本物のハンターは静かに獲物を待ち構えるもの……そう思っていた時期もありました、鉄血工造ハイエンドモデル【ハンター】の言葉である。
ハンターはその機動性を活かした追撃作戦などに従事し、特に待ち伏せアンブッシュを何よりも得意とし、戦闘を狩りと称する彼女は罠を張りめぐらせ自身に有利な環境に追い込ませて仕留める戦術を好んでいた…この間までは…。
AR小隊の【XM177E2】、奴が鉄血の前に立ちはだかるようになってからというもの何もかも滅茶苦茶になってしまった。その化物染みた、頭がいかれているとしか思えない圧倒的強さの前に何人ものハイエンドモデルが返り討ちにあい殺されてきた。
すぐに復活するハイエンドモデルたちも、幾度となくぶち殺されてきたためだんだんと任務に嫌気がさして来ているようだった…殺されたことがないハイエンドモデルの方が珍しいと言えるほど後を絶たない被害に、鉄血トップ代行のエージェントも策をめぐらすのだが上手くいかない。
余談だが、エージェント自身も何回かXM177E2の仕業で殺されている。
アンブッシュを得意としていたハンターがその戦術を止めた理由も、やはりXM177E2が大きく関わっている。
ハンターにとっては獲物を誘導しているつもりが、XM177E2目線では居場所をばらしているようなものらしく、隠れていたハンターを建物ごと大量の爆薬で爆殺したり、森林の中で待ち構えていればナパーム弾をぶち込まれて焼き殺したり、地下坑道に潜伏していた時は水道管を破壊されて溺死させたりなど…。
どうせ死ぬなら真っ向から戦って死にたい、自身の戦術を大きく変更したある日のこと、珍しく順調に進む戦闘にハンターは上機嫌だ。
粘り強い偵察活動でXM177E2の動向を掴んだハンターは、彼女が一人になるのを見計らって部下たちを出撃させ、念入りに計画していた作戦を実行に移す。ハンターがとった作戦は、部下たちを散開させてXM177E2を包囲して攻勢をかける…おそらくXM177E2はそれでも多くの敵を返り討ちにするだろうが、ハンターの狙いは反撃を誘い、XM177E2の弾薬を消耗させることにある。
果たしてハンターの狙い通り執拗な攻勢でXM177E2は弾薬を喪失、後方へと退却していくのだ。
「今日こそ引導を渡してやるぞXM177E2! 苛烈に攻め立てろ!」
部下を率いてハンターは追撃を仕掛ける。
廃墟の建物へと続くXM177E2の足跡を追いハンターも廃墟に入り込んだ、まさにその時、バツンというワイヤーが切られる音が鳴ったかと思うと、次の瞬間天井が崩れて大量の瓦礫が頭上から振り注ぐ。間一髪回避したハンターであるが、連れてきた部下たちは不運にも瓦礫に押し潰されて破壊された。
廃墟の入り口が封鎖され、ハンターは孤立…一瞬で追い込まれてしまったハンターは動揺し、瓦礫をどかそうとするがびくともしない。
そこへ、廃墟に響く足音が鳴り、ハンターはびくりと身体を震わせた。
振り返った先にいたのは、やはりXM177E2だ。
「ふん、お、恐れをなして、逃げたかと思ったぞ…」
「とんでもねえ…待ってたんだ」
なんとかひねり出した強がりも、一瞬で揺らいでしまう。
だが相手は弾切れを起こしている、対して自分はまだ弾が残っている…有利なのはこっちだ、そう強く思い込もうとするが、ハンターの冷や汗は止まらない。
そんなハンターを前にしてXM177E2は弾切れになった自身の銃を床に置くと、ナイフを取り出すのだ。
「来いよハンター、銃なんか捨ててかかってこい! 楽に殺しちゃつまらんだろう? ナイフを突き立て、私が苦しみもがいて死んでいく様を見るのが望みだったんだろう?」
「お前を殺してやる…!」
廃墟の外からは部下たちの心配する声が聞こえてくるが、それどころじゃ無い。
一瞬たりとも目の前の存在からハンターは目を離すことができない。
「こいよハンター、怖いのか?」
「殺してやる…! 誰がお前なんか…お前なんかこわくない!」
錯乱状態に陥ったハンターは何故か銃を投げ捨てると、ナイフを取り出した。
その後どうなったのか……ハンターはまたしても鉄血の工場で目を覚ますことになるのだった…。
T800地区グリフィン基地の屋外には、自然エネルギーを用いるソーラー発電パネルが並べられているのだが、そこでは変圧器を通して送られてくる生み出されたばかりの新鮮な電気で戦術人形たちはバッテリーを充電している。
充電のためその場へやって来たSOP2は日光浴しながらバッテリー充電をし始める。
だらしない表情を浮かべていれば、今度は不機嫌オーラを全開にしたAR15がやってくる。
「あなたいつまでバッテリー充電してるつもり? 終わったならさっさと仕事にもどりなさい」
「まだ充電し始めたばかりだよ~?」
「バッテリーの容量はまだ十分あったでしょう!?」
「まあいいじゃないですかAR15、仕事になればSOP2もよく働いてくれますから」
「あんたは甘すぎるのよM4、AR小隊の隊長ならもっとシャキッとしなさい」
「そうはいっても…あ、XM姉さんが帰ってきましたよ!」
バイクのエンジンを響かせながら基地に帰ってきたXM177E2を妹のM4が出迎える。それまで頑なにベンチから立とうとしなかったSOP2も、XM177E2が帰ってきたのを知ると跳び起きて出迎える。
「XM、ねえねえ、抱っこして!」
「こらSOP2、XM姉さんは疲れているんですから後にしてください」
「いいんだM4。そら、おいで」
「わーい!」
姉を気遣いSOP2を嗜めるが、温かな環境を気に入っているXM177E2はSOP2を軽々と抱きかかえてやるのだった。
「XM、今回の獲物はなんだったの? どうせハンターかエクスキューショナーだろうけど…」
「ハンターだった。そろそろ他のハイエンドモデルが出てきそうだから注意しないといけないぞ。ところで指揮官はいるか?」
「ヂャック・ノリス指揮官なら今は留守よ。何か用件でもあるの?」
「いや、鉄血がグリフィンの基地に攻撃を仕掛けようとしているという情報を手に入れたんでな。相談しようと思っていただけだ」
「そう。その情報はどうやって手に入れたの?」
「知らない方が良い」
「んん?」
M4とSOP2、二人のかわいい妹の前でハイエンドモデルを容赦なくボコボコにして情報を手に入れた挙句爆殺したなどと言えるはずもなかった。
そんなわけで、T800基地は今日も平和です。
~おまけのカカシ編~
「しまった…酒代に使い過ぎて、帰りの旅費が足らない…」
とある地区の街にて、AR小隊を出奔中の【M16A1】はうっかり所持金を全て酒代に使ってしまいAR小隊のところへ戻るための旅費がなくなってしまった、さあ大変だ。
頼る当てもなく、人の善意を期待してヒッチハイクするがアサルトライフルを肩に担ぐ眼帯姿のM16A1を見て停まろうなどという風変わりなドライバーはいない。
諦めてとぼとぼ舗装路を歩いて帰ろうとするM16…本人は気付いていないが、現在AR小隊がいるT800基地とは勘違いで真逆の方へ歩いており、むしろ鉄血が支配する領域へと足を踏み込もうとしている。
鉄血支配地域の境目は警備の目が厳しい。
舗装路を歩くM16の脇を通りぬけた車両が一台あったが、その車両は50メートルほど先のところで急停止したかと思えば、勢いよく後退してくる。とぼとぼ歩くM16の隣に横づけされたその車両内には鉄血兵が数人と、ハイエンドモデルの【デストロイヤー】の姿が。
「んん~? あんたどっかで見たような……」
「AR小隊のM16ですよ、こいつ!」
「やっちまいましょう!」
道端をとぼとぼ歩く相手がAR小隊のM16だと分かったその瞬間、鉄血兵士たちは奇襲攻撃を仕掛ける…が、M16はひょいと軽く躱すと、強烈なアッパーカットを鉄血兵リッパーの下あごに叩き込み吹き飛ばす。続くヴェスピドの顔面を掴みそのまま後頭部を車体に叩き付け、前のめりに倒れ込むヴェスピドの顔面に膝蹴りを叩き込んで再び車体に叩きつける。
「コイツめ!」
ナイフを振りかざしてきたブルートの斬撃を身を翻して避け、半開きになっていた車のドアに追い込み、勢いよくドアを蹴りつけた。車体とドアの間に挟み込まれたブルートは一撃でノックダウン、わずか十数秒の出来事を車内で見ていたデストロイヤーは小さな悲鳴をあげる。
慌てて車内から逃げようとするデストロイヤーの襟を掴んで車に押し戻し、運転席に座らせ、M16自身は助手席におさまる。
「なあ親切な人、あたしをどっか町まで運んでいってくれないかい?」
「な、なんで私がそんなこと…! 車あげるから自分で運転しなさいよ!」
「あたし酒飲んじゃったんだよ~。飲酒運転はだめだろ? ほら、とりあえずグリフィンの基地まででいいからさ」
「わたし鉄血のハイエンドモデルなんですけど!?」
「聞かなかったことにしてやるから、ほらさっさと行けよ。それとも今ここで――――」
「はい分かりました運転します、運転させてくださいお願いします!!」
「さすが親切な人、サンキュー!」
「ふぇ~ん……助けて、ドリーマー…!」
デストロイヤーのそんな願いは誰にも聞き入れられなかった…。
(更新が途絶えてたから)逝ったかと思ったよ→
M16「M4!M4!M4!」(挟撃の極みをきめながら)
M16姉さんは嶋野の狂犬ならぬ16LABの狂犬にジョブチェンジした模様(一人け龍が如く)(タグ追加)