コルト・コマンドー   作:いぬもどき

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指揮官さま

「AR小隊、ただいま帰還いたしました!」

 

 鉄血支配地域に潜入し、重要なデータを持って帰る…AR小隊が結成されてから初めての任務はとても困難が予想されていたが、隊員みんなの努力とXM177E2の活躍のおかげで全員が無事に任務を終えることが出来た。

 この任務の依頼主である16LAB主席研究員の【ペルシカリア博士】に対し、M4は誇らし気な表情で帰還報告をした……が、M4はペルシカが嬉しそうにこの成功を喜んでくれると思っていたのだが、ペルシカはコーヒーの入ったマグカップに口をつけたまま固まっている。

 何に衝撃を受けているのか…ペルシカは微動だにせず、コーヒーを飲むという行為すらしておらず、口の端からコーヒーが垂れ落ちて白衣にシミをつくりまくっている。

 

「あの、ペルシカさん? コーヒーがこぼれて…」

 

「え? あぁ!? クリーニングに出したばかりなのに! まあいいか…」

 

 デスクに置かれたティッシュで口を拭い、汚れた白衣を脱いで引き出しから予備の白衣を取り出し着替える。

 さてと、何故こんなにも驚いているのか…ペルシカは困ったような笑みを浮かべ、ちらちらとXM177E2の方を見やりつつ、思いだしたように初任務成功を称える。

 

「気を悪くしないでね、ほんとは何人か犠牲になると思っていたんだけど……まあよくやってくれたわねみんな。とりあえず回収したデータを預かるわね」

 

「はい! みんなの協力と、XM姉さんのおかげで無事に成し遂げることが出来ました! M16姉さんも一緒に任務に行けたらと思っていたのですが…M16姉さんは大丈夫なんですか?」

 

「M16はヘルニアが悪化して入院したわ…って言うのは冗談で、手紙を預かってるわ。はい、どうぞ」

 

「手紙?」

 

 ペルシカからM16からの手紙を戸惑いながら受け取るM4。便箋の封を丁寧に開けて手紙を開くと、左右からSOP2とAR15が興味津々に覗き込む。M16が残した手紙を、M4が声に出して読みあげていく。

 

 

 

 拝啓 M4、SOP2、AR15、XMへ

 

 まだ結果を知る前だけど、初任務成功おめでとう、M4が率いるAR小隊なら任務も無事達成した前提で書いているのはご愛敬。

 今回の任務は腰痛が酷くて行けないと言ったけど、アレは嘘だ。

 ほんとの理由は、ちょっと自分探しの旅に出かけるのにしばらく留守にするから行けなかったんだ。

 核戦争で人がいなくなった醸造所には熟成が進む酒が大量にあるって聞いてな…そうなんだよ、トレジャーハンティングが目的なんだよな!

 未知の酒が私を待っている!

 お土産は期待しておけよ、途中で飲み干したらごめんな(笑)

 そんじゃ、みんなXMとM4の言うこと守って頑張るんだぞ~、I'll be back(また戻ってくる)

 

 

 

 AR15はM4から手紙をひったくると、びりびりに破いて窓の外から放り捨ててしまった。

 

「今日からAR小隊は4人よ。M4、奴のことは忘れなさい」

 

「待つんだAR15、M16姉さんをそんな風に言うもんじゃない。きっとM16姉さんなりの考えがあるに違いない」

 

「XM、あんたがなんであいつを尊敬しているか全然理解できないわ」

 

 酷い言われようであるが、この手の話題は今までにも何度かあったが、その度にXM177E2がM16姉さんは凄いんだと過去のエピソードを口にする。しかしそのエピソードというのが、元特殊部隊のエリートだの、正規軍の将軍と個人的な繋がりがあるだの、国家転覆を狙うテロリストを一人で壊滅させただの…XM177E2はM16を【最も不運なタイミングで最も不運な場所に居合わせる最も不運で不死身の戦術人形】と称し、今ののんびり気ままに行動するM16を見てようやく落ち着いくことができているんだなと温かく見守っている。

 だが、AR15からしたら知ったことではない。

 

「まあ、アイツはほっとけばいいわ。それより次の任務は?」

 

「えぇ~!? また任務に行くの!?」

 

「当然でしょう。私たちは戦術人形よ、戦う以外に何があるって言うの」

 

 早速、次の任務に望もうとするAR15にSOP2は愚痴をこぼすが、彼女の反対意見をはねのける。

 しかし初任務とはいえ、鉄血の中枢に潜入し重要データを回収して帰るという極めて困難な任務を達成した直後であるし、主席研究員とはいえペルシカは軍属ではないため荒事を専門とするAR小隊に任せる仕事がポンポン出てくるわけでもない。

 仕事がないといわれて、AR15はムスッとしていたがSOP2は遊べるとして大はしゃぎだ。

 

「まあその前に、あなたたちに紹介しておきたい人がいるわ」

 

「紹介したい人ですか?」

 

 ペルシカはそう言うと、AR小隊のメンバーを連れて場所を移動する。 向かったのは研究所内の応接間だ、そこにでM4らを待っていたのはモノクルをつけた一人の女性である。

 

「紹介するわ。グリフィンの上級代行官ヘリアントスよ…そう、明日からあなたたちはグリフィンに配属されることになったわ」

 

「君らがAR小隊か。ペルシカが言ってくれたが、私がグリフィン上級代行官のヘリアントスだ。ヘリアンと呼んでくれ」

 

「初めまして、ヘリアンさん…あの、明日からっていうのはどういう?」

 

「心配しないでM4,お払い箱ってわけじゃないから。グリフィンの知り合いがAR小隊の力を貸してほしいって言って来てね、それに了承したのよ」

 

 細かいことは割愛するが、鉄血中枢に殴り込みをかけて全員生還したAR小隊を見込み、グリフィンの社長である【クルーガー】が是非ともうちに欲しいとお願いしてきた…というのが表向きらしいが、他にも理由はあったりする。おもに、M4とXMの存在だが…。

 

「君らを指揮する指揮官がさっきまでいたんだが、少し外していてな…っと、言ってる間に戻ってきたな。紹介しよう…彼が、明日から君らの面倒を見る指揮官だ」

 

 ヘリアンの言葉と共に、応接間の扉が開かれる。

 グリフィンの赤い制服ではなく、カーキ色の野戦服にベストを着こんだやや老いた男性…だが老いた顔に反し、その鍛え上げられた肉体は服の上からでもわかるほどであった。M4含め、AR小隊のメンバーは彼をどんな人なのだろうと興味深そうに観察していたが、唯一、XM177E2だけが彼を知っていたのか驚きの声をあげた。

 

「ヂャック・ノリス少佐! 生きていたんですか!?」

 

「この通り生きているよ、XM。久しぶりだな、相変わらず元気そうで何よりだ」

 

 彼の名は【ヂャック・ノリス】、かつてXM177E2とM16の上官であった軍人だ。

 このたび、軍を退役したところをクルーガーに勧誘されて指揮官に就任したらしい。懐かしい上官との再会にXMは笑っているが、他のAR小隊の面子は置いてけぼりだ。

 

「しかし驚きましたよ。軍を離れた後、あなたが感染区域で感染者の大群に襲われたと聞きましたから…」

 

「ああその通りだ……3日間もがき苦しんだ末に、感染者たちは全滅した」

 

「えぇ……」

 

 ヂャック・ノリス指揮官とXMの奇妙なやり取りにを聞いてしまったM4たちは遠い目で二人を見つめる。

 何はともあれ、明日からAR小隊はグリフィンに所属し、ヂャック・ノリス指揮官の下でお世話になることになる。

 ヘリアンが言うには、指揮官もまだ業務になれていないのでお互い大変だろうがゆっくり慣れて欲しいとのこと…この先戦闘面で困ることは永遠になくなったが、規格外の超人との付き合いにM4は常識というのを覆されていくことになろうとは夢にも思わなかった。

 

 お世話になったペルシカとは一旦ここでお別れ…。

 

 AR小隊はグリフィンの管轄地域の一つである【T800地区】に配属されることになった。

 

 

 

 

 

 

 

~おまけのカカシ編~

 

 

 その日、M4は姉のXM177E2と買い物に出かけていた。

 休日中に町で買わなければならないものをリストにまとめ、外出するならばと、SOP2やAR15がついでに欲しいものリストをM4に押し付けたためXM177E2に助けを求めなければならなかった。

 折角、休日を筋トレして過ごそうとしていたXMを外に連れ出してしまったことを申し訳なく思うが、XMが快く応じてくれたのは幸いだった。

 

 SOP2の何に使用するかよく分からない工具一式に、AR15のこれまたよく分からない資材の数々を押し付けてきた。

 

「すみませんXM姉さん…せっかくの休みだというのに」

 

「いいんだ」

 

「ありがとうございます、姉さん」

 

 重量物の全てはXMが引き受ける。

 AR15の何に使うかよく分からない物の一つに丸太が一本と書いてあったが、XMがいなければ徒歩でそれを買って帰ることは出来なかった。

 その後、買い物を済ませてリストの再確認をしてM4はハッとする…SOP2とAR15のよく分からないリストのせいで、肝心の自分が欲しかったものを買い忘れてしまった。

 

「忘れ物か?」

 

「はい。でも大したことではないですから、XM姉さんは先に帰っててもかまいません」

 

「そうか、じゃあ先に帰っているぞ」

 

「はい。今日はありがとう」

 

 M4はそこでXMと別れ、買い忘れた物を買うために店に赴く。

 買い物を済ませ、一息つくのに路地の自動販売機前で立ち止まる…ココアにするかトマトジュースにするかで悩んでいたその時、突然路地裏から何者かが飛び出し、M4の口を塞いで誰もいない建物の中に引きずり込んでいった。

 もみあいの最中、M4は自分を引きずり込んだ相手が鉄血の下級人形たちであることに気付き、必死に抵抗するがなすすべもなかった。

 そうして建物の奥の部屋まで連れて行かれてしまったM4を、見覚えのあるハイエンドモデルが待ち構えていた。

 

「エ、エクスキューショナー…!? 殺されたんじゃ!?」

 

「残念だったな、トリック(・・・・)だよ」

 

 

 そこにいたのは、先日XM177E2に殺されたばかりのエクスキューショナー。

 グリフィン管轄下のこのエリアにどうしてハイエンドモデルがいるのか、ほとんど一方的に殺されたのにどうして性懲りもなく短い間隔で挑んできたのか、この後どうするつもりなのかなどなど色々疑問が浮かぶが、一つ一つ追及すると面倒なことになりそうなのでM4は黙っておいた。

 

「抵抗するなよ、動くんじゃねえ。お前らには散々手を焼かされた…ずっと復讐を想い続けてきたぜ。お前を司令部に連れていって、奴を罠にはめてやる。さあ行くぞ、立て」

 

「でも、動くなって…」

 

「いいから立て!」

 

 M4を無理矢理立たせて部屋を出ていこうとすると、突然扉が爆発し、その衝撃でエクスキューショナーは吹き飛ばされる。

 

「けほっ…! けほっ…! だ、誰だ!?」

 

「ルームサービス」

 

「え?」

 

 エクスキューショナーが見たのは、煙の向こうから自分の顔面めがけパンチが飛んでくるところだった。

 

 次にエクスキューショナーが気付いた時、真新しいボディーになって鉄血工場のベッドの上であった。




エクスキューショナーは二度死ぬ(悲報)
相変わらずこの作者は処刑人大好きやな……。


M16姉さんもなんかおかしいなぁ(世界一ついてない男並の戦闘力)

とりあえず指揮官さまのかるーい紹介を。



ヂャック・ノリス(元特殊部隊のエリート)

・どこかの世界最強の男となんだか名前が似ている最強の軍人さん。
・ヂャック・ノリスのピースサインは、あと2秒でお前を殺すの意味
・人は病気の予防に手洗いうがいをするが、ヂャック・ノリスは崩壊液で手洗いうがいをする。
・ヂャック・ノリスは「狩り」には行かない。なぜなら「狩り」は失敗する時もあるから。ヂャック・ノリスは「殺し」に行く。

元ネタだって? はいよ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%8E%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%AF%E3%83%88
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