──初めまして、ロドスの諸君。早速だが死に給え……無駄な足搔きもこれで終わりだ。
「あなたは……!」
そう言いながら私が姿を現すと、コータス族の少女は警戒した様子で服と仮面で極限まで露出部を削った男……まあ、多分男か。とにかくその不審者を庇うように立ち塞がった。
……ふむふむ、なるほど。そちらの御仁が例の『ドクター』か。この状況下だ、素顔くらいは拝めるものかと思ったのだが、相変わらず物理的な鉄面皮をしているようで何より。
「……貴様か、フレスヴェルグ。後方支援を放り出してまで前線にやってくるとは……なんだ、レユニオンはそこまで余裕がないのか?」
盾を構えた鎧姿の女が皮肉交じりに言ってくる。
ははは、面白いことを言うな。貴様はカジミエーシュの……いや違う、確か今は使徒だったか。感染者救助団体……結構結構、思想だけは博愛主義なようで大変宜しい。
コホン、とにかくこうしている今も後方支援は順調に進んでいるとも。
「何……?」
私が無策で前線に殴り込むとでも思ったか? いやまあ自己診断ではその可能性は大いにあったのだが、ここでそれをやると後でタルラの奴に焼き鳥にされてしまうからな。まあ、策の一つや二つは多少急ごしらえではあるが講じてきた……っと。
頭めがけて飛来してきたアーツを、首を振って躱す。危ないではないか貴官……相手が私でよかったな、他の連中がここに居れば返す刀で皆殺しだぞ?
「やはり避けますか……!」
全く、油断も隙もありはしない。曲がりなりにも同胞、あるいは救済の対象たる感染者に対していの一番にすることが
パチン、と一回指を鳴らす。
その直後、周囲の瓦礫を持ち上げて、巨大な人型が姿を現した。
今回はコイツの試運転を兼ねていてな。試製自律型特殊装甲『テスタメント』……どこぞのサルカズが使う『巨像』にインスピレーションを受けて作ったユニットだ。まあここで性能が立証されれば量産して龍門なりなんなりをどつき回すのに使うし、ダメだったらダメだったで欠点を洗い直して次に繋げる。試作品とは得てしてそう言うものだろう?
「……それだけ残して立ち去るっていうのは……なさそうですね」
当然だ。というかそれやったら焼き鳥にされるとさっき言ったばかりだろう。なんで鳥料理になってまでレユニオンに貢献せねばならんのだ、せめて死んだ時くらい静かに休ませろ。
まあそんな事はさておき……仲間は誰も聞いてくれないのでな、多少のセールストークくらいには付き合ってもらおうか。コイツ単体では高火力ではあるが機動力に難があってな。元より随伴歩兵の存在を前提とした存在だ、これ単騎で相手をさせても秒速で破壊されて終わりだろうさ。──そこでさらに、
再び指を鳴らす。
次に姿を現したのは、我々と同程度のサイズのアンドロイドだった。辛うじて元は服だっただろうとしか分からない程擦り切れたボロ布を纏い、その胸には分かりやすく動力炉が露出している。
「これは……暴徒、じゃない……!? ドクター、下がってください!」
暴徒とは失礼な。彼らも元は我々の同胞だよ……今となってはもう、その面影はないがな。
正直な話、誇るようなものではない……どころか忌むべきものだとは思っている。だが、彼らが
……見ているか、諸君。悲痛と無念に満ちた貴官らの死へ、せめてこの『レヴェナント』の破壊を手向けとして送ろう。それが、私にできる唯一の贖罪だろうから。
さあ、私は殺す気で行く。精々死なないように足掻き給えよ、ロドスの諸君?
「バカを言うな、誰も死にはさせないさ!!」
「迎撃します! ドクター、指示を──!」
そして、私たちは殺し合い。
気が付くと、ガシャンという硬質な音と共に、最後の一機だったレヴェナントが崩れ落ちていく。
どれだけの時間が経ったかは知らないが……結果として、私が作り上げた陸上ドローンは全て破壊され。
私の目の前には、負傷こそしているものの戦意に衰えの無いロドスのオペレーターが立っていた。
「……残るは貴様だけか、フレスヴェルグ」
犬耳の女──『ドクター』やコータス族の少女にはドーベルマン、と呼ばれていたか──が言う。私はそれに対して、正直に頷いた。
ああ、そうかもしれないな。テスタメントはとうの昔に破壊され、我が同胞たちの最期の遺志たるレヴェナントもまた全て無に帰した。これで、少なくともこの部隊の中で直接矢面に出れるのは私だけとなったわけだ。なんせボッチだからな、クソッ! 頼れる仲間が多いようでなんとも羨ましい事だ! くたばれ!
「ここまでです。降伏を」
『降伏』?
馬鹿を言ってはいけないぞ、少女よ。確かに、今ここで戦えるのは私だけだしここにいるのも私だけだ……やっべ、自分で言ってて泣きたくなってきた。……だが。だが、私はまだ戦えるのだぞ?
ならば、私がやるべき事などただ一つ──貴様らロドスと刺し違えてでも全力で足止めし、天災にて道連れとするのだ。その為ならばこの命、まるで惜しくはない。
私がそう言うと、少女は目を見開いた。
「なるほど、貴様の言いたいことはよく分かった。ならば、方法は単純だ……ここで我々が貴様を討つ」
ははは、やって見せるがいい!! これでも腕っぷしには自信があるからな、ただで済むとは思わないことだ!!
そう言った矢先──私とロドスの周囲を、猛烈な業火が取り囲んだ。この味方であるはずの私ごとロドスを焼き潰さんとする遠慮容赦ないアーツ……やるとしたら奴しか考えられん。
あっつあっつ、熱い!? おい! こら! 私ごとやる気かタルラ! そうまでして焼き鳥が食べたいのか!? ええ!?
「……、」
なんか言ったらどうだこのやろう! この前貴官の甘味をパチった事、まだ根に持っているのか!? あれはいいものだ、美味しく頂かせてもらった!
「……それは、言うな」
あっつあっつ! すまん! すまんて! これ以上はホントに焼き鳥になるから勘弁してくれ!
大慌てで待機させていた非戦闘用ドローンを一機呼び寄せ、即座にオーバーロード。這い寄る炎を励起したアーツごと強制冷却して鎮火する。一体どれだけの強度でアーツをばら撒いたのか、ドローンを一機最大出力で使い潰しても私を中心として半径1mにも満たないほどの範囲内の火の手を潰すので精いっぱいだった。あっぶなー……コキュートスを何機か待機させておいてよかった……。まあ、たった今その内の一機がスクラップになった訳だが。
……さて、それでだタルラ。貴官がわざわざここまで足を運んできたということは、他はおおむね片付いたのだな?
「ああ」
そうか。では、私は置き土産でもくれてやるとしよう。丹精込めて作ったドローンを片っ端から落とされて少しばかり頭にきているからな! 畜生め! 材料費だって馬鹿に出来んのだぞ!?
三度、指を鳴らす。
そうして呼び出したのは、バクダンバチのように炸薬を腹に抱え込んだドローンだ。
ただ、異なるのは……その爆薬の量があまりにも過剰であり、その莫大な重量を運搬すべく
──行け、アーセナル! 天災なぞ待っていられるか、その前に我々の手でチェルノボーグを吹っ飛ばす!
私の言葉に応えるかのように、ドローン……アーセナルは空へと飛び立っていく。
機体に吊り下げる形で積載した炸薬、その外装に描かれたマークを見て、使徒の女騎士が目を剥く。
「馬鹿なっ、貴様正気か!? こんな市街地で源石弾頭など──!」
正気も正気よ。憎たらしいウルサス人どもめ、貴様らの死を源石結晶で彩って新しい観光名所に仕立てあげてやる! 我等感染者に栄光あれ!!
私がそう叫ぶと同時、各所に待機させていたドローンが一斉に起動し浮上した。人が乗れるくらいのサイズとスペックを誇る大型機だ。
それはの上には事前に言っていた通り負傷者が積載されている、そのため一度満足に治療が行える環境へと退避する予定だ……近くをその内の一機が浮遊しているし、私もお邪魔させてもらうとしよう。ロドスの連中の活躍のおかげでドローンの損耗が著しいからな、補充せねばならん。
という訳で……よっと、邪魔するぞ。
「フレスヴェルグか! すまない、世話になっている」
気にするな、私のドローン程度で同胞の命が救えるというのならいくらでも使い潰してもらおうか。……一応伝えているがシートベルトしろよ。もし苦しいようならシートを倒せば簡易的だがベッドにもなる。
そう言いながら、私は下方に視線を向ける。
「逃げるか、フレスヴェルグ!!」
女騎士がそう叫ぶが、私はそれを一蹴する。馬鹿め、本来なら私がこうして前線にいる事こそイレギュラーなのだ。貴様はそこでタルラと戯れていろ。もし炭が残っていればバーベキューくらいには使ってやる。
それだけ言い残して、私は戦場を後にした。その背後で、とんでもない熱量と轟音と光が荒れ狂う。おお怖い、アレがトップである内はレユニオンも安泰だな。
そう呟き、空を見上げる。
天災の襲来、その前兆として荒れ狂うその空模様が暗示するのは、感染者の未来か、はたまた非感染者の破滅か。
……今はまだ、分からない。
| 名前 | フレスヴェルグ | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 攻撃方法 | 近距離/遠距離 | ||||
| 耐久 | B | ||||
| 攻撃力 | A++ | ||||
| 防御力 | A | ||||
| 術耐性 | B | ||||
| 詳細説明文 | |||||
| フレスヴェルグ、レユニオンのドローン部隊幹部。大量のドローンによる物量制圧・輸送支援や、自身のアーツ能力による火力支援などを主に行っている。 多彩なドローンによる戦場構築もさることながら、それら全てを同時に制御するだけの演算能力を持つ頭脳によって制御されたアーツ、そして何らかの体系によって確立された近接格闘術は圧倒的な脅威。 しかし大量のドローンの制御に演算能力を割いている分対術制御がおろそかになっており、比較的アーツに対する耐性が低い。 | |||||