コルト・コマンドー   作:いぬもどき

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筋肉は傘ウイルスも撃退する

「AR-15がヘリアンさんに連れていかれただと? おいM4、それは一体どういうことだ!?」

 

 それは突然の出来事であった。

 

 ある日突然T800基地に来訪したグリフィン上級代行官であるヘリアンが訪れ、AR-15に対しデータの送受信に関して深刻なエラーを起こしているとして取り調べのために連れて行ってしまったのだ。

 これにはもちろん同じAR小隊のM4やSOP2が猛抗議した…だがグリフィン内で高い権限を持つヘリアンの命令を一介の戦術人形が覆せるわけもなく、同基地の指揮官であるヂャック・ノリスに縋るもそれはかなわなかった。

 もちろん指揮官もこの事には抗議したが、指揮系統の中に組み込まれている以上最終的にはヘリアンの命令を聞き入れるしかなかった。

 そして、AR-15はヘリアンや保安要員によって連れて行かれてしまった…。

 

 

 だが問題が起きたのは任務からXMが帰ってきてからだ。

 

 AR-15が突然連れて行かれてしまったことに対し、XMは大激怒。

 普段その脅威が敵に対して向けられているので忘れていてしまったが、目の前で怒りを露わにするXMに事情を説明したM4は怯え恐怖した。

 怯える妹の表情を見て彼女はハッとしたのかXMは冷静さを少しだけ取り戻すが、それでも怒りは冷め切っていない。

 

 

「こんなことは認められない。ヘリアンめ、一体何を考えているんだ!」

 

「止せXM、ヘリアンさんもきっと何か考えがあるはずだ。だから…おい、XM!」

 

 

 XMは姉であるM16の話を聞こうともせずに、司令部を飛び出して行ってしまう。

 慌ててその後を追いかけるM16であったが、既にXMはこれからドライブに行こうと車に乗っていたデス子の車に乗り込み、彼女を脅して基地を走り去っていってしまった。

 すぐにM16たちもその後を追おうとするが、他に乗れる車はない。

 

「まずい! ヂャック・ノリス指揮官!」

 

「分かっている! カリーナ、すぐにクルーガー社長及びヘリアンと連絡を取るんだ! それから通信隊に連絡し警察とグリフィンのパトロール隊の無線を残らず傍受させるんだ!」

 

「なにが始まるんです!?」

 

「第三次大戦だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、あんた一体なんだっての!?」

 

 理由も聞かされず車を走らされたデス子は猛スピードで車を運転させながら同乗するXMに抗議する。

 とりあえず怒り心頭なのは間違いないが…。

 

「私の言うとおりにしろ」

 

「だめよ! 7時半にSOP2と空手の稽古があるの。付き合えないわ」

 

「今日は休め」

 

 デス子の抗議はあっさりと打ち砕かれ、仕方なくデス子は車を走らせる。

 T800基地のある山間部を猛スピードで下り、幹線道路に乗った後はさらにスピードを上げさせて車は走る。

 ここまで一切の説明がない、あるのはどこをどう曲がれという指示だけだが、向かっている先が何なのかある程度想像がついたデス子は途端に不安を覚える。

 

「返事を聞くのが怖いんだけど…私をグリフィンに突き出すつもり?」

 

「いや」

 

「突き出すはずないわよね…?」

 

「何もしない」

 

「ホントに…?」

 

「信じろ」

 

 絶対に信じられないが、あまり余計なことを言うと口を縫い合わされる危険があるためそこでデス子は黙り込む。

 幸いにも道路は混雑しておらず猛スピードで走っても衝突するような車もなく、警察がいてもこのスピードでは追いつくことも出来ないだろう。

 しかし、グリフィンの司令部に近付けば近づくほどデス子の不安感は増していく。

 口ではああいったが、もしかしたら本気で元鉄血の自分を突き出すのでは…そんな妄想ばかりが膨らんでいくのだ。

 

 だがそんな不安も杞憂であったと、デス子は悟るのだ…数十分後に。

 

 

「あれだ、見えたぞ」

 

「え、あのトラック?」

 

「あの車に横付けするんだ」

 

「え? だってあれって、グリフィンの…」

 

「いいから早く!」

 

 

 訳も分からず、道路を走っていたグリフィンの車に猛スピードで追いついたデス子は言われた通り車に対し並走する。

 一体何を考えているのか…相手方の車を見ると、デス子も知っているグリフィン上級代行官のヘリアントスが窓から驚愕の形相でこちらを見返しているのが見えた。

 

 

「コルト・コマンドー!? お前一体ここで何をしている!?」

 

「車を停めろヘリアンさん!!」

 

「断るッ!」

 

 

 大きな舌打ちをしたXMはそれまで運転していたデス子を強引に助手席へと移すと、ハンドルを大きく切ってヘリアンが乗る車に向けてぶつけだす。

 

 

「うわっ!? お前とうとういかれたのかコルト・コマンドー!?」

 

 

 だがXMはお構いなしにヘリアンの乗るトラックに車体をぶつけ、ついには耐えきれずに車線をはみ出して車は横転し大きな衝撃音が鳴り響く。

 しかしXMが運転する車も衝突のはずみで木に正面から激突、車は廃車となる。

 シートベルトはしていなかったが、幸いにも無傷のXMは助手席に座るデス子に目を向ける…あの短時間でシートベルトをしていたデス子はさすがだ。

 

「大丈夫か?」

 

「…死んでんじゃないの?」

 

「生きてるよ」

 

 半ば放心状態のデス子を車に残し、XMはくるまを降りて横転した車から苦しそうに這い出すヘリアンに近寄っていくと、車から強引に引きずり出した。

 

「AR-15はどこだ?」

 

「あぁ…このばかやろう…!」

 

「どこだ、答えろ!」

 

「お前一体何を…後悔するぞ脳筋ゴリラ…!」

 

「見上げた忠誠心だなヘリアン…だがな…!」

 

 

 そのままヘリアンの身体を軽々と抱え上げ、XMは道路から離れて崖まで進むと彼女の足首を片手で掴み逆さ吊りにしてしまう。

 これにはヘリアンも恐怖し、クールな顔立ちがゆがむ…落差は数十メートル、生身の人間のヘリアンがもし落ちればひとたまりもない。

 

「支えてんのは左手だ…利き腕じゃないんだぜ!?」

 

「わ…私を殺したら、AR-15とか……そういう問題じゃなくなるんだぞ…!?」

 

「どこにいる!?」

 

「あわわわわ……!!」

 

 人生において人の手で逆さ吊りにされる経験は果たしてどれだけあるだろうか?

 少なくともヘリアンは人生においてこれが初めての経験だ…逆さ吊りにされていることで血が頭にあつまり、死への恐怖とで平常心が損なわれたヘリアンは既にまともな回答が出来る状態ではない。

 

 そんな死の危機に立たされたヘリアンを救ったのは、AR-15だ。

 

 崖のそばでヘリアンを逆さ吊りにするXMは近づく足音に気付き振り返ると、そこにいたのは頭から血を流し痛そうに表情を歪めるAR-15であった。

 

「AR-15、無事だったか!」

 

「おかげさまで…あんたのせいで死ぬところだったわ…。それより、ヘリアン放してあげなよ」

 

「だが…」

 

「いいから放してあげなさいってば! あ、ちゃんとこっちの地面でね!?」

 

 AR-15の指示通り、崖から少し道路の方に戻り放してやると、重力にしたがって落ちたヘリアンはふぎゃ!と声を上げて落下した。

 それから頭をぶつけて痛そうにしているAR-15から事細かな事情を聞き入れ、XMはつい頭に血をのぼらせて大暴れしてしまった事を反省するのだ。

 

「だが…本当なのか?」

 

「ええ、たぶん…そう…前に鉄血と接触した時に、何か仕掛けられたんだと思う…ここ最近、鉄血が私たちの行動を予測していたような素振りあったでしょう?」

 

「ああ、その都度奴らを追い回して仕留めたが…」

 

「本当なら追い回す必要もなく鉄血をぶっ殺せたはずなのよ。私のせいで情報が洩れて、追い回すようになった。心配かけてごめんなさいXM、でも安心して…グリフィンで調べてもらったらきっと帰るから」

 

「そう願いたいな。私こそ、早とちりしてすまなかった」

 

「ほんと、考えるよりも先に筋肉が動くんだからあんたは…フフ」

 

「これが取り柄だからな…ハハハハハ」

 

 お互いの事情を理解し合い、笑いあう…AR-15はXMを姉だなどと思ったことはないが、この時ばかりはM4やSOP2のように姉と慕い甘えてみたい気になった。

 そんな風に笑いあっている二人のそばで、ゆっくりと立ち上がるヘリアントス…。

 

 

「すまなかったヘリアン…どうやら大きな誤解があったようだ。AR-15の事を頼む」

 

「あぁ……そうだな、そうだなぁ………って、そうだなで済むと思うかこのばかやろう!! お前もAR-15と一緒に逮捕だッ!!」

 

「なに!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけのカカシ編~

 

 

「車がなくなっちゃったわ…」

 

 一人取り残されたデス子は、しくしくと泣きながら徒歩で来た道を戻っていく。

 意識を失っている間にXMともども誰もいなくなってしまい、現在地もよく分からないのでとりあえず記憶を頼りにT800基地まで戻っているが、あれだけの速度で飛ばしてきた道のりははるかに遠い。

 救いを求めてAR小隊にオープンチャンネルで通信を取ろうとしたが、何故か誰も応答してくれず、なおさらデス子は悲しい気持ちで岐路につくこととなる。

 

 時折、車が通りかかるでヒッチハイクを試みるが『ヘイヘ~イ、女だ…』だとか『おたくみてえなイイ女はもっと遊ばなきゃだめだよぉ』などと言ってくるゲスしか現れないため、今もこうして歩いて帰るしかないのだ。

 

「寒いよぉ……暗いよぉ……お腹すいたよぉ…」

 

 夜のとばりがおり、寒さが身に染みる空の下、デス子は寒さと空腹に苛まれながら外灯一つない道路を辿り歩いていく。

 

 なんでこのような目に…数か月前まで色々とありはしたが、温かいベッドで寝れて同じ鉄血の仲間たちと暮らしていたはずなのに…。

 今は無愛想なAR小隊と共同生活し、仲間だったはずの鉄血には裏切者扱いされて帰れない状況。

 噂では鉄血下級兵に対しても、デストロイヤーは見つけ次第破壊すべしという命令がなされているとかなんとか…別に死んだところで復活すればいい話だが、痛いのは嫌だった。

 

 そのうち…雨が降り始め、本格的にデス子に寒さが襲い掛かる。

 

 寒さと空腹、そして自分の今の状況の惨めさに嘆いているうちに、歩くことも疲れその場に座り込む。

 

 

「もういいや…死んだらまた復活するし……少し、寝よ…」

 

 せめて温かい場所で、お腹いっぱい食べて逝きたいなどと思うが、それは叶わない想いだ…。

 雨に打たれながら、デス子は瞼を閉じた…。

 

 

「なんだ、諦めるのか?」

 

 

 誰かの声がする…。

 薄っすらと目を開けるも、暗闇と激しく降る雨でその相手は見えない…そのままでいると、デス子は誰かの手で身体をおぶさられる。

 冷え切った身体に、誰かのぬくもりを感じる…冷えた体と心が、ぽかぽかと温まるような、そんな気分にデス子は自分を背負う相手の背に顔を埋めた。

 

「…あんたは私を裏切り者って…思わないの?」

 

「思うわけないだろう……かわいい妹分をさ」

 

「そう……ありがとう、アルケミスト…」

 

「あのバカどもの誤解はあたしがどうにかするからさ、それまで辛抱してなよ。きっと、後で迎えに行くからな」

 

「うん、信じてる」

 

 

 

 

 

 

 気が付くと、デス子はいつもの見慣れたT800基地の宿舎にいた。

 着ている服は濡れていないし、いつものままだ…。

 だが自分をここまで送ってくれたひとのぬくもりだけははっきりと覚えていたデス子は、微笑みそっと窓の外を見つめるのだった。




敵側が主人公勢にやられてばかりなのもかわいそうなので、敵側も一人くらい滅茶苦茶強いやつを用意しようと思った次第

そうしたら、おぼろげながら浮かんできたんです。アルケミストというキャラが(新次郎感)


エクスキューショナーと同じくらいアルケミストが大好きなので、今作でもアルケミストを強キャラにしますよっと♪



※UMP45関連の出来事を修正しました
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