FGO主要キャラ全員生存縛りRTA(1部)   作:でち公

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GW初の投稿は1万4千字となりました
短いのより長いのがええやろ精神で分割せずに投げますね。
……いいよね?


交錯

 

 立香は左腕を失った彼の姿を見た時、脳の許容量を容易く超えるような感情の濁流に襲われた。

 

 心配、恐怖、怒り……あらゆる感情が洪水のように溢れ、あまりの情報に卒倒しかけたほどである。

 けれど、そんなことをしている暇はない。

 

「望幸っ!」

 

 一刻も早く彼の傷を治さなきゃと彼の方へと駆け寄り──彼と目が合った。

 何処か驚いたように僅かに目を丸くする彼は次第に自分の土に汚れた姿を見てか、険しい表情になった。

 

「立香、無事──だったんだな。良かった、怪我はないか?」

 

 その言葉に立香はグッと歯を噛み締めた。

 

 傷なんかない、あったとしても擦過傷程度で今気にするようなものではない。

 そんなものよりも腕を失うという重傷を負っている彼の方が問題だろうに。

 

「今は私の怪我なんかよりも君の怪我の方が大事だよ!」

 

 声を荒げてそう言うが肝心の彼は何処か要領を得ない様子でほんの僅かに首を傾げてふと思い出したように自分の左腕があった場所を見た。

 

「これか。なら、何も問題ない。既に止血はしてある」

 

 肩より先が消失してしまったそれを一瞥して本当に何でもなさそうに言う彼に立香は声を失った。

 常識的に考えればそれは重傷以外の何物でもない。

 いくら止血をしているとは言え、迅速な処置を施さねば致命的なものへと成り果てることは医学に詳しくない立香でも容易に察することが出来る。

 

「問題大ありだよ! だって腕が、腕がないんだよ!?」

 

「……?」

 

 それの何が問題なんだ? と言わんばかりの怪訝な表情を浮かべて彼はああと、一人納得したように頷いた。

 

「すまない、立香。最初に言うべきだった。魔術でこの怪我は治せるよ」

 

「……本当に?」

 

「ああ、本当だ。治癒魔術で欠損した四肢を再生した事例もちゃんと存在する。だから大丈夫」

 

「ちゃんと元に戻るんだよね?」

 

「ああ、ちゃんと左腕が生え──再生するよ。ただ、こんな状況じゃあ出来ないからな。早く聖杯を確保しよう」

 

 そう言う彼に立香はホッと一安心した。

 自分が知らないだけで魔術には失った四肢を治すような凄い魔術がある。

 それなら、私なんかよりも遥かに魔術に詳しくて凄い人たちの集まりであるカルデアの皆ならきっと望幸を元通りに治してくれるはずだ。

 

 その為にも今は一刻も早く目の前の巨神を倒して、この特異点を修復しなければと意気込む。

 

『望幸くん、立香ちゃんにちゃんと説明した方が……』

 

「ロマニ、頼むよ」

 

『……っ、分かった』

 

 やる気に溢れている立香には聞こえぬようにロマニと望幸はやり取りをしていた。

 立香にはただ左腕がなくなったとしか分からぬように巧妙に幻視の細工が施されていた彼の左腕は内部から爆裂したように弾け飛んで抉られた傷口になっており、そしてその傷口は真っ黒に焼け焦げていた。

 

 こうなった理由はただただ単純で、巨神の片腕を破壊した代わりに反撃を受けた彼が全てのダメージを左腕に置換して自切したからである。

 

 故に本来であれば傷口はまだ綺麗なものになるはずだったのだが、巨神の一撃はあまりにも強すぎた。

 許容量を容易く超える攻撃のダメージを全て肩代わりさせられた彼の左腕は完全に自切に成功するよりも早く爆弾の如く炸裂した。

 

 弾け飛んだ骨肉が自切しきる前の彼の体を蹂躙し、特に左腕の方はあまりの衝撃に抉られたような傷になってしまった。

 

 巨神の一撃でアルトリア・オルタと共に死ぬよりはマシだと咄嗟に判断した彼が行ったダメージコントロールは確かに上手く作用し、これ以上ないほどの成果をあげた。

 

 だが、その代償として彼は左腕を失い、治癒魔術に魔力を割くよりも早く行使できる火の魔術によって彼は自身の傷口を焼き潰して塞いだのだ。

 ロマニやアルトリア・オルタが止める暇すらなく、まるで何度も行ってきたように慣れた手つきで応急処置を施した。

 

 だが、何よりの問題は彼の左腕がちゃんと元に戻る保証はないということだ。

 彼の言う通り、治癒魔術で四肢の欠損を治したという事例はある。

 だが、それは卓越した治癒魔術の使い手がいて漸く出来る技だ。

 応急処置で自分の左腕を焼き潰したこともそうだが、今のカルデアに彼の欠損を癒せるほどの人員が、余裕があるのかと言えば正直な所存在しない。

 

 可能性としては彼のサーヴァントである玉藻の前くらいだろうか。

 だがカルデアは彼女のことを詳しく知らない。

 

 もしも、もしも彼女が彼の左腕を治せるというのならロマニは彼女に頭を下げてお願いするつもりだ。

 その為ならばリソースの許す限り惜しみなく協力すると誓おう。

 

()()()()()()

 

 何気なくそう呟く彼にロマニは心臓が止まる思いだった。

 普通に考えれば先程アルトリア・オルタの宝具に直撃し、力なく垂れ下がる巨神の左腕を見てそう言ったのだろうが、ロマニには今度は自分の右腕を犠牲にするのかとそう思ってしまった。

 

「アルトリアはもう一度宝具をいつでも撃てるように準備しておいてくれ」

 

「……ああ」

 

 そう返事をするアルトリア・オルタ。

 だが、バイザーによって顔を隠されているというのにその声色だけで酷く沈痛な顔をしているというのが、察せられる。

 

 巨神から繰り出されたカウンターの一撃。

 本来であればサーヴァントである己がどうにか対処をしなければいけないはずだった。

 けれど出来なかった。

 宝具を発動した硬直を狙われたから仕方ない、なんて言えば彼の左腕は元通りになるのか? 

 

 いいや、元通りになるはずがない。

 あの時動くべきだった、反撃を警戒すべきだった。

 突き飛ばしてでも、この身を呈してでも彼を守るべきだった。

 

 そんなことすら出来ずに己は彼にまた守られた。

 これではあの時と──

 

「……この腕についてはあまり気に病むなよ。寧ろ、此奴相手に腕一本で済んだのは僥倖だろう」

 

 そう言って彼は残った右腕でアルトリア・オルタの頭を乱雑に撫でた。

 

「勝って、帰るんだろう?」

 

「そう、だな。さっさと倒してあの女狐にでもその腕を治してもらえ。あの女なら出来るだろう」

 

「ああ、帰ったら頼んでみるよ」

 

 その言葉を皮切りに彼等はもう一度、巨神との戦いに身を投じた。

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 

 セファールは──アルテラは一切変わらぬその表情の裏にて苦虫を噛み潰したような思いだった。

 彼がエクスカリバーを使って己のコアを破壊しに来るのは読んでいた。

 

 だからこうしてわざと隙を晒して……左腕を潰してまで確実に彼の命を一撃の下に刈り取るつもりだった。

 だってそれが、今のアルテラに出来る精一杯の恩返しのつもりだったから。

 

 苦痛を感じなくなったとしても、それでも怪我をした時の不快感は残るはずだ。

 体の一部がなくなればそれは大きなストレスにだって繋がるはずだ。

 だから一撃で、痛みも不快感も何もなく、その魂ごと砕いて彼の全てを終わらせるつもりだった。

 

 けれど、そうならなかった。

 

 直撃とまではいかずともただの人間を殺すにあまりある一撃を叩き込んだはずだったのに彼は刹那の迷いすらもなく、自分の左腕を犠牲にして生き残っていた。

 

 その瞬間の光景をアルテラは決して忘れることはないだろう。

 

 ──全ては私の責だ。

 

 彼に永遠の安寧を。

 

 その想いを抱いてここまで来た。

 その為に皆に協力をお願いして私はもう一度この姿へと成り果てた。

 

 失敗は許されない。

 

 皆が想いを繋いでこの状況を作り出したんだ。

 私が私でいられるように手を尽くして、彼を破壊するという彼等にとっても苦渋の決断をしてくれた。

 

 だから、私は勝たねばならない。

 そうでなくては合わせる顔がない。

 

「────ッ!」

 

 彼が、あんな、あんな惨たらしい最期を迎えるなんてあっていいはずがない。

 あんな、酷く虚しい最期を迎えさせるくらいなら恨まれたっていい、嫌われたっていい。

 

 誰も彼の最期に気が付かず、死を悲しまれることもなく、彼の死を、彼の生を辱めるような真似をされるくらいなら私が今ここで──! 

 

──────(破壊する)!」

 

 その叫びは嘆きのように戦場に木霊する。

 そしてその嘆きに呼応するようにアルテラの上空に魔術陣が展開され、今までとは比にならぬ程の破壊の光が溢れ始める。

 アルテラにすら容赦なく降り注ぎ続ける破壊の光はまるで光の槍の如く。

 光槍は爆発すら起きずにあまりの鋭さから大地に深く突き刺さり、深い大穴を無数に作り上げた。

 

「うわ、うわわわっ!」

 

 光槍が降り注げば降り注ぐ程に立香達の足元は不安定になり、移動も覚束なくなっていく。

 そして何れは動ける場所もなくなってしまい、光槍に貫かれるのも時間の問題だろう。

 

 確もそれはアルテラが──セファールが何もしなければという大前提ではあるが。

 

「くそっ!」

 

 光槍が降り注ぐ中、巨神の右腕が横薙ぎに振るわれる。

 

 大地を削りながらその巨大極まる質量で破壊せんと立香達に迫る。

 だが、そう易々と殺されるつもりは彼にだってない。

 

 鳴り響く一発の銃声。

 それと共に立香達は大地ごと遥か上空へと投げ出された。

 

「えっ、えぇ!?」

 

「はぁっ……はぁ……!」

 

 一体何が起きたのか? 

 

 答えは至極単純、彼が視界に入った立香達を大地ごと上空へ撃った弾丸の位置と速度を置換したのだ。

 本来であれば出来るはずのない大規模転移。

 それを彼は持ち前の魔力と聖杯の魔力を掛け合わせることで強引に成し遂げた。

 

「流石にこれは堪えるな……!」

 

 範囲をろくに指定せずに入れ換えた結果、立香達が立っていられるほどの大地ごと置換するという力業になったが、そのおかげでセファールは彼等を見失っていた。

 

 未だ空高く飛翔し続ける立香達だが、そう間もなく落下するだろう。

 

「立香、先に伝えておく! このまま上空から奇襲を仕掛けてセファールの右腕のコアを破壊する! コアの破壊はジャンヌ・オルタの宝具でやる。立香達にはジャンヌ・オルタに右腕までの道を作ってあげて欲しい!」

 

「それは分かったけど……。でもどうやってコアを出現させるの? 攻撃した時にしかコアは出ないんでしょ? 流石に警戒されると思うんだけど」

 

 立香の言う通りだ。

 流石のセファールとて馬鹿ではない。

 相手が何かしらの行動を起こしたのであれば弱点である右腕のコアを守るために防御態勢くらいは取るだろう。

 

 ならばどうやってコアを露出させるというのか。

 

「それは勿論──俺が囮になる」

 

「だっ、駄目! 望幸が囮になる位なら私がやるよ!」

 

 その言葉に立香は反射的にそう叫んだ。

 当たり前だ、大怪我をしている彼をどうして囮になど出来るというのか。

 彼と生きて帰る為に戦っているというのにここで彼を囮にするなどわざわざ殺されに行くのを指を銜えて見ているようなものではないか。

 

 そんなことは絶対に許可できない。

 彼を囮にさせるくらいならば自分がやった方がまだいい。

 

 そんな立香に対して彼は苦笑しながら首を左右に振った。

 

「立香、彼奴は──セファールは聖杯を宿しているからか俺に首ったけみたいだ。だから囮になるなら俺が一番効果的だ。そして多分、右腕のコアを破壊するチャンスはそう何度もない。きっとこの奇襲に失敗すればセファールは警戒を更に強めるだろう。下手をすれば俺達だけが消耗していって負ける可能性だってある。だから、さ──」

 

「──俺が行くよ」

 

「う、ぅぅうう──ッ!」

 

 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。

 認めたくない、行かせたくない。

 だって、それが一番危険なんだって分かるから。

 これ以上望幸を危険な目に遭わせたくない。

 力も知恵もない私がそれを言うのは傲慢だって分かってる。

 他にいい案だって思いつかない。

 

 きっと、望幸が言っている作戦の方が一番可能性が高いってことも理解出来ている。

 

 でも納得が出来ない。

 

「……立香、右手の小指を出して」

 

「……?」

 

 彼の言われるがままに小指を差し出すと彼は自分の小指するりと絡めてきた。

 

「指切りだ、俺はこんなところで死なない。ちゃんとみんなで帰ろう」

 

 まるで子供の約束。

 けれどそれは立香にとってはあまりに懐かしく、そして馴染みの深いものだった。

 

「……ちゃんと無事に帰ってきてね」

 

「うん」

 

「怪我もしたら駄目だからね」

 

「それはきついなぁ。……でも、うん。君を心配させない為にも頑張ろうかな」

 

 そうしてゆっくりと契りを交わして、立香は名残を惜しむように絡めていた小指を解いた。

 

「ああ、そうだ立香。クーフーリンの宝具は使えそうか?」

 

「クーフーリンの? ……私は大丈夫だけど、クーフーリンは大丈夫かな」

 

「出来そうだったら宝具の準備だけするように頼むよ」

 

「分かった。けど、何をするの?」

 

「セファールの胸のコアを、彼女の心臓部を破壊する」

 

 クーフーリンの宝具は因果逆転の呪い。

 一度発動してしまえば心臓へ必中する呪いは類まれなる幸運でしか回避することは出来ない。

 それほどまでに強力な宝具ではあるのだが、それはあくまで彼の刺突のみに適用される。

 

 クーフーリンのもう一つの宝具の方は召喚陣を吹き飛ばした投擲するものだ。

 あれも心臓に必中するという効果こそないものの槍に込められた魔力が尽きるまで対象を追い掛け続けるという効果がある。

 

 恐らく彼が言うのは後者の方だろう。

 

 刺す方の宝具ではそもそもセファールの胸元まで潜り込まないといけないため相当厳しい上に恐らくだが破壊力が足りない。

 そうとなれば破壊力に特化した投擲する方の宝具ではあると思うのだが……。

 

「クーフーリン、ちょっといい?」

 

「あん? どうしたよマスター」

 

「あの、さっき見せた宝具はもう一回使える?」

 

「……あれか。そりゃあ撃てと言われたら撃てるが……さっきみたいな威力は期待できねえぞ。ありゃ令呪と下準備ありきの一撃だ。セファールならまず間違いなくそれに気がついて防御してくるだろうよ」

 

「撃てるんだな? なら問題ない。セファールの胸のコアを確実に破壊するためにはそれが必要なんだ」

 

 そう言い切る彼にクーフーリンはその赤い瞳をスッと細めて見る。

 

「……ほぉ、坊主に作戦があるって事でいいんだな?」

 

「ああ」

 

「よっし、なら任せるぜ。タイミングはどうする?」

 

「アルトリアの宝具を撃ったその数瞬後、僅かにタイミングをズラして発動させて欲しい」

 

「同時じゃなくていいのか?」

 

「ああ、そっちの方が好都合なんだ」

 

 そう言うと彼はクーフーリンの宝具であるゲイボルグへと目を向けた。

 

「すまないが、仕掛けの為に印だけ付与しても?」

 

「おう、別に構わねえぜ」

 

 クーフーリンはゲイボルグを望幸の方へと差し出すと、彼はほんの一瞬切っ先を触った。

 

「ありがとう、これで充分だ」

 

「お、おお? 今でのいいのか」

 

 クーフーリンは彼が触った場所を凝視してみるが特に変わった様子は見受けられない。

 それどころか本当に印をつけたのかと疑問に抱くほどクーフーリンから見ても魔術的な印は見つからない。

 

「さて……これ、そろそろ墜落するな」

 

「えっ」

 

 彼は突然そんなことを言い放った。

 だが、言われてみれば当然である。

 あくまでここは彼が呪術を用いて地面ごと上空へとぶっ飛ばしただけである。

 故に頂点まで上がりきれば()()()()()()()()()()()()()──

 

「うひゃああああああ!?」

 

 物凄い勢いで立香達は地面に目掛けて落下し始めた。

 

「マシュ、立香を抱えといてくれ」

 

「えっ、はっはい!」

 

 マシュとて割といっぱいいっぱいではあるのだが、マスターである立香を衝撃から守る為に彼女を抱え込んだ。

 

「それじゃあ、色々と頼んだよ立香」

 

 そして一発の銃声が鳴り響き、立香達はセファールから少し離れた安全な位置へと転移された。

 残されたのは術者である彼──ともう一人、彼のサーヴァントである式だった。

 

「……()()()()

 

「ええ、私まで彼方に送る必要は無いでしょう?」

 

「お前にもジャンヌの補助をして欲しかったんだがな」

 

「あら、それならあの子達で十分だと思うのだけれど。……それに貴方は囮をするのでしょう? だったらサーヴァントの一人くらいは連れていかないと安全ではないし、そもそもマスター一人で特攻だなんて怪しまれるのではなくて?」

 

「それもそうか。それじゃあ──背中は任せるよ」

 

 彼は苦笑すると今もなお落下する大地の端へと立ち、セファールの頭上目掛けて銃を構えた。

 そして引き金を引き──まるで隕石のような速度で大地がセファールに突っ込んでいった。

 

「───!」

 

 セファールがそれに気がついたのは己を覆う影に気がついたからである。

 咄嗟に上空を見てみれば引き剥がされた大地が己目掛けて降り注いできた。

 咄嗟に残った右腕を振るい、それを砕くことに成功した。

 

 攻撃が来た以上、先の一撃で死んだ訳では無かったのだと警戒を強めて周囲を見回した瞬間──! 

 

「セファール!」

 

 声が上空から聞こえた。

 見上げてみれば彼が先程砕いた大地の破片に紛れて空から落ちてきていた。

 その後ろには彼を守るように共に落下している一騎のサーヴァントがいた。

 

 周辺にある瓦礫を足場に器用にも移動する彼とサーヴァントに狙いを定めて拳を振るおうとした時、サーヴァントの蒼く輝く瞳が此方を捉えていた。

 

 瞬間、セファールの背中にぞくりと氷柱を入れられたかのような寒気が走った。

 

 彼奴もまた聖剣の担い手と同じく己を殺せる存在なのだと本能で理解した。

 確実に殺したと判断出来るのは己の拳による攻撃だ。

 だが、下手に殴ればどうなるか分かったものでは無い。

 

 故にセファールが取った手段は至極単純。

 

「─────!」

 

 収束させた魔力による砲撃である。

 ヴォイドセルによる霊子収集、並びにそれを極限まで圧縮し、前方へと解放。

 怒れる軍神の一撃にすら匹敵するそれは熱線の如く。

 瓦礫を瞬く間に融解させ、彼等を飲み込まんと直進する。

 

 そしてその熱線は──あっさりと式の手によって両断され、霧散した。

 

 それを見てセファールは更に警戒度を引き上げる。

 己の放った魔力砲撃に対して拮抗する素振りすら見せず、たったの一振りで霧散させるなどそう易々と出来るものではない。

 

 ──魔眼か。

 

 今もなお蒼く輝く彼女の瞳を見て、セファールはそう判断を下した。

 

 魔力砲撃を突破した二人は更に加速するようにセファールに迫る。

 瓦礫を足場に跳躍し、彼の呪術により更に加速。

 時折猛烈な速度で飛んでくる瓦礫をセファールは鬱陶しげに払いながら、ならばこれはどうだと上空へと展開していた魔術陣から光槍を彼等に殺到させる。

 

 数が数だ。

 さしもの式とてこの量は捌ききれまいと踏んだ──が、彼等に向けて殺到していたはずの光槍はどういう訳か目標から逸れて周辺の瓦礫へと向かっていった。

 

 これが彼等が報告してくれた星崎望幸が扱う置換魔術──に酷似した何らかの魔術か。

 

 攻撃対象を置換することで攻撃を逸らした? 

 

 だが、それにしては何かが引っかかる。

 なるほど、確かに言う通りだ。

 これは置換魔術に似た何か──いや、彼の扱う魔術が作用した結果、偶然にも置換魔術という事象に似ただけなのか。

 

 ……記録を参照しても類似事項は特にない。

 

 であるのであれば──魔法? 

 

 まさか、流石にありえないだろう。

 これが魔法というには些か常識が足り過ぎている。

 

 ならば、置換魔術を元に開発された彼オリジナルの魔術ということなのだろうか。

 

 セファールは高速で思考を回しながらも接近してくる彼等に対して右腕を勢いよく振るい、暴風を引き起こす。

 人程度の大きさならば容易く彼方へと吹き飛ばすほどの暴風を前に彼等は無防備に体を晒し──()()()()()()

 

「──────!」

 

 風の影響を受けていない、と言うよりもこれは……! 

 

 暴風を加速力に変換──否、置き換えているのか。

 

 向かい風であるはずの暴風を追い風に置き換えているのか、或いは暴風が持つ力そのものを加速力に置き換えているのかは分からない。

 

 だが、彼の魔術は間違いなく従来の置換魔術という括りから逸脱している。

 

 暴風の加速を得て、殺人的な速度へと加速した彼等にセファールは刹那の瞬間、どう迎撃するべきか悩んだ。

 魔力による遠隔攻撃か、或いは相打ち覚悟で拳を振るうか。

 

 砲撃による攻撃は間に合わぬと判断したセファールは右腕に力を込めてしまった。

 

 その刹那の時間が、セファールの命運を分けた。

 

「──これは我が憎悪によって磨かれた魂の咆哮

 

 意識外からの強大な魔力反応。

 咄嗟に目をそちらに向ければジャンヌ・オルタが右腕のコアに向けて旗を向けていた。

 

 宝具の発動──それもあの魔力量から察せられる威力なら間違いなく己のコアを砕けるだろう。

 振り向き様に腕を振るえばそれだけでジャンヌ・オルタの宝具発動の阻害は出来るだろう。

 だが、そんな隙を晒せば今もなお此方へ墜落するように迫ってくる彼等に殺られてしまう。

 

 ジャンヌ・オルタ達のことも警戒していたつもりだった。

 だが、目標である星崎望幸と己を殺しても何らおかしくもない両儀式という存在が周囲への警戒を怠らせた。

 魔力反応を極限まで殺していたジャンヌ・オルタを知覚することが出来なかった。

 

「ッゥ───!」

 

 ジャンヌ・オルタはまだ宝具発動まで至れていない。

 ならば、周囲に点在するヴォイドセルで侵食した原生生物達をぶつけて僅かにでも発動を遅らせる。

 

 セファールの号令に反応した化け物達が宝具を構えるジャンヌ・オルタに殺到する──が。

 

「そうはさせません!」

 

 ジャンヌ・オルタを守るように飛び出してきたジャンヌとマシュ、クーフーリンが化け物達を鏖殺する。

 

 駄目だ、これでは宝具の発動の阻害が出来ない。

 コアは確実に破壊される、今からの防御態勢は間に合わない。

 

 なら──

 

 コアを破壊されてでも彼を殺す! 

 

「─────!」

 

 渾身の力を込めてあらゆる文明を破壊する巨神の一撃をたった一人の人間に向けて放った。

 振るわれた剛腕に大気すら逃げられず大気ごと彼等を殴り抜いた。

 

 手に伝わる何かを砕いた感触。

 生き物を、魂を確かに砕いた。

 だと言うのに──! 

 

「令呪を以てジャンヌ・オルタへ命ずる──!」

 

 何故彼はジャンヌ・オルタの傍にいる!? 

 

「コアを穿て──ッ!」

 

 令呪によるブーストを受けてジャンヌ・オルタの宝具の威力が跳ね上がる。

 

 地獄を赤く染め上げる業火が噴出する。

 遍く全て呪う魔女の災禍の槍が至る所から串刺しにせんと勢いよく射出される。

 

吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)

 

 竜の魔女の憎悪の具現たる宝具が巨神の右腕のコアを呪いで染め上げ、業火で焼き尽くし、災禍の槍が刺し貫き、砕き切った。

 

「───────」

 

 脳髄まで焼き尽くすような激痛にセファールの体が揺れる。

 隠されていた心臓部のコアが露出する。

 

 負ける、負けてしまう。

 彼等の尽力に何も返せないまま私は負けてしまう。

 彼を、愛しい人を救えない。

 それどころか、彼がより苦しむ道を選んだと知ったまま何も出来ずに負けてしまう。

 

 駄目だ、それだけは駄目だ。

 あの最期を迎える可能性だけは何としてでも摘み取らなくてはいけない。

 

 両腕は最早使い物にならず、彼の周囲を守るように展開しているサーヴァント達がいる以上、原生生物達に殺させることも出来ない。

 

 けれど、まだ、まだ手はある──! 

 

「──────ッッッ!!!!」

 

 倒れそうになる体に活を入れて、気合いのみで体を立たせる。

 そして世界を震撼させる咆哮を上げて──空に描いた魔術陣が激しく明滅した。

 

 今までのような量による攻撃は駄目だ。

 それでは彼の魔術によって逸らされてしまう。

 ならば、ならば──! 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 残る魔力を全て魔術陣へと注ぎ込み、取り込んだ聖杯の魔力すらも注ぎ込む。

 

『不味い、不味い不味い不味い不味い──! この規模は洒落にならない! ここら一帯所か、連合帝国軍が占拠していた土地が全て吹っ飛ぶ魔力量だぞ!?』

 

「何だと!? どうにかアレを防ぐ手立てはないのか! あの魔術の発動を妨害するとか出来ぬのか!?」

 

『無理だ! あれはもう既に発動している! 阻害したところで発動したという事実はどうにもならない!』

 

「そんな、ここまで来て──!」

 

 立香達の悲痛な声が響く。

 彼の得意とする置換魔術で逸らしたところでこれほどの規模の攻撃ならば差したる意味を持たない。

 ジャンヌダルクやマシュの宝具でもあの規模の攻撃は防ぎ切れない。

 

 ──詰みだ。

 

 誰もがそう思っているというのに──

 

「アルトリア、宝具発動準備。クーフーリンも頼んだ」

 

 彼だけは常と変わらぬまま。

 凪いだ湖面のような静けさを保ったままのように落ち着き払った様子だった。

 

「令呪ありきで私の宝具をぶつけたとしてもこの威力は……」

 

「いいや、アルトリアの宝具は作戦通りセファールのコアにぶつける」

 

「だが、それではあれは防げんぞ」

 

「大丈夫──だって、ほら。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 そう言って彼は少し笑って前に出ると獣の爪痕の如き令呪が輝く右手を上へと掲げた。

 その瞬間──

 

 

ぬはははははァッ!

 

 

 地響きと共に此方へと哄笑しながら走ってくる筋肉──もとい、スパルタクスが満面の笑みを浮かべていた。

 

「「「スパルタクス!?」」」

 

「おお、おお! 私が、このスパルタクスがこの地に呼ばれた意味がようやく分かったぞ。何たる暴威、何たる圧政! 弱者を守る事こそがこのスパルタクスの誉れならば──!」

 

 スパルタクスは狂気に満ちた笑みのまま土煙を上げて突っ走る。

 その後ろには疲労困憊といった様子のブーディカが肩で息をしながら追いかけていた。

 

「ちょ、ちょっと、待って……スパルタクス……もしかして、君も?」

 

 ぜぇ、ぜぇ、と激しく息切れをしながらそう問いかけるブーディカであったが、当然の如くスパルタクスの耳には届いていない。

 

 いや、実際は届いていたのかもしれないが、高揚しきっているスパルタクスには無意味である。

 

「ブーディカさん大丈夫ですか!?」

 

「ゲホッ、ちょっと、もう、無理」

 

 慌てて駆け寄ってきた立香達の前でブーディカは立ち止まり、何度も大きく深呼吸を行う。

 そしてブーディカの息が整ってきた頃、立香達は気付いた。

 

「……あの、呂布は?」

 

 とてつもなく目立つはずの巨体を持った呂布がいないのだ。

 まさかまた化け物達に釣られてどこかへ行ってしまったのだろうかと考えていた矢先にブーディカから衝撃の答えが返ってきた。

 

自爆した

 

「!?」

 

「いやぁ、何か幻聴が聞こえたのか知らないけどあの召喚陣のド真ん中で急に雄叫びを上げて自爆しちゃって……おかげであの数の敵を捌けたんだけどさ」

 

「!?!?」

 

 たははーっと笑うブーディカを他所に立香達は驚きを隠せなかった。

 

 えっ、自爆? なんで? というかどうやって? 

 

 当然の思考である。

 ……まあ、恐らく何処かの眼鏡をかけたイマジナリー外道軍師が「呂将軍、そこで自爆です!」などと呂布に囁いたのだろう。

 

 自爆した呂布も大変満足そうにサムズアップをして散っていったような気がするものだからそれを間近で目撃していたブーディカは何とも言えない表情を浮かべた矢先に今度はスパルタクスが目を輝かせて巨神に向けて突撃し始めたのだ。

 

 ブーディカは何だかよく分からないがこの流れは非ッ常によく知っている。

 

「おお、我が叛逆の同志にして我がマスターよ! 今こそ我等の叛逆を示すときである! さあ、反撃の狼煙をあげようではないか!」

 

「よし来た」

 

 スパルタクスと望幸の二人は何か察するものがあったのか、目だけで作戦を語っていた。

 立香にはよく分からない世界である。

 

 スパルタクスは掲げられた彼の令呪が刻まれた右手にハイタッチをすると大いに笑った。

 

「簡易契約完了」

 

「ぬぅぅううう! 力が滾るゥ! 今こそ叛逆の時である!」

 

 スパルタクスが彼の右手に触れた途端、簡易的にパスを繋ぎスパルタクスへの魔力供給が始まった。

 その魔力供給を受けてスパルタクスの筋肉はピクピクと喜びを示すように痙攣していた。

 

 そしてその勢いのまま突っ走るスパルタクスは一度跳躍し、深く深く腰を下ろして地面が陥没するほどの踏み込みを行い──空へと飛翔した。

 

 おお、なんと勇ましきかなスパルタクス。

 今や誰も彼もが彼に注目している。

 

「暴威による救いを是とする圧政者よ! 汝がその力を彼等に──守るべき弱者に振るうというのなら私が相手になろう!」

 

 高らかに叫びながらもはやはち切れんばかりに膨張する魔術陣に向けて飛翔する。

 それをセファールは、アルテラは唖然として見上げていた。

 

「令呪よ──彼の叛逆に導きの星を」

 

 令呪によるサポートを受けてスパルタクスはまるで導かれるように魔術陣に向けて更に高く飛翔する。

 

「何故ならばこのスパルタクスは弱者の盾となり矛となる者であるからだ! さあ、刮目せよ、これこそが我が叛逆──我が魂の輝きである!」

 

 魔術陣から破滅の引き金が引かれる。

 連合帝国軍が占領した土地全てを吹き飛ばすほどの威力の滅びの奔流が全て殺し尽くすべく地上へと落ちていく。

 

 それに相対するはたった一騎のサーヴァント。

 誰がどう考えても敗北するのは目に見えているというのに──彼の目は勝利への確信で満ちていた。

 

 勝利することを疑っていない、己ならば成せると心の底から信じている。

 何故ならばこの背中には守るべきもの達がいるのだから。

 

 故にスパルタクスは疑わない。

 己の叛逆の輝きを見せつけるようにこの命を燃やし尽くすのだ。

 

「グッ、ぎぃっ……ぐぅっ、は、は、はははは!」

 

 あの破滅の一撃に対してスパルタクスは弱点である頭部から突撃した。

 瞬間、瞬きの間に全身の骨が砕かれ、肉が拉げる感覚がした。

 それでも最期の時まで笑うのだ。

 

 スパルタクスの宝具の性質は非常に特異なものだ。

 敵から負わされたダメージの一部を魔力に変換し、体内に蓄積する。

 加えてこの魔力の変換効率は、スパルタクスが死に瀕すればするほどに上昇する。

 

 死んでしまえば意味はなく、かと言って普通に受け切れる攻撃では効果が薄い。

 その性質上、扱いが非常に難しいものではあるのだが、今、この瞬間において彼の宝具は遺憾無く効果を発揮していた。

 

「がぁっ、は、は、ははははァッ!」

 

 直撃してしまえばどんなサーヴァントとて消滅は免れない滅びの光を頭から受けてなおスパルタクスは高らかに笑う。

 

 スパルタクスはお世辞にもトップサーヴァントとは言い難い。

 であるにもかかわらず、何故こんなにも耐えることが出来るのか? 

 

 それは酷く単純で彼を英雄たらしめたもの。

 

 気合い(ガッツ)と──そして何よりも後ろに守るべきものがいるからだ。

 

 さあ、魅せよスパルタクス。

 我が魂の輝き、叛逆の咆哮を。

 

 これこそが我が宝具(誇り)──

 

 

我が愛は爆発するゥ!

 

 

 ──疵獣の咆吼(クライング・ウォーモンガー)である! 

 

 滅びの光を押し返すほどの大爆発が遥か上空で巻き起こった。

 滅びの光を押し返し、空に描かれた魔術陣に罅を刻み──遂には完全に砕ききった。

 

 空に輝いたスパルタクスの一撃はまるで星の輝きの如く眩いものであった。

 

『魔力反応消滅……ほ、本当に相殺しちゃった……』

 

 ロマニの唖然とした声が立香達の間で響き、そしてそれは絶望が希望へと変わったことを意味していた。

 

「さあ、これで幕引き──終幕だ」

 

 彼の右手に宿る最後の令呪が輝く。

 

「アルトリア──我等の敵を討て!」

 

 アルトリアの宝具に、かつて巨神を打ち倒した聖剣が唸りをあげる。

 

啼け、地に落ちる時だ(束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流)……!

 

 星の聖剣から黒と金の魔力が溢れ出る。

 星の天敵たる巨神を討つのだと完全解放された聖剣の光が空まで照らすように輝く。

 

 この特異点に幕を引く聖光が満ちていく。

 

 それを前にアルテラは──

 

 まだ、何も成せていない! 

 まだ何も報えていない! 

 

 まだ、まだ私は終われない! 

 

約束された──

 

 掲げられた星の聖剣。

 

 

──勝利の剣!

 

 

 放たれた星の息吹が巨神へと迫り──アルテラは最後の力を振り絞るように壊れた両腕を地面へと叩きつけてその衝撃によって身体をずらす事でコアへの直撃を防いだ。

 

 それでも体の半分以上は消し飛んだ。

 ほんの僅かな延命くらいにしかならないだろうが、それでも出来ることはある。

 

「言っただろう、終幕だと」

 

 彼の前に勢いよく飛び出してきたのはクーフーリンだった。

 宝具を投擲する構え取り、胸のコアを破壊する為の魔力を練り上げている。

 

 ──問題ない、いくら死に体と言えどゲイボルグの直撃くらいならば耐えきってみせる! 

 

突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)

 

 投げ放たれた呪いの朱槍。

 それを前にアルテラは覚悟を決めて迎え撃った。

 

 

 

 

「──access(接続開始)

 

 じわりと世界が滲んだ。

 

connect

 

 がそれを照らした。

 

rewrite

 

 ■■は置き換わる。

 

 

 

 

「ガッ───!?」

 

 なんだ、これは。

 何がどうなっている? 

 

 なぜ、なぜ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!? 

 

 確かに躱したはずの聖剣の光。

 けれど、どういう訳か聖剣の光がアルテラの背後から核を貫いたのだ。

 

 混乱するアルテラの目の前に着弾する呪いの朱槍。

 本来であれば対象に当たるまで追撃するはずの朱槍はその効果が失われたようにアルテラに追撃することなく、持ち主のクーフーリンの下へと帰っていった。

 

 黒く染まっていく視界の中、彼を見てみれば口元から大量の血を吐きこぼしていた。

 きっと彼が何かしたのだろうというのは分かる。

 

 なら一体何をした? 

 

 アルテラは考える一体彼が何をしたのかを。

 彼は一体どんな魔術を──現象を引き起こしたのかと。

 

 ……躱したはずの聖剣の光、効力を失った呪いの朱槍、()()()()()()()()()()──? 

 

 あ、と声が漏れた。

 アルテラは気付いた、気付いてしまった。

 彼の扱う魔術が、変異した置換魔術がどう変わったのかを。

 

 もしそうなのだとすれば……。

 

 アルテラの顔が青ざめていく。

 だって、もしも、もしもこれがそうなのだとするとこの特異点で彼が瀕死になってしまったら……。

 

 数多の異形の死骸、ヴォイドセル、そして聖杯。

 

 ──材料が揃いすぎている。

 

 そこまで気がついた時、アルテラの目に映ったのは──彼が藤丸立香を庇い、殺したはずのレフ・ライノールに背後から胸を貫かれていた姿だった。

 

「やだ、だめだ、ます、たぁ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだよ、まだ耐えてちょうだい」

 

「こ、子イヌが死んじゃうわよ!? それでもまだ行っちゃ駄目なの!?」

 

「ええ、まだ駄目よ。あの子に気付かれたら駄目。その時点であの子は警戒してしまう、取り返しがつかなくなってしまう」

 

「うぅ、でもぉ……」

 

「まあまあ、茶でもシバいてのんびり待つのが良いのだな」

 

「……寧ろ何であんたはそこまで落ち着いてるのよ。私、真っ先にあんたが出ていくんだと思ってたんだけど?」

 

「むふん、キャットを侮って貰っては困るのだワン。これでもキャットは待てと言われたら待てる健気に尽くす良妻系忠犬キャットなのだ」

 

「……本当は貴方がいの一番に飛び出したいでしょうに。偉い子なのね」

 

「勿論だワン! キャットは待つことにはもう慣れたのだ。何せ1万年と2千年前から愛するご主人のこと待っている故」

 

「……そうね、ずっと、待っていたものね」

 





ヒューッ!流石レフだぜ!
心臓をドスッと一突きして致命の一撃とは最高だな!
そのせいで地雷が全部爆発したんですけど???

以下、読み飛ばしてもらって構いません。

すごく長い時間掛かりましたがセプテムが漸く終わりそうです。
これも感想や評価、誤字報告などをして下さる皆様のお陰です。
それがモチベとなってエタらずに済んでいます。イイネクレ-
今後ともエタらないように書いていくので評価や感想などの餌を定期的に投げてください(承認欲求モンスター)
セプテム終盤ということで漸く全員の情緒をグチャらせてくるホモくんもかけそうでニコニコです。
ちなみに今回のセプテムで一番情緒をぐちゃぐちゃにされるのはもちろん立香ちゃん……ではなく、ロマニです。
うぅ……ロマニ、絶対吐かせてあげるからね……!
お前ん家のストレス管理ガバガバかよォ!?
ところで本家にドラコーが来ましたけどあれって、クラスビーストなんですってね?ふーん^^
人理くんも大概ガバガバ。
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