スカジさんは馴染めない。   作:杜甫kuresu

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ジャンプさせてみた。


ジャンプしてみろオラァン!?

「おうおう姉ちゃん、一人かい?」

「まあそうね。何か用かしら」

 

 女性のそっけない返事、睨めつける男たちの虚仮威しの圧がちょっぴり強くなった気がした。

 背負う特徴的な大剣に、鋭く輝く灰銀の髪。冷ややかな深紅色の瞳が男の数を数えている。スカジは暇ではないからだ。

 

 今日だってこの都市にある”あるもの”を買いに来た、そしてこの任務は極秘性と速度が命の超重要項目。見ず知らずの若者に来れてやる時間などある訳がない。

 

「何だその態度は! 少し顔ができてるからって澄ましやがってよぉ!」

「いや……褒めてくれるのは有り難いが、それはそちらが勝手に僻んでいるだけでしょう…………」

 

 事実だ。事実だが言っちゃだめなやつ。

 男でも一際口数が多いほうが下から潜り込むように詰め寄る。もう腰は直角90度、それはチンピラなりの美学というやつなのだろうか。

 

「んなわけねえだろ間抜けぇっ!…………お、おいお前ら! そんなことねえだろ!?」

 

 急に不安になって後ろに同意を求めるが、何人かデレデレしている。こりゃ駄目だ、男は顔を真赤にして威勢を張る。

 

「と、ともかく! この人数で女ひとり、どうすりゃいいか分かるよなあ!?」

「…………夜伽なら余所にして、幾ら積んでもしないものはしないから」

「ち、ちげーよバカ!? 当たり前だ、身体は大事にしろ!?」

 

 明らかに照れる男、スカジは面倒くさいリアクションに溜息を付いてしまう。というかどうやら男はまだ若く、というよりスカジよりそこそこ年下のようだった。

 親も泣いているだろう、向いてないのに。と追加で溜息が漏れていく。

 

「ともかく私は時間がないの。どいてもらえる? 私に関わるとろくな目に遭わないわよ」

 

 彼女の”ろくな目に遭わない”とは、別に比喩でも何でも無く実際そういうことになるわけだが、いやまあそれが実際に分かる人間がどれだけ居るだろう。まあ取り敢えずグラニは知っている。

 

 勿論男はわからない。そんなつっけんどんな物言いでは火に油、木に肥料、レユニオンにチェルノボーグ。

 むしろ相手にされていないと分かってムキになる。

 

「俺が言いてえのはそういうんじゃねえ! 返して欲しかったら金を出せってこった!」

「持ってないわよ」

「ウソつけ、高そうな服着やがって! 手に持ってるのは何だ!」

 

 袋を咄嗟に隠す。剣のある方になまじ寄せたからか、男もそれ以上は追わなかった。分をわきまえているのに何故絡んでしまっているのだろう。

 

 あろうことか隠したのに勢いづいたのか、ニタニタしながらフードの奥から煽り立てる。

 

「これは、その。言いたくないわ、高いものじゃない」

「ほんとかねえ? ちょいと飛んでみやがれ!」

「飛ぶ? 何故?」

 

 質問で返してくるスカジに面食らいながら勢いよく言い返す。

 

「いいから飛べつってんだよ!? ホントやりにくいなお前!」

「へえ……………よく分からないけど、飛べばいいのね?」

「ああそうだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間、スカジの膝が少し曲がるなり、勢いよく地面から飛び上がっていく。

 高さはどれほどだろう。いや考える意味はない、男の冷静な頭が”ざっくりビル三階分”と言っているがそれを知ってどうするのか。二階分でも一階分でも十分ヤバい。

 

 少しだけ止まって落ちてくる。着地音は聞いたこともない音だった、思わず固まる。

 

「…………ねえ、これ何? よく分からないんだけど」

「…………ひっ!」

 

 疑問を呈すスカジに男はひたすら目が怯えていた。そりゃそうである、そんなに飛ぶ女を人生で見たことなかったからだ。銭の音がしたかはよく覚えてないが、多分してない。

 引き攣った口元が弧を描くと、あからさまなごますりの手付き。

 

「あ、あのー。あ、貴方様は何処の出身の方でしょうか…………」

「何でも良いでしょう。お願いだから速く退いて」

 

 男がビクリと背筋を伸ばすと、後ろの怯えていた男たちにかっぱをかける。

 

「お、おい! お通りだそうだ! さっさと開けろ!」

「そりゃねえだろお前!? や、やるっつったんだからちゃんとやれよぉカツアゲェ!?」

「相手ワルすぎだろ!? 俺はもうこんなんしねえからな!」

 

 揉めているのを律儀に聞いていたスカジが、はぁと再び溜息をつくと男を睨む。

 

「ねえ。もう行っていいかしら? 時間がないの」

「ひえっ!?…………す、すいませんでした!」

 

 統率を乱した男たちを引っ張りながら頭を下げて走っていく。どうやら逃げ去られてしまったようだ。

 

 事は片付いた。片付いたが…………あそこまで怯えられるとは思ってなかったのだろう。スカジは髪の毛先を指でくるくると遊ばせる。

 

「そこまで怯えなくてもいいでしょうに…………はぁ……」

 

 どうやらちょっぴり傷心気味のようで、フラフラとした足取りのまま先を急いでいく。

 その後姿は、相変わらず孤独の染み付いた寂しい色をしていたが、今日も今日とて彼女は一人である。




スカジからはグラブルのシルヴァとかと同じ匂いがする。残念なお姉さん…………。
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