遠く離れて   作:おたふみ

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9話

さてと、覚悟も決まったし、出かけるか。

 

雪乃「比企谷君、何故スーツなのかしら?」

八幡「気分だよ」

 

俺も雪ノ下も人混みが苦手だから、レンタカーで出かける。電車の混雑より渋滞の方がマシだ。

 

雪乃「貴方、免許もっていたのね」

八幡「まあな。社有車運転したりするからな。寝てていいぞ」

雪乃「大丈夫よ」

 

とは言ってたが、車の心地よい揺れで雪ノ下は眠ってしまった。眠ってくれていた方が助かる。行き先も聞いてこないしな。実際、行き先を言ったら嫌がられるだろうしな。

 

雪ノ下は目的地まで起きることはなかった。

 

八幡「雪ノ下、起きろ」

雪乃「ごめんなさい。寝てしまっ…比企谷君…、顔が怖いわよ」

八幡「とりあえず、降りてくれ」

雪乃「ここは…嫌!」

八幡「仕方ねぇ…」

 

嫌がる雪ノ下を無理矢理車から降ろし、インターホンを押す。

 

八幡「先日、連絡させて頂いた比企谷です」

雪乃「どうして…」

八幡「…」

雪乃「何も言ってくれないのね…」

 

正直、答えてる余裕はない。雪ノ下の家に来ているのだから。

 

インターホン越しの短い会話の後、応接室に通された。予想通り雪ノ下の両親が待ち構えていた。

 

雪ノ下母「比企谷さん、よくお出でくださいました。雪乃、久しぶりね」

雪乃「お母さん…」

 

ダメだ。緊張で喉カラカラだ。視界が歪む…。えっと、何から話そうと思ってたっけ?頭が真っ白だ。ええ~!ままよ!

 

八幡「雪ノ下のお父さんお母さん。雪乃さんが家を出たのは俺のせいです。どうか、仲直りをしてください」

雪乃「…比企谷君」

 

あれ?なんか違う?

 

八幡「そ、それと、雪乃さんはを歪めてしまったのは俺の責任です。今の俺には雪乃さんを幸せにするとは言い切れませんが、幸せにする精一杯の努力は惜しみません。ですから、雪乃さんとの結婚をお許しください!」

 

よし!言ったぞ!

 

雪乃「比企谷君、貴方は…」

 

なんで、雪ノ下は驚いているんだ?

 

雪ノ下母「比企谷さん、頭を上げてください」

八幡「はい…」

雪ノ下母「雪乃は性格はキツイかもしれませんが、根は優しい娘です。末永く側に置いてやってください」

 

良かったぁ…。って、なんで雪ノ下さんは俺を睨むんですか?

 

雪乃「比企谷君」

八幡「はい?」

雪乃「両親に言う前に、私に何か言うことはないかしら?」

 

はて?なんだろう?

あれ?雪ノ下さん頭痛ですか?

 

雪乃「私はここへ連れ戻されたと思ったのよ!それと、私が貴方の所へ行ってからを思い出しなさい。何か忘れてないかしら?」

 

えっと………あれ?俺、雪ノ下に何も言ってない。

 

雪乃「その顔は、思い当たることがあったわね」

八幡「はい」

雪乃「で、どうするのかしら?今言う?」

八幡「え?なに、その羞恥プレイ」

雪乃「言いなさい!」

八幡「雪ノ下雪乃さん、俺と結婚してください」

雪乃「はい。よろしくお願いします」

雪ノ下母「あら、まあ」

雪ノ下父「…」

八幡「指輪は、帰ってから買います」

雪乃「比企谷君」

八幡「はい」

雪乃「好きよ」

八幡「お、俺も、す、好きだ」

 

何これ、超恥ずかしい。

 

雪ノ下母「雪乃」

雪乃「はい」

雪ノ下母「よくやりました。比企谷さんをしっかり支えなさい」

雪乃「はい」

 

なんか、いい親子って感じだな。高校の頃のイメージとは正反対だな。

 

雪ノ下母「ところで比企谷さん」

八幡「ひゃい」

 

やべっ、変な声出ちゃった。何を言われるんだ。怖いよぉ…。

 

雪ノ下母「こちらに戻ってくる気はありませんか?」

八幡「はい?」

雪ノ下母「失礼ながら、少々調べさせていただきました」

八幡「な、何をでしょうか?」

 

え?風俗行ってたりとか?雪ノ下に怒られてからは行ってませんよ。

 

雪ノ下母「お勤めの会社では大変優秀だと…」

 

良かったぁ。

 

八幡「いえ、それぼどでは…」

雪ノ下母「雪ノ下で働きませんか?」

雪ノ下父「おい、それはちょっと話が早すぎるんじゃ…」

雪ノ下母「貴方は黙って」

雪ノ下父「はい」

 

どこの家庭も同じだな。ウチの親を思い出しちまった。

 

雪ノ下母「やっと笑いましたね」

八幡「え?」

雪乃「そうよ。ずっと強張った顔してたもの」

八幡「そうだったか?」

雪ノ下母「それで、何が可笑しかったのですか?」

八幡「いや、今のやりとりで両親を思い出しまして」

雪ノ下母「あら、まあ。でも、貴方達の未来かもしれないわね」

八幡「それでいいと思います。雪乃さんはしっかりしてますので」

雪ノ下父「比企谷君、それは…」

雪ノ下母「貴方は黙って」

雪ノ下父「はい…」

雪ノ下母「話を戻しますが、悪い話ではないと思いますよ」

 

俺の悪いクセだが、何か裏がありそうな…。

 

雪ノ下母「別に他意はありません」

八幡「え?心読まれた?」

雪乃「比企谷君は顔に出るって、言ったじゃない」

雪ノ下母「あるとすれば、娘と義理の息子、ゆくゆくは孫に近くに居て欲しい。それだけです」

 

雪ノ下の母親は、外では大魔王かもしれない。だが、家の中では年頃の娘の結婚を心配して、孫を楽しみにしている、ただの母親だ。

 

八幡「わかりました。前向きに検討します。ですが、縁故での中途入社は疎まれますね」

雪ノ下母「それは実力でねじ伏せてください」

八幡「手厳しいですね」

雪ノ下母「雪乃が認めた人です。それぐらいはできますよね?」

 

やっぱり怖い。

 

八幡「鋭意努力します」

雪ノ下母「『出来る』とは言わないんですね」

八幡「お約束は出来ませんが、努力する糧が隣に居て欲しいくれますから、大丈夫だと思います」

 

隣を見ると、顔を真っ赤にしてモジモジする雪ノ下が居る。何それ、可愛い。お持ち帰りしたい…。あっ、いまから俺の嫁になる人でした。

 

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