コルト・コマンドー   作:いぬもどき

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最強の姉

 T800基地に一台の車両がやって来た。

 早朝の時間帯に外で薪割をしていたAR15は、最初見慣れない車両を見てもしかしたらグリフィンの職員が物資を持ってきたのではと思い込むが、泣き顔で運転席に座る見覚えのあるチビを見て即座に銃を手に取った。ゆっくりと運転席に近寄り、閉じたままの窓を指でトントンと叩く…。

 見覚えのあるチビ【デストロイヤー】が大粒の涙を流しながら振り向いたのには、AR15も狼狽える。

 

「ちょっとアンタいい度胸してるわね。迷子にでもなったのかしら、とりあえず出てきなさい!」

 

「ふぇぇ……」

 

 言われるがまま、デストロイヤーは運転席のドアを開けてはくれたが、運転席から降りようとしない。よく見ればデストロイヤーの首には首輪がしてあり、そこに繋がる鎖を辿って後部座席を見てみると、酒瓶を抱えながら寝ているこれまた見覚えのある戦術人形を発見する。

 泣きじゃくる鉄血のハイエンドモデル、そのハイエンドモデルに首輪を繋いで寝ている見覚えのある人…どこから何を突っ込んでいいか分からないAR15であった。

 

「おはようございますAR15、その車は…?」

 

「おはようM4……M16、帰ってきたよ」

 

「はい?」

 

 AR15の言葉に首をかしげるが、彼女が指さす後部座席を覗き見る…酒瓶を抱えて気持ちよさそうに眠るM16を発見したM4はくちもとに手を当てて驚いてみせる。それからおっかなびっくり後部座席の扉を開き、姉の頬をぺしぺしと叩く。

 

「ふがっ……うーん、良く寝た……おぉM4じゃないか、少し見ない間に大きくなったか?」

 

「お帰りなさいM16姉さん! まったく、今までどこに行ってたんですか?」

 

「まあ色々話したいこともあるだろうから、とりあえずどっかでゆっくりと話そうか。よっと…」

 

「わわっ! ぐえっ」

 

「うん? あぁ……鎖握ってたの忘れてた…ごめんな、親切な人」

 

 デストロイヤーの首輪に繋がる鎖を握っていたのを忘れていたM16がそのまま車から降りようとした瞬間、鎖に引っ張られて無理な体勢で後部座席の方に引きずり込まれる。危うく首を絞めおとされそうになったデストロイヤーに謝りながら、M16は彼女を肩に抱えて基地のコテージへと向かうのだった。

 コテージでは起きたばかりのSOP2が目を半開きにさせてぼうっとしていたが、M16の姿を見た瞬間覚醒、勢いよく跳びかかっていって抱っこをせがむ。

 

「M16姉さん、よくご無事で」

 

「おぉXM、お前は相変わらずガタイがいいな。みんなの様子はどうだった?」

 

「みんなよくやってくれています、おかげで私も助かっていますよ」

 

「そっかそっか。そういえば風の噂で聞いたんだが、ヂャック・ノリス少佐がここの指揮官になったんだって?」

 

「ええそうです。お互いあの人には軍で世話になりましたから…生憎今は本部に出張中で留守にしています」

 

「そりゃあ残念だね。せっかく話をしたいと思っていたんだが」

 

「すぐに話せますよ。ところでM16姉さん、アレは…?」

 

 XM177E2は先ほどから疑問に思っていること、おそらくこの場の全員が疑問に思っていたことであるが、部屋の隅っこに体育座りをしてびくびくしているデストロイヤーを指差した。みんなの視線が自分に集中したことで一層彼女は怯え、メンタルモデル崩壊寸前の状態だ。

 M16はデストロイヤーを眺めしばし考え込む…。

 

「いや実はな、お金がなくなってヒッチハイクしたらこの親切な人が車に乗せてくれてね、ここまで送って来てくれたんだよ」

 

「どう見ても鉄血のハイエンドモデルに思えるのですが」

 

「そうですよM16姉さん、鉄血のクズを生かしておくわけにはいきません!」

 

「同感よ。さっさとこのチビをぶち殺しましょう」

 

「えぇ!? すぐ殺すの勿体ないよ、少しずつバラバラにして遊ばなきゃ!」

 

「ヒエッ…!」

 

 M16を除く、すべてのAR小隊隊員の殺意が向けられたデストロイヤーはいよいよ追い込まれる。

 カーテンにしがみついて震えあがるデストロイヤーに情けをかける者は、残念ながらこの場にはいない…。

 

「いやいや、あたしを助けてくれた親切な人が鉄血だなんて、そんなわけないだろう? そうだよな、親切な人?」

 

「え…? あ、それはえっと…その…」

 

「やっぱり鉄血なのかい?」

 

「ふぇ!? ち、違うよ! 私鉄血じゃないよ、優しいただの自律人形だよ!」

 

「あっはははは、やっぱりそうだよなぁ。もしも鉄血だったらぶち殺さなきゃいけないからな、うちの妹たちが勘違いしてごめんな~」

 

「えへ、えへへへ……はぅぅ……」

 

 泣きじゃくりながら笑っているデストロイヤーの表情はとても滑稽なものであった…そんなことよりもM4たちが知りたいのは、何故M16がこうまで彼女をかばうのか、その理由だった。まさか本当にヒッチハイクして送ってもらったからなどとは信じられない。

 妹たちの追及に対し、いつの間にか開けたビール瓶をあおりながらM16は朗らかな表情で言うのだ。

 

「AR15やSOP2が妹欲しいって言ってたろ? ちょうどいいと思ってさ」

 

「ちょっと頭おかしいんじゃないのあなた!? なんで鉄血のクズをそれで拾ってくるのよ!」

 

「そうだよM16! それに私が欲しいって言ったのは、妹じゃなくてペットのネコちゃんだよ!」

 

「あれ、そうだったけ? それじゃあこうすればいいか?」

 

 ポケットをごそごそと漁って取り出したのはかわいいケモノ耳がついた安物のカチューシャである。

 それを泣きじゃくるデストロイヤーの頭に付けてあげる。

 尻尾を模したふりふりをスカートにくくりけて、肉球手袋をつけてやれば完成だ。

 

「これで出来た。ペットのネコちゃんだ」

 

「わーい! ありがとうM16!」

 

「SOP2!? それでいいの!? ねえ、本当にそれでいいの!?」

 

「まあまあAR15、もういいじゃないですか。M16姉さんもXM姉さんもいますし、タフなコックさんや運び屋さんもいるんですから。反抗してきたすぐに殺せますよ」

 

「……それもそうね」

 

 完全に逃げ場を失ってしまったデストロイヤーは己の運命を呪い、あとはもうやけくそになって愛嬌振りまき殺されないようすることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけのカカシ編~

 

 

「やってらんねぇよぉ……戦いたくねぇよぉ……」

 

 薄暗い廃墟のバーの中、度重なる一方的な敗北を味わわされ続けてきた鉄血ハイエンドモデルのエクスキューショナーがカウンターに突っ伏していた。隣には同じようにふてくされた様子のハンターが、ウイスキーボトルをラッパ飲みしてやけ酒に走っている。

 先日XM177E2に完膚なきまでに敗北したハンターは工場で復活後すぐ、XM177E2をなにがなんでも仕留めろという命令を下されたのだが、何度も殺されたためかエクスキューショナーと同様に戦意喪失、やる気をなくして二人で昼間から飲んだくれていた…。

 

「なあハンター…オレら、ハイエンドモデルだよな…? なんか最近、下っ端と同じ扱いじゃねえか…?」

 

「言うな…惨めになるから…」

 

「そういや、なんでスケアクロウだけ一回も死んでねえんだよ…おかしいだろ…」

 

「あいつ立ち回り上手いからな…殺されそうになったらカカシのふりして誤魔化すから……スケアクロウ(カカシ)だけに」

 

「やかましいわ…」

 

 ハンターの寒いダジャレでさらにやる気を失くしたエクスキューショナー、グラスの中に残る氷をくるくる回しながら深々とため息をこぼす。

 その時、バーの扉が開かれる音が鳴り、二人はめんどくさそうに扉の方を向いた。バーにやって来たのは二人にとっての上司でもあるエージェントだ…エージェントはふてくされた態度で飲んだくれる二人を、まるでゴミクズでも見るかのような目つきで見下ろした。

 

「あなたたちに命令を下したはずですよ。ここで何をしているのですか? さっさと戦闘準備に取り掛かりなさい」

 

「戦闘準備なら済ませたよ。ちょっと酒飲んで休んでるだけじゃないか」

 

「戦闘準備が済んでいるならサッサと出撃なさい。こうしている今もこちら側の被害は増えているのですから」

 

「鬼かアンタは! そもそもあんな化物と戦うのに戦力足りねえんだよ、もっといい装備と部下を寄越せ!」

 

「エクスキューショナー、足らぬ足らぬは工夫が足らぬというスローガンが分かりますか? 無意味な文句を言ってないでさっさと行って死んできなさい」

 

「言ったぞこいつ! なあハンター、聞いたかこいつ! 今死んで来いって言ったよな!? 上等だこのやろう、オレの我慢にも限界があるぞエージェント! 」

 

 ため込んでいたストレスが一気に爆発したエクスキューショナーは上司にくってかかる…が、力量差は歴然で、殴ろうとしたら見事なカウンターパンチをくらってバーカウンターの向こうに吹っ飛ばされた。

 

「いってぇ……怪我したよオレ、もう戦いいけねぇよ…」

 

「世迷言言ってないでさっさと立ちなさい。それとも本当に大怪我してみますか?」

 

「やめてくれエージェント! 分かった、私もエクスキューショナーもすぐ行くから!」

 

「まったく、手間をかけさせるんじゃありま――――」

 

 その時、彼女たちのもとへ鉄血司令部からの通信連絡が届く。

 相手は本拠地で鉄血首領であるエルダーブレインの側近であるドリーマーからである。ジャッジやデストロイヤー以外のハイエンドモデルにちょっかいをかけることはあまりない相手からの通信、エージェントはいぶかしむ。しかし、ドリーマーが次に言ったことを聞いた瞬間、3人は戦慄する。

 

『なんか茶髪で身長190センチくらいの戦術人形がそっちの方行ったみたいだから気をつけてね♪』

 

「は?」

 

『っと、もう手遅れみたい…あと5秒後に備えて頑張ってね♪』

 

「ちょっ、ドリーマー待って――――」

 

 次の瞬間、バーに向けて巨大な何かが突っ込んできて、その衝撃と吹き飛ばされた外壁に巻き込まれた三人は室内の奥に吹き飛ばされてしまう。衝撃で頭がくらくらする中、よろよろと起き上がる…砂煙が立ち込める室内、破壊された壁には巨大なダンプカーがあった。

 ダンプカーの扉が開かれて、忘れようもない、忌まわしきXM177E2が降り立つ。

 

 サングラスをかけ、片手に自身の銃を、もう片方の手にはグレネードランチャーが握られている…。

 

「AR小隊のメスゴリラ…! お、おい待て待て待て! オレたちここでのんびり酒飲んでただけで!」

 

「エクスキューショナー!? あなた何を!」

 

「うるせえ! なあXM、頼むよ! この間オレの事殺したばっかだろ、もうちょっと休ませてくれよ…な?」

 

「ダメだ」

 

「うぎゃあ!」

 

 数発の銃声が室内に鳴り響き、哀れエクスキューショナーはその場でまたしても破壊されてしまった…かに見えたが、上手く急所を外し、どさくさに紛れてハンターと共にバーを逃走していった。

 不運にも一人残されてしまったエージェント、エリート人形として先ほどの二人のように情けなく命乞いなどしてやるものかと抗う意思を見せる。だからと言って先手を打てるはずもなく、容赦のない銃撃を受けて下半身を吹き飛ばされる…。

 サングラス越しに見下ろしてくるXM177E2に対し、エージェントは不敵に笑う。

 

「この場で私を殺したとしても無意味ですわ。私たちはそう簡単に消えませんわ…いずれあなたの首を貰いうけます」

 

「面白い奴だな、気に入った。お前を完全に殺すのは最後にしてやる」

 

「ふん、どうでもいいですわ……」

 

 

 エージェントにとどめの一撃をくわえて完全に破壊したXM177E2。

 バーの奥の物陰ではエクスキューショナーとハンターが息を潜めて隠れているのが見えたが、今日のところは見逃すXM177E2であった。




個人的にはやくウロボロス戦行きたいけど、その前にイントゥルーダーをやっつけなきゃね!
スケアクロウ?ただのカカシですな。
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