ある日の事、AR小隊のSOP2はXMと共にグリフィンと鉄血の勢力とが衝突し戦闘があった場所に赴き、そのエリアに残された情報の収集や取り残された戦術人形の救出、および残骸の回収作業を行っていた。
数時間前まで鉄血の残存兵力がそのエリアを徘徊していたのだが、不思議なことにXMらがこのエリアにやって来るとそれら鉄血の姿は見かけなくなってしまっていた。
それはさておき、SOP2とXMはいまだ煙が立ち込める戦場跡地を探索し何か目ぼしいものはないかと探すも、相当激しい戦闘があったらしいこの場所では特に拾えるものはほとんど残されていない。
砲撃でばらばらになった人形の手足が焼け焦げてあちこちに転がっているが、損傷が酷くそれらがグリフィンか鉄血かどちらの勢力に所属するものなのかは一目で判別できないほどだった。
「何か面白いもの残ってないかな~?」
SOP2はそんなことをつぶやきながら、残骸を拾っては投げる。
たまに鉄血の原型をとどめた死骸を見つけると、眼球を起用にくり抜いてポケットに入れる…SOP2の鉄血に対する猟奇的な趣味はAR小隊のメンバーも困ったものであるが、口やかましく言い過ぎると落ち込むので、今は集め過ぎないように注視するので精いっぱいである。
「む、これは…比較的外傷が少ないな」
残骸の中からXMが見つけたのは、胸部を撃ち抜かれて一撃で機能を停止したとみられる戦術人形だ。
撃ち抜かれた個所から見るに、バッテリーを破壊され機能停止しただけで、簡単な修理で回復させることが出来そうな状態だ。
残骸を丁寧に退けてその戦術人形を回収、他にも同じような状態の戦術人形をXMは回収していく。
さて、二人で運べるだけの戦術人形を回収し終えたXMはそれらを車に積載すると、しばらく見ていないSOP2を探す…彼女はすぐに見つかったが、その腕には奇妙な人形が抱かれていた。
「SOP2? なんだそれは?」
「瓦礫の下から見つけたんだ! 持って帰ってもいいでしょ?」
「ああ、構わないが…」
「やったー!」
お持ち帰りを認めてくれたXMに、SOP2は大喜びである。
SOP2の腕に抱かれるその奇妙な人形に妙な既視感を感じつつ、XMは車に乗り込み基地へと帰還するのだった。
「ただいまー!!」
T800基地に帰還したSOP2の第一声はまずそれだ。
だが入った先では誰もいなかったため、きょろきょろとあたりを見回した彼女はとことこと建物の中を走っていくと別な部屋の扉を開け、そこに見知った顔がいると再び大きな声で。
「ただいまーーーー!!!」
室内で反響するSOP2の大声に、部屋にいたM4とAR-15は咄嗟に耳を抑えるのだった。
そのすぐ後にXMがやって来て、あまり室内で大声を出すなと注意するのだが…その返事にすらSOP2は大声で返事をする。
そんな様子を見てAR-15は呆れていたが、基本的に妹を甘やかすスタイルのXMは微笑ましく眺めているだけだった。
「AR-15、いつの間に帰って来たんだな? 重大なエラーとやらは大丈夫なのか?」
「まだ調査中よ。取調室が陰気臭いからヘリアンのやつに、さっさとしないと口を縫い合わすぞって脅したら仮釈放してくれたのよ…で、なにそれ?」
「なにって?」
「SOP2が抱いてるその人形よ…何その気味悪い人形は?」
AR-15が言うのは、部屋に入って来た時からSOP2が腕に抱いている小さな人形のことだ。
ここでいう人形とは、XMやAR-15のような等身大の戦術人形のことではなく、古い時代から存在する子ども向けの玩具としての意味合いが強い人形のことである。
SOP2が大切そうに抱いている人形…赤いボタンのオーバーオールに赤いスニーカーに赤い髪の毛、それらとは対照的な青い瞳にそばかす面の縞模様のセーターを着た小さな人形である。
「えっとね、XMと行った戦場跡地で見つけたんだ! 私この子気に入ったんだ、いろいろ話してくれるんだよ! ね、【チャッキー】?」
「チャッキー?」
「うん! この子チャッキーって言うの! ほらチャッキー、みんなに自己紹介して?」
「やぁ!ボクチャッキー!一緒に遊ぼうぜ!」
SOP2の指示に従うように、その腕に抱かれているチャッキーという名の人形は首を動かし声を発した。
それを見てSOP2は大喜び…だが、今どき話しかける人形なんて珍しくもなんともないし、今の時代には古臭いデザインの人形にAR-15は気味悪さを感じている。
そこへ、珍しく酒を飲んでいないM16がやって来る…何かみんなに用事があったみたいだが、SOP2が抱いている人形を見るとおっと驚きの声を上げた。
「わーお! そいつはグッドガイ人形じゃないか、珍しいな!」
「M16姉さん、この人形を知ってるんですか?」
「ああもちろん…へぇ、懐かしいなぁ」
SOP2からチャッキーを借りたM16は、人形を掲げると懐かしそうにあちこち見回した。
「グッドガイ人形は1980年代後半から90年代にアメリカで大ヒットした子ども向けの人形なんだよ。こんなきれいなグッドガイ人形を見るのは久しぶりだな!」
「M16姉さん…一体いまいくつなんです?」
今から70年以上も昔のおもちゃを懐かしいと言っている彼女に、M4の疑惑の目が突き刺さる。
それはさておき、グッドガイ人形をSOP2に返したM16は本来の用事であった、司令室でのミーティングがあることをみんなに伝えるのだった。
時間はみんなが集まり次第、ちょうどみんな揃っているので司令室に向かおうとするが…。
「おっと、SOP2グッドガイ人形はおいていきな」
「え~~!?」
「え~じゃないでしょうSOP2。人形遊びはミーティングが終わってからにしなさい」
「ちぇ~。チャッキーごめんね、また後で一緒に遊ぼうね?」
仕方なく、SOP2はチャッキを部屋のソファーに座らせると、みんなと共に部屋を出ていくのだった…。
静かになった部屋にはソファーに座る人形のチャッキーのみ…。
時計の針が動く音だけが鳴る静かな部屋の中…不意に、チャッキーの首がぐるりと動く。
ゆっくりと部屋を見回すように首を動かしたチャッキーはゆっくりとソファーから立ち上がったではないか。
そしてソファーから飛び降りたチャッキーは、とことこと窓際に寄ると外を伺い、部屋を物色し始める…。
「―――っと、忘れ物…っと……!?」
不意に部屋の扉が開かれAR-15が入って来たが、ちょうど部屋を物色しナイフを手にするチャッキーを見て表情が凍り付く。
「やぁ!ボクチャッキー!一緒に遊ぼうぜ!」
先ほどと同じセリフを言うチャッキー。
得体のしれない恐怖を感じたAR-15は壁際に張り付いたまま固まる…その後、両者とも動かず静かに時間だけが過ぎる。
最初に動いたのはAR-15だ。
ゆっくりとチャッキーに近付いて行った彼女は、そっとチャッキーが手にするナイフに手を伸ばす…ナイフは簡単にチャッキーの手から取れ、それをテーブルの上に置き、次に彼女はチャッキーを掴み掲げる。
「鉄血の…スパイか何か、かしら…?」
睨みつけるようにチャッキーをAR-15は見つめる…すると、チャッキーは首を動かし…。
「やぁ!ボクチャッキー! キミの友達だよ、ハイディーホー! ハッハッハ!」
「………ふん、なんてね…私ったらちょっとおかしくなったのかしら?」
相変わらずのワンパターンな返事を繰り返すチャッキーに失笑し、AR-15はチャッキーを乱雑にソファーに投げる。
「まったく、SOP2はどうしてこんなかわいくもない人形を拾ってきたのかしら…? 古臭い電池式の…って、電池なんてこの基地にあったかしら?」
今の時代、電池式は淘汰されてなかなか見られない代物だ。
大抵は戦術人形のようにバッテリー式のものがほとんど、興味本位でAR-15は再びチャッキーを抱き上げると、ひっくり返し、背中のセーターを広げ埋め込み電池の蓋を開くが…。
「え…?」
無いのだ。
そこに入っているはずの電池が入れられていない…。
電池が無いのにこの人形は話していた…途端に、AR-15の疑似感情モジュールは恐怖の反応を示しだす。
「やぁ!ボクチャッキー!一緒に遊ぶかい!?」
「いやぁぁぁぁ!!」
首を180度回転させ言葉を発したチャッキーに、彼女は悲鳴を上げて咄嗟にチャッキーをぶん投げる。
どさっと床に落ちたチャッキーはそのまま動かない。
恐怖のあまり腰を抜かしたAR-15はしばらく動けないでいたが、やがて意を決して立ち上がると再びチャッキーに近寄る…。
「さ、さぁ…話しなさいよ…話せって言ってるの!」
しかし、チャッキーはピクリとも動かず言葉を発しない。
「いいわ…話そうとしないなら…!」
彼女はチャッキーを雑につかみ上げると、火がともる暖炉の前まで連れて行く。
そして変わらない表情のままのチャッキーを掴み上げるとにらみつけ、やや恐怖を帯びた声で叫ぶのだ。
「話さないと…暖炉の火に投げ込むわよ!?」
AR-15の強い口調…その直後、掴み上げたチャッキーの形相が一気に変わりAR-15は小さな悲鳴を上げる。
「この薄汚ねぇ売女が! オレとFxxKするかぁ!?」
「きゃああぁぁ!!!」
憤怒の形相に変わったチャッキーはAR-15の手の中で暴れ出す。
恐怖のあまり戦術人形としての力で反撃できなかったAR-15の腕に噛みつくチャッキーであったが、悲鳴を聞いて駆け付けたXMは、即座にチャッキーを殴り飛ばす。
「なんだこいつは!?」
「そいつ捕まえて! 私を殺そうとしたわ!」
「なんだテメェは!? ぶっ殺されてぇか!」
「なんて醜い言葉を使う人形だ…」
もはや隠そうともしないチャッキーはテーブルの上のナイフを手に取ると、ソファーの下に潜り込んで姿を消す。
しかし、XMはかかと落としでソファーごと破壊すると、たまらず出てきたチャッキーを逆さ吊りに持ち上げ暖炉のそばまで引きずっていく。
「離せ!離しやがれ!!」
「そいつを焼き殺して!」
宙づりにしても大暴れするチャッキーにはさすがのXMも苦戦し、思わず手を離しそうになる…それをなんとかこらえて暖炉の火に投げ込もうとした時、部屋の扉が勢いよく開かれる。
一同咄嗟にそちらを見ると、唇を噛みしめ怒りを露わにしているSOP2が仁王立ちしているではないか。
怒気を隠そうともしないSOP2はXMの手からチャッキーをひったくると、鋭くにらみつける。
「チャッキーになにするのよ!」
「待てSOP2、そいつは何かおかしいぞ!」
「やあ、SOP2! みんながぼくをイジメるんだ…」
「黙りなさいこの殺人人形!」
「SOP2そいつを早く火に投げ込むんだ!」
「いい加減にしてよ! チャッキーは私の友達なの! それを…XMお姉ちゃんなんて大嫌いッ!」
「な、なに!?」
SOP2の拒絶の言葉を聞いた瞬間、XMが大きく動揺する。
「い、今なんて…?」
「XMお姉ちゃんなんて大嫌いって言ったの! 私の友達をイジメる悪い奴なんて、大大大嫌い! 近づかないで!!」
「だ、大嫌い…? 近づくな…?」
いつもは不屈のメンタリティを持つXMであったが、かわいい妹からの地震への拒絶の言葉は深々とメンタルを損傷させる威力を持っていた。
「まったく…チャッキー、怖かったよね? あっちに行って遊ぼ?」
「僕と遊ぼうぜ! ハッハー!」
80~90年代って言ったら、アメリカンホラーの全盛期やろ??
というわけで、世界一汚い人形ことチャイルドプレイのチャッキーがログインしました。
まあ、そのうちなんかの戦術人形に魂移しさせますがね