一晩、よく持ちこたえた。誉めてつかわすぞ、我が理性よ。
雪乃「おはよう、比企谷君」
八幡「おはようさん」
雪乃「比企谷君、このお金はなに?」
八幡「これで帰れ」
雪乃「嫌よ」
八幡「嫌じゃねぇよ、帰れ!」
雪乃「嫌!」
八幡「なぁ雪ノ下」
雪乃「なに?」
八幡「重たいんだよ、お前」
雪乃「…」
八幡「俺にもこっちでの生活があるんだ。邪魔をするな」
雪乃「…」
八幡「お前のやり方、嫌いだ」
雪乃「なっ!」
八幡「金は返さなくていい。鍵はポストに入れておいてくれ」
雪乃「比企谷君…」
八幡「親だって謝れば許してくれるさ」
雪乃「…」
八幡「時間だ。じゃあ、さよならだ。元気でな」
雪乃「比企谷君!」
はぁぁぁぁぁ、やっちまった…。バカだよな、俺。
結局、俺にはこんなやり方しか出来ないんだよな。
雪ノ下、ありかとな。いい夢を見させてもらったよ。
ひふみ「先輩、どうしたんですか?」
八幡「ん?ちょっと寝不足」
ひふみ「エッチな動画とか見てたんですか?」
八幡「そういうことにしておいてくれ」
ひふみ「もう、言ってくれたら、私がお相手したのに」
八幡「アホなこと言ってないで仕事しろ」
ひふみ「は~い」
あざとく敬礼なんぞしやがって…。
大塚「比企谷、今日はもういいぞ」
八幡「え?」
大塚「昨日、遅くまで付き合わせたからな」
八幡「大丈夫ですよ」
大塚「それに、なんか眠そうだったしな」
八幡「すいません」
大塚「いいんだよ。だから、今日は終われ」
八幡「うっす」
ひふみ「先輩、ズルいです」
大塚「一条は終わってねぇだろ」
ひふみ「ひぇ~」
八幡「じゃあ、お先です」
確かに眠いな。酒でも飲んで、さっさと寝よう。
あれは…、夢だったんだ。
雪乃「おかえりなさい」
八幡「…なんで、居るの?」
雪乃「お・か・え・り・な・さ・い!」
八幡「お、おう、ただいま」
雪乃「よろしい。もうすぐご飯出来るから」
八幡「ごちそうさま。旨かったよ」
雪乃「お粗末様でした」
八幡「んで、なんでまだ居るんだ?」
雪乃「くすっ。言ったわよね、考えてることが顔に出てるって」
八幡「そんな顔してた覚えはないぞ」
雪乃「いいえ。『雪ノ下に居て欲しい、雪ノ下と一緒に居たい』って顔してたわ」
八幡「どんな顔だよ…」
雪乃「それは冗談。あんなに辛そうな顔しながら、嘘をつかないで」
八幡「…しかしだな」
雪ノ下が近づき、そっと抱き締めてきた。
雪乃「私は貴方に会いたかった。貴方も私に会いたかった。違う?」
八幡「違わねぇな…。でも…」
雪乃「デモもストも無し。今はこうさせて…。お願い」
八幡「なんだそりゃ。雪ノ下らしくない…」
雪乃「かもしれないわね。でも、私を変えたのは貴方よ」
八幡「俺のセイかよ」
雪乃「ええ、そうよ」
八幡「今だけだぞ」
雪乃「…」
八幡「なんか言えよ」
雪乃「…好き」
八幡「はっ?なっ!お前!」
雪乃「何か言えって言ったのは貴方よ」
八幡「言うに事欠いて、その、なんだ、あの…」
雪乃「好きよ、比企谷君」
八幡「だから…」
雪乃「大事なことだから、二回言ったのよ」
八幡「どこで覚えた」
雪乃「貴方の好きなモノだから…」
八幡「どうすりゃいいんだよ…」
逃げて来たのに、追いかけてきて、嫁にしてくれってなぁ。
何度も頭の中で言い聞かせてきた。彼女の気持ちも確信はなかったが、知っていた。だが、その想いに答えることは出来なかった。俺じゃないと彼女の隣に居るべきなのは。
でも、彼女は俺を追ってきた。すべてを捨てて…。
雪乃「貴方は私を受け入れてくれればいいの」
八幡「それはだな…」
雪乃「ふふっ。お風呂、出来てるわよ」
八幡「先に入ってくれ」
雪乃「あら、覗くのかしら?」
八幡「違ぇよ。どちらかというと逆だ」
雪乃「あら、勘が良いわね」
八幡「今の雪ノ下ならやりかねん」
雪乃「冗談なのに…」
八幡「真顔で言うな」
はぁ、今夜も頼むぞ、理性!