コルト・コマンドー   作:いぬもどき

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コマンドー

「――――死を届けに参りましたよ。ほら、目を開けなさい…わたくしをご覧なさい、M4A1…さぁ」

 

 火災が起こる廃墟の中、二人の人影が見える。

 二人とも戦闘で衣服は擦り切れ、身体のあちこちにすり切れたような傷痕がある。そのうちの一人は、片腕の関節部に酷い損傷が見られるが、疑似生体パーツの下に見える金属骨格はほとんどダメージが見られない。その女性はもう片方の腕で、戦術人形【M4A1】の首を掴みあげている。

 首をがっしりと掴まれたまま足が浮くM4A1は苦しそうに咳きこんだ…。

 

「エージェン…ト……!」

 

「面白いですわ。死に際の目つきでさえ、あの娘たちとは違いますのね。そう…その目つきです…もっと驚き、悔しがり、恨みなさい!」

 

 首を絞めあげられながらも、対峙する【エージェント】にM4の意思が挫けることは無かった。彼女の様々な想いを秘めた瞳を見て、エージェントは口角を吊り上げた。

 

「ご主人様の大事なものを盗んでおいて、逃げおおせられるとでも思っていたのですか?まずはあなた…次に残りのAR小隊、そしてあなたのために命懸けで戦っているグリフィンの人形たち。まず手始めに、あなたにはここで死んでいただきますわ」

 

 M4の首を絞める手の力を強めていくエージェント。

 咳き込むことすらままならないほどの強さで首を絞めあげられていく彼女は、徐々に意識が朦朧としていくのを感じていた。

 

(まだ…こんなところで死ぬわけには……!)

 

 首を絞めるエージェントの手を両手で掴み抵抗するが、力の差は歴然でありまったく刃が立たない。M4のせめてもの抵抗すら、徐々に力が失われていく…両手の力も入らなくなり、ただエージェントの腕に触れているだけ。M4は初めて、死を感じ取っていた。

 だがそんな時だ、エージェントは咄嗟にM4から視線を外し、炎上する廃墟の奥を見据える。

 煙に包まれた廃墟の奥…火が爆ぜる音に紛れて、何者かの足音が聞こえてくる…。

 

「お楽しみのところ悪いが、そこまでだ。その子を返してもらう」

 

「これはこれは……あなたのことは知っていますよ。あなたに何度うちの人形がやられてきたことか……初めまして【XM177E2】」

 

 煙の向こうから現れた一人の戦術人形。

 端正な顔立ちの女性、身長は高く髪の色は茶……自身の銃を腰の位置に構えたXM177E2は一度首を絞めつけられているM4と視線を合わせる。驚いた表情を見せるM4に微かに微笑みかけた彼女は、M4を苦しめるエージェントを鋭いまなざしで見つめる。

 

「この人形を取り返したいのでしょう? 生憎、そうはいきませんわ…わたくしの力加減で容易に殺せるのですから。死なせたくなかったらまずはその銃を捨てなさい…分かりましたか?」

 

「………OK!」

 

「え?」

 

 ズドン、重厚な銃声が一発鳴り響く。

 下手な抵抗をしたらM4を即座に殺す、そう忠告したそばから引き金を引いてきたXM177E2にエージェントは驚いた表情のまま頭を撃ち抜かれて破壊されてしまった。

 

「ケホッ…ゲホゲホッ……!」

 

「大丈夫かM4?」

 

「はぁ…はぁ……XM姉さん…! あ、ありがとうございます…!」

 

 エージェントの手から解放されたM4は、XM177E2の手を握りよろよろと立ち上がる。

 乱れた呼吸を整えつつ、M4は今しがたXM177E2の手により破壊されたエージェントを見下ろす……そこそこの距離から腰に構えた状態で正確に頭部を撃ち抜いて見せたXM177E2の腕に、彼女は尊敬のまなざしを向けていた。

 

「歩けるか?」

 

「はい、問題ありません。あの、XM姉さん…SOP2とAR15は?」

 

「二人とも無事だ、救援部隊を呼びに本部へ向かわせた」

 

「そうですか…XM姉さんも無事で安心しました。通信で、ハイエンドモデルが5体くらいXM姉さんの方に突撃していったって聞いて、少し焦りましたが…」

 

「ただのカ カ シ(スケアクロウ)だ。それよりもここを脱出して本部に戻るぞ」

 

「はい、でも周囲は鉄血だらけです!」

 

「いいか、こっちが風下だ。近付けば分かる」

 

「どうやってです? 匂いを嗅げとでも?」

 

「ああ、そうだ」

 

「………」

 

 M4はその日初めて、姉を遠い目で見つめた。

 それはさておき、二人は任務を果たしあとは基地に戻るだけ…周囲は鉄血の兵士であふれかえっており、見つからずに脱出することは難しい。

 しかし姉の言うことさえ聞いておけば間違いない、そう思いM4はXM177E2の指示に従い廃墟を進む。

 今回の任務には腰痛の悪化で来られなかったもう一人の姉のM16からも、XM177E2の指示に従っていれば大丈夫だからとアドバイスを貰っていたのだ。

 

「XM姉さん、正面にリッパーがいます。狙撃しますか?」

 

「音を出すのはまずい…石ころでも投げて注意を逸らそう」

 

 手頃なサイズの石ころを拾い上げたXM177E2、AR小隊を捜してまわる鉄血兵の注意を逸らすためにその石ころを投げつけると狙ってかどうなのか、リッパーの一体の頭に命中し、そのリッパーは倒れたっきりピクリとも動かなくなってしまった。

 双眼鏡で一部始終を見ていたM4は再び遠い目でその現場を見つめている…。

 突然仲間が倒れれば他の鉄血兵も慌しくなるのは当たり前だ。

 

「死にましたよXM姉さん…」

 

「奴らの注意が死体に逸れた。行くぞ」

 

「XM姉さん!?」

 

 壁から飛び出していった彼女は倒れた死体のそばに集まる他の鉄血兵を正面から奇襲すると、反撃をする間も与えずに全滅させてしまう。破壊された鉄血兵を避けながら、M4は彼女の後をついて行く……腰痛治療のため針治療を施されていたM16からは、XM姉さんの動きを見てよく学ぶんだぞと言われていたが、規格外すぎて何も学ぶことなどなかった。

 

「XM姉さん、一度ペルシカさんと連絡を取りたいのですが…」

 

「帰ってからでいい。今は時間がない」

 

「そうですね、すみませんXM姉さん」

 

 通信をすれば鉄血に現在地がばれてしまうリスクが高くなる、今は侵入が発覚して普段以上の警戒状態になっているためなおさらだ。この状況でそれを見落としてしまった自分を恥じるM4……実際は、今夜帰ったらM16姉さんと飲みに行く約束があるから早く帰りたがっているのだが、そうとも知らないM4は相変わらず尊敬のまなざしを向けている。

 極力、敵と戦うことは避けていく。

 弾薬が有限である以上、敵との交戦はやむを得ない場合にのみ限る…素手やナイフで敵を仕留めるのは、XM177E2にほとんど任せるM4であった。

 

「もうすぐですXM姉さん、というか鉄血の反応が遠ざかっていくんですが追いかけてこないんですかね?」

 

「私のダミーを中心地に置いてきた。奴らはそれに群がっているんだろう…待て、一体近付いてきている!」

 

 M4が気付くことのなかった鉄血の信号を悟った彼女は、咄嗟にM4を物陰に隠れさせる。

 その直後、凄まじい勢いで一体のハイエンドモデルが巨大なブレードを手にXM177E2に斬りかかっていったが、敵の動きを予知していた彼女は突っ込んできた相手ブレードを躱し、身体をがっしりと掴みそのままの勢いですぐそばの木箱に向けて投げ飛ばした。

 

「XM姉さん、無事ですか!?」

 

「伏せていろM4!」

 

 顔を出したM4を隠れさせ、たった今投げ飛ばしたハイエンドモデルを見据える。

 木箱を壊しながら吹っ飛んでいった彼女は、ふらふらと立ち上がりながらXM177E2を睨む。

 

「いってぇ……お前がハンターを仕留めたグリフィン人形かよ? オレは【エクスキューショナー】、かたき討ちってわけじゃないが…みすみす逃がすわけにはいかないよな?」

 

 先制攻撃に失敗し、逆に手痛い反撃を貰ってしまったエクスキューショナーであるが精一杯踏ん張って持ちこたえている様子。

 

「へへ、怖いかクソッたれ。当然だぜ、ハイエンドモデルのオレに勝てるもんか」

 

「試してみるか? 私だってAR小隊だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、M4とXMが来たよAR15! おーい、おかえり~!」

 

「待ってSOP2、ここはまだ敵地に近いんだからそんなに騒がないで」

 

 鉄血の支配地域から脱出したM4とXM177E2は、領域の外で二人を待っていた【SOP2】と【AR15】との合流を果たす。SOP2は無邪気な笑顔を見せながら走って行き、XM177E2の前でピョンピョン跳ねて抱っこをせがむのだ。

 

「二人ともよく無事だったな」

 

「どこかの頭のおかしい"コルト・コマンドー"が大暴れしてくれたおかげで、敵に全くあわずに撤退ができたわ」

 

「XMもM4も無事だったんだね! よかったよかった!」

 

「こらSOP2、XM姉さんは疲れてるんだから下りなさい!」

 

「えぇ~!」

 

 ブーブー文句を言いながら、SOP2は仕方なくXM177E2の抱っこから降ろしてもらう。

 

「ねえねえ、今日はAR小隊の初任務が成功に終わったことで、ペルシカに頼んでパーティーやってもらおうよ!」

 

「まあ、若干一名腰を痛めて参加してませんがね。というかM16は何をして腰を痛めたの?」

 

「さぁ…?」

 

「M16姉さんも色々と苦労はしているんだ。初任務に一緒に来れなかったのを残念に思っていたんだ…みんな笑顔を見せてやるんだぞ」

 

 XM177E2の言葉に、AR小隊のみんなの声の高さは様々であったが素直に頼みを聞いてくれた。

 その後、迎えのヘリに搭乗し、機内で初任務の感想をおもいおもいの言葉で表現しながら帰路につくのであった…。

 

 




エージェント「容疑者は女性、身長190センチ、髪は茶、筋肉モリモリマッチョ(ry

エクスキューショナー「オレどうなったの?」
ハンター「私と一緒で死んだよ」




キャラ紹介

XM177E2コルト・コマンドー(女性、190センチ、茶髪)

AR小隊の一員として開発された最新鋭のエリート人形、とされているが実態は正規軍が造り上げたキリング・マシーン。
なにがあったのかAR小隊に配属されて以降、仲間のために活動している。
色々とおかしな能力がある…。
・弾が何故か当たらない、時々思いだしたように被弾する
・だいたい腕力で解決
・以前位置エネルギー車という画期的な発明をした
・敵にとっては登場しただけで死亡フラグ
・ライバルはステルス迷彩を用いる異星人、液体金属のターミネーター


※METAL GEAR DOLLSの方に出そうとして没になったけど、諦めきれず新作として投稿したお。
続くかどうかは知らん。
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