ゼルダの伝説〜異世界の兵士共 NS(イセカイのツワモノドモ ニュー・ストーリー)〜   作:油揚げパン

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日杯交流会 9

 日杯交流野球大会の特設VIPエリアで、リンクとシャルルのやり取りを見たアームストロング総督は…

 

 「…………」(・д・`) ガッシャーン!

 

 冷酷で敵に対しては、どんな奴であろうとも野良犬の様に見下して戦場を駆け巡ったシャルルが乙女チックな行動を取った、親である自分すら知らない長女の姿を見て、驚愕のあまりに目を見開き、開いた口が塞がらなく、思わず手に持っていたジョッキを落としてしまった。

 

 

 

 自身の教育(歪んだ教養)で、シャルルは弱肉強食を魂に刻み込んでしまったせいで、女っ気が無い冷酷なサディスティックになってしまい、()()()()()()()()()これ以上ない位に立派に育ったが、貴族としては”ハイラル王国公爵”という肩書が霞む程、婿探しに苦労する程極悪に育ったと思っていた父親だった

 

 

─────────────────────────────

シャルルの過去

 

 

 シャルルの初めてのお見合いは、当主であるアームストロングが政治的に結束を高めようと考えで、当時十二才だったシャルルは、武器商業で成り上がったハイリア人の小太り中年のオッサンとのお見合い話となっていた。

 

 この武器商は、アームストロングの曽祖父時代から付き合いがあり、国の歴史の中で、武器調達と開発というハイラル王国軍にとって切ってもきれない関係だった。

 アームストロング的には、武器の安定供給や裏切らない為の楔のつもりであったのだが…

 

 しかし、シャルルはというと…

 

 「この写し絵のオジサマが? …私の婚姻相手ですか? 父上まだ私には早いと思われますが」

 

 「そうだ。我がタブリ家と付き合いも長い、信頼も出来る、貴族であればもう婚約者がいても可笑しく無い年だ。」

 

 「ふ〜ん」

 

 父親から見せられた写し絵を見て、特に表情を変えないシャルル

 

 「明日の茶会で顔合わせする。タブリ家(ハイラル王国随一である公爵貴族)に恥じない様にするのだぞ」

 

 「わかりました…タブリ家(ハイラル王国随一である最恐騎士の一族)として恥のない対応をしましょう」

 

 そうして、お見合いという名前の茶会が始まったのがいいが、趣味の話から…武器商と軍人の家系のせいか…何故か武器の話になった…

 

 まだ、ここまでは良かった…

 

 「レーシアス殿、先日購入させて頂いたレイピア…この線の様な模様は何か意味があるのですか?」

 

 シャルルが手に持っているレイピアは、自己紹介も含めた贈与品であり、希少な”紺碧のハガネ”を使った特別製であり、普通の鉄鉱石で作った剣は氷魔法の様な低温で割れる事多いが、紺碧のハガネを使った剣は、低温になっても割れにくく、氷魔法の適性があったシャルルには相性が良い剣であった。

 

 刺突剣の割には根元が太く、スウェプトヒルト(唾・ガード)の装飾も薔薇の模様があしらわれている

 

 「(女の癖に武器が好き物騒なガキだ…家系が家系だから仕方ないか)えぇ、刃紋の事ですな。 柔らかい金属と硬い金属を重ねる事で強い衝撃を分散する様になっているのさ「シャキン!」」

 

 大人顔負けの抜刀で、相手方の右頬をレイピアで貫いた

 

 「………」( ;´Д`)ヒィィィィィィー!

 

 「失礼、蜘蛛がよって来ていたもので…」ピュッ!ビチャァ!

 

 細いレイピアの先には五センチ程のスタルチュラとは違う赤と紫が特徴的な蜘蛛が刺さっているのを見せ…レイピアを振って遠心力で少し離れた木に蜘蛛がぶつかり、潰れた音が相手の心をざわつかせる

 

 「失礼した。…父上の指示により貴方を夫にするのならば、この頂いた未完成な剣を、ちゃんとした本物にしなければなりませんね」

 

 「み…未完成?…そんな!それを鍛錬するのにどれ程の力を…」

 

 「…丁度良いので明日、レーシアス殿の本店にて完成品となった剣をお持ちいたします。」

 

 そう言って、シャルルはそのまま、単独でハイラル王国に北西にある貧民街の奴隷商人の所へ向かった…

 

 

 

 

○次の日

 

 

 シャルルは手見上げの物と剥き出しのレイピアを両手に持ち、朝から武器商人の店に向かって行った

 

 シャルルの姿を見た通行人の悲鳴は、本人には気にしていない

 

 武器商人の店の前に到着すると、大声でレーシアス店主を呼び出す

 

 「シャルル・タブリである! レーシアス殿はおられるか!?」

 

 その光景を見た店番の人が顔面蒼白になりながらも、主人を呼び出に奥へと急ぎ、出てきた店主はその光景に目を疑った。

 

 茶会で着ていた白と青で基調された美しいドレスが、返り血で真っ赤に染まり、剣戟で切れただろう服がボロボロ

 

 薄く化粧をされて美しかった顔も、その眼光は野生の猛獣と錯覚する程の冷酷な目と返り血で台無しに、極めつけは左手には違法に奴隷を帝国に売っていた裏切り者(ハイリア人)の首の髪の毛を鷲掴みした姿であった。

 

 そして戦で耐え抜いてボロボロではあるが、しっかり武器としての機能を果たしたレイピアが右手に握られていた。

 

 「シャ…シャルル…嬢

 

 「…おまたせした。 ここに貴殿の武器はしっかり完成されたぞ」

 

 そのレイピアは、戦の証が刻まれて唯一無二の剣となっていた。

 飾られるだけの剣では絶対に出ない「戦歴」という称号が…店主はそんな剣に情熱を感じ、シャルルには畏怖を覚えた。

 

 「貴方が私の夫になるからには…相応の対応が必要だろう?」

 

 そう笑顔で語るシャルルは…悪魔にしか見えなくなっていた。

 

 「う…うあああああああ!!バケモノォ!!!

 

 「…急にどうされた?…何か怖がらせる様な事でもしてしまったか?…『ワタシワ、ハイラルオウコクヲ、”ウラギッタ”モノデス』」カパカパ…

 

 

 「……」…バタ!

 

 「レーシアス殿!?

 

 シャルルは相手が何に恐怖しているのか分からず、以前馬車の窓から見た人形劇の様に、生首の顎を掴み、口をパクパクさせて場を和まそうとしたが…

 

 レーシアス店主は、シャルルへの恐怖と無邪気な狂気に着いて行けるわけが無く…失神(緊急離脱)した。

 

 

 

 その後、騒ぎになったことで城下町の兵士も集まりだし…婚約は……破断となった。

 

 その後は、タブリ家の使命を果たそうとするシャルルは、戦績を上げれば上げる程、噂が噂を呼び、アームストロング総督がシャルルとのお見合いの話を他の貴族にすると、相手が恐怖に震え出すという事態になってしまい…

 

 困った事に政略結婚が出来なくなった事があった。

 

 


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