「こんちわー、武器くださーい」
操作する勇者を武器屋に入店させた美子が言った。
「何が売ってるのかしら? えー……銅の剣、鉄の剣」
テレビ画面を凝視しながら江奈が言った。
「わりと色々あるんだな。一番強いのどれだ?」
「んー、この一番値段が高いやつじゃない?」
「何々……ほぅ、ドラゴンソードか。いいじゃん、これにしようぜ」
「バカ、横の値段見なさいよ」
「え? 五万ゴールドだけど……五万ゴールド!!」
「すごいベタな驚愕の仕方するわね」
「いやいや、高すぎるって。他のにしようよ、他のに」
「でも変に妥協して弱いの買っても、またゴブリンに命のロウソクを吹き消されるだけよ」
「でも、所持金がよぉ」
「ないカネは、生み出すしかないわ」
「生み出す?」
「……防具、全部売るのよ」
『鉄のヨロイを売った』
『鉄のコテを売った』
『鉄のブーツを売った』
「……おい」
「……何よ」
「勇者、肌着だけになっちまったぞ」
「それが?」
「アホ! これじゃあ、風邪引くだろうが!」
「そこぉ!? こんな装備で戦えるかじゃなくて?」
「ああ、そっちか」
「普通、そっちでしょ。で、売却額は?」
『五十ゴールドを手に入れた』
「……」
「……」
肌着に銅の剣姿の勇者が誕生した。
「うぅ、不本意だが。いざ、フィールドへ!」
美子が肩を回しながら言った。
「防御力皆無だから、一撃でも食らったらアウトよ。マジに気をつけて」
江奈が言った。
「ハードだなぁ。まあ、甘ったカネですばやさを上げる装飾品を買ったから大丈夫だろ」
「え、そうなの? 何て装飾品?」
「はやぶさのネクタイ」
「……もう勇者じゃなくて不審者ね」
「そう言ってくれるなよ。姫を救い出せば、不審者だって勇者の仲間入りだ」
「助け出す前に姫に逃げられそうだけど」
「そこはそのぉ……お?」
『ゴブリン1が現れた』
『ゴブリン2が現れた』
「はぁ!? 二体!?」
美子は驚愕した。
「……そうきたかぁ。不味いわねぇ、現状1ターンで倒せるのは一体が限界よ」
江奈が額に汗を浮かべながらいった言った。
「どうする? また逃げるか?」
「……いえ、戦いましょう」
「江奈……」
「私達は今、このゲームの中の勇者、世界の希望なのよ。その希望である私達が無様に逃げ回る訳にはいかないわ」
「……そうだな」
「頼むわよ、美子!」
「合点承知だ、江奈!」
『勇者の攻撃』
『ゴブリン1を倒した』
「「よし!」」
『ゴブリン2の攻撃』
『勇者は力尽きた』
「「だよね」」
窓の外には綺麗な夕焼けが広がっていた。