今回はちょっと真面目な感じ。
──クオーラ嬢! 横だ! 白い方のデカブツが抜けて行っ──うわっ!? おのれシャア専用術師め、ここで私を狙ってくるか!
「おらおらぁ! 僕のバット捌きの前にひれ伏せぇ!」
「倒しているのは主に私なのですが!?」
「辞世の句でも詠んでおけ……! 皆の衆退け、拙者のカザグルマが通るぞ!」
「龍門消防隊の誇りにかけて死守します!」
──おぉい待て貴官! リベンジャーが! リベンジャーが来てる!
第59区跡。
廃棄されてからかなりの時間が経つ廃都市の一角は、今や戦場の様相を呈していた。
と言うのも、この辺りにレユニオンの兵士共が進駐しているという一報が届いたのだ。領域周囲には活性源石が複数確認され、アーツの状態も不安定……何かの拍子で爆発してもおかしくない危険地帯に何を思って忍び込んだのかは皆目見当もつかないが、確認された以上は撃退しなければならんと言うことで問題の場所へと向かったのだ。
目的地は第59区跡、およびその付近に位置する荒廃した広場や無人廃ビル……すると出るわ出るわ、どこに潜んでたんだと言いたくなる物量のレユニオン。軽装兵やブッチャーはまだ分からんでもないが、重装兵にリベンジャー、果ては術師隊長にバクダンバチまでもが出てくるとなると話は大きく変わってくる。
さらにこの領域の活性源石は極めて不安定な状態を保っており、我々の行使するアーツに干渉して来たり地形に影響を与えてきたりと迷惑しかかけて来ない。にもかかわらず向こうにはこれと言って不都合が押し付けられていないし、それどころか力が強くなったり足が速くなったり馬鹿みたいに頑丈になったりする。なぜだ。
とか言っている間に、手に持った剣の刃をアーツによって赤熱化させたリベンジャーがクオーラ嬢に踊りかかった。
──まずい、あれは『4人目』だ! 対処しなければクオーラ嬢では捌ききれんぞ!
「うわーっ!?」
「せいっ!」
「消火器噴射します!!」
しかし、その顔面にオーキッドが放ったアーツが直撃。減速が付与されていたこともありリベンジャーの体はその場で停止し、体勢を整える間もなくべちゃっと地面に落下した。ダメ押しにその顔面に最大出力でショウが放水し、うつぶせにすっ転んだ姿勢のまま明後日の方向へと押し出されていく。
──哀れな。そこは死地だぞ。
慌ててリベンジャーが起き上がった目の前には、それ単体で人でも殺せそうな圧に満ちた笑顔を浮かべたスペクター。
ギャリギャリギャリ!! と手に持った大型丸ノコから凶悪な駆動音を響かせながら、彼女は言う。
「私、無価値なものに興味は無いのです。……何が言いたいか、貴方ならおわかりでしょう……?」
コクコク、とどこか悟ったように首を縦に振るリベンジャー。
そして、次の瞬間には圧倒的な火力によってなすすべなくメッタメタにされて脇に放り出された。
──うわぁえげつない……。スペクター嬢があの調子なら安泰だな……。
私がそうこぼした次の瞬間、そのスペクターが背後からの一撃で膝を折った。
(馬鹿な、スペクター嬢だぞ!? ドクターがトチ狂ってアーミヤ嬢よりも早く2回目の昇進と作戦記録のバーゲンセールを行った結果、近距離オペレーターの中で誰よりも強くなったあのスペクター嬢が!?)
余りにも常軌を逸した事態に、私はその元凶の方に視線を向ける。
……そいつは一見してリベンジャーと同じように見えた。だが、上着の下に見えるその服は血のように赤く、その双眸は色濃い憎悪によって歪められている。
その姿を認識した時、私はなりふり構わず叫んでいた。
──総員第一級警戒!! ヴェンデッタが来るぞ!!
そう言い放つと同時、スペクターが沈んだことで空いた穴を埋めるように増援が配置された。
主力が一瞬で倒れたことで沈んでいた防衛部隊の士気が再び上昇する。今回の救世主は一体誰だ……?
「……私、生きて帰れるかしら……」
「総員撤収!」
『待て待て話を聞け撤収はまだだ!!』
駄目だこりゃ。
半泣きでヴェンデッタの進路上に立ちふさがるグラベル。
その様子を見たオペレーターたちがすぐさま逃げる用意を始める。かくいう私もその一人だ。
だが、それにドクターが待ったをかけた。
──正気かドクター!? 今しがたスペクター嬢が一瞬でやられたのは見ていたろう!? このままでは片っ端から切り伏せられて総崩れだぞ!
『急場しのぎの苦肉の策だが私に考えがある! 聞くだけでもいいから落ち着いてくれ!』
そう言って、ドクターは説明を始める。
ドクターが狙うのは、簡潔に言えばタイムアップだ。
今回の部隊には、レッドやグラベルと言った
『二人には悪いが……これが現状あの暴君を打破するために思いついた唯一の策だ』
……。
悩むようなそぶりを見せる部隊員たち。私も頭では理解しているが、どうしても感情が拒絶を続けている状態だ。
だが、当の本人であるグラベルが真っ向から一石を投じた。
「……いいんじゃないかしら?」
──貴官。それでいいのか?
口に出すことを憚られている他メンバーに代わり、私が問いかける。
その問いかけに対して、彼女は
「ええ。本当だったらどこかで朽ちるはずだった私を拾ってくれたのがドクターよ。だったら……その恩にここで報いるってのも、アリじゃない?」
『レッド、頑張る……!』
無線からももう一人の当事者であるレッドの答えが耳に届く。どうやら彼女もやる気満々の様だ。
──分かった。貴官らがそういうのであれば、私は止めんよ。全力の砲撃支援で微力ながら手助けしよう。
私はそう告げる。すると、グラベルはウインクしながら「それに、」と続けた。
「──別に、アレを倒してしまっても構わないでしょう?」
おいやめろ馬鹿! 無茶だグラベル嬢!
だが、そう叫ぶよりも早く、グラベルは単身でヴェンデッタへと突っ込んでいった。
結果は火を見るよりも明らかで、一太刀にて切り伏せられる。だが、間髪入れずに今度はレッドが投入された。
──くっ、攻撃開始! とにかく撃ちまくれ!!
……とは言ったものの、現状ヴェンデッタを射程範囲に収めているのが私しかいない。と言う訳で、チマチマと砲撃支援を継続することしばし。
レッドが苛烈なヴェンデッタの攻撃を避けきれずにダウンした。
『アルクス! 能力仕様を許可する!』
──心得た、ドクター!!
テイルカノンが変形し、平時の戦闘に用いている拡散型から収束型へとシフトする。
目標、敵性実体『ヴェンデッタ』。砲撃用意、3,2,1──
──ファイア!!
アーツの奔流が廃墟の一角を埋め尽くし、まばゆい光が視界を埋め尽くす。
だが、止まらない。服のあちこちを焼きこがしながらも、ヴェンデッタはこちらへと迫りくる。
適宜グラベルやレッドが投入され、さらには傷の癒えたスペクターまでもが乗り込んでくるが、一切合切を切り捨てながら進撃を続ける。
──ショウ! 行けるか!?
「圧力最大……準備完了であります!」
『よし、任せた!』
「了解! どいたどいたっ!」
怒涛の水流がヴェンデッタに直撃し、その体を押し出す。
その隙に再びレッドが配置され、他にもその場にいる全オペレーターに能力仕様の許可が下りた。
ヘイズのアーツが、オーキッドの特殊術式が、ギターノの爆撃が、容赦なくヴェンデッタを攻め上げる。
そして。
「……無念……!!」
心の底から悔しそうな声を洩らしながら、肉体の限界を迎えたヴェンデッタが崩れ落ちる。
……これは、まさか。
『ああ。……作戦成功だ。よくやってくれた』
歓声が上がる。
誰もが諸手を挙げて喜び、中には抱き合っている者もいた。
そんな中で、私は功労者たちの元へ向かう。
──お疲れ様、と言うべきだろうな。貴官らの活躍無くして、今回の勝利はあり得なかっただろう。
「ええ、そうね……本当、今日ほど本気で遅滞戦闘に注力したのは久しぶりだわ……」
「レッド、疲れた……モフモフ……じゅるり」
ははは、落ち着けレッド嬢。私のモフモフなんて申し訳程度にしかnちょっと待て貴官、今舌なめずりしなかったか?
落ち着け、私なんかを食べようとしても旨くないぞ!?
「……ごはん……!!」
……この後のオチは、まあわざわざ言わなくとも分かるだろう。
ただ一つ言えるのは……戦闘を終えた後のレッド嬢には近づかない方がいい、ただそれだけだ。
うーんしまらないオチ。
ちなみに戦闘の決着の仕方は挑戦3に挑んでいた私の時と同じような感じです。気まぐれでレッドも入れてなかったらマジでやばかった。
<キャラ紹介>
『アルクス・アンサングス』
本作主人公。範囲狙撃だけどやってる事と射程範囲はイフリータに近い。
『ショウ』
多分どのドクターにも一番なじみ深い強制移動オペレーター。危機契約で多用するようになるまで第2スキルの強みがいまいちわからなかった
『グラベル』
高速再配置お姉さん。やられてもやられてもすぐ復活するゾンビ戦法の擬人化。危機契約ではマジでお世話になりましたこれからもよろしくお願いします。
『レッド』
高速再配置暗殺者。第1スキルメインで運用したけど今回の事を考えると第2スキルの方が使い勝手がいいのかなと思ったり思わなかったり。