読書家男と本屋の彼女   作:シフォンケーキ

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最近なんだかんだ色々あって投稿遅れました。ごめんなさい。
では本編どうぞ。


11話

「なぁ赤城よ」

 朝仕事に行くと、挨拶も早々に同僚の縦川が話しかけてきた。

「何だよ?」

「お前、昨日の夜どこにいた?」

「は?」

 突然の質問に良司はそんな間の抜けた声を出した。そして昨日の事を思い出す。

(昨日の夜って言ったらリサとラーメン食べに行ってたな。でも何でそんな事をこいつが?)

 そんな事を考えていると、良司の答えを聞く前に縦川が口を開いた。

「ネタはあがってんだ。さっさと認めねぇか!こちとらお前が駅前で可愛らしい女の子と一緒に歩いてんのをこの目で見てんだよ!」

 まるでドラマに出てくる取調べの刑事だ。

「ああ、まぁそうだな。確かに昨日の夜なら駅に行ったよ。出掛けた帰りだしな」

 面倒には思ったが隠すだけ無駄と判断した良司はそのまま認めた。

「ほぅ。ならお前はその女の子と何処へ行っていた?まさか帰り道で偶然会ったなんてつまらん事は言わねぇよなぁ?」

(あーいつもの面倒なやつだ)

 恐らく縦川は良司とその時一緒にいた女の子が恋人関係、もしくはそれに近しい関係だと思っているのだろう。そしてそうなれば嫉妬深い彼が何も言わずに黙っている訳がない。

「さぁ答えろ!お前とその子の関係ってのをよぉ!」

「・・・友達だよ。趣味が合う友達」

「ほぉ?お友達?成る程、だがその割にはお前さんえらく楽しそうだったなぁ?お前のあんな楽しそうな顔俺は初めて見たぞ」

「そりゃお前だって同年代の男といるより可愛い女の子と一緒にいた方が嬉しいに決まってるだろ」

 はたしていつまでこの尋問擬きは続くんだろうか?

「成る程成る程。まぁ確かに一理あるな。そこは納得しよう。では次の質問だ。解答には十分気をつけろ」

「それは質問じゃなくて拷問の際に使う言葉だぞ」

「んなぁ事はどうでもいい。聞きてぇのは一つだけだ。お前はその子の事好きなのか?あん?」

「段々口調がチンピラみたいになってるぞ」

「いいから答えろぉ」

 彼は最近ヤクザ映画でも見たんだろうか?

「質問に質問を返して悪いんだが、なぜそんな事を聞く?仮に俺が誰を好きになろうと関係ないだろ」

 何となく先の展開を予測しながら良司が聞いた。

「そんなの決まってんだろ、お前に」

 やれやれと言わんばかりに縦川が言う。その先を予想している良司も被せる様に言う。

「「その子を紹介してもらう為」」

 その一言を言い終わると良司がハァと溜息をついた。何とも分かりやすい奴だ。つまりは昨日の晩、偶然見かけた縦川はいつもの様に今回も女の子と知り合おうと言う魂胆だったのだ。

 そしてその言葉を聞いてここ最近で一番と言っていい程に良司はイラついた。

「お前、女と遊べりゃそれでいいのかよ」

「は?」

「別にお前が何処で誰と何してようと勝手だけどよ、お前の勝手に周りを巻き込むな」

 前から彼の女癖の悪さには思う所があった。

「女を抱きたいだけなら風俗にでも行け。女と喋りたいならキャバクラにでも行け。お前の性欲解消に人を利用するな」

 今まで何度か世話になった事もあったが、それとこれとでは話が別だ。例え相手が誰でもこちらが我慢出来ない事もある。

「・・・」

 良司の言葉を聞くと縦川は明らかにイラつきながらも黙って自分のデスクへと戻って行った。

(いや、今のは違ったな)

 そして良司も自分が言った事に自ら指摘した。

 別に縦川に言った事に関して罪悪感があるとかでは無い。そもそも彼にあれこれ言った理由が違うのだ。

 いつもの様に彼が女と知り合いたいと言っただけなら良司もここまで言わなかっただろう。

 では何故今回に限ってこんな発言をしたのか。それは決まっている。

(その対象がリサだったから、だよなぁ)

 彼に言った事が嘘という訳ではない。勿論本心から出た言葉だ。でもその根幹は自分の友達が、いや、自分が好きになった女の子が女癖の悪い知り合いに目を付けられるのが嫌だったからだ。

(独占欲ってやつなのかな)

 その表現が正しいのかすらわからなかったが、それでもその本心を隠して相手に説教紛いの事をした自分がどこか子供の様に思えてしまった。

 

 気に入らないから憂さ晴らしに他人に当たり散らすだけのガキと同じだ。

 

 一度考えるとそれがなかなか頭から離れなかった。

(ッチ。アイツのせいで朝から嫌な気分だ)

 内心でそんな不満を吐きながら良司は仕事を始めるのだった。

 

 

 その日の昼休み、縦川 聖護は一人、喫煙所でタバコを吸いながら考えていた。

 内容は勿論今朝良司に言われた事だ。

 彼があそこまで嫌悪感を出して言ってくるのは今回が初めてだった。そんな人間に言われれば少なからず彼だって考えさせられる事はある。

「女遊びが好きで悪いのかよ」

 タバコの煙と一緒にそんな言葉を吐き捨てる。だが彼だってこのままで良いと思っている訳ではない。側から見れば自分が女癖の悪い人間だと思われている事だって流石に気付いている。

 だがそれでも無意識に焦りだってある。自分にだって結婚願望もある。だが学生時代からの友人達は気がつけば恋人がいて、気がついたらどんどん結婚していく奴等もいる。結婚式に呼ばれては「お前も早く良い人見つけろよ」なんて言葉を言われ続けるばかりだ。

 学生の頃は何の保証も無かったが、いつかは自分も誰かと出会って結婚して子供を作って、そんな未来を漠然と描いた。だが現実は違う。気がつけば卒業してから数年、自分は取り残されていくだけじゃないか。自分で言うのも虚しいが、自分は話をするのは人並みには上手いが、決してモテるわけではない。だから恋人だってここ数年まともに出来た試しもない。

 そして仕舞いには親からも「早く彼女くらい作れ」とせっつかれる毎日だ。

 そして気がつけば空回りの連続の果てに女遊びの毎日へと堕落していっていた。

「ダッセェなぁ、俺」

 もう一度煙と一緒にそんな独り言を吐き出す。

 周りの男連中の恋愛事情に敏感なのも、また自分だけ取り残されていくのが怖かったからだ。改めて考えるとガキ以下じゃねぇか、と縦川は苦笑するしか無かった。

 だから彼は決意した。もう馬鹿にされるのも御免だ。

「いつまでも笑われたままで終われるかよ」

 言われっぱなしは彼の性に合わないのだ。

 

「上等だ。女遊びは今日限りだ」

 

 そう言って彼は喫煙所を後にした。

 

 

 その日の仕事終わり、良司が帰り支度をしていると背後に人の気配がしたので振り返ると、そこには縦川が立っていた。

「どうした?」

「話がある。コーヒーくらい奢るからちょっと付き合えよ」

「・・・わかった」

 そう言って良司は縦川に連れられて喫煙所へと移動した。

「ほれ。受け取れよ」

 自販機で缶コーヒーを買うと縦川がそれを投げて寄越す。その後でタバコに火をつけた。

「それで?話ってなんだよ。昨日の子なら紹介しねぇぞ」

「それはもういい。いや、寧ろそれに関しては悪かった」

 突然謝ってきた縦川に良司は驚いた。

「何だ急に」

「いや、俺ももう女遊びってのをやめようかと思ってな」

「あ、そう」

 気のない返事で返す良司。

 昨日の今日でそんな事を言われた所で誰が信じるか。

「信じないのは勝手さ。でも俺だって考えるとこはあるさ」

 良司の態度から察したのだろう。縦川がそう返した。

「?」

「周りがさ、恋人いるのが当たり前みたいな顔してるし、なんなら周りの連中は気がついたらすぐ結婚だとよ。親にまでせっつかれる。こちとら女友達すらいないのにどうやって恋人作れってんだよ。寧ろ教えて欲しいくらいさ」

「それで?これからは女遊びやめて真面目になりますって?」

「おう」

「んなもん勝手にしろよ」

 態々宣言されたって知ったこっちゃない。

「つれないねぇ。男の一大決心だぞ」

 縦川の女遊びをやめる発言など、ヘビースモーカーのタバコやめる宣言程度にはあてにならない。

「まぁ何にしても、今朝と今までは悪かったよ。もうちょい真面目に生きてみるわ」

「お好きにどうぞ」

 気の無い返事をしながら缶コーヒーを飲む良司。

「それに人の女に手を出して痛い目に会いたくねぇしな」

「は?」

「好きなんだろ?昨日の女の子が」

 突然そんな事を言われ、良司の思考が僅かに止まった。

「今まで女っ気が無かったお前が女の子と一緒にいるのも不思議だったし、今朝の態度で何となくわかったよ。そりゃ自分の好きな子が俺みたいな奴に狙われたら良い気はしないわな」

 事実を言い当てられてしまったら何も言い返せない。

「何時知り合ったんだよ」

「何でお前と恋バナしなきゃならんのだ」

「好きなのは認めるんだな」

「事実だからな」

「おー、クールに返すねぇ」

 露骨に煽る縦川に少しイラッとする良司。

「・・・知り合ったのは今年の3月頃、いつも行ってる本屋に店員としてあの子がいたんだよ。それで話してみたら結構話が合ってな」

「て事はその子も本好きなのか?」

 良司の本好きは縦川も知っていた。

「ああ。それから色々話していくうちに好きなんだって最近になって自覚した」

「成る程な。見た目はギャルっぽい感じだったけどお前と同レベルの本好きか。そりゃ気も合うわな」

 そう言って縦川はある事に気がついた。

「ちょっと待て、もしかして前にお前が合コンの時に逃げたのって・・・」

「ああ。彼女と会う予定が俺のミスでブッキングしちまったからな。お前らについて行ったら約束に間に合わないと思って逃げた」

「それならそうと言えば良かったじゃねぇか」

「あの時のお前が女絡みの理由で素直に返してくれると誰が思う?他人の恋愛事にすぐ嫉妬する奴がよ」

「・・・俺が言うのもなんだが、絶対に帰さないだろうな」

 ばつが悪そうに縦川が言う。

「ま、まぁ、今後は今までみたいな事が無いようにするから安心しろよ」

「はいよ」

「今までの詫びに飲みに行こうぜ。今日は奢るぜ」

「そう言う事なら是非とも」

 良司がそう言うと、二人は会社を出て居酒屋へと向かうのだった。




8月中には1話書こうとして気がついたらもう8月終わりでしたね。しかも時間ギリギリ。
こんなやつですけどこれからも書いていくんでもし良ければ読んでやって下さい。

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シギンコウ様
春はる様
ディヴァインお兄さん様
W・W様
unko⭐︎star様
ありがとうございました。

ご意見ご感想、誤字脱字等あればお願いします。
ではまた次回。

・・・何かいいネタあったら宜しくね。
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