ロマニ……約束の時だよ、いっぱい出せオラッ!
今回は8千字とちょいと短ぇですの
斯くしてカルデアは聖杯の回収に成功し、特異点を無事に修復することに成功した。
大元の歪みを修復したことで残るはオルレアンの時と同様に細かな歪みを時間がある時に修正していけば完璧に修正することが出来るだろう。
めでたしめでたし──で終わればどれほど良かったのだろうか?
「医療班は機材を手術室に! 他の職員は──いや、治癒魔術を少しでも扱える人も来て! 今少しでも人手が欲しい! それからダヴィンチ!」
「分かっているとも!」
力には代償が伴う。
それがより強力であればあるほどに代償もまた。
「絶対に死なせるもんか! 何があったとしても君は助けてみせる」
ガラガラと音を立てて手術室へと緊急搬送されているのは意識を消失した彼──星崎望幸だった。
血は一滴も流れていない。
青白く染まった顔さえなければただ眠っているだけのように思えてしまうだろう。
彼の腹部が異常なまでに凹んでいなければの話だが。
内臓が殆ど存在していないのではないのかと疑ってしまうほどに凹みきった腹部。
それを証明するかのように今の彼の体重はあまりにも軽すぎる。
恐らく平均的な成人男性の体重の半分もないだろう。
ロマニ率いる医療班は特異点の修復を終えて戻った直後に倒れた彼を手術室へと搬送するとオペを開始する。
此処には治癒魔術を得意とする者、名医と呼んでも差し支えないほどに優れた医者などの魔術と科学、どちらにも富んだ人材が揃っていた。
糅てて加えて呪術のスペシャリストである玉藻の前、そして殺生院キアラも呪術的側面から彼の状態を把握するべく手術へと参加している。
だからきっと大丈夫──カルデアにいる誰もがそう思っていた。
それが間違いだったと知るのは彼の体を開いた瞬間だった。
「ゔっ」
「ぐ、ぷっ……!」
「……」
凄惨な光景など慣れていたはずの魔術師が口元を押さえ、吐き気を催した。
名医と呼べるほどに人体について詳しく把握している者達は彼の現状を正しく把握した上で現実を受け入れることが出来なかった。
玉藻は、キアラはそれを見て酷く顔を歪めた。
「何だこれは……何でこんな……」
手術台の上で眠る彼にも負けないほど顔を青白く染めたロマニが言葉を零す。
「……何処から手をつければ」
暴かれた彼の中身。
それはどうしようもないほどに手遅れだった。
溶けているのだ。
内臓の殆どが液状化し、僅かに残った臓器も出鱈目に繋がれていた。
生きていることが奇跡──なんてレベルではない。
死んでいなければおかしい。
生きていること自体が間違えていると、一瞬でも脳裏を過ってしまった。
それでもなお彼が生き長らえているのは──
「聖杯、か」
溶けて、出鱈目に繋ぎ合わされた臓器の中で傷のひとつもなく今も尚力強く鼓動している彼の心臓──即ち聖杯が彼の死を許していない。
聖杯が存在しているからこそ──聖杯が彼の死を認めないからこそ彼は死んでいない。
否、死ぬ事を許されない。
……ふと、脳裏に過ぎる。
今ここで心臓を抜き取ってしまえば彼は楽になれるのではないだろうかと。
つい先程までは何としてでも生かしたいとそう願っていたはずなのに現状を正しく理解した今、彼をここで死なせてあげた方が良いのではないかと──一瞬でもそう思ってしまった。
けど、それでも彼は……今のカルデアにはなくてはならない存在だ。
人理が焼却され、レフ・ライノールによって数多の職員やマスターの命が奪われた今、魔術師でありながら藤丸立香と同等のレイシフト適性を持つ彼を失ってはならないのだと、カルデア代理所長としてのロマニは決断した。
「……死なせない」
それが彼にとってどれほどの地獄を味合わせる事になるのかを理解しながらロマニは彼の治療を開始した。
溶けきった内臓は全て取り替え、出鱈目に繋がれた内臓は正しい形へと繋ぎ直す。
文字にすればその程度のことではあるが、実際に彼の治療を終えたのは手術を開始してから38時間を超えた頃だった。
絶やすことなく治癒魔術を掛け続け、彼の全身の血液を総取替するほどの輸血を行い、ぶっ通してで行われた大手術。
本来ならば100%失敗しているであろう手術が成功したのは彼に宿る聖杯と呪術について造詣が深い玉藻とキアラの尽力が大きいだろう。
聖杯は彼の死を許容しない。
故に死ぬ事が出来ない彼の肉体は徐々に徐々に元の形へと戻ろうとする性質があった。
それを玉藻とキアラが呪術によって干渉することでより速く、そして的確に肉体をあるべき姿へと戻るように誘導させる。
それが功を奏した。
彼女達の尽力がなければ更に長い時間が掛かったであろうことは想像にかたくない。
手術を終えて彼の容態に異常があった場合、即座に気がつけるようにと様々な機械が取り付けられた彼の姿はあまりにも痛々しい。
そしてまた、そんなに彼に寄り添うように時間があればずっと傍に居続ける立香の様子もまた。
「望幸」
立香は彼を前に多くを語らなかった。
ただずっと彼の名前だけを呼んでは眠る彼の様子を時間の許す限り眺めていた。
涙が枯れるほどに泣いたのだろう。
いつもの快活さは消え失せ、泣き腫らした瞳は親とはぐれ不安に揺れる幼子のようだった。
それを影から見ていたロマニは誰にも気が付かれることのない人気のない場所へと移動して──思い切り吐いた。
「ゔっ、お、ぇ……!」
びしゃびしゃと吐瀉物が口元を押さえていた手を汚す。
胃酸によって喉が焼ける、ツンとするような刺激臭が鼻を突く。
けれど、そんなことに気がつけないほどにロマニは焦燥していた。
「はーっ……はぁ……」
罪悪感で気が狂いそうだった。
気が狂えればどれほど楽だっただろうか。
吐き散らした吐瀉物を片付ける余裕すらなく、膝を抱えて身を縮こまらせる姿はまるで罰に脅えて震える子供そのものだ。
「僕が、僕が……あの時、あんな事を願わなければ……」
意味の無いもしもだと理解している。
こんなことをしている暇があるのなら一刻も早く彼が元に戻れるように手を尽くすべきだと理解している。
けれど、それでも思わずにはいられないのだ。
「う、ぁぁ……」
ボロボロと大粒の涙が零れ落ちる。
これは罰なのか?
思い起こすのはカルデアにやってくる前の記憶。
マリスビリーと共に聖杯戦争を勝ち抜いて、勝者として聖杯に願いを叶えてもらった。
ただの人になりたいと──かつての私は願った。
力を失い、ただの人としてこの世に受肉して……終末を垣間見た。
この世の終わりそのものを体現したかのような光景を最後に私はただの人である僕へとなった。
何の力も持たないただの人──それに憧れていたはずなのに最後に見せられたあの光景によって僕の運命は決定された。
終末を知ったものの責務を果たさなければならない。
終末を防ぐ為だけに今まで生きてきた。
慣れない体でこの世界で藻掻くように生きて、それでもあの未来を知ったものとして他人をあまり信用せず、今の自分でも対抗策を打てるように生前よりもずっと頭を回して生きてきた。
もし、あの時聖杯に願わなければと思ったことは一度や二度じゃ足りない。
けれど、それでもと前を向いて進むことを止めなかった。
必死に生きて生きて生き続けて……彼等を見た時に初めて運命なのだと思った。
藤丸立香と星崎望幸──異例のレイシフト100%の適性値を持つ二人。
彼等がこの状況下でカルデアにやってきたのは運命としか思えなかった。
特に星崎望幸の存在は大きかった。
彼自身の実力も高く、まるでこういった状況に慣れているかのように冷静に判断を下すことの出来るとても頼りになる魔術師。
だと言うのに彼はあまりにも魔術師らしくなかった。
今まで彼の事を注意深く観察しているからこそ分かったことではあるが、あの子は根っからのお人好しだ。
藤丸立香のように分かりやすいお人好しというわけではない。
彼女のように表情がコロコロと変わるわけでもなく、機嫌に応じて分かりやすく声の色が変わったりなどもしない。
けれど、あの子はこの極限下の状況でずっと他人のことを気にしていた。
落ち込んでいる職員や塞ぎ込んでいる職員がいればさりげなくフォローしたり、或いはフォロー出来る人にお願いしていたりと動いていた。
僕だってそうだ。
落ち込んでいる時に有無を言わせずに好物の饅頭を口の中に突っ込まれたり、マシュやダヴィンチ、立香ちゃんの所に引き摺り回されたことだってあるけど、そういう時は決まって僕が沈み込んでいた時だった。
──そんな優しい彼を化け物になるように追い込んでしまった。
「僕がもっとしっかりしていれば」
彼を無条件で信頼していた罰なのだ。
彼ならば、と信じすぎていた。
今までの常識をひっくり返して、絶望を撥ね返してきた彼ならばきっと大丈夫だと危機的状況下であったとしてもそう無意識に思い込んでいた。
その結果がこれだ。
彼は人であることを捨てて抗った、抗わせてしまった。
そして僕が聖杯に人になりたいと願った罪の帳尻を合わせるように聖杯は彼を化け物へと仕立てあげた。
自己嫌悪と罪悪感で気が狂いそうだった。
けれど、僕は狂ってはいけない。
だって、今の僕は所長代理だから。
今のカルデアを引っ張っていくためにも僕が狂うことは許されない。
だから、だから……今の僕に何が出来る?
「……望幸くんは死ぬことはない。目が覚めないのはバイタルグラフから予測するに肉体と中身の整合性を取っているんだろう。話を聞くに今の望幸くんの心臓──聖杯には多種多様の因子が封印されているから、それによって影響を受けた肉体が、うぶっ……ふぅ、壊れないように、かつ現時点で力を最も発揮出来るように構築が進んでると考えていいはずだ」
膝を抱えて蹲り、状況整理の為に口に出す。
彼が人から逸脱していくという事実に胃酸がせり上がってくるが、それを無理矢理飲み干して思考を回す。
呪術による肉体改造──僕の専門ではないけれど、それでも知識としては十分に存在する。
それに僕なんかよりも呪術に対してもっと詳しいキアラと玉藻の両名が共に彼に何かがあれば動くであろうことは想像にかたくない。
特に玉藻の方は彼に執着している様子すら伺える。
そんな彼女達がそれを見逃しているというのなら、今はそれが必要だと判断しているからだろう。
カルデアの所長代理としての僕の意見としては彼が強くなるということは歓迎だ。
魔術師である彼が強くなれば強くなるほどそれだけ人理修復の安定性が増す。
だが、ロマニ・アーキマンとしては許容出来ない。
彼の人外化は認められない、認めたくない。
「今なら彼の人外化は阻止出来るはずだ。なら僕がやるべき事は望幸くんと立香ちゃんのサポートと並行して彼を元に戻す手段を確立すること」
聖杯によって僕が人へとなり、彼は人外へと成り果てた。
であるのならばこの事象は不可逆ではなく可逆である証明だ。
故に彼を人へと戻す手段は必ず存在する。
決して手遅れなんかじゃないと己を鼓舞しなければ潰れてしまいそうだった。
「過去の文献を漁ろう。幸い、此処にはそういった仄暗いものは存在するだろうし……。ああ、でもそうなるといくつかの資料をサルベージしないといけないなぁ」
気が滅入るねぇ、とボヤきながらロマニはゆっくりと立ち上がる。
彼を、望幸くんを人に戻す。
どんな手段を取ろうとも彼を元に戻さねばならない。
「は、ははっ、はははっ……」
そこまで思考を回して思わず口から乾いた笑い声が漏れ出た。
それは彼に対して──ではなく、
「……なんで、望幸くんなんだ」
罰を受けるべきは罪を犯したものだけだろうに。
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ダヴィンチの工房──最近になってようやくカルデア爆破テロ前の状態へと戻すことのできた工房でダヴィンチは椅子に座りながらなにか考え事をしていた。
「……何か、戻った?」
立香達が帰ってきた時は瀕死の状態になっていた彼のせいで気がつかなかったが、手術を終えて一命を取り留めたことが出来たことで多少の余裕と落ち着きが戻ったダヴィンチはふと、自身の異変に気がついた。
正確には把握出来ていないのだが、自身に何かしらの違和感があるのだ。
いや、より正確に言えば自身に違和感があることに気がついたと言うべきなのか。
「うーん? 何だろうこの……妙な感覚は」
何かが自分の下に戻ってきたという感覚がある。
だが、何故かそれ以上に欠けているという感覚が強い。
強いて言うならあまりにも大きく欠けすぎていたが故にそれを欠けていたと認識出来なかったが、一部が元に戻ったことで漸くソレが欠けていたと認識出来た……そんな感じだろうか。
欠落していた、それもかなり大きな何かが。
だが、その欠落しているものが分からない。
力……は違うか、サーヴァントとしての力は十全に機能しているし、知識の方も欠落しているとは感じていない。
──気の所為か?
思わず首を傾げるが、やはり違和感がある。
何か、何かを忘れているような……だが、何を忘れているという?
カルデアに召喚された頃の記憶は全て存在する。
生前の記憶だって問題ない。
知識が何か欠落しているという感覚もなく、かと言って何か大事な事を忘れている……という感覚もまあ、ないだろう。
「まあ、これだけ考えても分からないのなら一度情報を整理してからやるべきだろうねぇ。……そういえば、最近はずっと忙しくて芸術活動が出来なかったし、偶には何かを描いて発散するのもいいかな」
そういうや否やダヴィンチは久しく使っていなかったパレットとキャンバスを取り出して設置する。
そしてキャンバスの前に腰を落ち着けると無心で絵を描き始めた。
……こうやって芸術活動に勤しんでいると頭の中のもやもやが全て明瞭になっていく。
この感覚をダヴィンチはこよなく愛していた。
淀みなく手が動き、一人の人物を描き始める。
誰がモデルというわけでもない、ただ頭に浮かんだものを絵に投射するように一心不乱に手を動かして形へとしていく。
──立香ちゃんとマシュの事が心配だ。
彼が瀕死の状態で此処に緊急搬送された時の取り乱し方は尋常なものではなかった。
特に立香ちゃんに関して言えば下手に彼がこのまま亡くなれば後追いすらしかねないと思わせるほどの取り乱し方だった。
今は手術が成功して一命を取り留めたということもあって二人とも落ち着いているが、それでも不安定な様子は多々見受けられる。
マシュはいつにも増して鬼気迫る様子で最近復活させたシミュレーターに篭もり続けている。
心配になって様子を見てみればケイローンやエミヤ、クーフーリンと言ったサーヴァントに戦いの教えを乞うているようだった。
恐らくは先の特異点で力不足を痛感した──というよりも自分が足手まといだったと感じてしまったのだろう。
だが、あれに関しては仕方がないというのがダヴィンチの見解だった。
何せ相手はあのセファールだ。
一級のサーヴァントですらまともに戦えばまず勝ち目がない相手にデミサーヴァントになってまだ2ヶ月と少しのマシュがまともに戦えるわけがない。
聖杯による顕現であるが故に大幅に弱体化はしているのだろうが、それでも元は神々すら蹂躙したような存在だ。
よって勝てたこと自体が奇跡なのだ。
奇跡ではあるのだが、マシュにそう伝えたとしても彼女は納得しないだろう。
何故ならば、あのセファールを相手に抗えてしまった彼がいるから。
つくづく規格外。
サーヴァント相手に戦えるだけでもおかしいというのに、セファールを相手に一歩も引かず、か細い勝利の糸を手繰り寄せた手腕。
一歩ズレれば即死するような状況で心が揺らぐことすらなく、的確に追い詰めて勝利を得る胆力。
そんな彼がいるからこそ、マシュは何を言われようとも納得はできないのだろう。
何故ならば基礎スペックだけ見ればデミサーヴァントであるマシュが全て上をいくからだ。
そう数値上で語るのならばあの時の彼のスペックはマシュにすら遠く及ばなかった。
詰まるところ、彼は純粋な戦闘技能と今までの経験だけでセファールに抗い、そして勝利をもぎ取ったのだ。
故にマシュと彼の間に存在したのは単なる戦闘技能と経験の差。
だからこそマシュは今、奮起しているのだろう。
足を引っ張りたくないと思うから先達である他のサーヴァントに頭を下げて訓練をつけてもらい、少しでも助けになれるようにと必死なのだ。
「……でも気になるのは彼が何処でそんな経験を積んだか、なんだけどね」
戦闘にはあまり詳しくないダヴィンチから見ても異常と言えるほどに彼は戦いになれている。
──魔術師だから?
いいや、否だ。
魔術師だからという理由では到底足りない。
魔術師である以上、大なり小なり戦闘技能を磨くことはあるだろうが、望幸くんの年齢ではとてもではないが釣り合わない。
じゃあ何かしらの聖杯戦争に参加した?
いいや、それも否だ。
そもそもそんなことをしているのなら確実にカルデアのパーソナルデータに記載されている。
「……思えば望幸くんのこと何も知らないなぁ」
分かっているのは立香ちゃんに負けず劣らずのお人好しな所と無表情で感情がないのかと思いきや案外感情豊かな子だと言うことくらいだろう。
どうやってそこまでの戦闘技能と経験を得たのかとか、置換魔術をどういうふうに扱っているのかとか色々聞きたいことはある。
でもそれだけじゃない。
もっと、もっと彼の色んなことを知りたいと思うのだ。
「……今度立香ちゃんやマシュ、それからロマニも呼んで皆でお茶会みたいなことをしてみるのもいいかもね。彼、立香ちゃんにはすっごい甘いから彼女が誘えば来てくれる可能性が高そうだし」
大事にしているのだろうなとは思う。
彼は周囲によく気を配る子ではあるけれど、それ以上に幼馴染である立香ちゃんのことを良く見ている。
だからこそ、彼女の危機に関しては人一倍敏感なのだろう。
そのおかげで……或いはそのせいであの悲劇に繋がった。
胸を貫かれ、頚椎を砕かれたあの姿は流石にもう二度と見たくない。
それから、生きる為には必要だったのだとしても竜と素直に形容し難いあの姿も。
「彼が起きたらいっぱい褒めて、いっぱい叱って……色々とお話をしないと、ね?」
だから早く起きるんだよ、とダヴィンチは呟く。
このカルデアにいる誰も彼もが彼の目覚めを待ち侘びている。
何だかんだで彼の世話になっている職員は多いのだ。
聞けば彼、職員の頼み事を色々と聞いていたり、メンタルケアもどきみたいなこともやっていたみたいだし。
「……出来た出来た。ふふ、やっぱり芸術活動に勤しむのはいいな。心も体もすっきりするね」
いつの間にか完成していた絵を見てダヴィンチは微笑む。
「うんうん、中々に良い出来じゃないか。さて、これは何処に飾ろうか。アトリエに飾っておくのもいいが……いや、うんそうだな。この絵は此処がいいか」
ダヴィンチは完成した絵を額縁に飾り、工房の片隅に設置する。
そして完成した絵を改めて眺めると気恥ずかしそうに頬を掻いた。
「いやあ、我ながらなんというか……気持ちが先走りしすぎちゃったかなぁ? でも、うん、本当にこんな未来が待っていたら嬉しいねぇ」
ダヴィンチが無意識に描いていたのはカルデアでお茶会をしているものだった。
そこにいるのは自分やロマニは勿論のこと、望幸くんも立香ちゃんもマシュだっている。
そして──オルガマリーもまた。
笑っていた、皆が幸せそうに笑っていた。
ああいや、彼だけは笑っている様子が思い浮かばなくて相変わらずの仏頂面だったけれど、それでもいつもの仏頂面よりかは柔らかい表情をしていた。
オルガマリーも含めた全員でのお茶会。
それが実現出来たのならどれほど素晴らしく、どれほど幸せだろうかとダヴィンチはそんなに夢想に胸を馳せる。
そしてそんな夢を実現させるためにも今からもっと頑張らねばなるまい。
その為にもまずは──新しい礼装でも作ってみようか?
どんな性能にするか、どんなデザインにするかなどと考えながらダヴィンチは図面を描き始める。
その視界の片隅に自分が描いた幸せな結末を映して。
ロマニは人から化け物に転落したホモくんのことを絶対引きずるよなぁと考えてます。
ホモくん自身がそれを望んだにせよそうじゃないにせよ、聖杯を使って化け物堕ちするのはロマニの過去を刺激するには十分だと思うので。
過去の存在である自分が受肉して人となったことで今の時代に生きるホモくんが人から転落して化け物になるとかゲロぶち撒け案件ですわよこれ。
仮にロマニその道を選ばなければホモくんが化け物堕ちしなかったかもしれないと考えられるのがロマニの精神的に最悪でしてよ。
今のロマニは小心者だけど優しい人ですので、それが巡り巡って自分を傷付けるのですわ。
ロマニが図太かったら、或いは魔術師然とした性格だったらそんなこともなかったでしょうに。
まあ、これも人になったおかげというわけですわね。
狂いたくても立場的に狂えないというのは美しい。
発狂するような狂気に犯されながらもそれでもと、未来を掴もう足掻くのはもっと美しいことですわ。
それにロマニにはまだまだ縋りつける希望がありますの!
きっとホモくんの人外化は止められるはずですし、人に戻すことが絶対出来ると信じていますの!
蛹の羽化を無理矢理止めた結果なんて知れていますのにねぇ?
それはそれとしてアンケートです。
ホモくんの過去の回想、所謂試走だったりチャート確立の為の調査だったりをしてる頃のお話とかを番外編として断片的に入れ込もうかと考えてます。
ちなみにあってもなくても本RTAには何の影響もありません。
精々が過去のホモくんのやらかしが分かったりする程度です。
ホモくんの過去パート
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いる
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いらない