FGO主要キャラ全員生存縛りRTA(1部)   作:でち公

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燃え尽きたぜ……真っ白にな……。
灰になったところで初投稿です。



邪竜百年戦争終結

 ジャンヌ・オルタへの死の宣告とともに彼は馬鹿げた速度で彼女へと肉薄する。それに対してジャンヌ・オルタは脳髄をぶち壊されたような歓喜の衝撃を感じるとともに戦闘空間全域を埋め尽くすほどの紫毒の業火を展開する。

 

 されど彼は止まらない。熱波を斬り捨て、猛毒を斬り捨て、業火を斬り捨ててただ愚直にジャンヌ・オルタのみをその蒼き瞳に捉えて突き進む。

 

 ──ああ、そうだ。その瞳だ。その瞳こそが私が焦がれて焦がれ尽くしていたものなのだ。

 

 そんな彼を今独占できているのは私しかいないのだという事実がジャンヌ・オルタの力の格を青天井に跳ね上がらせる。

 

 そして無論、そんな彼女を滅殺すべく彼も己が魂を熱く激しく輝かせて──

 

「「オオオオオオォォッッ──!」」

 

 後はもう言わずもがなと言うやつであろう。

 

 永続する進化と成長、そして覚醒。互いに願いを果たさんがために飽きることなくぶつかり合い、その度に彼等は新たな領域に至らんと限界突破を繰り返し続ける。

 

「───ッ」

 

 その破滅的な光景に立香はもう何も言えなかった。

 

 この特異点での幾度の戦いを経験した彼女でも二人の戦いから感じる衝撃の桁が違った。今まで争い事とは無縁の存在であった立香ですらはっきりと肌で感じる事が出来る殺意と闘志、そして燃焼している命。

 

 そしてジャンヌ・オルタは兎も角、立香にとって大切な幼馴染にして半身とも言える存在の彼は今、その存在が神域へと手を掛け始めていた。

 

 激突する度に大震する空間と焼き尽くされる大地。二人の死闘に巻き込まれたありとあらゆるもの全てが余波だけで崩壊していく。

 

 冗談でも比喩でもなく固有結界の世界が壊れかけていた。

 

 耐えられるのは今もまた進化と成長を繰り返し続ける破綻者である本人達だけ。彼らの闘いを支える世界の方がもはや限界に達している。もうやめてくれと、命乞いをするかのように世界は軋みをあげて断末魔を発しているが──

 

「まだだ、まだこの程度で斃れる事などありはしないッ──!」

 

 当然の様に彼等はお構い無しの躊躇なし。互いに互いしか眼中に在らず。1度決めたからこそ一切揺るがぬ破綻者達のイカれた意思のみで願いをその手に掴むまで彼等は朽ちず止まらず振り返らない。ただ未来のみを目指して踏破し続ける。

 

 その様を見て立香の中に生じた感情は恐怖──なんてものではなく、悔しさと自身に対する怒りのみであった。

 

 彼と一緒に戦うと言ったのに、皆に託されたと言うのに何なのだこの様は。指を銜えて闘いの余波から発生する衝撃からマシュに守られて、ただ大切な彼が命を燃やして戦っている様を安全な場所で見ているだけ。援護しようにも彼等の速度はもはや立香では捉えることが出来ず。だからこそ、何もしてやれることがない。

 

 ──悔しい、悔しい、悔しい! 

 

 血が滲むほど己の拳を強く握り、立香は自身の無力感に打ち震える。そんな彼女を慰めるようにフォウは彼女の肩に上り、流れる涙を舐めとる。

 

 そしてフォウもまた、その瞳に彼等の戦いをその魂に刻みつけるように瞬き一つせずに見つめ続ける。何故なら本能的に理解しているからだ。

 

 ──見逃すな、彼等の美しい魂の輝きを見逃しては決してならぬ。そうだ、だってそれこそが私が、私がやらねばならぬと思ったことなのだから。

 

 そして、そんな彼女と一匹の獣の想いを置き去りにして決戦は続行していく。

 

 即死しかねない致命傷を山ほど叩き込む二人の破綻者達。一人はこの程度で殺られるはずがないと盲目的に、狂信的に信頼しているから。一人は何もかもを踏み潰して踏破した終局の果てに求め続けた願いがあると信じて、必ず殺すと滅殺の意志を込めて咆哮する。

 

「──あぐッ」

 

 そしてまたそれによって徐々に徐々に。

 

「──カハッ」

 

 時間経過に伴って均衡が崩れ始めた。ようやく現れた明確な優劣の差、彼が本格的にジャンヌ・オルタを踏み潰しにかかった。

 

 何故彼が彼女を圧倒し始めたという理由については、別段特別なことは何もない。相性によるものだのそんなややこしいものなどではなく、シンプルな理屈のみが唯一の物差しとして君臨している。

 

 それはどちらがより強いかという、子供のようにシンプルな概念。

 

 より修練を積んできた側へと軍配が上がるというのが彼等にとっての勝利条件であり、そしてそれ故にジャンヌ・オルタは彼に敵わない。

 

 格上相手との戦闘経験という質の差に、繰り返し続けた戦いの数の差という量の問題が現れ始めている。

 

 本来であれば英霊と人間の基礎ポテンシャルの差によってその差を埋められたのかもしれないが、ジークフリート達が決死の覚悟で時間を稼いでくれたお陰でもはや彼の肉体は英霊と比較しても何ら遜色のないものへと仕上がっている。

 

 虚空へ走る無数の斬撃。ジャンヌ・オルタを以てしても捌ききれない斬撃の雨が彼女の肉体を斬り裂いて、彼の体を赤く染めあげる。

 

 それに対してジャンヌ・オルタは歪な笑みを浮かべながらも吼える。

 

「まだよ、まだ私はッ──!」

 

「いいや、お前の滅びは既に観測でき(見え)た」

 

 そう言って蒼い瞳を輝かせながら更に彼は斬撃の速度を上げて滅殺せんと唸りを上げる。ジャンヌ・オルタが上の領域へと至る度に彼はさらにその上の領域へと加速度的に至り、その差は悲しい程に開き始める。

 

 何せ彼は彼女が焦がれてしまったぶっちぎりの破綻者。なればこそ、そういった事に関しては彼は圧倒的なまでに上を行く。故にもうあと一歩届かない。

 

 何とかすべしと気概を吼えても、当然彼も気概を吼えてその差を突き放していく。距離は一切縮まらぬまま、茨道をただ一人で踏破していく焦がれた彼の背を彼女は歯噛みするように睨む。

 

 ──認めない、認めたくない。彼を一人で突き進ませて堪るものか。そのために私はこのような賭けに出たのだから。

 

──全ての邪悪をここに

 

 そして遂に彼女は正真正銘、最後の一撃を繰り出すべくその身に莫大な魔力を集中させる。彼女の周囲に渦巻いていた紫毒の業火もあらゆる悪性の何もかもが彼女の身に飲み込まれていく。

 

 それを見て彼もまた同じように刀身に限界まで魔力を装填する。真エーテルにより蒼く光り輝くバルムンクと反対に終末の滅びの光のように紅く輝く刀。

 

──これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮

 

 渦巻く紫毒の業火と煌めく蒼き瞳。互いに互いを喰らうべく一切合切情け容赦のない破滅の一撃を放つ。

 

──吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロントメント・デュ・ヘイン)

 

 そして遂にジャンヌ・オルタが己の宝具を解放した。戦闘空間全域に広がる紫毒の業火とそして串刺しにせんと天から、大地から大量に生える致死の猛毒を含んだ紫水晶の煉獄の剣が、さながら審判の業火の如き様相を以て彼に襲いかかる。

 

 そしてそれに対して彼は回避するわけでも、防御するわけでもなく、身震いするほどの殲滅の炎を己の瞳に滾らせてその業火の中へと突き進む。

 

 紫毒の業火を斬り伏せ、天から襲いかかる煉獄の剣を撃ち落とし、大地から串刺しにせんと彼に目掛けて殺到する煉獄の剣を恐るべき威力を誇る震脚を以て全てを打ち砕く。

 

「ハ、ハハ」

 

 その姿があまりにも、そうあまりにも眩しくて。初めて会ったあの日と全く変わらない輝く光の意志を纏っているものだから。そしてそんな貴方だったからこそ──

 

「私は──」

 

 遂に彼女の渾身の宝具を突破されて、無数の斬撃が無防備な彼女を襲う。その体に致命傷を負って彼の全身に余すことなくその血飛沫をぶち撒ける。それでも彼女はただ良かったと安心したかのように穏やかな笑みを零した。

 

 もうぴくりとも動かぬ体を地に伏せて、地面を夥しい血で赤く染めあげながらもその胸中は穏やかさに満ちている。

 

 完全に凌駕された事実以上にその胸を埋めるのは協力してくれた者達への感謝とそして己の大願が最後の最後で完全に成就してくれた事による安堵だ。

 

 彼ならきっと私を踏破するのだろうと信じ続けていたからこそ、そしてその信頼通りに彼は私を踏破してくれた。それが何よりも嬉しくて、そしてだからこそ溢れる感謝が止まらない。

 

 この特異点での様々な出会いや自身の願いに賛同してくれた皆に、そして彼とまた会えて心底良かったと思う。

 

 結局こうして敗北してしまったのは悔しくもあるし、残念でもある。だがそれでも自分が考えつく限りの計画を立てて、そしてそれを達成することが出来た。例え、己の体を改造して真に竜になってしまおうともそれに対して悔いなどない。

 

 故にならばもう抵抗するなど無粋だろうと、今まで不屈の意思で立ち上がり続けた彼女は疲れたように全身の力を抜いた。

 

 全力をぶつけて、その上で踏破されたのであればもはや思い残すことも悔いもない。そう納得して、己が辿るべき末路へ視線を向ければ──。

 

 そこには己という邪竜の血で全身を濡らした、決して屈することの無い彼がその蒼い瞳で自分を見つめてくれていたのだから。

 

「ああ、そうね……やっぱり私は、貴方のことを──」

 

 ジークフリートから託されたバルムンクを振りかぶり、討つべき自分を見下ろす決意は微塵も揺らぐことはなく。

 

「──愛してるわ」

 

 さあ、来てくれと万感の想いを込めて告げた瞬間、竜殺しの光輝が墜落してきた。放たれるは、悪竜を殺した竜殺しを象徴する一撃。

 

 世界に轟く蒼き極光は竜の魔女を露と散らせ、激闘は終わる。されど、竜の魔女は消える直前に己は賭けに勝ったのだと不敵に笑う。

 

 様々な想いが交錯し、託し託されてきた尊き意志。きっとそれは彼等にとってかけがえのないものであり、魂の奥深くまで刻み込まれた愛すべき思い出となることだろう。

 

 斯くして第一特異点邪竜百年戦争オルレアンでの出来事は幕を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 >あなたに三件の報告があります。

 >トロフィーを獲得しました。

 

 >邪竜百年戦争を終わらせた者

 >竜の魔女を超越せし者

 >邪竜を討滅せし者

 >限界を超えた者

 >スターチス

 

 >以上のトロフィーを獲得したことにより新たなるスキルを獲得しました。

 

 >不死の肉体

 >竜の魔女の呪い

 >竜の因子

 >毒耐性

 

 >特異点修復により以下のスキルが成長しました。

 >置換呪術D→置換呪術C+

 >治癒魔術C→治癒魔術B

 >神性E-→神性D

 

 >詳細は各自スキル欄をご覧ください。

 >報告を終了致します。




良い最終回だった……(自画自賛)

正直に告白すると当初はこんなトンチキ合戦するつもりはなかったんです。ただいくら序盤のボスと言えどさっくり殺られるのはなんか違うと思って書いてる内にトンチキ化しました。なんでこうなったし。
ちなみに今回のMVPは誰がなんと言おうと二人の戦いを支え続けた玉藻ちゃん。やっぱ良妻賢母は最高やな!

ここからは裏話ですけど邪ンヌの狙いはホモくんに不死性を付与することだったり。そのために竜の血に耐えられるだけの体になってもらわなければいけなかったので苦肉の策でホモくんが自己変生するのを待ってたとかなんとか。呪いはどっちの読みでしょうね。

一章を書き終えたので失踪します。

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