FGO主要キャラ全員生存縛りRTA(1部)   作:でち公

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砂箱に収監されていたので初投稿です。



カリギュラ戦

 ──それは海より現れた。

 

 巨大な水飛沫を上げて海から飛び出してきたのは、この特異点に来て最初に襲ってきたサーヴァントであるカリギュラ。

 

 カリギュラはその端正な顔に水を滴らせながらも藤丸立香達の前へとやって来ると、前と打って変わって理性的な光を瞳に宿していた。

 

「余は果たさねばならぬ」

 

「伯父上……!?」

 

 驚愕の声を上げるネロ。それもそうだろう、何せネロ達は船でここまで来たというのにカリギュラは恐らく泳いできたのだ。

 

 それも息一つ乱さずにここまでやってきた。

 

 たったそれだけでカリギュラがどれだけ人間離れした存在なのかが分かる。

 

(まずい……ここで兵をぶつけても悪戯に消耗させてしまうだけだ)

 

 ネロはそう考え、兵を少し後ろへと下げた。

 

「あら、ふぅん……絡め取られてはいないのね。ああ、でもこれは随分とまあ……」

 

 カリギュラの首元から覗く紋様を見て何かを察したステンノが独り言を呟く。

 

「余は使命を果たさねばならぬ」

 

 カリギュラは再度そう呟く。それはまるで己に刻み付けるように、本能に刻むように強く言葉を発する。

 

「カエサル様は使命を果たされた。ならば余もまた果たす。果たさねばならぬ」

 

 三度そう呟いた時、彼の瞳に宿っていた理性的な光は消え失せ、代わりに今までとは比較にならぬほどの狂気的な光を宿して野獣の如き眼光で立香達を睨みつけた。

 

 その異様な雰囲気と形相に背中に冷たいものが走る。

 

「余の、振る舞いは運命である」

 

 カリギュラの濡れていた体から蒸気が立ち上る。高まり続けた魔力が熱という形を持ってカリギュラの体から放たれているのだ。

 

 蜃気楼のようにユラユラと彼の周りの景色が歪む。

 

「来るぞ! 全員構えよ!」

 

 ネロがそう叫ぶと同時に──! 

 

「汝等の力を、証明しろォォォオオオオオオ!!!」

 

 カリギュラが弾丸の如く星崎望幸目掛けて突進する。

 

「させません!」

 

 それをマシュが横合いから無理矢理弾こうと盾を叩きつける。しかしそれはカリギュラも同じように放った拳の一撃が盾ごと弾き飛ばす。

 

「くぅっ!」

 

 盾を上へと大きく弾かれたマシュはカリギュラを前にして致命的な隙を晒す。だが、その隙を埋めるようにクーフーリンの鋭い槍の一撃が放たれた。

 

「おいおい、アンタ本当にバーサーカーか?」

 

「ォォオオオオ!!」

 

 クーフーリンの放った槍の一撃を槍の横を軽く押すことで逸らしたカリギュラはそのままクーフーリンへと肉薄し、右のストレートを放つ。

 

 ゴウッ! と風を切るような音を響かせて拳はクーフーリンへと迫る。しかしそれはクーフーリンが上へと蹴り上げることで失敗へと終わる。

 

 間髪入れずにクーフーリンがそのままカリギュラを蹴り飛ばした。

 

「硬ェッ……!」

 

 蹴り飛ばしたはずのクーフーリンの足が痛むほどに彼の体は硬かった。蹴った感触としては鋼鉄……いや、それ以上の硬度を誇る何かといった具合だ。その上、尋常なく重い。

 

「……魔力による肉体の硬質化か?」

 

 星崎望幸はそう呟きながらカリギュラへ向けて撃鉄を起こす。カチャリと音を立てながらMP5の銃口がカリギュラを捉え、そして火を吹いた。

 

 それに対してカリギュラは何も反応しない。ガードをすることもなく、ただただその銃弾を受け止めた。

 

 結果はカリギュラの肉体の頑強さに銃弾が潰れてそこいらに散らばるだけだった。

 

「滅びよ、滅びよ、滅びよ! その魂!」

 

 カリギュラは星崎望幸へと向けて突進する。地を砕きながら突き進む野獣が如き荒々しさに望幸はただそれをじっと見つめ──ジャンヌ・オルタの名を読んだ。

 

「ジャンヌ」

 

 ジャンヌ・オルタはそれが何を指すのか把握すると旗を強く握りしめてその身から溢れる煉獄の炎を昂らせる。

 

「ええ、任せなさいな」

 

 ジャンヌ・オルタへ多大な魔力が回される。そして回された魔力を片っ端から炎へと変換することで炎の海と化した呪いの焔がカリギュラへと殺到する。

 

 黒炎はカリギュラを飲み込みその肉体を骨まで焼き付くさんと轟々と燃え盛る。

 

 だが、それをカリギュラは強引に突破した。

 

 勿論、呪いの炎によって焼かれたが故に肉体の硬質化はさして意味をなさず、身体の所々が焼け爛れてはいるものの、ヴォイドセルによってかき集めた多大な魔力が異常な速度で肉体を回復させる。

 

「ウォォォオオオ!!」

 

 大砲を想起させる拳が望幸へと向けて放たれるが、それはすでに回避準備を整えていたために易々と回避される。

 

 そしてカウンターとばかりに彼はいくつかの発砲音と共に置換呪術を使用することで弾丸の速度を拳へと上乗せし、空気ごとカリギュラを殴り抜く──が、カリギュラはそれを紙一重で回避した。

 

「おぉ?」

 

 惚けた声を出す望幸とは反対にカリギュラは彼から一度大きく距離を取る。

 

 ヴォイドセルによって強化されたサーヴァントならば仮にあの攻撃を受けたとしても大した痛手にはならないだろうと判断するだろう。ましてやバーサーカーであるはずのカリギュラならば尚のことだ。

 

 では何故回避することを選んだのか? 

 

 至極簡単な事だ。

 

 カエサルが消滅する直前に送られてきた最期の言葉──星崎望幸に触られるなという言葉があったからである。

 

 故にカリギュラは彼に触られる事を現在何よりも警戒している。

 

 触る時は一撃で絶命させる時か──或いは己の切り札を切る時かのどちらかだ。

 

「フゥゥゥッ……」

 

 少し体が痛む。見れば己の体を先程の呪いの炎が蝕んでいた。構わないとも。この程度の痛みどうということは無い。

 

 焼けた傍から肉体を回復させれば動きに支障はない。

 

 むしろそれでいい。痛みがあるからこそ狂気に陥りながらも致命的な所までには落ちない。ギリギリのところで持ちこたえることが出来る。

 

 そして落ちきらないが故にカリギュラの狂気は加速する。その加速する狂気は攻撃性へと変換され、より強靭にカリギュラの肉体性能を底上げさせる。

 

「ォォオアアアア!!」

 

 破壊の乱撃が立香達を襲う。一挙一動が大砲を超えた威力の破壊力伴う攻撃に手を焼かされる。クーフーリンなどの武芸の達人からしてみればバーサーカーとなったカリギュラの攻撃など粗雑極まりない。

 

 だが、その肉体強度による被弾を恐れもしない力任せな戦い方に下手な攻撃をしようものならまず間違いなく致命的な一撃を貰うことになるだろう。

 

 故に立香達は攻めあぐねていた。

 

 だからこそ──

 

「アルトリア、宝具を解放しろ」

 

 濁流の如き魔力がアルトリア・オルタに回される。それは本来アルトリア・オルタが宝具を放つのに必要な量を超えたものだ。

 

 当然、そんな魔力を一気に回せばどうなるか。

 

「グッ……ごふっ……」

 

 本来、星崎望幸の魔術回路は並より少し秀でてる程度の代物だ。それを大聖杯という魔力炉心と竜の血を浴びたことで得た不完全な不死の肉体の頑強さに無理を言わせて魔力を振り絞っているのだ。

 

 大聖杯という魔力炉心があれどそれだけの大量の魔力を一気に放出するには彼の魔術回路の強度が足りない。それを無視して回せばどうなるか。

 

 当然、魔術回路が悲鳴を上げる。

 

 その結果として彼は口から少なからず血を吐いた。恐らく痛覚がまともに機能していたならば発狂死したであろうほど激痛も襲っているはずだ。

 

 アルトリア・オルタはそれを理解して──歯を強く食いしばって宝具を解放する。

 

「地に落ちる時だ……!」

 

 聖剣から空を貫くほどの巨大な黒き魔力の奔流が立ち上る。破壊力だけで言うのであれば間違いなくトップクラスの威力を誇る聖剣の一撃がブリテンの魔竜の息吹としてはカリギュラに向けられる。

 

約束された(エクスカリバー)──

 

「ッ、ウガァァアア!」

 

 カリギュラがアルトリア・オルタへ向けて走る。無傷では避けれないと判断したが故に、ならば発動する前に殺すと地を砕きながらアルトリア・オルタへ猛進する。

 

 そして放たれた拳はアルトリア・オルタの端正な顔へと迫り──

 

──勝利の剣(モルガン)

 

 あと僅かという所で聖剣が振り下ろされた。

 

 魔竜の息吹はカリギュラを飲み込み、島を焼き尽くし、正面にある海を割った。

 

 アルトリア・オルタの正面が焦土になるほどの威力にカリギュラは消滅したと確信して──不意にアルトリア・オルタの頭上に影がかかる。

 

 そこにいたのは半身を失いながらも聖剣の爆風を利用して今も尚荒く息を吐く望幸へ向けて残った拳を振り上げて襲いかかろうとするカリギュラの姿だった。

 

「何たる執念か……!」

 

 戦慄とした声を上げるネロ。あれほどの重傷を負いながらもそれでも尚彼を殺そうとする己の伯父の姿に戦々恐々とする。

 

 だが今はそれよりも望幸の身が危ないと判断したネロは咄嗟に──けれど()()()()()()()()()()()()()と確信を抱いてその手に持つ原初の火(アエストゥス エストゥス)をカリギュラに向けて投げ飛ばし、彼の名を呼んだ。

 

「カリギュラ!」

 

 それはカリギュラにとっては抗えぬ声だ。彼が何よりも愛している姪の声。その声が己を名を呼んだが故に今最も目を向けるべき彼から目を逸らし──眼前に迫ってくる原初の火を反射的に叩き落とした。

 

 それがあまりにも致命的だった。

 

「ハハ」

 

 酷薄な笑い声が聞こえた。

 

 己の失態に気がついて即座に彼に目を向けて──ゾッとするような()()()()()()()()()()()()()()()()と目が合った。

 

 次瞬、彼の魔力を纏った腕が半身を抉られるほどの巨大な傷から霊核を握り締めた。

 

「ガッ……グァァッ!」

 

 脳が茹で上がるほどの激痛が走る。あまりの痛みに思考が纏まらない。けれど、それでもと残る力を振り絞り拳を上げる。

 

 だが……

 

「ああ、悪いけど君の持つ()()……全部貰おうか」

 

 全身を襲う虚脱感。振り上げた拳を振り下ろすもそれはまるで赤子のように弱々しく彼の体を叩くだけだった。

 

「やめ……ろ……!」

 

 脳が茹で上がるほどの激痛に狂気が抑制されたのか、カリギュラの理性が蘇る。同時に自分が今何をされているのかも理解した。

 

 自身の体を汚染していたヴォイドセルを霊核から直接彼の体に移し替えている。そう、汚染されたもの全て彼の体に移し替えられているのだ。

 

 そんなことをすればどうなるのか──

 

「大丈夫、安心しなよ。君が背負うべきものじゃなかったはずのものは全て俺が背負うから」

 

 ガリガリと己の体を汚染していたヴォイドセルが削られるのを感じながら、まるで幼子をあやす様な酷く優しい声色でそう言う彼の言葉を聞いたカリギュラは──激怒した。

 

 拳を振り上げて彼の顔に叩き付ける。

 

「ふざ……けるな……!」

 

 叩く拳はあまりにも弱々しく決して彼にダメージを与えられるという訳でもないのに何度も何度もその顔に拳を叩き付ける。

 

「余が背負うと、決めたものを……汝が、勝手に背負うなッ……!」

 

 叩き付けていた拳は止まり、今度は彼の顔を包み込むように掴み、互いの赤い瞳が交錯する。

 

「これは、余のものだッ!」

 

 弱々しく小さく掠れてもなおその声は正に皇帝らしい傲慢さが見えるほどに堂々した声であり、カリギュラの皇帝としての矜恃が垣間見えた。

 

 彼はそれを何処か眩しいものを見るように目を細めて──更に強く削り始めた。

 

「……ごめんな」

 

 そう謝る彼は先程よりも速くカリギュラの体を侵すヴォイドセルを取り込んでいく。それはまるで一刻も速くカリギュラの体からヴォイドセルを引き剥がそうとしているかのようだった。

 

 ──だからこそ、カリギュラは覚悟を決めた。

 

 これ以上、己が背負うべきはずだったものを彼に背負わせてなるものかと己の体を構築する魔力すらも己の最大の切り札を発動させるための薪として焚べる。

 

 カリギュラの切り札──それは彼の持つ逸話が昇華された宝具。

 

 残された僅かな魔力では本来の威力の宝具とは比べ物にはならないほどの効果しか発揮しないだろう。寧ろ発動出来るかすら怪しいものだ。

 

 けれど、構わない。

 

 彼に背負わせてしまうくらいであれば、宝具の発動に失敗して無為に消滅した方がまだマシだ。

 

 けれど、そう、けれども……

 

 己が狂気を通して思い出せ藤丸立香。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

宝具解放──

 

「ッ! 立香ァ! 目を──」

 

 空に浮かぶ満月がカリギュラの狂気を投射する。それは酷く弱々しく宝具とは決して呼べないものだ。サーヴァントは愚か、兵士ですら少しふらつく程度のものへと成り下がっているだろう。

 

 それでも……

 

我が心を喰らえ、月の光(フルクティクルス・ディアーナ)

 

 満月の光が藤丸立香を照らす。

 

 藤丸立香という少女に向けて放たれた月の狂気の光が彼女の内に潜む狂気と共鳴し、ありもしない幻影を見せる。

 

 頭を抱え、過呼吸を引き起こし始めた彼女に己を振り払い駆け寄る彼の姿を見届けるとカリギュラの体は崩壊していく。

 

 その最期にふと彼の内側からとても見知ったような、けれどやはり知らないような力を感じた。ただ、その力を感じて無意識に呟いた。

 

「ディアーナ……?」

 

 それを最期にカリギュラは光となって消滅した。

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 

「あ」

 

 死んだ、死んだ、死んでしまった。

 

「ああ……」

 

 首が落ちて死んだ、頭が潰されて死んだ、体が真っ二つなって死んだ、四肢をもがれて死んだ、串刺しにされて死んだ、下半身が消し炭になって死んだ、ぐちゃぐちゃになって死んだ、バラバラになって──

 

 みんな、みんな私を庇って死んでしまった。

 

 大切な、私の大切な彼が、私の目の前で何度も死んだ。

 

「やだ、やだやめて……」

 

 目の前で何度も死んでいく彼に向けて手を伸ばすが虚空を掴むばかりで彼に触ることすら出来ない。どれほど手を伸ばした所で夜空に浮かぶ星のように届かない。

 

「やだよ……」

 

 立香の心にピシリと罅が入り始める。

 

「──私を置いていかないで」

 

 彼を求める指先は虚空を切り、全身が冷たく暗い深海に沈んでしまったかのように凍えていく最中──

 

「立香」

 

 ──とても暖かいものに包まれた。

 

「あ……?」

 

 涙でぼやけた視界の先にいたのは手の届くことのなかった彼だった。彼が、生きて私の顔を心配そうに覗き込んでいた。

 

「立香、大丈夫だよ」

 

「望幸……ちゃんとここにいる?」

 

「ああ、ちゃんとここにいるよ」

 

 ぎゅうと強く彼の体を抱き締める。彼の体温を感じて彼の心音を聞いて漸く彼が生きてここにいることを実感した。

 

「望幸、私を置いていかないでね」

 

「……ああ」

 

「約束だからね、置いていったら何処までも追いかけてやるんだから」

 

「それは勘弁願いたいな」

 

「やぁだ」

 

 そう言って立香は彼の体に顔を埋める。こうでもしないとまた彼に届かなくなりそうで怖かったのだ。

 

 嫌だ、絶対に嫌だ。もしも彼を失うなんてことがあってしまったら私はきっと耐えられない。恐らく彼を失ったらもう私は立ち上がれない。だって、彼がいるからこそ今の私があるんだから。

 

 彼を失った私は、それはもう私であって私じゃない。

 

「強く、ならないと」

 

 先程見たのはカリギュラの宝具による幻影のはずだ。けれど、その幻影が現実にならないという理由はない。

 

 もしかしたら彼が私を庇って本当に死んでしまうことになるかもしれない。

 

 そうなったら私は私を許せない。

 

 魔術も知らない一般人なんだからとか、そんなの関係ない。強くなって強くなって、彼に庇ってもらわなくてもいいくらいに強くならないと。

 

 彼が死んだら私は()()()()()()()()()()()()後悔するだろうから。

 




死合には負けて勝負には勝ったカリギュラ。尚、立香ちゃんの気付けに失敗したらリセだった模様。

ホモくんのDIEジェストを見せられた立香ちゃん。しかも死因が全部自分のせいとかこんなん見せられたら気が狂うで。

だから立香ちゃんにホモくんのDIEジェストを見せる必要があったんですね(メガトンコイン)
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