夜の闇に覆われたS06地区、うっそうとした森の中では月明りも遮られまさに暗闇…数十メートル先を視認することも困難なほどの暗さだ。
そんな暗い森の中を、HK416はXM177E2と共に進む。
木々の間を風が抜ける音が響く…時折416が隣を歩くXMに目を向けるが、XMは前方だけを見つめただ黙々と進んでいた。
不意にXMが足を止めると、416もまた足を止める。
一体何だ? そう問いかけるかのように416が視線を向けると、XMはその場にしゃがみこみ草の生えた地面をそっと手で触れる…まるで何かを探しているかのようなその動作に、416は小さなため息をこぼす。
「もしかしてあんた、鉄血の信号を探れないの? エリートが聞いて呆れるわね」
「そんなものは必要ない。近づけば匂いで分かる…これが分かるか416? この痕跡はずいぶんと大きい足跡だ、知っている限りこいつは軍で使われている装甲兵器にとてもよく似たものだ」
「へえ、詳しいわね」
「軍にいた頃散々これらの開発に協力させられたからな。よし行くぞ」
本来なら416が行き先を案内するために先導するべきなのだが、いつの間にかXMが先行しそれに彼女が付いて行く形となってしまう。
最初こそ文句を言っていた416だが、一応行き先は合っているし面倒くさくなったので言うのを止めた。
ただし190㎝もの身長があるXMの歩幅は大きく、XMに追従するには416は速く走るしかない。
「あんた、少しは気を遣いなさいよ!」
たまらず文句を言って、ようやくXMは走るスピードを緩める。
やっと、一息つける…そう416は思ったようだが、XMは足を止めしゃがみこんだ様子を見てそう呑気なことも言っていられないのだと察する。
「何を見つけたの?」
XMの隣にしゃがみこむと、彼女の指し示された先を見る。
「ニーマム…それにイージス? 軍用型が何故…?」
「見るのは初めてか? エクスキューショナーとハンターがたまに連れて来るのを何回か見たが…さて、416…あいつらをどうする?」
「こっちは二人…多勢に無勢よ。決まってるじゃない」
「ああ、同感だ」
このまま鉄血の装甲部隊をやりすごし、遠くに離れてからこのエリアを通過しよう…そう416は思っていたはずなのに、XMは暗がりから飛び出し一体のイージスに肉薄したかと思えば、その頭部に至近距離から銃弾を浴びせる。
唐突な事に唖然とする416。
襲撃を察知した装甲部隊が一斉にXMに振り返る…それに対しXMは仕留めたばかりのイージスを盾代わりに用いて攻撃を防ぎ、数体で固まっていたニーマムに向けて榴弾を叩き込む。
「なんてムチャクチャを…!」
イージスから奪い取った近接武器を豪快に振り回し別なイージスを破壊する。
並みの銃弾では撃ち抜けない装甲をいとも簡単に破壊していく様には爽快感すら感じてしまう。
あっという間に片付けてしまったXMは少しくたびれたように息をこぼす。
「あなたは誰かに野蛮だって言われたことない?」
「行くぞ、急げ!」
「こちら416、目的地に到着したわ」
目指していたポイントに到着した416は仲間に対して通信を試みたが、その必要はなかったらしい…森の奥から、まるで416たちの到着を待っていたかのように数人の戦術人形が姿を見せる。
「もう、行ったかと思ってたわ」
「とんでもねぇ、待ってたんだよ! 45姉が追いかけるよりそうした方が速いし楽だって!」
笑顔を浮かべながら言う茶髪の戦術人形、名をUMP9という彼女は挨拶もそこそこに、416と一緒にやって来たXMに近寄り興味津々に観察し始める。
「わぁ…ほんとに大きいね! わわ、スゴイ腹筋、格闘家みたい!」
「XM177E2コルト・コマンドーだ、よろしく頼む」
「UMP9だよ! よろしくね!」
愛くるしい表情で握手を求めてきたので、XMはそれに応じる…次にXMが目を向けたのは、地面で銃を抱きかかえたままくーくー気持ちよさそうに眠っている呑気な戦術人形だ。
416は寝ているその人形を蹴り起こすと、その人形は小さなうめき声を上げながら起床する。
寝ぼけまなこを擦りながらむくりと起き上がった彼女は、大きなあくびを一つかくと、目の前にいるXMに気付いた。
「うわ…キングコングだ」
「何バカ言ってんのよ寝坊助。この人が45の言っていたXM177E2コルト・コマンドーよ」
「あ~…例のAR小隊の―――痛っ! 何で蹴るの!?」
「その小隊の話はしないで」
「まったくもう…えっと、G11だよ…よろしくコマンドー」
「あぁ」
小さく手を振るG11に手を振り返す。
残る最後の一人、目に傷のある含み笑いを浮かべる戦術人形に目を向ける。
「お前がこの小隊のリーダーだな…噂は、かねてから聞いているよUMP45」
「ええ…わたしもあなたの伝説は色々と聞いてるわ、コルト・コマンドー。早速だけど仕事にとりかかってもらいましょうか」
「ずいぶんと急だな」
「のんびり自己紹介でもして交流会を開いてほしかった?」
「いや、私好みだ」
「結構よ……コマンドー、私たちはこのエリアのどこかにあるジャミング装置を探ってるの。でもしらみつぶしに探している暇はない、手っ取り早く鉄血のボスでも捕まえようと思うの」
ただし問題がある、とUMP45は続ける。
このエリアで鉄血を統率しているハイエンドモデルはハンターなのだが…。
「連中の通信を盗聴してたら、なんか知らないけどアンタがここに来るって知った瞬間、ハンターが滅茶苦茶焦り始めて、哨戒所を短時間で要塞化しちゃったのよ……知り合い?」
「ああ、何度か会ったことがある…ハンターのやつめ…」
「そういうわけだから。ちょっと厄介な仕事になりそうなのよね…でもグリフィンの部隊も動く、共同して奴らを叩く…前もって言っておくけど、ハンターは破壊せず捕獲して頂戴…OK?」
「……OK」
~おまけのカカシ編~
「―――――というわけで、大至急ウロボロスさんにお願いしてマンティコア3機とニーマム15機、イージスを20機…それから増援として100ユニットの兵士を派遣してもらったんですけど……ハンターさん?」
「た、足りると…思うか…? それくらいいれば、さすがにあいつもどうにか出来るよな?」
「あの…不安でしたら、エクスキューショナーさんにも掛け合ってみますか?」
「い、いや…あいつはジャミング装置を守らなきゃならんし……落ち着け、落ち着け私…!!」
S06地区内哨戒所…ちょっと前まではそこそこの守りがあるだけの拠点に過ぎなかったこの場所は、コルト・コマンドー出現の報を聞いたハンターの大至急命令により短時間のうちに要塞化された。
哨戒所に至る道には砲弾や手りゅう弾の
「やだよぉ…あいつ来るのかよぉ……なんで来るんだよぉ」
「ハンターさんしっかりしてください! 我々が付いています!」
「そうですよ! 今のハンターさんはエリート改造されてますし、あんなゴリラいちころっすよ!」
コルト・コマンドーへの恐怖心に苛まれているハンターを、部下たちは精一杯励ましている。
『おいおいなんだその体たらくは? せっかくエリート改造してやったというのに』
「ウロボロス? あぁ、すまん……大丈夫だ、問題ない…」
『だといいがな…おぬしに送った増援、それから要塞化の方も大丈夫だな?』
このエリアの上位の存在であるウロボロスとの通信、ということで一応の平常心を取り戻したハンター。
それをウロボロスは胡散臭そうに見ているが、ひとまずは話を進める。
『おぬしには期待している、でなければ瓦礫の下からわざわざ掘り起こしたりはしない。おぬしも報復したいだろう? コルト・コマンドーにな…』
「ああ、もちろんだ…今までさんざん辛酸を舐めさせられたのだからな」
『よし、その意気だ。追加の増援を派遣する…おぬしは哨戒所に404小隊を含むグリフィンの部隊、そしてあの筋肉モリモリマッチョの変態を引き寄せるのだ。そこを私の部隊と挟撃し叩き、壊滅させる。出来るな?』
「ああ、もちろんだとも…任せておいてくれ」
『ああ。もちろん、期待しておるぞ…ハンター』