「う、うーん……くそ、鉄血のやつらよくもやってくれたわね…」
埃が舞い上がり、立ち込める煙に少々むせながらUMP45は瓦礫の中から立ち上がると、衣服についた粉などの汚れを手ではたいて落とす。
すぐそばではUMP9が瓦礫の隙間からもぞもぞ這い出てきて、一緒に瓦礫の下に埋まっていたG11の腕を掴み引っ張り出そうとするが…。
「うーん! ぬ、抜けないぃ!!」
「痛い痛い痛いッ!! もっと、ゆっくり!」
痛がるG11であったが、そこにUMP45の力も加わると一気に抜ける。
別段どこも引っかかっていた様子などはない…これ以上仕事をしたくなくて瓦礫から抜けられないフリをしていたんじゃ、そう追及するとG11の目が泳ぎ出したのでそうなのだろう。
「416のやつはどこかしら?」
404小隊で残る一人416の姿が見えない事に気付く。
周囲には爆発を生き延びたグリフィンの人形たちが仲間の救助に当たっている。
舞い上がる埃と煙の中、目を凝らして416の姿を探すも見つからない…しかし、近くの瓦礫が大きく崩れるとそこから埃と砕けたコンクリート片で汚れたXMが姿を見せる、416と共にだ。
「416、無事だったんだね!」
「えぇ…何とかね…XM…?」
416の方は目立った外傷はない、衣服は汚れているだけでダメージらしきものは見受けられない。
だがXMの方はというと、衣服が破れ額から赤い血を滴らせており、瓦礫を押しのけた彼女は足元をふらつかせながら床に膝をつく…そばにいた416はXMが倒れないように彼女の身体を支える。
「無事か、416?」
「えぇ……でもあなたは…」
爆発の直後、崩落する哨戒所の瓦礫から身を挺して416をXMは庇った。
おかげで416は無事だったが、大きな瓦礫が直撃したXMは頭を強く打ち背中にも大きな衝撃を受けている…無敵のタフネスを誇るXMでさえも、さすがにこれだけの大ダメージは効いている。
周囲を鉄血に囲まれたこのエリアではXMを回復させる手段はほとんどない、それでも416は自分を助けたXMに対し、気休めかもしれない治療を施す。
濡れた布で顔についた血を拭ってやる…。
「また、あんたに助けられたわ…」
「何だって…?」
「あんたは覚えていないかもしれないけど…あの事件の後、あなたは私を助けてくれた」
どこか期待するような表情で416はXMをのぞき込む…それでもXMがやはり覚えていない、そう言ってしまうんじゃないかという恐れからかすぐに目を伏せる。
「わき目も振らず、がむしゃらに逃げろ」
不意に聞こえたその言葉に416は目を見開くと、咄嗟にXMを見る。
416を見つめ返すXMは怪我の痛みを感じながらも、笑みを浮かべていた。
「思い出したよ。416、君があの時の戦術人形か…無事生き延びられていたようだな」
「ええ、そうよ。私が望んだ未来と違った生き方をしているけどね…」
「生きてさえいればどうとでもなる」
「それは…あんただから言えるセリフよ、コルト・コマンドー」
その瞳にうっすらと涙を浮かばせながら、416はXMの横顔をそっと撫でる…かつての命の恩人に、再び助けてもらった。
もしかしたらこの人なら、自分をこの呪縛から解放してくれるのではないか、そんな想いすら感じられるほどに。
1時間後、哨戒所を脱出した404小隊及びXMは次なる目標に向けて移動をしていた。
間一髪、敵の大部隊が攻撃を開始する前に哨戒所を抜け出したことに成功したが、グリフィンの部隊は退却の最中に攻撃を受けてしまった。
任務を優先する404小隊はその場を去り、留まろうとするXMの事は416が無理やり連れて行った。
「グリフィンの偵察人形の情報…当てにならないかと思ったけど、正確な情報だったみたいね」
双眼鏡を手に観察するのはレーダー基地、そこにジャミング装置が隠されている。
そして待ち構えているのは、鉄血のハイエンドモデルであるエクスキューショナーだ。
何故エクスキューショナーの所在が分かったのかというと、エクスキューショナーがわざわざコルト・コマンドーを名指しで指名し、いつでもかかってこいと座標をオープンチャンネルで公開したためだ。
その直後に別なハイエンドモデルがオープンチャンネルに割り込み、キレ散らかしたのだが…おそらくそのハイエンドモデルが新型のウロボロスなる戦術人形だろう。
「バカの相手はさっさと済ませるわよ。XM、あなたはここで休んでてもいいわ」
「冗談は止せ45、奴は私を指名している。招かれているのは私の方だ」
「でも、その怪我じゃ…それに罠かもしれないわよ?」
「罠は踏み壊すものだ。行くぞ」
「ここにはどうしようもないおバカさんがいたわね。416、しっかりサポートしてあげなさい」
大ダメージを受けたはずのXMであったが、今では普通に歩き回っている…自己修復機能でもあるのかとUMP45は一瞬思い込んでしまうが、強靭な精神力で動いているだけらしい。
現に、片腕は自由に動かせない様子が見て取れる。
レーダー基地に足を踏み込むと同時に聞こえてきたのは、愉快な笑い声だ。
その笑い声の主は暗がりから姿を見せると、好戦的な笑みを見せつける。
「ようやく来たなネズミども! 今日ここでおれ様と出会ったことを後悔するがいい!」
「チッ、バカが現れたわ…」
「わはははははは!!! バカって、オレのことか?」
笑いを止めて自分を指さすエクスキューショナーの間抜けな姿に、一同戦意を失いため息を漏らす。
「まあそれはともかく、オレ様が戦いたいのはお前らネズミ小隊じゃなくて……って、滅茶苦茶怪我してるじゃねえかコルト・コマンドー!? おい、大丈夫か!?」
「もうやだ、とっとと帰りたい」
「45姉しっかりして! ジャミング装置はもうすぐそこだよ!?」
次々と見せつけるアホっぷりにもうUMP45はついていけなかった。
敵のくせにXMのそばに駆け寄って怪我の具合を心配するエクスキューショナーのアホな行為を無視し、UMP45はジャミング装置の調査を行う。
「エクスキューショナー、私をご指名だろう? さっさと始めたらどうだ」
「ばっかやろう! そんな大けがしてるお前相手に戦えるかってんだ! オレは正々堂々戦ってお前に勝ちたいだけなんだっての!」
「私も舐められたものだ。この状態なら勝てるとでも思っているのか、お前が?」
「なんだとぉ!?」
「遠慮するなエクスキューショナー。たとえ食事中だろうが病気だろうが買い物中だろうがデート中だろうが、出会ったのならば戦うまで…来いよ、エクスキューショナー!」
「へへ…言うじゃねえかコルト・コマンドー! まったく敵ながら…マジで憧れるぜ!」
目を見開き笑みを見せたエクスキューショナーはその手に持っていた銃を手放し、エクスキューショナーの代名詞とも言うべき巨大なブレードを投げ捨てる。
XMにはああ言われたが、出来る限り対等な条件で戦いたい…エクスキューショナーのプライドだ。
お互い真っ向からの殴り合いだ。
「うおらぁ!!」
真っ先に仕掛けたエクスキューショナーのパンチが、XMの横顔にヒットし大きく仰け反る。
がら空きとなったボディに向けてもう一発パンチを叩き込む。
「どうしたコルト・コマンドー! この程度じゃあねえだろ!?」
XMの顔を殴りつけ、ついにXMに膝をつかせる。
今までの戦いの中で初めて彼女を追いこんでいる、その感覚がエクスキューショナーをさらに興奮させる。
XMの襟を掴んで引き立たせ、拳を振り上げた瞬間、XMはカウンターの頭突きをエクスキューショナーに叩き込んだ。
一撃で脳震盪を起こしそうなほどの強烈な頭突き…一発で吹っ飛ばされたエクスキューショナーは、即座に起き上がって殴りかかったが、容易く拳を躱され強烈なブローを受けて身体がわずかに宙に浮いた。
「て、てめ……!」
腹部の痛みに悶えながらも、エクスキューショナーはタックルを敢行しXMを押し倒そうとしたが、XMは真正面からエクスキューショナーを受け止め逆に押し返す。
そしてエクスキューショナーの身体を力任せに持ち上げ、逆さまの姿勢のまま床に叩きつける…垂直落下式ブレーンバスターだ!
XMの凶悪なフィニッシュ・ホールドをまともに受ければ勝負は決まったようなもの。
エクスキューショナーはピクリとも動かない…。
「あら、もう終わったの?」
そこへ、ジャミング装置の調査を終えたUMP45が戻ってくる。
その他のメンバーはというと、ちゃっかりXMとエクスキューショナーの真っ向勝負を観戦していたらしい…まとめてUMP45に説教されていた。
「まだ息があるわね…とどめを刺す?」
「待て416…やめろ」
倒れ伏したエクスキューショナーにもはや戦闘能力は残されていない。
後は始末するだけ、だがXMはそれをさせなかった。
「へへ…コルト・コマンドー、やっぱお前はつえーな…」
「お前のパンチもなかなかだったぞ」
「へっ…当たり前だ……ちくしょうウロボロスのアホめ……あんたに黙ってたことがあるんだよ」
そう言って話したのはウロボロスの計画だ。
404小隊がハンターを相手に戦っている間にこのレーダー基地に爆薬を仕掛け、ここに来た時に起爆するというもの…さらにエクスキューショナーが破壊されたとしても、爆薬は起爆される仕掛けだ。
自分たちはあの新型のハイエンドモデルの駒に過ぎない…そうエクスキューショナーは自嘲しながら言う。
「下っ端は辛いよなぁ。これが、オレたちの運命ってわけだ」
「そんな言葉軽々しく使うな、エクスキューショナー」
「なんだって…?」
「運命なんてものはない…未来はいくらでも変えられる、自分の手でな」
「だから、そんなこと…お前みたいなやつだけが言えるセリフだっての……」
目の前にいる憧れの敵、その憧れの敵が言った言葉通りに生きていけたらさぞ幸せだろうと思った…だが悲しいかな、エクスキューショナーは上位の権限から下された命令を遂行しなければならない。
それが自分をも破壊することだとしても。
「あ、そうそう。私に良い提案があるんだけど、みんな聞く?」
手を叩きみんなの注目を集めてUMP45は唐突なことを言った。
楽し気に笑いながらも目は全く笑っていない、いつも通りの何かを企んでいる様子に416は悪い癖が出た…と漏らすのだった。
UMP45の"素晴らしい提案"についてはまあ、原作まんまなので端折ります
次回ウロボロス戦ですね、お楽しみに
キューブ作戦が終わったら、まあ日常描いたり映画ネタぶち込んだり、あとなんかあればまた以前みたいに他のところに遊び行くのもありですね笑