあるまいし、一度殺したやつが生きてるはずがない。だからきっと空に浮かぶあれも、同系統の能力を持った別の妖怪。そう自分に言い聞かせても、胸騒ぎは止まらなかった。

 

 辺りは昼も夜も同じ薄暗さのため時間感覚がわからなくなるが、今はもう黄昏時も終わりに近い。じきに本当の夜が始まるだろう。被害の多さから見て、この都が件の妖怪の本拠地と見て間違い無い。すなわち、この地は本体と出くわす可能性が一番高い場所だった。 

 

 だから俺は都から離れた郊外でらしくも無く妹紅を熱心に説得しようとしていた。しかし、時間を掛けすぎたらしい。それともここにやって来た時点で手遅れだったか。 

 地平線の向こうで、太陽が"何か"と一緒に完全に沈みきるのが見えた。僅かに漏れていた光さえをも失い、空の闇は一層濃くなっていく。

 そして──陽を覆っていた黒い球だけが地平線から這い上がるのが見えた。

 

「えっ」

「ハ、ハハ。こりゃ見つかったかな……」

 

 素っ頓狂な声を上げる妹紅の横で、俺は観念したようにぼやいた。

 一度空の頂点まで飛び上がった巨大な黒い球体が、地上をまるごと闇で圧し潰すかのような威容で、空から転がり落ちてくる。もしも惑星がひとつ空から落ちてきたなら、きっと同じような景色が見えるだろう。

 狙いを澄ましたのか、その落下地点は俺たちが今いるここ。恐ろしいことに脇目も振らずこちらを目掛けていた。

 

 逃げ場もないので成すすべも無くその球体に呑まれれば、辺りは宵闇に包まれる。空を見ても月の光さえも届かない。

 時を同じくして、怜悧な声が聞こえた。

 

「会いたかったよ。また会えると信じていた」

 

 声のする方を向けば、そこには一人の女の姿。一目見ればすぐこいつが闇の主だと分かる。暗闇に浮かぶようにぽつりと佇む姿は、それこそが異様を見せていた。

 

「……てめぇ、まだくたばってなかったのかよ」

 

 無視をするのも締まりが悪い。仕方がないので吐き捨てるように返事を返した。

 

「この常闇の妖怪が有象無象に殺されるものかよ。お前さえいなければ、八雲如きに後れを取ることもなかった」

 

 女の金髪が暗闇の中で光も無いのに妖しく煌めく。過去に受けた屈辱を滔々と語るその口元は、どういう訳か嬉しそうに歪んでいた。 

 こいつとの対面はこれで二回目。最初の一回は紫を護る守護者としてだった。

 前と同じ姿だ。白黒の洋服を着た、長身の美しい女。首元にある深紅のリボンと双眸が闇の中でよく映えている。

 前回はこいつの正面にそのまま召喚されたから、こいつがあんな黒い球の姿を持っているなんて知る由も無かった。あの時俺は、この黒い球の内側に召喚されていたということらしい。

 

 白い髪と、赤い目。何れか該当する女とは関わるとろくなことにならない。俺の持つジンクスだ。今日からここに金髪も追記しようと思う。

 一目みたときから嫌な予感はしていたんだ。だから二度と出会う事がないようにと願っていたんだが……どうも、効果は無かったらしい。

 さて、そういえば不死に祈る神はいたっけかな。

 

「えーっと、知り合い?」

「昔の話だ。殺しそびれた」

 

 状況が飲み込めず唖然としていた妹紅だったが、ようやく我を取り戻したようだ。

 知り合いかと聞かれれば、確かに知り合いということになる。

 二度と顔を合わせる予定が無かったという点に目を瞑ればな。

 

「いいや、殺されたとも。ただ私が殺されたくらいで死んでやるほど殊勝な妖怪じゃなかっただけのこと」

「化け物め」

 

 でたらめを吹聴しているようで、どうやら事実らしい。こいつは妖怪とは名ばかりの、ほとんど神と遜色のない存在だ。世界の闇が具現した妖怪。怪物の中の怪物。

 

「手厳しいな。聞いたよ。お前だって不死なんだろう? 同じ化け物同士仲良くしようじゃないか」

「やなこった。曲がりなりにも人間だ、俺は」

 

 人間と言い張るには無理があるのは百も承知だが、妖怪連中と一緒くたにされるほど人間を辞めたつもりはない。

 だが、目の前の女は俺の言葉を聞いておかしそうに笑った。

 

「くく、言うじゃないか。そんなおぞましい闇を抱えた人間がどこにいる」

「……闇?そうなの?」

「心当たりはある」

 

 事情を知らない妹紅の問いかけを俺は首肯した。

 俺の種族はまごう事なく人間だが、この世の人間とは少し事情が違う。

 

 火の時代の人間は例外なく最初の火の側でダークソウルを見出した小人の末裔だ。あらゆる生命はソウルを持つが、人間だけが得体の知れない黒いソウルを持つ。

 人間性と呼ばれるこの黒いソウルは作中において大きな影響を及ぼすものの、その正体が明確に説明されることはない。

 

 だが、その正体は世界観を注意深く観察していくことでパズルのピースを嵌め合わせるように少しずつ明らかになっていく。

 

 一例を挙げるなら、黒いソウルを用いた闇術。あらゆる時代と国で禁術とされており、生命を愚弄するおぞましい業と評されつつも闇術に魅入られる者は後を絶たない。人間は皆、根本的に闇を求めている。闇の追求は、俺たちの本能のかなり近い部分に欲求がある。

 けれど、法と秩序が闇に触れることを禁じている。このあたりにきな臭い神の陰謀が見え隠れしているわけだが、それはさておき。

 問題は、先ほどからずっとうっとりとした熱視線を送ってきている闇の妖怪をどうすべきかだ。

 

「時間の許す限りずっと見ていたい。初めて見たあの時からずっと虜なんだ」

「ああ、こいつもそういう感じね、把握した」

 

 熱に浮かされたように語る女を前に、妹紅は謎の察しの良さを発揮して納得していた。何に納得していたのかはわからない。

 

「師匠の知り合いってこんなんばっかだね」

「言うな」

  

 この常闇の妖怪は、どうやら俺の持つダークソウルが大変お気に召したらしい。

 魔女が最初の火に魅入られたように、この妖怪もまた俺のダークソウルに魅入られたということだろうか。まあダークソウルの魅力は俺のご先祖のお墨付きだしな。

 神の時代にもこのダークソウルを巡って相当な悶着があったようだし、闇を統べる妖怪からしてみればそれはそれは垂涎ものなんだろう。いや、それ以上か? これはもう当人にしかわからない領域だな。

 

「私の名前を憶えているか」

「忘れた。殺したやつの名前なんかいちいち覚えてねぇよ。不死だからな、忘れていかないとパンクしちまう」 

「なら改めて名乗ろうか。私の名はルーミア。忘れるたびに脳髄に吹き込んでやるから、心配しなくていい」

「そうかよ」

 

 努めてぶっきらぼうに答える。

 

「あらゆる闇を支配する私の前に、お前はまるで得体の知れない闇を携え唐突に現れたね。私はあの日の出会いを運命だと思っている」

「俺の運命は死なないっつう一点だけしかねぇよ。おままごとなら一人でやっててくれ」

 

 闇の魂を持つ者は俺を残し全員滅び消え去ったと思われる。

 その俺が闇を統べる妖怪と出会ったことを指し、これは運命だとこいつはのたまっている訳だ。確かによっぽどの確率なんだろうが、俺としては知らんがなと一言で済ましたい。

 

 何をしても、何を為しても、最後には振り出しに戻される。あらゆる手を尽くし、その果てにある結果を掴んだ瞬間──何もかもが無かったことになっている。それを幾百と繰り返した。ロードランで時間も忘れるほど繰り返した悪夢のような経験のせいで、俺はもう能動的に行動を起こすことができなくなっていた。

 俺の為の運命は、何一つとして用意されていなかったんだ。過程も結果も、死という栄えある結末さえも。

 今更運命がどうだの言われちゃあ、虫唾が走るね。

 

「闇から生まれた妖怪が暗闇の孤独に寂しさを覚えたと言えば、お前は笑うかい?」

 

 ずっと笑みを絶やさない闇の妖怪の顔色が、自虐的な色に変わった。

 

「私の闇は絶対だ。森羅万象を呑みこむ。天を頂く太陽さえも例外じゃない。万物は闇の下に平等であり、何物であろうと逃れることはできない。ただ、私一人を除いてね」

 

 その力は、連日続いた日蝕を見てよく理解している。妖怪はみな一様に闇に生きる種族であり、太陽は天敵そのもの。その常識を覆して太陽の光を喰らい尽くしたこいつは、埒外の化生だ。

 

「たった一人、闇の中を漂い続けることに恐怖はないよ。でも、どうしようもなく寂しかった。だからお前が来てくれて本当に嬉しかったんだ」

「俺が、同じ闇に生きるべき存在だとでも?」

 

 俺たち闇のソウルを持って生まれた者たちには、宿命のような物があった。

 起こった火はいつか消えるもの。そうなれば必ず闇の時代が訪れる。俺たちダークソウルを持つ人間は、闇の時代でこそ花開く卵を抱えていた。人間は、闇の時代の主役だ。

 残念ながらそれを拒んだ神が、人を騙して封を施し宿命を忘却させたことでその時代は訪れなかったが……。

 この妖怪は、闇の魂を持つ俺は闇の中こそが相応しい舞台と言いたいのだろうか。

  

「一つ勘違いをしているね。私はお前自身に執着してる。魂だけに焦点を当ててるわけじゃないよ。魂ひとつ取っても、今すぐ貪り尽くしたいくらいに魅力的だけどね」

「……師匠、この人に何したの?」

「いや、さっぱりだ。殺したこと以外覚えてねぇ」

 

 どうやら俺の予想は外れたらしい。すると増々分からない。過去に俺がこいつにしたのは、無感動に見下ろすこいつの所まで歩いて行ってぶった斬ったくらいのものだ。

 恨まれるならまだしも、好意的な感情を向けられる理由がわからなかった。

 

「覚えていないか。私にとっては感激的な事件だよ。お前は、私とそれ以外を隔てる深淵を平然と歩いて渡ったんだ。私一人の世界に、お前だけが足を踏み入れることができた」

「……ああ、思い出した。そんなこともあったかもな」

 

 あのとき、召喚された空間が完全な闇に覆われていたから俺は慌ててとある指輪を装備した。

 『アルトリウスの契約』という、特別な指輪だ。深淵を歩いたという逸話を持つ王の騎士の遺品。深淵の魔物との契約の証だった。その効力は、深淵を歩けるようになるというもの。

 

 ただ、この指輪の成り立ちには非常に謎が多い。

 まず深淵狩りの任に就いたアルトリウスは伝説と異なり、深淵を歩くこと叶わず志半ばで正気を失っているし、敵対関係にある深淵の魔物がそのような契約を交わしたとも考えにくい。いや、ここに語られる深淵の魔物というのは出っ歯の蛇の事か……?

 

 だめだ、考えれば考えるほど謎が出てくる。とにかく、この指輪は深淵を歩く力を持っている。それだけは確かだった。

 今も闇の中だが、深淵のように深くない。おそらく加減しているのだろう。

 

「ふふ、酷い男だよ。この世の終わりまで、ずっと一人でいることを覚悟していたのに、突然現れて、ああも断りなく押し倒すなんて」

「師匠?」

「組み伏せて頭をカチ割った」

 

 妹紅から白い目を向けられたが、特にやましいこともないので正直に答える。

 妹紅はそれを聞いて頬を引きつらせていた。

 

「見てくれ。あの日、私の頭蓋を叩き割るのに使ったお前の大剣だ。傷はすぐに癒えてしまうから、代わりにこれをずっと大切にとってある。長く私と共にあったせいでやや意匠が変わってしまったが……」

「こりゃあ……ひでえな。こんな汚されちまって」

 

 女が闇の底から引き抜いたのは、人の背丈ほどある特大剣。刀身の根本は刃を潰しリカッソと呼ばれる握りを拵えてある。名をツヴァイヘンダー。その名の通り、両手で握ることを前提とした超大型の直剣。

 だが、その有り様は俺の手で振るっていたときとは風情が違っていた。鈍い銀色だった刀身は深淵に浸かり、切っ先まで漆黒に染まっている。その全貌は、まるで巨大な黒い十字架のよう。

 

「驚愕したよ。どんな曰くのある聖剣かと思えば、熱した鉄を打っただけの何ら変哲の無い剣じゃないか。これで万古不易の闇の象徴を殺したというのだから、とんだでたらめだ」

「知るかよ。死ぬ方が悪い」

 

 別に特別なことはしてない。斬ったらこいつが死んだだけだ。

 

「それで、結局何の用だ。復讐でもするのかよ?」

「まさか! 殺されたことなんて些末な事。それよりも、私の前から瞬く間に去ってしまったのが悲しかったよ。名前も声もわからないから、この世のどこにいるかもわからない」

 

 剣を抜いたものだから、戦闘の用意かと思って尋ねてみたが見当違いだったようだ。

 

 昔を思い返せば、かつて召喚されたときの俺は青い光で構成された霊体だった。悠長なお喋りなんて出来もしないしする気もなく、背後の紫を一瞥もせずにこいつを殺してとっとと帰ったような記憶がある。

 今日までこいつに見つからずにいたのは、それが幸いしていたらしい。

 

「だからずっと八雲を崩す算段を立てていた。そうすればまたお前に会えると思ったから……。太陽を隠していたのもそれの一環。でも、それももう必要なくなったね」

 

 剣を片手で弄びながら、女は蠱惑的な笑みを浮かべて言った。

 しかしこいつ、俺がひいこら言って両手で振り回した特大剣を片手で棒きれでも振るうように扱ってやがる。姿は人でも中身は完全に人外だな。こういうのを目にすると嫌でも再確認させられる。

 ふと、剣の切っ先を目で追ううちに、期せずしてルーミアと目が合った。獲物を捉えた捕食者のように、妖しく光る赤い瞳がすっと細まる。

 

「覚えたよ。声も、匂いも、その魂も。もう、お前が世界の果てにいようと私はその居場所が手に取るようにわかる」

 

 いかにも粘着質な声色に、思わず顔を顰める。

 

「それで、どうするつもりだ」

「別に? ただ、これからはお前の隣にずっと私がいるだけさ」

「危害を加える気がないんなら勝手にしろ……と言いたいんだが」

 

 妹紅の様子をちらりと窺う。

 

「ん? 私は別に構わないけど」

「おっと」

 

 俺の懸念とは打って変わり、妹紅はあっけからんと答えた。俺の見立てじゃ嫌がるものかと思ったが。 

 

「彼女は旅の道連れか。長い付き合いになるかな」 

「よろしく」

 

 意外にも二人は馬が合うようだ。奇妙な巡り合わせだが、空気が悪くならないというのであれば歓迎だ。妖怪一人連れて歩く旅というのも考え物だが、ルーミアは普通にしていれば人と見分けがつかない。

 出くわした時はどうなることかと思ったが、特段気を揉む必要はなさそうだ。

 

「ところで、再生しない不死なんだって? それってつまり、お前を食えば私と一つになって生き続けるということでいいかな?」

「別に止めないけど、それやるなら生首だけ残してね。そっちの面倒は私がみるから」

 

 ……。

 こいつら置いて明日逃げよう。

 紫は匿ってくれるだろうか。

 

 

 




空亡とは
 百鬼夜行絵巻の最後尾を飾る太陽を、球状の妖怪として捉えた創作妖怪。
 あらゆる妖怪を悉く圧し潰す強大な妖怪として、闇を纏った巨大な球体の姿で描かれる。
 

EXルーミアとは
 ルーミアは暗闇を作り出すだけのごく弱い人食い妖怪。しかし、自分で触れることさえできない赤いリボンを結んでおり、闇を操るといういかにも大物感のある能力を持っていることから、封印されているだけで本来は超強力な妖怪なのでは? という想像から生まれた二次創作の存在。
 本作で登場しているのは封印が施される前の状態。
 
せっかくのダクソクロスだから絡めたかったなどと作者は供述しており

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