あと色々話が飛びます
あと一応キャラ崩壊注意です
想像していたよりも沢山読んで頂いてありがとうございます。嬉しい限りです。
お気に入り登録ありがとうございます。
昔から、細かいことは気にならない性格だった。
性格とか、性別とか、誰かと喧嘩をしても次の日には何もなかったみたいに仲直り。
だから、友達もたくさんいたし。
だから、自分がヒーローになるのも疑ってなかったし。
だから、怖いものなんて何もなかった。
私が遊びたい遊びを言えば、みんな賛成して遊んでくれる。
だからその日も、いつもみたいに遊びたいことを言おうとして。
私が何かを言う前に、周りに居た友達の一人が言った。
「幽霊がいるよ」
それを嘘だ、とすぐに思った。何人かは信じて泣きそうだったけど、ほとんどの子が信じていなかったと思う。
だって、幽霊がいると言った子の指差した先には、
何もいなかったから。
すぐに他の子たちが責め立てた。嘘を言うなよ。何言ってるの。やめてよ。
だけど、誰が何を言ってもその子は言うのをやめなかった。みんな見えないの。そこにいるじゃない。
黒い幽霊が。
ゾッ、とした。その子の言う幽霊にじゃなくて。
何も見えないのに。何も居ないはずなのに。何を言われても、彼だけの幽霊に視線を送り続けて、指を指し続ける。
そんな彼が。
理解出来なくて。
意味がわからなくて。
怖くて怖くて
堪らなくて
だから私は思わず言ったんだ
「気持ち悪い」
◆
それからはあっという間だった。誰も彼もが彼と遊ばなくなった。昨日までお話ししてた子も、話しかけることもしなくなった。
後から先生から、彼の個性なんだよ、と話を聞かされたが、誰も態度を変えようとはしなかった。
こうして、私のせいで、彼は幼稚園で孤立した。
◆
それから暫くして、私にも個性が発現した。初めは嬉しくて大はしゃぎしたけど、一晩たって改めて使ったときに頭に浮かんだのは、あまり可愛くない、だった。一度考えてしまったら、なんだか自分の個性のことが恥ずかしくて、友達に話すことが中々出来なかった。
けれど、そこは個性が出たばかりの子供だったから、個性を使いたくて使いたくて仕方なかった。
一週間くらい経って、ついに我慢が出来なくなった。けど個性を見られるのはまだ抵抗がある。
だから私はこっそり使おうと思った。
外で遊ぶ時間になってすぐ、トイレに入って周りの子たちをやり過ごす。そしたら先生たちの隙を見て、裏口玄関から外に出る。最後に花壇のお世話の手伝いをしていて偶然見つけた、分厚い植木と金網の隙間を進んで、錆びて破れた金網から幼稚園の外に出た。
何かすごいことをしたような達成感を感じながら、近くの公園に向かって歩く。あそこなら誰にも見られず、個性を使うことができる。そう考えた。
そうしてたどり着いた公園の中に入ろうとして。
「あっ……」
公園の敷地内に、人影が見えた。背丈からして同い年くらいだろう。
思わず足を止めた。見られたくなかったからここに来たのに、これでは意味がない。今日は諦めて帰ろうか。いや、もう少し待てば帰るかもしれないし。うーーーーん……。
そうして唸りながら此方が動けずにいると、彼方が動き出した。
しかも、ただ動いたわけじゃなくて。
その子の前腕部が、半ばから血を流しながらいきなり宙を舞ったのだ。
「きゃっ……?!」
血がたくさん出ているのが見えて、思わず悲鳴が溢れた。けれど、強いて言えばそれだけで、自分でも思ったより落ち着いていられたように思う。
だって腕が千切れることなんて、一週間前からの私には、なんてことのない出来事でしかなかったから。
……少しだけ。
少しずつだけ、期待している自分がいる。
もしかしたら、自分と似たような個性が発現しているんじゃないか。
そんな期待が少しずつ、ゆっくりと膨らんで、頭の中を支配して、体の動きを制限されたように、その子から目が離せない。
そしてその子の、千切れ飛んだはずの腕が、元の腕の断面とくっついたのを見て、私はいよいよ我慢が利かず飛び出して言った。
「あんたの体もくっつくのっ!!?……て、あっ」
「え……?」
今までは背中しか見えなかったので気付かなかったけど、その子の顔は私の知っている子の顔だった。
その子は、一週間と少し前に、私の放った言葉で孤立した子で。
名前は。
「クロ……」
否見黒微。
私の、友達の一人だった。
◆
それからは、お互いの個性について色々話し込んだ。どんな個性で、何が出来るのか。
「クロの個性も体が千切れたり、くっついたりするの?」
「そうなのかな、なんかよくわかんない」
「自分の個性なのにわかんないの?」
「覚えてないんだよ」
クロの個性は、かなり複雑な特性らしく、クロ本人もわからないことが多いようだった。
「幽霊が個性じゃなかったの?」
「その幽霊にやられたんだよ」
「えぇ、なにそれ……」
「……せっちゃんもおんなじ個性なの?」
「うーん……幽霊じゃないけどね」
そっか、と言ってクロは自分の腕を見て俯いた。
もしかしたら、自分の個性のことがよくわからないのって、すごく怖いことなのかもしれない。
……そういえば私も、自分の個性が見られるのが嫌で、ここに来たんだったなー……。
「……あのさ」
「?うん」
「ごめんね、その……こないだのさ」
「……うん」
「ひどいこと言ったからさ……ごめん」
そう思ったらなんだか申し訳なくて、罪悪感というか、無責任なことを言ってしまったな、と思ったんだ。
「いいよ」
「え……許してくれるの?」
「うん、謝ってくれたから」
「じ、じゃあ、もっと個性の話とか、していい?」
多分、仲間を見つけたような、そんな気分だったんだと思う。後から詳しく聞いたら全然違う個性だったけど、それでも当時の、個性がコンプレックスになるかどうかの時期だった私にとっては、掛け替えのない存在のように感じられた。
クロはいいよ、と言って笑ってくれた。
こうして私とクロは、もう一度友達になった。
◆
私とクロはまた一緒に遊ぶようになった。
今までみたいにみんながみんな、とはいかなくなったけど、何人かは他の子もクロと一緒でも遊んでくれた。
それとは別に、クロと一緒に公園にこっそり行く遊びも続いた。
「幽霊ってどんな見た目なの?」
「うーん……黒い?」
「黒って……私も見えるようになるかな?」
「どうだろ。僕だけ見えてるみたいだからなぁ」
楽しかった。二人だけで隠れて個性を使うのも、個性について話し合うのも。
ついこの間まで感じていた不安とか、羞恥心が嘘みたいになくなって、楽しくて堪らなかった。
あんまりに楽しくて、私とクロは小学生になってからも一緒に遊び続けた。
楽しくて楽しくて、このままずっとクロと一緒で、二人でヒーローになったりするのかな。そんなことを考えてしまうくらいに居心地が良くて。
だからまた明日も、個性で出来ることが増えたから、その話をしよう。そんなことを考えながら眠りについた。
次の日、クロは学校に来なかった。
その次の日も、また次の日も、クロは学校には来なかった。
クロの家に電話をしても出ないし、先生に聞いても「家の事情」としか言って貰えなかった。
そうして暫く経って。
クロの家族のお葬式に参加することになった。
家に帰ってからお母さんが静かに教えてくれたけど、クロの家が
何だか頭の中がぼーっとして、クロを前にしても、なんて声をかけたらいいのかわからなくなる。
「……」
「クロ……」
「……」
「えっと……」
「……」
「あ、こ、個性の話、またしよう?それで……」
「うるさいな」
「あ……」
「もうほっといてよ。関係ないでしょ、せっちゃんには」
なんて言えばよかったんだろう。なんて言えばよかったのかな。
あのときは、また二人で個性について話したり、調べあったりしてさ。将来は一緒にヒーローになって、家族の仇をとろうって。
けれどあのときのクロには、それすら煩わしかったのかもしれない。
昔の、初めて幽霊のことを言った時みたいな、そんな恐怖を感じて私は家に帰ってしまった。
明日になったら、また話してみよう。仲直りもして、また一緒に話そう。そう思って、布団をかぶって目を閉じた。
「否見くんは転校することになりました。ご家族の事情もあって、お別れをすることは出来ませんが、みんなでお手紙を――――」
お葬式の前には、もう引っ越す準備は済ませていたらしくて、昨日がクロと話す最後の機会だったと、あとで知った。
どうしてだろう。
昔は、細かいことなんて気にならなかったのに。喧嘩しても、次の日には仲直り出来たのに。
次の日にはもう居ない、なんて。
どうして。
クロが相手だと、こんなにもうまくいかないんだろう。
彼が座っていた誰もいない机を見て、ああもう会えないんだな、と実感と共に理解して、私は泣きそうになるのを堪えた。学校では我慢出来たけど、部屋で一人になると涙が枯れるまで泣いた。
もっと何か言えることがあったかもしれないのに、もっと何か出来ることがあったかもしれないのに。
それからは泣き寝入りしてしまったのか、気がついたら外は暗くなっていて、時計を見たら0時を過ぎていた。
シャワーを浴びてスッキリしても、眠れなくて一晩中起きていた。空が白んで、日が昇り始める。
このとき私は生まれて初めて、ヒーローになる、と心の底から誓った。
何となくでも、周りの誰もが目指してるからでもない。
もう、クロみたいな人を出さないように。
何より、次はちゃんと――――。
「――――私がクロを助けるんだ。」
◆
「おーい、切奈」
「ん?」
放課後、教室で希乃子らと話してると、一佳が声を掛けてきた。
体育祭が近いし、その話かもしれない。物間もなんか言ってたし。
「どったの?」
「切奈はA組の見物行くのかなーって。鉄晢なんかはもう行っちゃったし。」
「あー……」
言われてみれば、もう教室に男子は一人として残っていない。恐らく、というか十中八九A組の敵情視察だろう。
先日USJで起こった
世間はA組を称え、体育祭でも期待を集めている。
これに不満を感じたのが、同じヒーロー科一年の我らがB組(主に男子共)だ。
雄英の体育祭は基本個人戦だけど、物間なんかはB組で上位を独占して、世間の目を見返したいらしい。
正直言えば、あまり気乗りしない。物間の策に乗っかるというのが個人的に釈でたまらない。あいつせこいし。あとこすい。
クラスのこと考えてるってとこだけ見れば悪い奴じゃないとは思うけど。いや悪いか。主に言動が。
そういうわけで。
「いや、私は悪いけど――――」
あ。
でも
クロも見るかもなのかーー……。
「?切奈?どうした?」
「……」
◆
「なんか意外だったな」
「なにが?」
「いや、切奈がこういうのに乗っかるのがさ。物間の話も流してるっぽかったし」
「あー、まぁ、ちょっとね」
一佳たちB組女子でA組の教室に向かう。と言っても、隣だからすぐ着くんだけど。
絶対なんかあるだろ…
ん……
ちょっとどころじゃないねあの感じ
まさか…ラヴの気配デスか?!
あの切奈に?そんな気は全然しないけど……
でもさっきの様子変だったね…
嗚呼、どうか迷える子羊にお導きを……
後ろの方でなにか話してるけど、声が小さいからよく聞こえなかった。というか、クロとは別にそんなんじゃないし。ラヴとか全然違うし。友達として仲直りしたいだけ……って。
「うわ、人やば……」
A組の教室前は、既に人で溢れていた。多分うちら以外にも、敵に襲われたクラスを一目見ようって人たちが来てるんだろう。
これじゃあよく見えないし、あんま来た意味なかったか……。
「そんなことしたって意味ねぇからどけモブ共」
おそらく、A組の誰かが言ったんだろう。それからいくつか発言すると、人混みが道を開き、中から金髪の男子生徒が歩いていく。
「なにあれ、A組ウラメシイ」
「ヤな感じタケ」
「バッドボーイズデスね!」
「あはは、あんたら言いたい放題――――」
「あ!おい爆豪!!そんじゃみんなまた明日なっ!
「――――言い、すぎ……」
「あぁ、今行くよ。じゃみんな、また明日」
◆
気がつけば家に居て、自分の部屋でベッドに横になっていた。
「クロ、雄英に来てたんだ……」
確認するように、今日体験したことが口から溢れる。
……あれはホントに否見黒微だったのだろうか。
私が聞いたのは名字だけだし、もしかしたら『伊波』かもしれない。
顔も少しだけしか見えなかった。それに、最後に会ったのだって小学生の頃だし……。
「いや、やめよう……」
あれは正真正銘、否見黒微本人だろう。確証はないけど、そんな気がしてならない。
……というか。
「クロ立ち直ってんじゃんかぁ……」
大袈裟に言うつもりは無いけど、人生の目標の一つを失ったような気分だ。
雄英高校に、しかもヒーロー科にいるということは、そういうことなんだろう。
時間が解決してくれたのか、自力で立ち直ったのか、それとも。
誰かが助けてくれたのか。
「……私が助けたかったな……」
クロには悪いけど、思わず呟いてしまう。
小さい頃に決意した、
それが今、根本から崩れ去ろうとしている。
クロを助けること。
(……思ったよりクロのが大分占めてたみたいだな)
はぁ……とため息を零す。
……クロ、大きくなってたな……。
……
…………
………………
……そうだ、切り替えていこう。クロが立ち直れたのはむしろ良いことなんだから。
それに、私にはまだ解決していない問題が残ってる。
それは――――。
「仲直りしたい……」
喧嘩別れしてしまったあの日。クロは忘れてしまったかもしれないけど、私の中ではずっと残り続けている心のしこりだ。
……よし。
「決めた。クロとしっかり仲直りする。」
自分を引き締める意味も込めて声に出す。
仲直りして、そして昔みたいに話すんだ。
◆
……と、言っていたのに。
「もう体育祭じゃん……」
雄英体育祭本番前、既に控え室でみんなそれぞれウォーミングアップをしている中、私は頭を抱えていた。
いや、違うのよ。何度も話しかけようとか、何度か教室前通ったりしたけど、気がついたら教室に戻ってたりしてたのよ。なんでか家で布団の中で寝てたのよ。そして思うの。明日話そうって。
その結果がこれだ。
「切奈、私らも入場だよ」
「あ、あーうん、すぐ行くよ」
雄英の体育祭はプロのヒーローも見物にくる、かつてのオリンピックに代わる日本の一大イベントだ。
ここで良い成績を収めれば、一年生でも顔と名前を覚えて貰えて、卒業時にスカウトされることもあるらしい。
だから出場者たちは集中しなきゃいけないときなのに。
(ダメだ……頭ぐるぐるする……)
ボーっとした頭のまま、ゲートから入場する。入場したら、他の組の人たちが並び終わるまで待機だ。
(あーー、もう。ホントどうし――――)
ちなみに縦列に並ぶので、当然A組とB組は隣同士になる。そして雄英は出席番号等で整列するわけではなく、それぞれの組で分れていればいい。
つまりどういうことか――――。
偶然、ぼんやりしていたから歩くのが遅れて後ろの方にいて。
偶然、あっちも後ろの方を歩いてた。
だからか。
クロが真隣にいる。
「――――。」
今しか。
今しかないんじゃないか?
いや、でも、周りに人ばっかだし。なにもこんなとこで言わなくても。
そうだ、また。
『明日になったらまた話してみよう。』
………………。
「……あッ、あの」
「……」
「あ、の……A組の……」
「……?」
「あー……と」
「……え、もしかして俺?ですか?」
クロの顔がこちらを向く。クロの目がこちらを見る。
もうあとには引けない。
「あの……と、」
「と?」
「取陰切奈……って、知らない……?」
一応、聞いてみる。もし覚えてないとか、私が誰か分かってないと、仲直りしても意味がない。
「せっちゃん?なんでせっちゃんのこと……って、あぁ!!?」
「まさか……もしかしてせっちゃんっ!?」
クロが大声を上げる。すると必然的に周囲もこちらに視線を集中させる。
でも、今はもう気にならなかった。
クロは、
それどころか、昔みたいに「せっちゃん」って呼んでくれている。
そのことが嬉しくて堪らなかった。
「っ……あ、あのね。私……」
「ごめんね」
……。
「え……」
「昔さ、酷いこと言って別れちゃったから、だから、ごめん。ごめんなさい」
そう言って、クロは頭を下げた。暫くしても、クロの頭は上がらない。多分私が許すまで上げるつもりはないんだろう。
「ふふ……いいよ」
「……いいの?」
「うん。だって、謝ってくれたでしょ」
いつかに、クロに言って貰った言葉を真似る。私たちにしか分からない冗談みたいなもの。
どうやら、クロにもちゃんと通じたみたいだ。
『えーー、そこのお二人さん?仲が良いのはいいことだけど、今開会式中だから、程々にね?』
「「あ」」
ミッドナイト先生に注意されてからはなんだか気まずくて、お互い静かにしていた。
でも、クロとまた仲直り出来た。また話せるようになった。それだけで、こんなに心が軽くなるなんて久しぶりだった。
それに、これで心置きなく体育祭に集中することができる。
「それじゃあね、クロ……負けないかんね」
「うん、こっちこそ」
◆
「ようようよう否見よぉーう。イ〜イご身分だなぁー」
「え」
「なぁ〜に見せてくれちゃってんだぁ〜??」
「え?」
「おい誰だよあのとってもヤラシイB組女子はよぉぉぉおおお!!???」
「え???」
その後、黒微は第一種目の障害物競走が始まるまで、男子三人に質問責めされた。
取陰切奈さんを選んだ理由は個性です。バラバラになっても生えてくるとか亜人っぽいので。
そんな訳でタグをいくつか追加しておきます。
あとちなみにUSJ襲撃事件はやりません。書いても原作と違うとこほとんどないので。
同様の理由で屋内戦闘訓練、体育祭もやりません。
読了ありがとうございました!