読書家男と本屋の彼女   作:シフォンケーキ

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恐らく過去一更新が遅くなりましたね。
9月中に載せようとしたらまたギリギリだよ。
真面目にやれよ!


12話

 人間と言うのは時に失敗をしでかす生き物だ。そしてその失敗と言うのはいつも後になってから、大変な時になってから気がつくのが相場らしい。

「やらかしたなぁ」

 一人でポツリとリサが呟いた。こんなミスをしたのは初めてであった。

「・・・締め切りの日間違えてるじゃん」

 まさかの記憶違いであった。締め切りは来週だと思っていたら、確認したらまさかの三日後が締め切りだったのだ。

 気がついたのが締め切り前日でなかったのがまだマシではあるが、時間が減っている事に違いは無い。

「しかも問題なのはまだ書き終わってないんだよねぇ」

 普段から余裕を持って書き上げていたので、絶望的に間に合わないなんて事が無いのがせめてもの救いだろうか?

「でも流石にあっちの仕事しながらってなると間に合わないかも」

 あっちの、と言うのは言わずもがな、千堂の店である。

「店長には悪いけど最悪一日だけでも休ませてもらおう」

 そう判断すると同時にリサは千堂の携帯へと電話を掛けた。数秒のコールの後に千堂が出た。

『おう、リサちゃん。電話してくるなんて珍しいな。どうしたんだい?』

「すみません店長、急なんですけど今日一日休ませてもらってもいいですか?」

『こりゃまた珍しいな。まぁ普段真面目に働いてくれてるから構わんが何かあったのか?』

 理由を話すべきかと考えたが、理由も言わずに休ませてくれなんてそんな都合のいい話もないなとリサは理由を話した。

「実は小説の締め切りが近いんですけどまだ書き終わってなくて。それで今日休ませてもらってそれで書き上げようかと」

『そう言う事なら仕方ねぇ。何なら書き終わるまで休んでもいいんだよ?』

「いえ、多分今日一日あれば終わると思うので大丈夫だと思います。明日は担当さんが来ると思うので出来れば明日も休ませてもらえると」

『構わんよ。まぁなんかあったらまた連絡してくれ。先生』

「はい。ありがとうございます。あと先生はやめて下さい」

 千堂に礼を言ってリサは電話を切った。

「さて、早いとこ書き上げますか!」

 とリサが意気込むと同時にスマホが鳴り出した。電話が掛かって来たようだ。

「はいもしもし?」

『あ、先生。おはようございます』

「あれ?柏木さん?」

 電話の相手は担当編集の柏木 麻依(かしわぎ まい)だった。

『はい。朝からすみません。今お時間大丈夫ですか?』

「大丈夫ですけどどうかしました?」

『いえ、締め切りの五日前にはいつも原稿が上がったと連絡があったのに今回は無かったので何かあったのかなと思いまして』

「あー、実はまだ原稿上がってなくて・・・」

『え!?だ、大丈夫なんですか!?やっぱり何かあったんじゃ!』

 リサの言葉を聞いた途端、柏木が取り乱した様に言った。

「いえ、単純に締め切りの日を勘違いしてただけですから。締め切りまでには間に合いますから安心して下さい」

『そ、そうですか。だったら良いんですけど、珍しいですね。先生が締め切り間違えるなんて』

「ははっ、ちょっと最近色々有りまして」

『もしかして彼氏とかですか!』

「え?な、何でですか?」

『だっていつも余裕を持って書き上げてる先生が締め切り忘れるなんて余程の事じゃないと有り得ません。でも声を聞いた感じだと何かトラブルや事件があったってわけじゃなさそうですからそうなればもう彼氏かなって』

「違いますよ。私彼氏なんていませんから」

『別に良いですよ隠さなくても。しっかりお仕事さえしていただけたら私も文句は言いませんし』

 まるで信じない柏木の言葉にリサは少し頭を抱えた。

「はぁ。取り敢えず明日には書き上がると思いますから心配しなくて大丈夫ですよ」

『はい。では明日の夕方に伺いますね。その時には彼氏さんのお話も聞かせて下さいね。失礼します』

 そう言い残して柏木は電話を切った。

「・・・こりゃ明日は面倒事になるなぁ。柏木さん恋愛話大好きだし」

 彼女の反応から明日起こるであろう未来をリサは予想した。

 基本的に柏木 麻依と言う女性は仕事も出来るし人としても素晴らしいのだが、恋愛事に関しては妄想に浸る節があるのだ。

「・・・まぁ良いや。早く続き書かなくちゃ」

 そう言ってリサは残りの作業を終わらせる為に動いた。

 

 

 その日の夜。千堂は一人寂しく店で仕事をしていた。

「暇だねぇ。日が傾くとお客さんも来なくなるし、リサちゃんは休みだし、広い店で一人ってのは寂しいねぇ」

「あれ、リサ休みなんですか?」

 千堂が声のした方を見ると入り口に良司が立っていた。

「よう良ちゃん、いらっしゃい」

「どうも。それよりリサが休みって何かあったんですか?」

「あ、ああ。ちょっと大事な用が有るらしくてな。多分明日も休みだ。何だ?リサちゃん目当てに来たのに居なくて残念か?」

「そりゃヤクザみたいな面したオッサンの顔見るよりは可愛い女の子を見たいと思うもんでしょ」

「リサちゃんが目当てってのは否定しないんだな」

 千堂のその言葉に良司が言葉を詰まらせた。

「まぁ別に今更揶揄う気も無いから安心しな。好きなのかい?リサちゃんの事」

「・・・はい。好きですよ」

 少し顔を赤くしながら彼は答えた。

「いつからだい?」

 当然の事ながら質問攻めが始まった。

「いつからでしょうね。気がついたら好きになってたってのが正直なところですね」

 一度好きだと言ったからだろうか、良司本人も思ったよりすんなりと答えた。

 寧ろ溜め込んだこの思いを彼自身誰かに打ち明けたかったのかもしれない。

「しかし世の中ってのは面白いもんだよな」

「何がです?」

「だってつい最近まで恋愛どころか恋も無理だって思ってた奴が誰かを好きになるってんだから、面白いじゃねぇか」

「そうなる様に(けしか)けた張本人がよく言いますよ」

「でも悪い気はしないだろ?」

「そう言うのは自分で言わないもんですよ」

「他に言ってくれる奴がいないんだから自分で言うしかないんだよ」

「悲しい人生ですね」

「お互いにな」

 言い合いながら互いに笑った。

「絶対に他言しないで下さいよ」

「しないさ。そんな事したら俺の数少ない楽しみが無くなるからな」

「千堂さんとしては俺らがくっついた方が面白いんじゃないですか?最初に俺がリサと会った時はお似合いだ、みたいな事言ってましたよね?」

「くっつくまでの過程を楽しむのが俺みたいな外野の特権だからな。リサちゃんの事を好きと自覚する前としてからの違いを楽しむのも乙なものさ」

 笑いながら言ってくる千堂に良司は苦笑いで返すしかなかった。

「まぁ人生の先輩として、なんて偉そうな事言って説教する気も無いがよ、うちの大事な従業員を泣かせたらタダじゃおかないからな」

「見た目ヤクザの千堂さんに言われたら子供だったら泣きそうですよね」

 そんな軽口で返したが、千堂に言われるまでもない。

「勿論ですよ。生まれて初めてまともに誰かを好きになったんです。俺だって相手を泣かせて終わらせたくなんかないですよ」

「それなら良いさ」

 二人は再度笑いあった。

「それから千堂さん、これ全部会計お願いします」

 それからすぐに数多くの本がレジカウンターの上に乗せられた。

「・・・」

「・・・」

 ほんの僅かな時間、二人の間に沈黙が生まれた。

「お前さん空気ってのを読めよ!ここは互いに黙って別れる所だろ!全部で3,980円になります!」

「何言ってんですか!こちとら本買いに来てんですから本来の目的果たして何が悪いんですか!4,000円でお願いします!」

「さっきお前さんリサちゃん目当てかって聞いて否定しなかっただろうが!4,000円お預かりします!・・・20円のお返しになります!小説の方、カバーはどうなさいますか?」

「リサ目当てなのは今更否定しませんけどそれ以外の要件が無いなんて誰が言いました?本屋に来たんだから本を買って何が可笑しいんですか!売り上げに貢献してるんだから感謝こそされど、文句を言われる筋合いは無いですよ!カバーはしなくて大丈夫です」

「普段から贔屓にしていただきありがとうございます!でも今回に関して言えば買うのは次回に回しても良かったじゃねぇか!リサちゃんがいる時に来ればその分長く話せるだろうが!袋の方有料ですが如何なさいますか?」

「その時はまた買わせてもらいますからどうぞご心配無く!売り上げ上がって良かったですね!袋はいらないです」

「心の底からご贔屓にしていただきありがとうございます!だったら精々次来る時はリサちゃんがいる事を祈るんだな!お買い上げありがとうございました!またのお越しをお待ちしております!道中お気をつけて!」

「こっちも次来る時はむさ苦しいヤクザの顔より可愛らしい女の子の顔を見たいもんですね!こちらこそありがとうございました!また近い内に来ます!」

 お互いに大声で言い合った後、良司は帰って行った。他に客が居ないから出来た事だ。

「・・・やっぱ偶には良ちゃんとこうやって馬鹿やるのも悪くないな。でも一人はやっぱ暇だな」

 他に誰も居ない店の中で千堂がポツリと呟いた。

 一人で仕事は退屈だが、リサに小説が完成するまで休んでも良いと言った手前、そんな弱音を吐くわけにもいかない。最悪でもあと一日か二日はこの状態が続くだろう。

「一人で仕事ってのは慣れてんだけどな。やっぱり暇ってのは慣れないねぇ」

 遠回しに客が少ないと自分で認めているのだが、千堂は気づいていない。

「まぁ、リサちゃんが戻ってくるまで一人で頑張るとするか」

 そう言って千堂は残りの仕事に取り掛かるのだった。

 

 

 一方その頃。

「やっと終わったぁぁぁ」

 リサは自室のベッドに倒れ込んでいた。一日掛けてやっと残りの作業が終わったのだ。

「これで後は柏木さんに見せるだけ!」

 本当ならパソコンがあればもっと早く終わったのだろうが、随分前にパソコンがお亡くなりになってから新しいのを買い替えていない為、原稿用紙に手書きというスタイルを取っていたのだ。

「まぁデビュー前からそれでやってたから問題無かったけどね」

 誰に言うでもなくリサは呟いた。気がつくと独り言を呟くのが昔からの癖になってしまっている。

「・・・早く寝よ」

 寝る直前にふと思ったのは、明日柏木からされるであろう質問責めにどう対応するかと言う事だったが疲れもあってか、リサはそのまま眠りについた。

 明日の事は明日のリサが何とかしてくれると願って。




ネタが思いつかないってやっぱり絶望的やね。(何かネタになりそうな事があったらコメント等お願いね!)
しかも投稿焦って後書き書き忘れるとか言うミスまでしちゃって(投稿した後にこの後書きを書いてます)。
まぁこんな奴ですが作品を読んでいただけたら幸いです。

ご意見ご感想、誤字脱字等あればお願いします。
ではまた次回。
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