でも事前登録したのにサービス開始から半月くらいほっぽらかしてドルフロやってたのはここだけの話。
ある日、ロドス・アイランド基地にて。
──突然だが、ドクターが合成石が足りないと嘆いていたぞ。
「本当に突然ですね。ところで貴女がそういうことを言いだすと大抵ろくなことが起こらないんですけどご存知ですか?」
私がそう言うと、私の同僚である所のアーミヤは困り顔でそう言った。
そのまま流れるように飛び出してきた辛辣な言葉を聞き流しながら、私はポケットから合成石を取り出し、雲に覆われがちの太陽へと向けて透かす。
しかし、一体全体どんな原料をどういう原理で合成しているんだ、これは? 正直私には言われても合成石と純正石の区別がつかないぞ。
「確かに、その手の話はあまり聞きませんね……。まあここから別の何かに加工するわけでもありませんし、知る必要がないというのもありますが」
──という訳でだ。
「どういう訳ですか」
突然の話題転換に眉根を寄せるアーミヤをよそに、私は背負っていたバックパックから機材と合成石をいくつか取り出した。
そして、その内のいくつかをアーミヤへと押し付け、高らかに宣言する。
──今回のテーマは『科学は全てを解決する』! よってこの謎に満ちた合成石を調査し、ドクターの一助となろうではないか!
「ストップ、ストップですアルクスさん」
私が宣言すると、アーミヤが焦った調子で制止してきた。どうした?
なに、この機材の出自? 当然全部自前だ。ペンギン急便に所属している知り合いにすこし握らせて融通してもらった。
秘書が管理しているはずの合成石はどうやって持ち出したのか? ああそれは簡単だ、その秘書に頼んで少し分けてもらった。ドクターの助けになる、と言ったら喜んで渡してくれたぞ。……実行犯の私が言うのもなんだが、少しばかりガード緩くないか、彼女?
「……そうですね……。後で私の方からクオーラさんに言っておきます……」
そのほうが良い。現状、恐らく彼女に言うことを一番聞かせられるのはドクターと貴官だけだからな。基本的に彼女は我々のような古参勢以外の話をあまり聞かない……というか聞いてもすぐ度忘れするし、よしんば忘れていなかったとしても割かし危ういからな。
──しかも、実行犯の私は言うまでもないし、サベージはドクターと貴官に執着気味だから私と彼女が危ない。特に防御手段に乏しい私が危ない。そして教官に至っては論外だ、ドクターやクオーラもろともに折檻されてしまう。それはまずい。
……というか、今の状況も教官に見つかったらまずいのでは?
「気付くの遅くないですか? っていうか私も地味に危ないんですけど」
半眼でアーミヤが言う。……まずいな、これは早急に事を進めなければならない。
手っ取り早く済ませるとしよう、オペ開始だ! アーミヤ、ハンマーをくれ!
「あ、はい……というか、どうして自分で持てない分の機材まで一気に出したんですか?」
──ただの見栄張りだ、気にしなくてヨシ!(現場オペレーター)
という訳で、目の前の机に合成石を置く。 そしてハンマーを振りかぶり──一片の迷いもなくそぉいっ!!
パキンッ!! という甲高い音と共に、確かな手ごたえが返ってくる。
大急ぎでハンマーの下を確認すると、そこには見る影もなく砕けた合成石の残骸が。
──割ったッ! 第三部完ッ!
「第三部どころかまだプロローグなんですけど!? えっ、ちょっ、本当に割ったんですか!!?」
──当然だろう。何はともあれ構造及び成分の解析だ。そのためには一度粉々にするなりなんなりして内部まで調査可能にしておく必要があるからな。安心しろ貴官、解析さえできれば合成石などあっという間に量産して見せるわ!
「知りませんからね!? どうなっても私は責任持ちませんよ!?」
その言葉に、私は顔をアーミヤの方へと向けた。そしてにっこりと笑い、静かに肩を組む。そして、耳元で囁くようにつぶやいた。
──時に貴官。『共犯関係』という便利な言葉を知っているかね?
「嵌められたーっ!?」
愕然とするアーミヤだったが、もう遅い。正直合成石を彼女の目の前で砕いたのは流石にやりすぎたと思ったが、ここまで来てしまえばもう後戻りはできないのだ。
とその時、ぴんぽんぱんぽーん、と館内放送を知らせる音がスピーカーから流れる。此処までは別段珍しくもないが、問題はここからだった。
『館内にいる全オペレーターに通達。保管していた合成石が記録よりも少ないことが発覚した。ドクターはスカウトをしておらず、そもそも合成石に触れてすらいないとのことだ』
……嫌な予感がする。
『──よって。オペレーター、アルクス・アンサングスを発見し次第即座に捕縛しオフィスまで連行すること』
あっさりばれてら。
──行くぞ貴官! もはや状況は
「いや私完全に巻き添えじゃないですか!? どうしてくれるんですか私まで叱られちゃうじゃないですか!!」
──つべこべ言わずにさっさと手伝ってくれ後生だから! 少なくとも成分解析くらいまでは持っていかないと減刑願いすらできないぞ!!
「本当に知りませんからね! これ以上罪が重くなっても一切の責任は持ちませんからね!?」
──上等!
二人がかりで合成石の残骸をさらに粉々に砕き、合成石の破片を速やかに解析機材へと叩き込んでから荷物をまとめてそのまま逃走する。
アーミヤが後ろからついて来ていることをちらりと確認しながら、そのまま基地内にある十字路に飛び出したその時だった。
──殺気ッ!!
肌に突き刺さるような鋭い感覚を覚えた私は、即座に急ブレーキをかけた。
その直後、ヒュンッ! という風切り音と共に目の前を一本の矢が通り過ぎる。
「全く、今度は何をやっておるのだおぬしは……」
──げっ、レンジャー翁……。
目の前に立ちふさがったのは、その身に弓道着を纏った
まさかここで鉢合わせるとは、ついてないにも程がある。これがジェシカかノイルホーンなら舌先三寸でどうにか誤魔化せたかもしれないというのに……。
……いや、ここで過ぎたことを嘆いていても仕方がない。私が考えるべきは現状をどうやって打破するかだ。
だが、レンジャー翁は弓を構えながらカラカラと笑う。
「ところでアルクス嬢。背後に気を配らなくてもいいのかの?」
──何っ!?
「ごっ、御免! です!」
次の瞬間、私は他ならぬアーミヤの手によって見事に緊縛されていた。
バランスを崩し、そのまま地面に倒れ込む。
──血迷ったか貴官! 一体何をしている!?
「すいませんアルクスさん。でも私、気づいちゃったんです」
……ここで私が貴女を売れば、私の事は誤魔化せるんじゃないかなって。
その言葉を聞いたとき、私は今回の作戦の致命的欠陥に気付いてしまった。即ち、
──しまったッ! 計画を共犯実行しても完遂する前に裏切られてしまっては無意味ではないか!?
「ええ、そうです。ですから、アルクスさん──貴女には、スケープゴートになっていただきます」
──アーミヤ! 謀ったな、アーミヤァァァアアア!!!!
魂の叫び。しかし、叫んだところで思いっきり縛られているのだから私にはどうしようもない。そのままずるずるとオフィスまで引きずられていき、真紅のオーラが可視化して見える(気がする)レベルで激怒していたドーベルマン教官へと引き渡された。
彼女が執務室で真実を知らないドクターにお手柄だと褒められてホクホクしているなか、私はオフィスで般若と化したドーベルマン教官に出がらしになるまでこってりと搾られるのだった。
<キャラ紹介>
『アルクス・アンサングス』
本作の主人公。女性、狙撃オペレーター。白髪ロングに薄紫の瞳、そして長めのしっぽ……に見せかけたビーム砲が特徴。なんでも、鉱石病の症状が腰から出てきたのでそれを利用して改造したのだとか。何やってんだコイツ。最近の悩みはしっぽが邪魔で寝返りが撃てない事。
『アーミヤ』
ストーリーの要でゲームアプリのアイコンにもなっているアークナイツの顔。ピンと立ったうさ耳が特徴。いたって普通の良心的な少女だが、それが祟ってアルクスを筆頭とした要注意人物たちの奇行に振りまわされている。
『ドーベルマン』
ご存知我らが教官。ドクターともどもアルクスの奇行には頭を悩ませており、度々怒りを限界突破させて教官から狂官へとジョブチェンジしている。ちなみに歴代で一番キレたのは夕食のカレーのルーを丸々チョコレートに入れ替えられた時だった。
『ドクター』
アークナイツの主人公にしてプレイヤーのアバター。プレイヤーによって本名も千差万別だし容姿すら曖昧だが、とりあえず本作では細めのいい男。理由は不明だが、虹色ないし星形二重正四面体の物体を見ると取り乱す傾向にある。どうしてなんでしょうね(棒)