コルト・コマンドー   作:いぬもどき

8 / 17
デス子、それAR小隊やない。コマンドーや

 他の戦術人形がどうかは知らないが、AR小隊に所属するXM177E2コルト・コマンドーは日々のトレーニングによって戦闘力を磨きぬいている。

 XMは日々、鍛錬を欠かさない。

 それは人がやるようなウェイトトレーニングに加え、山中に入って木を切り倒し運ぶ仕事すらも彼女の強さに磨きをかけるのだ。

 

 

 XMの妹であるM4は中庭のベンチに腰掛け、長い茶髪を一つにまとめ薄着で薪割り作業に勤しむXMことコルト・コマンドーを見つめていた。

 身長190㎝の鍛え抜かれた肉体から繰り出される斧の一撃は的確に薪を叩き割っていく。

 斧を振り上げる腕の筋肉、鋭く凛々しいその横顔を垂れる汗…一息つくコルト・コマンドーが上着の裾で流れ落ちる汗を拭うと露わになる彼女の見事な腹筋、そんな実の姉の頼もしすぎる姿につい笑顔に案る

 

「ちょっと、M4! ゴリラ鑑賞なんかしてないで、こっち手伝いなさいよね!?」

 

「あ、あぁごめんデス子ちゃん…その髪似合ってるますね」

 

「うっさい」

 

 不機嫌そうな声色で、デストロイヤーはM4に物資箱を押し付ける。

 先日まで彼女の髪色は白だったのだが、AR-15が『その格好でその髪色だと鉄血のクズと間違えて撃っちゃいそうよね』などと言ったため、対策としてほとんど無理やりデストロイヤーの髪はM16の手によって金髪へと染められてしまうのだった。

 おまけに装備も没収され、デストロイヤーという名もはく奪されて、今ではこの基地の自律人形デス子として働かされているのだ。

 

「でもデス子ちゃん、よくグリフィンに協力してくれる気になったわよね?」

 

「選択肢があったと思う? あの脳筋ゴリラのせいで鉄血の裏切者だと思われてるし…まったく、毎日厄日だわ…」

 

 それからもデス子の愚痴は続く。

 それに対しM4は苦笑いを浮かべ、ひとまず押し付けられた荷を倉庫まで運ぶのだった。

 

 

「M4」

 

 

 倉庫まで物資を運ぶ彼女をこの基地の指揮官ヂャック・ノリスが呼び止める。

 

「はい指揮官。なにか御用でしょうか?」

 

「新しい任務だ。XMとみんなを集めてくれないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鉄血の新たなボスが、グリフィンの偵察隊からの情報によって確認された。マップで確認できる鉄血兵の数を見るに、おそらく指揮能力に特化したハイエンドモデルとのことだ…ヘリアンからの頼みで、我々で対処してほしいとのことだ。敵の数は多いが…やれるかM16?」

 

「ただのカカシですな。私とXMとでならまばたきする間に皆殺しにできる」

 

「ああ、君らには少し物足りない任務かもしれないが――――」

 

「ちょっと待って、待ってったら! あんたらなにを言ってるの?」

 

 司令部に集められ、指揮官の元に寄せられた情報を閲覧しながら進んでいた作戦会議。

 特に誰も疑問を挟もうとしなかったので、デストロイヤー改め金髪のデス子が指揮官の話を遮った。

 

「ちょっとデス子さん、指揮官の話を遮るなんて失礼ですよ?」

 

 M4がもっともなことを言って他の人形も同意するが、デス子にはそんなことなどどうでもよかった。

 

「教えてあげるけど、ここのボスはたぶんイントゥルーダーっていう指揮型作戦人形よ! 統率できる鉄血兵はエクスキューショナーのバカやハンターとは比べ物にならないし、下位のハイエンドモデルに命令を下せる権限まで持ってるのよ?」

 

「詳しいねデス子!」

 

「これでも鉄血ハイエンドモデルだからね!!」

 

 無邪気に手を叩いて喜ぶSOP2に対し、デス子はキレ気味の返事を返す。

 そしてデス子はなおも続ける。

 

「イントゥルーダーは頭の良いやつよ。そんな奴が大部隊を用意してるってのに、どう倒すつもりなの?」

 

「あぁ、そんなことか…言ってやれよXM」

 

「作戦はこうだ。正面から叩き潰す」

 

「あほか!?」

 

「それだけじゃない。私が正面から敵を仕留め、逃げようとする敵は背後に回り込んだM16姉さんが殺す。シンプルかつ有効な作戦だ」

 

「素晴らしい作戦ですね、XM姉さん!」

 

「わぁ! お姉ちゃんらしいかっこいい作戦だね!」

 

 XMのあまりにも作戦とは呼べない作戦に聞いていたデス子は軽いめまいをおぼえる。

 おまけに二人の姉の話を聞いてM4とSOP2は手を叩いて賛美する始末…唯一、AR-15が呆れたような表情をしていたが既にM16とXMの無茶苦茶ぶりに慣れているのかツッコミはしない。

 

 

「よし、そういうことだ。みんな、気を引き締めて取り掛かってくれ」

 

「あぁ、ちょっといいかヂャック・ノリス指揮官。もう一つXMに伝えることがあったんじゃ?」

 

「ん?あぁ、そうだったな…XM、実は君に迎えに行って欲しい人物がいるのだ」

 

「迎えに? 一体誰の事でしょうか、指揮官?」

 

「君にとってとても懐かしい人物だ。あの子も、ずいぶん大きくなったはずだ」

 

 

 XMの問いかけに返したその言葉と、ヂャック・ノリス指揮官の温和な表情を見てXM自身もその迎えに行って欲しいという人物に気付いたのだろう…普段は強面なXMの顔に笑顔が現れる。

 

 

「そういうわけだコルト・コマンドー。あの子を迎えに行くついでにイントゥルーダーとかいうハイエンドモデルを倒して、そっから懐かしい再会と行こうじゃないか。あの頃で可愛かったんだ、今頃結構な美少年に育ってるんじゃないか?」

 

「そうですね、M16姉さん。再会が待ち遠しい…ではさっさと鉄血を片付けて、迎えに行きましょう」

 

「なになに? 懐かしい相手って誰なのー?」

 

「XM姉さん、私も気になります!」

 

「はは、会ってからのお楽しみだよ二人とも」

 

 

 相手を知らないM4とSOP2は想像を膨らませて楽しそうに笑う。

 迎えに行く用事が出来たXMらAR小隊は早速出発の準備を整えるのだった。

 

 

 一方、彼女たちのノリに一切付いて行けず呆然と立ち尽くすデス子。

 傍らにはAR-15がおり、彼女はデス子のそんな様子がかつての自分を見ているようで小さく笑う。

 

「考えるだけ無駄よデス子」

 

「いや…絶対おかしいでしょ? ハイエンドモデルだよ? 鉄血のボスだよ? 大勢の鉄血兵がいるのよ? なのになんでそれが、誰か迎えに行くついでに片付ける案件みたいな言い方してんの? 意味わからないんだけど…」

 

「慣れなさい、デス子」

 

「……理解できないわ」

 

 デス子は窓から遠い空の彼方を見つめ、何度も何度も疑問の言葉を漏らすのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけのカカシ編~

 

 

「――――ってなわけで、AR小隊が狙い通りイントゥルーダーのところに向かってった隙に奴らの基地を発見成功! ついでに基地をぶっ潰してやるぜ!」

 

 そこはT800基地近くの山林。

 即席のギリースーツに身を包み、双眼鏡で基地を観察しつつ意気込みを語るのは鉄血のハイエンドモデルのエクスキューショナーである。

 何度返り討ちにあっても不屈の精神で挑む姿は見上げたものだが、部下たちの冷ややかな視線が背中に集中している。

 

「懲りないっすね、エクスキューショナーさん」

「この辺まで往復するの疲れてきましたよ、最近…」

「もうやめにしません? 他のグリフィン狙った方が効率良いですよ?」

 

「おいなんだお前らその言いぐさは? それでも鉄血か!? やる気がねえんだったら帰れ!」

 

「はい」

「了解」

「分かりましたー」

 

「おい! ほんとに帰るんじゃねえ!」

 

 エクスキューショナーの理不尽な物言いに下級鉄血兵はうなだれて付いて行く。

 そんな部下たちの怠慢にイラっと来るが、この日エクスキューショナーには勝算があった。

 

「お前らよく見てみろ。基地には弱そうな戦術人形が二人と、人間が数人いるだけだ! ちょろいもんだぜ!」

 

 双眼鏡を預けられた下級鉄血兵は半信半疑で基地を観察する。

 基地の外で一人の少女が大柄の男と共に、何やら料理をしているようだった。

 楽し気に笑って料理を作る様子…隠れているその場まで良い香りが漂ってくる。

 

「よし、あいつら中に入っていったぞ。今の隙に奇襲攻撃だ!」

 

 エクスキューショナーの合図とともに部隊は早速基地へと潜入、エクスキューショナーを先頭に基地内部へと入り込む。

 エクスキューショナーの予想通り中にAR小隊の姿はない。

 

「へへ、読み通りだ。奴らはキッチンの方にいるみたいだ、行くぞお前ら! 皆殺しにしてやれ!

!」

 

 エクスキューショナーの指示で下級鉄血兵たちが勢いよくキッチンへと続く扉を蹴り開ける。

 勢いよく扉を開くと、そこにいたカリーナが大きな悲鳴を上げた。

 

「鉄血!? いつの間に!」

 

「カリーナ、下がっているんだ」

 

 カリーナを庇うように前に出たのは、この基地のコックだろう。

 なるほど、一般的な人間より体格がいいが…戦術人形からすれば差異はない。

 エクスキューショナーが笑うと、同じように下級鉄血兵たちも笑う。

 

「度胸だけは認めるぞ人間。まずはお前からだ!」

 

 立ちはだかるコックに、鉄血兵たちは一斉に飛びかかる。

 人間の力など戦術人形の前では無に等しい、たちまち八つ裂きにされる…そう思っていたエクスキューショナーの目の前で、なんとそのコックはナイフを手に飛びかかったブルートの顔面をフライパンでぶん殴り、そのナイフを素早く奪うと接近した鉄血兵をあっという間に仕留めてしまった。

 

「なんだぁ? てめぇは!?」

 

「この基地のコックだ」

 

「てめぇみたいなコックがいてたまるかよ!」

 

 部下を倒されたエクスキューショナーは怒り、キッチンの調理器具を吹き飛ばしながら巨大なブレードを振るう。

 流石にコックはブレードを受け止めようとはせず後ずさる。

 にやりと笑ったエクスキューショナーは、豪快にブレードを振るう…が、その動作を見込んだコックは逆に間合いを詰めると、エクスキューショナーの体勢を崩させて食器棚に頭から突っ込ませた。

 勢いよく食器棚に突っ込んだエクスキューショナーは痛みに呻き、額から血をにじませる。

 

「目が覚めたぜ…!」

 

 だがいまだ闘志冷めぬエクスキューショナーは果敢にコックへと挑むが、キッチンにおいてコックは独壇場だ。

 殴りかかったエクスキューショナーは逆にコックの猛打を受ける…力で挑もうにも、コックはその力を受け流し投げ飛ばされる。

 最後にエクスキューショナーは、窓を突き破って投げ飛ばされてしまった。

 おそらく死んではいないが動ける状態にないエクスキューショナーは、そのまま外で待機していた鉄血兵たちによって抱えられて森の奥に消えていった…。

 

 

「すごいじゃないですかコックさん!」

 

「キッチンで負けた事はないんだ。それよりもパイがそろそろ焼けそうだ、指揮官たちと一緒に食べよう」

 

 

 こうして、AR小隊不在でありながらも基地の平和は守られるのであった…。

 

 




イントゥルーダー「解せぬ」



次回予告!
【コマンドー×美少年】、お楽しみに!

シュワちゃん関連で美少年って言ったら、浪川ボイスのあの子しかいねぇよなぁ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。