「おっ、始まった始まった。テキストが出てきたな」
美子が言った。
「えー、何々……」
江奈は画面に目をやった。
『ある日、魔王に姫がさらわれた』
「……」
「……」
「……王道だな」
「ベタの間違いでしょ」
「オイ、ウチのオブラート一瞬で溶かすなよ」
「まあ、時代が時代だからしょうがないけどね」
『そして魔王から姫を救い出すために、勇者は旅立った』
「へー分かりやすくていいんじゃないの」
「まあ、シンプルなのはいいことね。あっ、名前入力よ」
「はいよ。ミ……コ……っと」
「あ、ごめん。お茶取ってくるわね」
「おう……あっ、ジュースは?」
「……あるけど」
「じゃ、ジュースで」
「こいつ……まぁ、いいけど、丁度賞味期限切れのあるし」
「うぉい!」
「冗談、冗談」
「まったく、頼むぜ」
「お待ちどー」
江奈が下から戻ってきた。
「おう、待ってないから気にすんな」
美子が答えた。
「ん? どういうことよ」
「んああ、まだ名前決めてないんだ」
「まだかよ! さっきのでいいじゃないのよ」
「いやー、何か面白みにかけるなぁと思って」
「別にそこに面白みはいらんでしょうが」
「だって、この先クリアまでずっと使う名前だぜ。さっきの名前じゃ盛り上がりにかけるよ」
「自分の本名をけなすとは斬新な」
「なんかこう、愛着のわく奴ないかな?」
「えー、愛着ぅ? ……そうねぇ」
「どうよ?」
「勇者……でしょう? 勇者、勇者……」
「おう」
「……」
「……」
「……ユウちゃん」
「は?」
「は? っじゃないわよ! ユウちゃんよユウちゃん! 勇者のユウちゃん! それで決定よ!」
「えー……まあ、いいけど」
「まったく、こんなんで時間使ってどうするのよ」
「……あっ」
「今度は何?」
「……四文字までだった」
「この野郎!」
結局、勇者の名前はミコに決まった。
「あー早速、始められるよ。すでに一時間ぐらいやった疲労感があるな」
「誰のせいだと……まあ、いいわ。フィールドに出たから、モンスター出てくるわよ。気をつけて」
「……何をどう気を付けんるだ?」
「……」
「……」
「……確かに、言われてみれば……何に気を付けるのかしら?」
「おいおい、しっかりしてくれよ」
「うぐっ……いいから、進めなさい」
「あっす……おっ」
『ゴブリンが現れた』
「何か出たぜ。宇宙人かな?」
「世界観! 世界観! そこ大事だから!」
「そうなのか? んーゴブリンねぇ、ゴブリン」
「何よ?」
「いや、何かアイドルのニックネームみたいだなと思って」
「どうでもいい!」
戦闘開始。