「ういーっ、よし、戦闘だな」
美子が肩を回しながら言った。
「そんな身構える必要ないでしょうよ。どうせ攻撃コマンドゴリ押しなんだから」
江奈が言った。
「冷めてんなぁ、もっとノリノリで行こうぜ!」
「分かった分かった……えー……」
「ん?」
「テーテテー! 戦闘開始!」
「……大丈夫か?」
「……ごめん、大丈夫じゃない」
「おう……まあ、やろうぜ」
「……どうど」
「まあ、やることは攻撃コマンドゴリ押しなんだけどな」
「うぉい! それさっき私が言ったやつ!」
「す、ステイステイ……お?」
「何よ?」
「魔法を一個使えるぞ」
「うっそ、こんな序盤で? 名前は?」
「えー……スピーディー? だって」
「何か速そう。すばやさを上げる魔法かしら」
「使ってみるか」
「……わざわざこんな雑魚相手に使う必要ないと思うけど。まあ、いいんじゃない」
「よし! 魔法入りまーす!」
『勇者の逃げ足が速くなった』
「……」
「……」
「……このゲーム大丈夫か?」
「さあ? まあ、時代が時代だし、ちょっとした遊び心ってやつよ。多分」
「んーそうかぁ? あっ、1ターン無駄にしちゃったな」
「別に平気でしょ。相手はゴブリンよ」
「……お前の中のゴブリンの評価低すぎだろ」
『ゴブリンの攻撃』
「いって! ほら、怒られたぁ」
「何、大したこと……え!?」
江奈は驚愕した。なんと、今の攻撃で勇者の体力は風前の灯になったからである。
「いやいや、おかしいおかしい!」
「おいおい、まずいぞ。次の攻撃でしとめないとゲームオーバーだ」
「いや無理でしょそんなの。えーどうしよう……」
「初戦闘でこれは……中々ハードよのう」
「感心してる場合か! えっーと……あっ、そうだ! コントローラ貸して」
「何だ?」
江奈は美子からコントローラを受け取ると、あるコマンドを選んだ。
『逃げる』
「……」
「……」
『勇者は逃げ出した』
「……」
「……」
「……流石、策士」
「ま、こんなもんよ」
二人は勇者の逃走成功を祝してハイタッチを交わした。
「……で、生き恥さらしてのこのこと町に戻って来た訳だが」
操作する勇者を町に戻した美子が言った。
「言い方、言い方」
江奈が苦い顔をして言った。
「おっと失礼。でも、どうするよ。このまままたフィールドに出ても同じ轍を踏むだけだぜ」
「フィールドが危険地帯である以上、レベル上げは無理ね。と、なると」
「お?」
「ズバリ、装備を強くするしかないわね」
「なるほど」
「早速、武器屋に向かいましょう」
勇者ミコは武器屋に向かった。