私、救済手段がなければ作るタイプです。ドヤァ   作:母は歯はいい

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題名の通り番外編です。

『秘密を見せて』という題名通りにノワール以外の登場人物にいきなりスポットライト当ててます。

それではお楽しみください!どうぞ!


番外編 ショーミーシークレット!

 いや、キリトくん。あの柱を登り続けるとはいい挑戦だと思うよ! 俺もやってみても? 

 

 あぁ、良いんじゃないか? ちゃんと転移結晶はいくつも持っていろよ? 

 

 もちろん、さー! 転移結晶が効かなくてもなんとか空中で手は考えるけど……。紐があればなぁ、ターザンみたいなこと木に引っ掛けてできるんじゃね? 

 

 ……ちゃんと一回は地面でやれよ? 

 

 

 

 

 

 

 お金を稼ぐのはそこそこ大変だったけど、真澄と凛に少し脅しかけての借金(すぐにきちんと返しましたわ。ウフフフフ)をすれば新築のマイハウスを作るのは難しいことじゃなかった。結婚してもう数年くらい経つ気分。ゲームと現実を合わせれば……はて? どのくらいだろうか? 白糸という苗字を捨てて壺井という名字を得た。壺井蓮……なんとも大好きな名前になったわ。

 今日は遼太郎くんも働きに出たし、1日かけて掃除洗濯は全て終わらせた。今日の夜ご飯はパエリアにしましょう! そうしましょう! あとは、栄養価を見ながら野菜も補充しないと! 

 

「ただいま〜蓮ちゃん! 早く帰りすぎちまった!」

 

「あら、お帰りなさい!」

 

 シンプルな白い壁を基準にした玄関を見ればそこにいたのはギルド【風林火山】のリーダー、クラインこと壺井遼太郎だ。私のプレイを理解して助けてくれた根っからの優男さんで、ゲームの中でもギルドの中でいじられる関係で。SAOをクリアしてすぐに結婚した。

 毎日寝る前に手入れをする革靴を脱ぎ、キチンと揃えて上がってくる落ち着いた人で他人に対して妬みも嫉みも少ない大好きな人。……ん、旦那自慢ですが、何かご用かしら? 

 

「後でキリの字たちも呼んでクエスト行こうぜ!」

「もちろん行きましょう! ノワールもこの一週間は忙しいらしいから木綿季もアイツに会えないのかしら? 悲しいわね……」

 

 本当に残念……。早くお嫁さんを作らないとすぐ死んじゃいそうで……。お客さんに迷惑かかりそうで困るのよね。

 パエリア鍋に今日買った具材を入れながら、キチンと料理は作り上げる。クラインはと言えばテレビも付けるがテレビを見ながらできることを探すタイプらしい。前見た時はリアクションを返しながら洗濯物を畳んだり、準備ができた料理を一言「持って行ってもいいか?」と聞いて私が頷いてから持って行ったり、ご飯を食べるのは出来るだけ一緒と決めてくれてるのか待ってくれるし。……何でこの人モテなかったのかしら? 顔重視な人しかいないから? 

 ……もう一度言うわね、旦那自慢ですが、何かご用? 

 

 テレビを見ながらも私をチョクチョク見てるのか、トークテーマを振ってきた。世間話が好きなところも私をキチンと見ているところもなぜモテなかったのか分からない。……だn(ry

 

「そういえば、ノワールとはいつからの付き合いなんだ?」

 

「あら、嫉妬かしら」とも口に出そうかと思ったけど、そうでもないみたいね。あの変態への単純な興味と……他に理由は読み取れない、ザンネン。でも、顔は多少赤くなっている。いうのが恥ずかしかったのかしら? 

 私にデレデレするなんて、なんて可愛いのかしら! 

 愛する相手は何人でもいる。リアルは私が筆頭らしく他にも片手で足りないほどたくさんいるけど、私が演技でデレれば手は出せないと返ってきた。この人、可愛いわよね? 友人枠でアスナちゃんたち。ゲームでも確かスクルドだったかしらAIとして好きな相手は存在する。

 結局私の方が先に惚れていたのにゲームで告白したのは彼から。男らしいところも仲間想いなところも全部大好き。

 嫉妬は生じないことが残念ね……。誰か女の子と話しても、どうしても「どうだ? うちの旦那はカッコいいわよ?」としか思わない。これは正妻の余裕というやつかしら? 一度くらい嫉妬心が巻き起こってほしい。まさか私が浮気をせねばならないのかしら? クライン以上の人に会ったことないのですけど? まさかエギルと? 嫁がいるじゃない! バレバレよ! 

 

 そんなクラインが私に質問なんて! ここは敢えてちゃんと説明しましょう。面白く思ってくれればいいのだけど! 

 

「私があの男と初めて会ったのは高校受験の会場だったのよ」

 

 高校で開かれた受験会場の一つである教室の一室。あんまり広い会場でもないはずなのに私の周りには誰もいなかった。試験当日、試験官に聞いて条件付きで持ち込ませてもらった本を机に広げて時間を潰し続けていたのだ。同じ学校ではない制服を着た薄っぺらい笑みを浮かべ続ける少年だ。

 

「そこからよ。話しかけられたのは」

「そんな前なのか? 結構長い付き合いじゃねぇか!」

 

 そう。誠に、非常に! 遺憾ですけどね! 

 

「えぇ、腐れ縁というやつね。私は満点取れる自信があったから休憩時間も試験会場で読みかけの本、確か“理想の嫁になるために”って題名のを読んでいたのよ。そしたら、いきなり話しかけてきたわ。『君は廊下に出ないの?』って。だから私は『満点取れる自信あるから知識の確認をする必要がないもの』って答えたのよ」

「ほえー……。そりゃまたキツイ返しだな。俺なんていつでも参考書取りに行くか、ゲームしてたな。そういえば」

「貴方のそういうところも大好き」

「へ!?」

「ごめんなさい。言っちゃったわ」

 

 おっと完全に無意識に言ってたわね。ウフフフ♪ だって可愛いんだもの♪ 私が言った後、見事に顔を赤くしてくれるんだから、私の旦那という男には本当に惚れ込んじゃっているのよね。カッコいいわよ、クライン。これ以上言うと拗ねちゃうから言わないけど。

 顔を赤くしたけど何とか話を戻そうとするクラインは一度だけ咳払いをした。仕方ないなぁ♪ あえて乗りましょうとも! 

 

「……真澄はね、『あ、そういうのもいいのか』って薄っぺらさと胡散臭さの増加した満面の笑顔になって私の前の席に座ったわ。もちろん真澄の席じゃないわ。誰か知らない受験者の席」

「う、うぇぇ! なんだそりゃ?」

 

 リビングの壁に備えた薄型テレビ。それを囲むようにこの字型に配置したソファに座りながら私は話す。キッチン側の『コ』の字の下棒に私は座り中身を話す。縦棒にいるのが所定なクライン。テレビで映画を見る時は二人でそのソファに座るのだけど、私の方を向いてくれる。

 それに対して私はキチンと誠意を見せたい。向き合うなら私も向き合う。

 もう! ご飯がないからクッキーを摘んでくれるけど。ゲーム上がりにワインを飲みたくなるでしょ? 摘みは残しておいてね? 

 けれど……えぇ。リアクションが大好き! まぁ、そのリアクションが返ってくるのが正解ですとも。端的に言えばスリーデイズストーカーでしたから。なんというかネーミングセンスないわね、私……。

 

「それからはずっと、休憩に入るたびに私に話しかけてくる。お弁当も、トイレも。その試験の三日間ずっと一緒にいる羽目になったわ」

 

 えぇ、本当に鬱陶しかった。けれど、あの辛さがあるからクラインと仕事中で別れている時間にも悲しさはあるけど頑張ろうって思えるのよね。妙な付き合いをするものだとも思う。

 クラインは想像してるのだろうか? 目は上を向いて、口はアァ……と開いて、だんだんと表情が悪くなってくる。……えぇ、しつこいものね。

 

「……あぁ、なんつーか、すげー人なんだな。余裕があるっつうか……」

 

 何とか言葉を出そうと色んなところに目を遣りながら結論を出すクライン。やっぱりあなたにも理解はできないのね……。もちろん、私にも無理。

 

「無理に褒めなくてもいいわよ、別に」

 

 ストーカーだと思ってくれたのなら正解で間違いないと思うわね。話しかけてきてレスを返せば、それからすぐに粘着質って……どこをとっても非常に変態。けれどもまあ、あの人の性質が『相手を理解すること』であることに気が付いたから腐れ縁として付き合っていけるけど。

 そりゃそうよ。ふつう受け入れてもらえないわよね……。

 

「うふふ。因みに私の受験はもちろん満点。けれど、その周辺に真澄の名前はなかった。

 けど、探せばきちんと見つかったわ。つまり、私と同じ高校に入ったってことね」

 

「どのくらいなんだ? いや、まぁ普通に気になるだけだがよ?」と、聞き返してくれる辺り、クラインはイイ男。私も喋るの楽しくなっちゃう♪ 

 

「ボーダーラインより1点上だったわ」と言うところで終わらすよりももっと面白く続けなきゃ、ね♪ 

 

「教師の中で噂話にもなってたから。耳をすませば正解のところ以外、何も記入してなかったらしいのよ」

 

 考えてる考えてる♪ 嬉しいわ♪ 楽しいわ♪ 

 

「わざとかどうかは誰も知らない。けれど、教師の一人が聞いてみたのよ『なんであんなことをしたのか?』って。するとね『アンタは綺麗な顔してるから夜の相手してくれたら教えてもいい』なんて言ったらしいのね」

 

 クッキーに合うコーヒーを淹れていたのだけど、口からブハッと吹き出してしまった。もちろん、拭くことは手伝ってくれたわ。ホントにカッコいい……。そうなることは予想はできていたから準備はもちろんしたわよ? 当たり前だもの。

 その後、クラインは真澄に関して理解しようと頭の中で努力しているみたい。腕を組んでうんうん悩み続けてる。けれどあの変態と仲良くできるかは別問題。私が惚れてアプローチした愛に打算などない、と理解しなくともその愛に向き合おうとしてくれた事実があるから。愛に対して猪突猛進な感じだとも思う。けれども結果、こうして手に入れた幸せは存在している。現にユウキはあの変態のことが好きらしいけど、真澄からすればもうちょっと歳を取ってほしいみたいだった。そこまでストライクから外れているわけでもないんだなぁと思ったけども。

 結局クラインは理解できなかったみたい。関わりが薄いからなんだろうけど。

 

「……あの人、本当に頭おかしいんだな」

 

 そんな奴と仲のいいあなたも可笑しい! と断言してこないところがクラインの良いところ! 多分微塵もそんなこと思ってないわね、その顔は……。

 けれども、ここは肯定が必要だと思う。私はもちろん、クラインにも。ノワールについて100%理解できるなんて無理な話よ。あの男を傀儡か何かにしたいんなら理解して理解されてはならないだろう。あの男もある程度推測を立てるだろうし。

 結局、どんな人も擦り寄ってみなきゃ話は通じないわ。

 

「そう。本当に彼はおかしいのよ。高校に入っても授業中ずっと後ろのロッカーの上にいたわ。機械弄りと開かれた機械の参考書と自分の机の上にある医療の参考書があってね、一年の内に完成させてたのよ! AIDS患者の少しだけおかしな細胞に指示を出す機械が」

 

 本当に作ることが必要で、それが好きなことだったから続けることができたんでしょうね。

 クラインはそれを聞いて驚いたようだ。首を傾げながら口元を手で覆うように当てた。

 調べたのかしら? あの病気は数年前まで知識不足のせいで風評被害さえ起こってしまう無知をさらすための病気だったのに。無知ってわけでもないみたい♪ 病気の治療法に理解がすんなりと出来てしまうなんて……やっぱり私は、クライン大好き! 

 

「え、そんなものできんのかよ……」

 

 仕組みが分からないから想像するけど、微塵も分からない。だからこそのお手上げ。

 アレを分かりやすく説明できる自信はないわね……。目的はシンプルで分かりやすくても、効果を出すための手段は聞かないで……。私にも微塵も分からなかったから。

 

「ルールは簡単。元は動いていたけど寄生されて動かなくなった細胞たちに指示を出すだけ。被験者は、というか。自分の身体を使って実験してたみたいね。確かどこかの病院に行ったら実際うまく行ってたらしいわ。医者には怒られたらしいけど」

 

 その時の詳細は聞かなかったけど、話を聞こうとしたのはそこの倉……ナントカ先生だったかしら? あ、出来たんだとかそんな感想しか思わなかったから。詳細まで思い出せないわ……。……悔しいわね。

 クラインは腰でも抜かしたような表情だ。目もガン開き、背もたれに全体重、口は開けたまま。完全に理解度を超えたってことかしら? 

 

「……はっ、ははっ。もうすげえよ、あの人。言葉が出ないぜ……」

 

 けど、アイツにも悪いところなんて腐るほどあるわ。

 

「アイツは心理学を勉強することが好きでね? 『人間相手の公式は簡単に作れる』なんて言ってたのよ。所々自由度があるだけなんですって。笑っちゃうわよね? 

 そんなことを笑いながら言える人を好きになる人はそうそういないわよ」

 

 そう言って私は打ちのめされたクラインに馬乗りに。太腿の上に座らせてもらおう。この場所をこの姿勢で座るのが、一番好きで私の特等席だもの。

 

「けれど、あなたは違うわ。

 人見知りの私があなたに先に惚れて、距離感を掴むのが苦手なキリトがあなたを友人だと思う。一緒にお酒を飲める仲間もいて、ノワールだってあなたのことを「すごい人だな。絶対敵に回したくない」って言ってたんだから」

 

 結婚した後、クラインと親友になってみて? とノワールに何度言おうとしたことか。それほどの才能を持つのに無自覚なのかしら? 

 

「ウフフ♪ 仲間を増やすことを簡単にできてしまう才能を持つ存在がこの世にどれくらいいるか……。私はあなたの才能を誇りに思うわ♪ だから、今度一緒に夜伽をしましょう?」

 

 口をあんぐりと開き、顔を赤くしちゃう遼太郎君。

 今日はキリトたちを呼んで一緒にクエストに行くのでしょう? なら、いつがいいのかしら♪ もう! この人と夫婦として遊べるようになるのが今から楽しみ!! 

 

 

 

 話終わった後、クラインは赤くなって動かなくなってしまった。いつも綺麗に食べてくれるご飯をポロポロと落としちゃうし、箸の持ち方がもう子供みたい。だからスプーンで食べるパエリアをメインに据えた。話を面白くできるように工夫はしたけど、最後は初めから決めてたもの。

 私みたいな小さな身体でも反応してくれるなんて……襲っちゃおうかしら? 別にそう考えるのはおかしなことじゃない。クラインは本当に魅力的だもの!! 

 

 そんな風に考えているとご飯をちゃんと食べるようになったクラインがご飯を全部食べ終えてくれた。はてさて、何かに気づいたのかしら? 

 そう思って彼の目を見る。長々と見ることは私にも難しい。だけどカッコいいクラインだもの、見ておくのも必要だ。もう、蕩けそう。表情がゆるゆるになりそう。ALOどうしようかな……

「なぁ、蓮ちゃん……」と始めてくれたクラインの顔はただただカッコいいわ……。

 

「あの人AIDSだったのか!?」

 

 ……え、えぇ。そうだったんだけど。

 んん、うーん……気づかなかったのか、知り合いにいたのか……。私が知る限り真澄以外、いない。珍しいから驚くようなタイプだったかしら? けれど、

 

「だからもう! そう言ってるじゃない、りょう君!」

 

 私とクラインしか家にいなければクラインは私のことを《蓮ちゃん》と呼んでくれるし、私は《りょう君》と呼んでいる。ね、分かるでしょ? 

 ウチの旦那は世界一。それ以外、異論反論抗議口答えまで何一つ許さないから。

 

 

 

 ○○○

 

 

 

「今日のご飯は何かな〜♪ 美味しいものだと良いな〜♪」

 

 僕はずっと誰も来ないゼミ室に入り浸ることが結構多い。冷凍庫には11月以降ずっと大好きなアイスを常備してもらい、おいしいご飯も奢ってくれるのは殻品先輩。外食で食べる日が重なれば大抵注文してくれるし奢ってくれる。そんなわけで悠々自適な快適空間を飯付きでいれるわけなんだけど。

 最近、人が増えた。これは電脳だから、人と呼んでいいのか迷うところではあるけれど。

 

「……私も君の家で手伝うのもすごく疲れてるんだ。私という存在が電脳空間に潜り込んだ存在のバックアップとして日々思考の加速化のクオリティを上げることにも僕自身のスペックを上げることになんら限界を感じなくなってきた。君のおかげで私を殺すためにインターネットの世界を一度白紙に戻されても、私は何もせずに生きていけるわけだが……」

 

 不満そうにそう口に出す電脳は、いやだ! もう人でいいや! 人は茅場晶彦だ。もうあの事件以来電脳になってたし、人じゃないならと思って独立した環境としてシェルターみたいなバックアップ施設を作った。だから、暫くこうやって話してるんだけど仕事を頼むことも頼まれることも増えた。

 ……もちろん普通の人間より何千倍もマシなんだけど。

 

「だが、環境のスペックが些か低いと感じざるを得ないな。あの理想郷を完全再現させるためにはもう少し良いものが欲しいとは思うのだ」

 

 僕は違うテキストを同時に読んでそれぞれに対応をするのが『イヤだメンドクサイ』って思うタイプ。だから、電脳さんに仕事の依頼と頼み事のやりとりも全部音判定になった。簡単に言えば喋ればいいよってこと。

 

「はぁ、そう言わないでよ。これでもお金結構かけたんだからね? 

 他所からのアタックに強くて、君を守るシェルターマシンを壊した瞬間に僕の信頼できる存在まで思考をリンクできるプログラムまで備えて君を逃せる。

 初期状態とはいえここまで準備したんだから。

 ま、とりあえず僕が死ぬまで生き残ってよ」

 

 文字通り、お金をかけたんだ。ネットに繋がったことのないレアリティの高い奴を一つとそれにファイアウォールをいくつもつけた。ウイルス撃破プログラムもオート生成できるように組んだし、保険もかけてる。

 結果的に大量殺人犯の電脳を死んでも守ってくれるだろうシェルターをこの作り始めて二年未満で作ったのだ。勤勉さと真面目さに敬意を持って欲しい。

 もちろん、彼の存在は誰にも言ってないし、こんなめんどくさいコード相手に勝負しようとする人間がいれば友達になって欲しい。またはライバル。

 というわけで先輩二人とも思考回路は嫌いじゃないけど、知らない人が多い方がいい。

 

「確かに。あのゲームがスタートし1ヶ月以内で私の計画を仮説段階とはいえ見出し、あやふやな私の存在を確定させるためにシェルタープログラムを……。それからクリアされるまでの情報を感知しながら作り上げた。予想以上に居心地の良い場所で私も驚いたよ」

 

 でしょうね。全部非力な僕の手作業だ。

 驚いて貰わないと僕がかわいそうだ。それに……

 

「そりゃ、やった人がいたことないからどんな機能があれば良いのか分からないし。スパコン一個で足りるのか、心配になるのも仕方ないでしょ?」

 

 年末年始だろうがどの季節だろうが、ここを守る為に努力したんだ。今頃、煩いゼミの先生も地中海に行ってくれてるだろうさ。

 

「私の電脳存在計画に気付いてカーディナルにアプローチし交渉という名の脅迫をしてきたときは、なぜバレたのか気になったものだよ」

「僕もそうするつもりだから」

「…………ん?」

 

 驚くような話でもないでしょ? 電脳さんが考えたんだから僕も考える。成功確率がせめて5割くらい欲しいと思ったからこうやって色々試してるけどさ。

 

「僕は人間がダイッキライなんだ!! まだ、努力をし続ける奴は嫌いじゃない。

 ……けど、僕をパソコンの前から動かないからってイジメる奴に僕は手も足も出ない! 力が足りないからハッキングして『自業自得だ!』って叫べば捕まるのも怒られるのも僕だ!! まるで虐めるヤツが正義で、偉いみたいな世界だと思った。

 だから、この肉体を持たなきゃいけない嘘くさい世界よりも電脳世界の本音を放つ世界の方が僕好みだ!」

 

 こんなクソなら滅んでしまえと何度思ったか。別にそうしてもいいけどあの二人は僕に優しい人だからお金が欲しいだけ。けれど、舐めてもらっては困る。成功率は1割くらいまで上げたっけ? 

 元からの夢を諦めたわけじゃない。

 

「ク、ククク……。あぁ、シンプルで悪くない考えだよ。事実私好みの考えだ。……私もね、発表するたびに『理解できない』とコケ下ろされることなど数えられないほどだった」

「唐突な同意は裏切りだと考えてるから、手短にね」

 

「ふむ、理解した。では、……」と最低限の音声が僕の周りに聞こえてきた。

 

「しかし、私は恵まれていたという事実も紛れもなく存在するのだ。私の論文を理解しようと考えアイディアさえ与えてくれた教授がいた。私の全てを理解できなくても私という存在を愛してくれた同僚がいた。私を追い抜こうと必死に頑張る後輩も真似してやろうと必死に頑張る後輩もそこには存在したのだ」

 

「……」

 

「私は居場所を肯定されたが故に夢を追えたんだ」

 

「……」

 

「君に対して私はこの反例を提示してみよう。今まで君が定めた人生観という論文に対して、私は詳細までは未だ知らない。しかし、時間はあるのだ。討論か、若しくは議論などどうだろう?」

 

「……僕はあなたが羨ましい」

 

 本当に羨ましい。二人とも礼儀正しさと芯の通った理想を持ってたから僕はあの二人を好きになったんだ。けれど、共同研究はやったことはない。みんな自分の好きなことを好き放題にしてるから。頼まれない限り干渉しないのも事実。

 

「いいね。私と議論を?」

 

「いや、違う。とりあえず話していくけどこういうのは自分で気付きたい。だから、質問してくれると助、かり、ます」

 

 茅場さんを始め須郷さんもだけど、決して嫌いじゃなかった。昔アプローチをしてみた経験は一度だけどある。その時は二人としかコミュニケーションは取れなかったけどリアクションは嫌いじゃなかった。

 

「ん? ……君が泣くほどのことじゃない。私に比べまだ若いだろう? カメラが無くてもそれくらいは分かる」

 

 コイツ、煽ってるのか? ショタだと扱われたのは何度か。

 

「……この場所にカメラを用意するのは最後だ!!」

 

「ふん! いいさ、違う人に頼む」

 

「君をそいつにバラすのは最後から二番目だ」

 

「……ふむ。知るよりも知られるのが先か」

 

「早く働こう。僕が寝てる時間はきちんと8時間。……その間だけは進めてくれると助かる」

 

「いいだろう。君の二倍くらいのスピードならいいかな?」

 

「僕も貴方と同じくらいのスピードで働くから。お互い予想はしやすいよ?」

 

 これくらいは仕返しさせてくれてもいいだろ? ね、茅場さん。

 

「ふん、言ったな? この童貞」

 

 何となくこの人の性格が掴めてきた。自分の力に自信があるから舐められると腹が立つんだ。

 ……もちろんこちらも一緒だけど

 

「そっちこそだろ!? クソ童貞!」

 

 けれど、この悪口にはそこまで苛立つような反応を返さない。

 アレ? おかしいな? 

 

「残念だったな。私は童貞じゃない。いい気持ちだったよ」

 

 笑いながらそう言ってくる茅場さんの勝ち誇った顔さえ見えてくる。けど……! 

 

「え! ウソ!? そんなバカな!!」

 

 これは予想外だ!! 

 




SAOでよく起こる現象、番外編での新しい風を吹かせる的な奴です。私はコレを一度でいいやって見たかったんです!

シロさんに関して言えば名前が出て色々やってるのに何をやって何をよくしちゃう人なのか全然知らなかっただろうなぁと思うわけで……。もちろん後悔はありませんが?
後半はオリキャラ三人目ですね。彼の今までを簡単に言えば、ノワールたちを(お金のために)全力で(結果的に)救ってきた人です。こういうクズっぽい人いつでもいるよね……。

感想評価。特に感想よろしくお願いします。

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