FGO主要キャラ全員生存縛りRTA(1部)   作:でち公

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再走は致しませんの?
ここでオリチャー発動です!(悪あがき)



太陽はまた昇る(繋いだ絆)

 

 暴走した望幸の魔力砲撃をジャンヌ・ダルクの宝具によって一度は防ぐことが出来た。

 だが、間髪入れずに今度は竜の体の胸に該当する部分に出来たパックリと大きく開いた口に魔力が収束していくのが見えた。

 

 マズい、とそう本能的に理解するも防ぐ手段が思いつかなかった。

 万事休す──そう思われた瞬間。

 

「今!」

 

 その声は決して大きくはなかった。

 けれど、それでもこの鉄火場全体に響き渡る程、澄んでいて誰もが魅了されてしまうような声だった。

 

 そして立香はその声の持ち主が誰なのかをよく知っていた。

 

「ステンノ! それに──」

 

「オッケィ、任せて!」

 

 エリザベート! と喜色に富んだ声をあげようとして、エリザベートの手にあるものを見て立香は口をヒクつかせた。

 

 マイクだ、『()()』エリザベートがマイクを持っている。

 

「子犬ー! 私の歌を咽び泣きながら聞きなさい!」

 

 ──スゥッ、とエリザベートが大きく息を吸い込んだのを確認した瞬間、ネロを除いた立香達は今が危機的状況下にあるのにも関わらず全員が耳を塞いだ。

 

鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)

 

 次瞬、エリザベートはもう片方の手に持っていた槍を地面に突き立て、魔法陣らしきものを展開させる。

 そして魔法陣からカラフルな色の光とともにチェイテ城が召喚される。

 その様はまるでチェイテ城そのものがミラーボールのようであり、明らかにテンションが最高潮に達しているエリザベートのデスボイスが放たれた。

 

Laaaaaaaaaaaa!!!

 

 距離が離れているお陰か物理的な被害こそ出ていないが……その、あまりにも酷い。

 耳を塞いでいるのにそれを貫通してくるエリザベートのデスボイスに精神が削られる思いだった。

 

 そのデスボイスを向けられている望幸と言えば──何処か興味を抱いているかのような、或いは呆然としているかのように魔力収束をやめてエリザベートの方を見ていた。

 

 動きを止めてジッとエリザベートの方へと視線を向けている彼に騒音に紛れて近づく一つの影。

 

「前に会った時はあなたの強靭な理性のせいでフラれてしまったけれど、()()()()()()()()()()?」

 

 悪戯な笑みを浮かべて未だ人の体から脱しきれていない彼の上半身の方へと詰め寄るステンノ。

 両手を彼の首に回した時にようやくステンノの存在に気がついた彼は抵抗の為か顔を彼女から思い切り逸らした──が。

 

「駄目よ、ちゃんと私を見なさい」

 

 どう足掻いても逃げられないようにステンノは彼の額に自分の額がくっつくほどの距離までその顔を近づける。

 薄い紫の瞳と濃い赤の瞳が交錯する。

 

「ふふ、本当にあなたって子は……一途で素直な子ね」

 

 脳髄を溶かす甘く蕩けるような魔性の声が鼓膜を震わせる。

 物憂げな視線を投げかけ、その身をしなだれかける。

 完成した「偶像(アイドル)」「理想の女性」として生まれ落ちた女神としての能力をただ一人を魅了する為だけに全力を注ぐ。

 

 それに反応してか、彼の体から白い瘴気が溢れ始める。

 当然、体に密着しているステンノにも瘴気は侵略を開始する。

 

 影の竜のようなサーヴァントを魔力へと分解する機能こそないものの、ヴォイドセルと呪いが混じりあったそれは神であるステンノにとっては耐え難いものだ。

 

 それでもステンノはその表情を一切揺るがすことはなく──

 

女神の微笑(スマイル・オブ・ザ・ステンノ)

 

 ──瘴気が彼の視界を遮るよりも早く宝具を発動させた。

 

「────」

 

 彼の動きがピタリと止まった。

 まるで大量の情報を一気に流し込まれてフリーズしたかのようにピクリとも動かず大人しくなったのだ。

 

 それを確認したステンノはついに限界が来たようで彼の首から手を離して落下し始めた。

 

「ステンノ!」

 

 それを立香はステンノが地面に激突しないように身を滑り込ませ、受け止め──切れずに自分がクッションの役割を果たすことで彼女が地面に激突することを防いだ。

 

「あいたた……」

 

「あら、ありがと」

 

「ううん、こっちこそ。本当に来てくれてありがとう。でも、どうやってここが? あの島から此処までって凄く遠いよね?」

 

「ふふ、それはね、あの子が私があげた物を大事に持っていたからよ。あんな姿になっても大切に保管してるんだもの。本当に素直でいい子だわぁ」

 

 そう言って頬を上気させ、妖艶に微笑むステンノの姿に立香は何故かほんの一瞬胸がもやもやとしていた。

 何故? こんな危機的状況下で彼を助けにわざわざ来てくれたのに? 

 

 それは立香自身も気付くことの出来ない小さな小さな独占欲というもの。

 端的に言えば、彼が他の女性からの贈り物を大切にしていたと聞いて嫉妬してしまったのだ。

 

 とは言え、今はそんな感情など些事に過ぎない。

 彼をどう助けるべきか、それこそが今の最重要項目だろう。

 

「──とは言え、私の魅了もそう長くは持たないわね。私の魅了が効いたのも彼が油断していたというのと本能が強く表に出ていたからに過ぎないもの」

 

 本当に可愛い子だわ、とそう呟いて彼の方を見るステンノ。

 

 事実、ステンノの言う通り動きを止めていた彼の体が少しずつ動き始めている。

 ステンノをずっと見つめていたはずの瞳は時折近くにいる立香の方を見ていたりと少しずつ、少しずつステンノの魅了から脱却を始めていた。

 

「ほらほら、彼を助けたいのでしょう? なら、悠長に構えている余裕はないわよ? それこそ、私の魅了が解けたらもう二度と魅了はかからないでしょうしね」

 

「でも、どうやって──」

 

「その為に足りなかったものは私がちゃんと用意してきてあげたわ。……こんなにしてあげるのは特別よ?」

 

 足りなかったもの──? 

 

「とぉ──うッ!!」

 

 そう疑問を抱いた瞬間、元気のいいハキハキとした声が立香の頭上から聞こえた。

 そしてその声の主は立香とステンノの目の前にヒーロー着地をするとゆっくり立ち上がり、不敵な笑みを浮かべてこう言った。

 

「タマモナインが一人! タマモキャット参上! なのだワン!」

 

 現れたのはカルデアに在籍している玉藻と瓜二つの女性──ではあるのだが、言動や行動が似ても似つかぬほど奇天烈なタマモキャットであった。

 

「……ご主人、今度こそキャットは助けてみせるのだナ」

 

 ここに彼を助け出す駒は全て揃った。

 であるのであれば後は彼を助け出すのみ──! 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 彼の動きはまだ止まっている。

 だが、それもそう長くは無いことは彼から溢れる瘴気の量が証明していた。

 

「どれ、ここは一つキャットがじゃれついてやるのだ」

 

 ステンノの魅了対策のためにか彼の目元を完全に覆った白い瘴気。

 それの溢れた一端が迫るタマモキャットに向けて放たれる。

 

 それに対してタマモキャットは鋭く尖った爪を振るう。

 たったそれだけで白い瘴気はあっさりと霧散する。

 

「ニャハハハ! 甘い、甘すぎる! まるで綿飴のように! ん? 人参の方が甘いカ?」

 

 白い瘴気は彼の刻まれた呪いが溢れて出てきたもの。

 バーサーカーになりEランクまで下がったとは言え、彼女の大元はランクEX(規格外)の呪術の到達点に至った存在。

 故にその分体として生まれた以上、高々溢れた程度の呪いを散らす事なぞ赤子の手を捻るよりも容易い! 

 

 襲い来る瘴気を爪で散らし、今だ本調子ではないのか大きな動きを見せない彼に対して手を伸ばし、竜の体に触れた。

 

「──むっ!?」

 

 そして触れたと同時にタマモキャットは飛び跳ねる猫の如く大きく後ろへと下がった。

 毛を逆立て尻尾を2倍の大きさまでブワッと膨らませた彼女は信じられないものを見る目で彼を見た。

 

「何も混ざっていない──!?」

 

 タマモキャットはまず竜の体に触れたと同時に呪術による解析を行った。

 この現象が呪術によって引き起こされた現象であるのであれば抑制が出来るはずだと肉体の解析を行ったところ彼の内部で起きている現象に絶句した。

 

 竜の因子、遊星の因子、人の因子、オリジナルの因子──そして正体不明の謎の因子。

 

 その全てが同じ体に存在しておきながらも何一つとして混ざっていなかった。

 全ての因子が最初から独立して存在しているせいであまりにも彼の体は混沌としている。

 

 これで因子同士が混ざり合った結果、このような事象を引き起こしたというのならまだ手のつけようはあっただろう。

 

 何故なら混ざり絡み合った結果、その事象が起きたというのならその一つ一つを紐解いていって、互いに干渉しないように隔離した上で抑制、或いは封印といった形を取れば自ずと彼の体は元に戻るはずだ。

 

 だが、最初から何も混ざっておらずそれぞれが独立した状態で互いに干渉しあって今の現象を引き起こしているのだとすれば解いて抑制する行為が意味をなさない。

 

 それにもう一つ──

 

「分化している……のか?」

 

 彼の体の中で特に強い反応を示すものが二つあった。

 一つは彼の上半身の心臓部に当たる場所、もう一つは竜の体の心臓部に当たる場所だった。

 

「聖杯 is 何処だワン!? それとも聖杯に倍加の術でも使ったのか? ううむ、何と恐ろしき所業。聖杯錬金術とはこのキャット恐れ入った」

 

 そう吠えるタマモキャットに立香達は困惑していたが、タマモキャットの言葉の真意を理解した玉藻はロマニに尋ねた。

 

『ご主人様の体をもう一度調べろ! 恐らく今のご主人様には核が二つ存在している!』

 

『わ、分かった! 解析班、望幸くんの体から強い魔力反応を示す場所を探して!』

 

『は、はい!』

 

 通信越しに管制室のメンバーたちが慌ただしく動き始める。

 カタカタと機械を動かす音が響き、その数秒後に現れた結果にロマニ達は息を呑んだ。

 

『これは──』

 

『聖杯の反応がするのは上、下の方は特異な反応こそあるもののまだ聖杯の反応は欠片もない……なら──』

 

 表示された結果は彼の心臓に当たる部分が二つあるということだった。

 そして上半身側の心臓の反応が徐々に弱まっていることから彼は今、心臓を新しいものへと作り替えている。

 それこそ、化け物の体にふさわしい悍ましく強靭な心臓へと。

 

 故に心臓が二つあるも同義である今の彼の出力は不安定ではあるものの凄まじいものとなっている。

 だからこそ、魔神柱としての姿になったフラウロスを一撃で消し飛ばせたのだろう。

 

『盾の娘! 召喚サークルを設置しろ!』

 

「え、えぇ!? 此処で、ですか!? 設置したところで龍脈がない以上──」

 

『あるであろう! ご主人様が作り替えた龍脈が!』

 

 玉藻の一言にあっ、と声が漏れた。

 そうだ、今この場には龍脈が存在する。

 彼が置換魔術を用いて強引に作り替えた龍脈が。

 

 ならばそれを用いれば召喚サークルの設置は可能だ。

 

『駄狐! お前が妾を呼べ!』

 

「にゃにおう!? このキャットにオリジナルを呼べと申すか!?」

 

『お前しか妾を呼べるやつがおらぬ!』

 

「そう言ってご主人を独り占めするつもりだな!? そんな暴挙はお天道様が許してもこのキャットが許さん! ……キャットもお天道様だからお天道様もやっぱり許していないワン!」

 

『言ってる場合か! お前も妾の分体ならば此処にいる意味を理解しているのであろう!?』

 

「む、む、むむむ〜!」

 

 その言葉にタマモキャットは嫌そうに、本当に渋々といった様子で黙り込んだ。

 タマモキャットとて理解しているつもりだ。

 

 此処に私が呼ばれたのはきっとこの時の為なのだと。

 

 それに──ご主人の幸せはキャットの幸せでもある。

 彼が幸せでいてくれるだけでいい。

 この思いだけは今も昔も変わらない。

 

 ならば、ご主人の幸福とキャットが我慢すれば済むことなど天秤に掛ける必要すらないだろう? 

 

 そう自分に言い聞かせてマシュが設置した召喚サークルへと歩み寄った──瞬間。

 

 キィィンと耳障りな金属音が鳴り響いた。

 

 その音の正体は彼がステンノの魅了を振り切るために魔力生成しようと空気を大量に吸引し始めたことだった。

 

「早く! あの子もう振り切るわよ!」

 

 ステンノがそう警告すると同時にタマモキャットがマシュが設置した召喚サークルへと飛び込むと、召喚サークルが唸りを上げて回転を始めた。

 

「▅▅▂▅▂▂▅!」

 

 悲鳴のような雄叫びと共についにステンノの魅了を振り切った彼がその翼を大地へと叩きつけようと振りかぶり、それと同時に召喚サークルが一際強く輝く。

 

 そして爆砕音が鳴り響いた。

 

 大量の魔力が込められた翼の噴出口を叩き付けた瞬間、臨界ギリギリまで溜め込まれていた魔力を解放。

 その結果、逃げ場を得た魔力は爆発という現象を引き起こしたのだ。

 

 今の一撃で爆風があらゆるものが吹き飛ばし、叩き付けられた大地には大きなクレーター……が出来上がっているはずだった。

 

「──ご主人様!」

 

 翼を抑え込んでいたのはカルデアより召喚されたタマモキャットの大元の存在──玉藻の前だった。

 

 正直なところ玉藻がこの地に召喚されるのと彼が攻撃をしたのは同じタイミングであった。

 玉藻は召喚と同時に防御術式を展開したが、それが展開されるよりも彼は早く振り下ろしていた為、間に合うかどうかはギリギリだったのだ。

 

 だが、ほんの僅かな一瞬、攻撃が緩んだことを玉藻は見逃さなかった。

 あの刹那の瞬間があったからこそ防御術式を十全に機能させた上で防ぐことが出来たのだ。

 

 つまり彼の意識はまだ残っている。

 あの状況下で未だ自分を見失っていない。

 

 ──ならば、彼を元に戻す手段は存在する。

 

「してオリジナル、ご主人をどう戻す?」

 

「核に干渉して分離させる」

 

「……オリジナルもしや耄碌しているのか? ご主人の状況は共有しているはずだが」

 

「戯け、知っておるわ。今のご主人様の核は二つあり、その内の一つに聖杯が今単独で存在している。なら、そこは十分隔離場所になるであろ?」

 

「───!」

 

 その言葉にタマモキャットは何かに気がついたようなハッとした顔を浮かべる。

 

「──つまり何を意味する?」

 

「……」

 

 分かったような顔していながら何一つとして理解していないタマモキャットに顔には出さないが玉藻は一瞬かなりイラついた。

 

「聖杯の本来機能のひとつに魂を集積する機能があるだろう。そこに細工を施して檻へと変える。そしてご主人様の人以外の因子を全て聖杯へ移すことで人の因子の減少を止めるということよ」

 

「ふむん、キャット粗方理解。つまり聖杯ポリスにご主人の因子以外を全て逮捕してもらうということだナ?」

 

「……まあ、それで良い」

 

 要は聖杯という外付けHDDに人以外の因子を入れ込むことで星崎望幸という本体容量を軽くするということだ。

 そもそも人の因子が減少傾向に見られたのは他の因子によって圧迫された容量を確保するために一番役に立たないであろう人の因子から排除されていったからだと睨んでいる。

 

「まずは核に干渉せねばな」

 

「よし来た! ではこのキャットがご主人に甘えてその動きを止めてくれよう!」

 

 そう言うやいなや勇猛果敢に彼に飛びつくタマモキャット。

 当然、彼女を迎撃する為に攻撃を開始する彼であったが──明らかに動きが鈍い。

 

 槍のような翼の先端をジェット噴射により加速させ、タマモキャットへと放つが……放つまでに明らかにタイムラグが存在している。

 

 加速こそ速いものの撃つまでが遅いのであれば攻撃を避けるなど造作もなく。

 

「キャット肉球チョーップ!!」

 

 翼による刺突をひらりと身を捩るだけで躱したタマモキャットは彼の顔を覆う瘴気に爪を突き立て、瘴気を僅かに散らす。

 

「む? 先程よりも密集しているのか? まるで団子のようだナ!」

 

 驚くキャットの頭上に影が落ちる。

 見上げればそこにあったのは凄まじい速度で落下してくる巨岩だった。

 一体どれほどの速度で落としたのか、僅かに赤熱しながら落ちてくる燃え盛る巨岩。

 

「呪相・氷密天」

 

 しかし、それを玉藻が即座に呪術により氷の弾丸を射出し鎮火、そして続く竜巻により細かくバラして遠くへと吹き飛ばす。

 そのまま流れるように竜の体に触り、核へと干渉する──が。

 

「ぐっ!?」

 

 触れた玉藻の手が強制的に弾かれる。

 

()()()()()()()()! 厄介な──っ!?」

 

 大きく開かれた竜の顎に魔力が収束する。

 際限なく高まり続け、圧縮された魔力に火の元素を付与し、生命を焼き尽くす竜の息吹へと姿を変える。

 

「──────」

 

 零距離から放たれる熱線は玉藻を焼き尽くすべく炎を照射する──が、玉藻はそれを一息に握り潰した。

 

「温い」

 

 炎を握り潰すという常識外れの現象を引き起こしながらも今度は動きを止めるべく、呪術を操り影を縛ることで彼の動きを強制的に停止させる。

 

駄目、それじゃあ足りない

 

 しかしそれはヴォイドセルによる術式の侵食、そして魔力へと分解し破壊することで術式を崩壊させる。

 瘴気に包まれた彼の目に値する部分から赤い光が玉藻を見つめる。

 

汚染侵食率60%超過──基本性能大幅向上。外装増設

 

 彼の影が盛り上がり、彼の体に纏わりつく。

 そしてそれは太く強靭な竜の腕のような形を取った。

 

「▅▂▂」

 

 引き絞られた矢のように突き出された竜の腕は玉藻を狙う。

 玉藻はそれを後ろに飛んで避け、狙いが外れた竜の腕は強烈に地面を叩いた。

 瞬間、地震のような揺れが発生する。

 

「駄狐! 一度下がれ!」

 

「むっ、了解」

 

 タマモキャットが飛び引いた瞬間、残った竜の腕がタマモキャットがいた場所を空間ごと薙ぎ払う。

 その強烈な一撃で突風が吹き荒れ、直撃すれば死は免れないということが即座に理解出来た。

 

「……ふぅ」

 

 玉藻を一度大きく息を吐いて後ろに控えていた立香達へと目を向ける。

 

「藤丸立香、ご主人様の体は妾が調律し、元に戻す。お前達はその間に動きを抑えて欲しい」

 

「うん、任せて!」

 

「そして──アルテラ、今の貴様は味方……という認識で良いか?」

 

「……ああ」

 

「そうか、ならその腕で遊星の因子に干渉は出来よう?」

 

 そう言って玉藻はアルテラの右腕──セファールの右腕をそのまま持ってきたかのような右腕に目を向ける。

 

「短時間なら可能だ」

 

「なら問題ない、貴様は遊星の因子を抑制しろ。その間に妾が肉体を調律する」

 

 そう言って玉藻は正面へと向き直った。

 先程よりも更に変異が進み、より歪に、そして全身から大量の瘴気を吹き出す彼の姿を見据える。

 

 そして──立香達は一斉に突き進んだ。

 

「▅▂▅▅▂▂▅▅▅」

 

 竜の体に存在する口が咆哮をあげて熱線が放つ。

 それを玉藻はもう一度握り潰し、影縛りを行う。

 しかしながら、当然それは僅かな間で破壊される。

 

 その僅かな間で立香達は彼へと肉薄する。

 

 竜の腕がサーヴァント達を薙ぎ払おうと大気ごと殴りつける。

 

「こんなものっ!」

 

 振るわれる竜の剛腕をジャンヌ・オルタは同じ竜の怪力を以って上へと蹴り上げる。

 体勢を崩した彼にアルトリア・オルタと両儀式は追撃を仕掛ける。

 

「ハァッ!」

 

「ふっ!」

 

 振るわれる二刀は影によって形成された竜の腕を斬り飛ばす。

 斬り落とされた竜の腕は元の影へと戻り地面に染み込んでいく。

 が、それもすぐに新しい竜の腕が形成される。

 

 そしてもう一度竜の腕が振るわれようとした──が。

 

 マシュの大盾の叩き付けとネロの斬撃が竜の腕を動かぬように縫い付ける。

 

『明らかにさっきより動きが鈍い……。望幸くんが手加減している、のか?』

 

『出来る限りは、だろうけどね!』

 

 ロマニとダヴィンチは彼のバイタルを常に更新し続け、何かあれば即座に報告出来るように観察を怠らない。

 その甲斐もあって、誰よりも早く彼が次にやろうとしていることに気がついた。

 

『翼の方に魔力が集中してる! 彼、飛ぶ気だぞ!』

 

 キィィンという何度目かの甲高い金属音が鳴り響く。

 大量の空気が吸引され、生み出された魔力が翼へと集中する。

 噴出口からチロチロと炎が盛れ始め、今まさに飛び立とうとした瞬間。

 

「やあぁ──ッ!」

 

 彼の体を駆け上がり、大きく跳躍したジャンヌ・ダルクが翼に強烈な打撃を与えた。

 次瞬、翼が大爆発を引き起こし彼の体が地に伏せた。

 

「────!?」

 

 混乱した様子の彼だったが、ジャンヌ・ダルクの打撃によって発生した衝撃が翼の内部で臨界寸前の魔力が暴発させたことで噴出口がボロボロに崩れ、そのダメージによって上手く立ち上がることが出来ていない。

 

 そんな彼を守るように瘴気と影が彼の体を覆う。

 

「鱗剥がしの時間だワン! まな板の上の鯉のようにつるつるにしてやろう!」

 

 飛びかかったタマモキャットが影も瘴気も纏めて散らす。

 

キャットキャットキャーット(カットカットカーット)!」

 

 残像が見えるほどに素早く爪を振るい、瘴気も影も全て剥がしきったその瞬間、アルテラが竜の体にある核へ向けて剣を突き立てた。

 

「アルテラ!?」

 

「いや、そのまま核まで突き立てろ! 核を逃せぬように直接干渉する」

 

 立香はアルテラの突然の凶行に声を上げるも玉藻はもっと深くまで突き立てろと言い放つ。

 

 ブシュブシュと大量の血を吹き出してくるが、それでもと剣を押し込みながら竜の胸を開き、核を露出させる。

 だが、当然そんなことをすれば大人しくしているはずもなく4つの尾がアルテラを排除するために串刺しにせんと迫る。

 

 それに気がついたジャンヌとネロ、そしてマシュとアルトリア・オルタが尻尾を弾き飛ばし押さえ付けた。

 

「……っ、見えた!」

 

 斬って、刺して、抉って、開いて──大量の血に塗れながらも漸く核を発見した。

 彼が立ち上がった時に最初に取り込んだ禍々しく赤いコアが内部で脈動していた。

 

 危機に反応した胎動するコアの()が開き、ブルリと震えると大量のヴォイドセルを照射。

 敵対する全てを破壊せんと広がるが、アルテラはそれに何ら構うことなく右腕を突っ込んだ。

 

 当然、ヴォイドセルはアルテラの右腕へと絡みつくが、彼女の右腕はセファールだったもの。

 であれば、ヴォイドセルの指揮権を強奪するのはあまりにも容易い。

 

 ヴォイドセルを強制的に抑制状態へと移行させ、振りまく粒子を抑えていく。

 

「玉藻!」

 

「分かっておる!」

 

 遊星の因子を停止させたアルテラの呼びかけに応えて玉藻も彼のコアを握る。

 一瞬引き抜けるかと力を入れてみたが、抜ける気配はなかった。

 彼の体に根を張っているかのように絡みつくコアに内心舌打ちをしながら術式を起動させる。

 

──分かて、離れて、あるべき姿へと

 

 竜の体が轟音を立てながら崩壊していく。

 マシュ達が必死に押さえ付けていた4つの尾も動きを止めてボロボロと形が崩れていく。

 彼の体を完全に覆っていた溢れていた瘴気が薄れ、薄らと彼の輪郭が見えてくる。

 

「藤丸立香! お前がご主人様を引き抜け!」

 

「う、うん!」

 

 瘴気が消えていく彼の体に抱きついて、グッと引っ張り上げる。

 竜の体が崩れ、その中に彼の足があるのが見えた。

 これなら──っ! 

 

「う、うぅぅ───ッ!」

 

 ぎゅっと二度と離さないようにしがみついて上へと引っ張りあげようとするが、竜の体そのものが彼を逃がさないようにしがみついているかのようだった。

 

「りつ、か……はな、れて……」

 

 彼の掠れた声が聞こえたと同時に立香の頭上に影が掛かる。

 何がと見上げれば崩壊していく竜の体の一部が竜の頭部を形取り、彼を奪おうとする立香を噛み砕くべく口を開いて突貫する。

 

「おれ、は……いい、から……」

 

「良くないッ! 絶対に離さないんだからッ!!」

 

 迫る竜の顎。

 それを前に立香は絶対に離さないと言わんばかりに更に強く彼を抱き締める。

 

「──ええ、それでいいわ。あなたはそれでいいの」

 

 そんな立香の前に立つのは戦う力など持たないステンノだった。

 

「絶対に離しちゃダメよ?」

 

 そう言って誰もが見惚れるような微笑をたたえて、彼女の魅了を込めた魔弾を竜へと向けて射出する。

 だが、サーヴァントとなり多少なりとも戦う力をつけたと言っても彼女の本質は庇護されるべき存在というもの。

 

 竜に大した傷もつけられずほんの少し怯ませた程度で僅かな時間程度しか稼ぐことは出来なかった。

 

 だが、それで十分だった。

 

「寝ときなさいッッ!!」

 

 空から強襲したジャンヌ・オルタが竜の頭を掴み地面へと思い切り叩き付けた。

 押さえ付けられた竜の頭はならばと、口内に魔力を収束させ、撃ち抜かんとするがそれすらも──。

 

「私に従えッ!」

 

 ジャンヌ・オルタの竜の魔女としての力が竜の因子に働きかけ、動きを強制停止させる。

 収束していた魔力は霧散し、竜の頭もボロボロと崩れて魔力へと還っていく。

 

「あら、ありがと」

 

「アンタの為なわけあるかッッ!」

 

 これでもはや立香の邪魔を出来る存在はいない。

 よって今こそ──! 

 

「ん、んん──ッ!」

 

 抱き抱えていた彼を勢いよく引き上げる。

 彼の下半身に絡みついていた竜の体はボロボロと崩れながらも彼へと纏わりつこうとするが、ジャンヌ・オルタによる竜の因子の抑制、アルテラによる遊星の因子の抑制、玉藻がコアへと干渉し続けることで力を失い崩壊が止まらない。

 

 そして立香はついに彼の体を完全に体を引き上げた。

 

「望幸っ! 良かった──」

 

 瞬間、完全に崩壊した竜の体が形を持たぬ影の津波へと変化し、立香ごと彼を飲み込もうと襲い掛かる。

 立香は咄嗟に彼の頭を抱え込み、自分が盾になるように覆い被さる。

 

 影が立香諸共に彼を飲み込む──その瞬間。

 

「──これが名残の華よ」

 

 両儀式の刀が影を斬り裂いた。

 

 直死の魔眼によって斬り裂かれた影は音もなく崩壊してただの影へと変わる。

 

「仕上げだ!」

 

 玉藻は摘出したコアを封印するべく術式を刻む。

 

「邪悪なるものよ、聖なる杯の中で深き眠りにつくがいい……!」

 

 禍々しく光っていたコアは力を失ったように輝きを失い、コアを囲むように出現した無数の焔に押し潰されるように砕かれ、欠片となったものも残さず焔が呑み込んでいく。

 

 そして完全な焔の玉へと変化したそれはゆっくりと彼の体に溶け込むように消えていく。

 

 焔を吸収した彼の目がゆっくりと開かれる。

 汚染によって赤く染まっていた瞳は青く、何処までも澄んだ青へと戻っていた。

 

「……本当に無茶、するなぁ」

 

 何度か瞬きした後、自分を抱き抱えている立香をジッと見つめると彼は苦笑しながらそう言った。

 

「えっと、確かこういう時は……ごめんなさい? あぁ、いや、違うか──」

 

「──助けてくれて、ありがとう」

 

「うん、うん……!」

 

 立香は涙を零しながらもう一度強く、強く……もう二度と離さないと言わんばかりに強く抱き締めた。

 

「──夜明けか」

 

 夜が明け、希望に満ちた日が昇る。

 彼女達が紡いだ想いと繋いだ絆が引き寄せた大団円を祝福するように太陽は暖かく照らす。

 

 ──落陽来たりて、太陽はまた昇る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 >あなたに4件の報告があります。

 >トロフィーを獲得しました。

 

 >連合帝国軍を打倒した者

 >遊星を討滅せし者

 >魔神柱を討滅せし者

 >獣を喰らい、竜を喰らう者

 >星に至る者

 >999の赤い薔薇と1の黒い薔薇

 

 >以下のトロフィーを獲得したことにより新たなるスキルを獲得しました。

 >竜の炉心B+

 >遊星の呪い

 >星満ちる刻

 >三位一体

 >ネ?????? 

 

 >特異点修復により以下のスキルが成長しました。

 >置換呪術C+→置換呪術B++

 >虚数魔術D+→虚数魔術B

 >神性D→神性C

 

 >特定のスキルとトロフィーを獲得したことにより新たなるルートが解放されました。

 >詳細はステータス欄からご覧下さい。

 >報告を終了致します。

 

 

 





セプテム編完結!

大変長い時間がかかりましたが、セプテム編が完結したのは評価や感想、誤字報告してくださった皆様のおかげです。
一時期モチベがヤバな事になって本当に失踪しかかってましたけど、感想を呼んだりしてモチベが復活してまた書くことが出来ました。
それからこんな拙い文章を読んで下さり本当にありがとうございました。

評価と感想をお待ちしてます。

ホモくんの過去パート

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