T800地区グリフィン支部。
比較的新しく造られたグリフィン基地であり、最新の設備が取り揃えられていると聞いてM4らAR小隊はワクワク気分で基地に向かっていた。
最新の設備とは何か、最新技術を用いたスーパーコンピューターや修復施設、戦闘管制システムなど思いつく以上のものが揃っているに違いないと彼女たちはあれこれ楽しそうに予想をしていた。
だが期待に胸を膨らませる彼女たちが最終的にたどり着いたのは、山の奥にポツンと建てられたバンガローであった。真新しい木材で造られたバンガローは、確かに最近造られたものだ……だがM4たちが予想していたのは、コンクリート造りでもっと広々としていて、小型飛行機が離着陸できそうな滑走路のある基地だった。
おまけにバンガローには電気も通っていないときた。
これではそのうちバッテリー切れで稼働停止してしまうじゃないか、衝動的にキレたAR15に対し、XM177E2は冷静に諭しかける。
「落ち着けAR15、私にはここの最新設備が分かっている。見ろ、ここは日当たりがいいじゃないか」
「だからどうやってバッテリー回復しろって言うの!? 光合成をしろとでも!?」
「ああそうだ。まあ光合成じゃないが、見ろ、あのソーラーパネルで私たちの充電ができるみたいだ」
XMが指さした方向には整然と並ぶソーラーパネルが…それを見たAR15は頭を抱えてよろめいたので、M4が慌てて支えてあげた。
「なにが最新の設備よ、こんな前時代的どころか原始時代そのものの小屋がどうして最新よ!」
「最新の建築技術で造られたバンガローのようだ」
「ああもう…! M16といいアンタといい、どうして変人しかいないの!? というかSOP2、あんたは早速馴染んでるんじゃないの!」
バンガローの庭木に設けられたブランコで早速遊んでいるSOP2、なんとも呑気なものであるがここではSOP2のような性格の方がストレスは受けなさそうだ。
「そう悲観に思うことは無い。基地の施設はここだけじゃない、あっちにもコテージはあるしそれぞれ地下空間で連結されている。君が思っている以上に、ここはしっかりと造られている」
新しい指揮官のヂャック・ノリスの言葉を受けて、AR15は渋々といった様子で引き下がる。
確かに、こんな山奥にわざわざ基地を造る目的を考えれば地上にある施設は偽装した建物でいいし、より重要な施設を地下空間に隠して置いた方が良いだろう。
グリフィンの思惑はきっとそこにあるに違いない、そう思いその地下空間とやらを見せてもらったのだが…。
「こんな事だろうと思ったわ」
バンガロー内の梯子を降りて地下室とやらに向かってみたが、思い描いたコンピューターやサーバー等の設備はなく、本当にただの地下室があるだけであった。一応、ここは哨戒施設としての意味合いが強いという指揮官の説明もあったが、ここの司令部まで見に行って確認する気力はもう無かった。
「なんでこんな山奥でゲリラみたいな生活をしなきゃならないのよ……16LABに帰りたいわ…」
「仕方ないですよAR15。XM姉さんもいますし、うまくやれますよ」
最初のバンガローから一度離れ、本命の司令部とやらにたどり着いたAR小隊。
だが待っていたのはやはり丸太小屋、一応最初のバンガローより大きく3階建ての造りで、中には一応簡単なサーバーとかがあったが電力の供給はやはりソーラーパネルに頼っていた。
一行が司令部の丸太小屋にたどり着いた時、とある女性が指揮官たちを出迎える。
「お待ちしてました指揮官さま、それにAR小隊の皆さま! わたしもこの基地に配属された後方幕僚のカリーナといいます、一緒に頑張っていきましょうね!」
彼女はグリフィン後方幕僚【カリーナ】、基地の雑務の他、物資調達のために毎日リヤカーを引っ張って買い物に出かけるのが仕事のようだ。一見、何の変哲もない若い人間の女性のようだが、指揮官のヂャック・ノリスを知った後だとこいつもただものではないんじゃと勘ぐってしまう。
これから長い付き合いになるということで、お互いに自己紹介を済ませる。
「グリフィンの人手不足も深刻ね。こんな山奥に配属されるなんてよほどのことじゃない限り引き受けないわよね?ヘリアンからいくら貰ったの?」
「
「あんたがどんな人だか分かったわ。とりあえずこれからよろしくね」
「はい、一緒に頑張っていきましょう! とりあえず、私のことは親しみを込めてカリンって呼んでくださいね!」
「はい、カリーナさん」
「よろしくねカリーナ!」
誰も彼女を愛称で呼んでくれないが、細かなことは割愛する…。
さて、AR小隊がこの基地にやって来て真っ先に手を付けなければならなかったのは、基地に送られてきた家具や物資を中に運びこむこと。重たい荷物ばかりだからカリーナは一人で中に運びこむことは出来なかったようだ……まあ力仕事は戦術人形の得意分野であり、特にXMは掴める物なら何でも運べるため特に問題はなかった。
「カリーナくん、ここには君だけか? 他にも人員が派遣されると聞いたんだが?」
「はい指揮官さま。ちょっと到着が遅れてるみたいですね…基地のコックさんとして働いてくれる人が一名と、なんでも運んでくれる凄腕の運び屋さんを専属で雇いましたわ! 他にも人員を増やしたい場合はご相談ください、何人か声をかけておきますから!」
「ありがとうカリーナ。その時は相談するよ」
ちょっと変わって入るが、カリーナという女性はとても優秀な職員らしい…ちょっとお金にがめつそうではあるが、しっかり仕事は果たしてくれそうだ。老齢のヂャック・ノリス指揮官は司令部の確認にバンガロー内へと入っていき、M4らもついて行こうとするが、入り口の前でカリーナが通せんぼする。
「AR小隊に初任務です、あそこで薪割をしてもらいますね!」
「はい? 薪割ですか?」
「待って、なんで薪割なんかしなくちゃならないのよ」
「ここは夜になると氷点下まで下がるんですよ。凍死したくなかったら、ちゃちゃっと薪を割って燃料を確保しましょう!」
「え~!? もっといい暖房器具とかないの!?」
「こんなくそ田舎にそんなものあると思いますか? ささ、文句を言ってる暇があったら薪割をしてくださいな♪ XMさん、あなたはパワーがありそうですからこれをもって木材を伐採して来てくださいね!」
AR小隊で一番の力持ちがXMであると見抜いたうえで、カリーナはチェーンソーを一つ彼女に手渡した。こんな雑用を押し付けられると思っていなかったM4らは抗議しようとするが、チェーンソーの動作を確かめた後で、ノリノリで山に向かっていったXMを見て何も言えなくなってしまった…。
~おまけのカカシ編~
T800地区グリフィン基地がある山のふもとにある町、いかにも田舎の町という雰囲気で満たされたところではあるが、この基地で最寄りの町はここしかない。
その日、AR15とカリーナは買い出しのためにリヤカーを引っ張って基地から数十キロ離れたこの町へとやって来た。町に来るときは下り坂なので問題ないが、帰る時は上り坂…買い出し選びにじゃんけんで負けたAR15は先ほどから大きなため息ばかりをついていた。
「なんで最新基地なのに車の一つもないのよ? いや、一応ポンコツみたいな車は一台あったけどさ…」
「あれは位置エネルギー車ですから、一回麓まで下りるのに使ったら二度と使えなくなってしまうのでね。ここぞという時にとっておかないと」
「ねえ、あんた調達係でしょ? なんとかならないの?」
「それはAR15さんたちAR小隊の働き次第です。今はまだ大した活躍もありませんし、こちらからの要望を本社も聞いてくれないんですよ。でも、これから活躍していただければ本社も私たちの希望を聞いてくれますよ!それまではつべこべ言わずにこのリヤカーを引っ張り続けてくださいね♪」
「はいはい…で、何買うつもり?」
「はい、とりあえず冷蔵庫を買いに行きましょう!」
「いきなり重量物なのね…」
いくら普通の人間より力が強い戦術人形とはいえ、流石に限度があるというもの。今日の買い物でカリーナが無茶な買い物をしないことを祈るしかなかった。
カリーナが冷蔵庫を選びと値切り交渉に勤しんでいる間、AR15は初めて来るこの町に何があるのかふらふら歩きまわって見てまわる。
なんだかよく分からない木こりのモニュメントが町の中心にあったり、頻繁にバイカ―ギャングがガソリンスタンドに立ち寄る以外は何の変哲もないしけた町だ。
見るべきものもなく、とりあえず店に戻ろうとしたところAR15は通行人の一人にぶつかり転倒して尻もちをつく。ぶつかった相手が差し伸べてくれた手を握った時、ふと相手の顔が見えた。
「は!? お前はAR小隊の戦術人形!?」
「あ、あんたは……………誰?」
「ハンターだ! 鉄血工造のハンター! ハイエンドモデルの!」
「もしかして、XMにぶち殺されたことあったりする?」
「ああ、3回くらいな……って、違う違う! コホン…暇つぶしにド田舎に来て見たら思わぬ収穫だ、一緒に来てもらうぞ!」
突如として町中に現われた鉄血ハイエンドモデルのハンター。
以前、彼女は戦場で不幸にもXM177E2と交戦してしまい破壊され、復活後すぐにまた破壊された経験もあるハイエンドモデルだ。どうやらここには趣味のハンティングにやって来たようだが、追いかけていたAR小隊を発見する幸運に恵まれた。
「この格好では目立つな…カモフラージュと移動手段が必要だ」
ハンターは自分のいかにも鉄血工造製の服を見て、そう呟く。
いつあの筋肉モリモリマッチョウーマンの変態が現れるか分からない以上、少しでも早くここを離脱しなければならない。ハンターはそこで、バイカ―ギャングがたむろするバーに目をつけると、AR15を引っ張りながら入っていく。
バーを見渡し、適当な輩を狙い声をかける。
「お前が着ている服と靴とバイクが欲しい」
いきなりバーにやって来たハンターに注目が集まっていただけに、彼女のこの物言いを聞いたバイカ―ギャングどもは大笑いし始める。
「おい、財布も寄越せって言わねえのか?」
バイカ―ギャングがそう言うと同時に、それまで黙って成り行きを見守っていたAR15がハンターの後頭部めがけ跳び蹴りを放って吹っ飛ばす。激しく転がり込んだハンターはよろよろ起き上がってホルスターの拳銃に手を伸ばそうとするが、AR15はバイカ―ギャングからビリヤードキューをひったくってハンターの腕を思い切り殴りつけた。
鈍い音がバーに響き、ハンターは悲鳴をあげる……。
「腕の骨が折れた…!」
「人形には、215本の骨があるのよ……! 215本くらいなによ! 動かないで!」
腕の骨をへし折ってやったハンターの襟を掴んでバーの外まで引きずっていき、、AR15は彼女を手頃なバイクに縛り付ける。慌てて店の外に飛び出してきたバイカ―ギャングからバイクのキーを奪いエンジンをかけると、ギアを入れてアクセルをふかす。
「何をするつもりだ!? まて、止めろぉぉ!!」
そのままバイクを走らせて、ぎりぎりのところでAR15は飛び降りる。
勢いにのったバイクは縛りつけたハンターと共にガソリンスタンドへと特攻、勢いよく衝突したバイクとハンターは即座にガソリンの爆発に巻き込まれて吹っ飛んでいった…。
炎上するガソリンスタンドの前で、AR15はここ最近のストレスが一気に発散されたのを感じ取る。
邪魔者を片付けた彼女が振り返ると、バイカ―ギャングたちが自分を見つめているのに気付く。
「何か文句あるの?」
そう言うと、バイカ―ギャングどもは慌ててバーに逃げ込んでいった。
おや、こいつはAR15にサラ・コナーがインプットされたみたいですね?
もうMOD化いらねえな?
M4は常識人枠、SOP2は癒し枠といたしましょう。