読書家男と本屋の彼女   作:シフォンケーキ

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最近どうももう片方の作品みたいに段々と更新の間が広くなってる気がしますね。これはまずい。
まぁそんな事より本編をどうぞ。


13話

 無事に話を書き上げた翌日、リサは朝早くから目を覚ました。

「確か柏木さんが来るのって夕方からだっけ?」

 その日のスケジュールを確認しながらリサは呟いた。既に書き上げた原稿を確認する。特に問題は無さそうだ。

「一回店長の所に行って軽く話しておいた方がいいかな?店近いし」

 予定の時間までかなり空き時間がある為、状況報告の意味でも一度顔を出しておいてもいいかもしれない。

「そうと決まれば行きますか。新しい本も欲しいし」

 言い放ちながら朝食を済ませた後、店の開店時間を見計ってリサは出掛ける準備を始めた。こう言う時、仕事先が近いのは何かと便利だ。

 

 

「店長、おはようございます」

 開店時間から数十分程経った頃、リサが店に入るといつもの様にレジに千堂がいた。

「おう、リサちゃんおはよう。今日まで休みって言ってなかったか?今日は担当さんが来るとかって」

「そうなんですけどその前に店長に一言言っておこうかなって。急に休みも貰っちゃいましたし。でも明日からはちゃんと出れますから安心して下さい」

「成る程。別に気にしなくたって良いんだよ。こちとらそうなるかもって事を覚悟して君を雇ってるんだからな」

「でもやっぱりしてもらったからにはお礼は言わないとじゃないですか」

(今時の子にしては真面目と言うか、筋が通ってると言うか、相変わらず見た目とのギャップが激しい子だな)

 リサの言葉を聞いて千堂は内心でそんな事を思いながらフッと笑った。今まで雇った人間でここまで真面目な人間もいなかっただろう。

「時間があるなら少しの間話し相手になってくれねぇか?お客さんもいなくて暇なんだ」

「平日の開店直後ですもんね。良いですよ。私も買いたい本も有りましたし昼くらいまでなら」

「そうこなくっちゃな」

 ここらで幾つか以前から聞きたかった事を聞いてみるかと千堂は目論んだ。

「リサちゃんっていつから小説家になりたいって思ったんだ?」

「何ですか?唐突に」

「いや、何だかんだでそう言う話とかってした事無かったと思ってな。リサちゃんがここに来たのだって新人賞から暫く後くらいだったろう?」

 言いながら千堂はリサが店に来た時の事を思い出した。

 話はリサと良司が出会うより前に遡る。

 

 〜数ヶ月前〜

 その日の昼、千堂は普段とは違う状況に見舞われていた。と言ってもそんなに深刻な事でも無いのだが。

「君がバイト希望の子?」

「はい。舞崎 リサって言います。よろしくお願いします」

 渡された履歴書の写真とリサの顔を交互に見ながら千堂は失礼ながら色々と考えた。いや、別に実際の顔と履歴書の写真が別人でした、とかではない。ちゃんと同一人物だ。問題はそこではない。

(・・・本屋で働こうってキャラには見えねぇ)

 リサの事は前から知っていた。何度も店に客として来ていたからだ。その時も小説を読むキャラには見えないと失礼な事を考えたのを覚えている。

(まぁ見た目どうこうで選ぶ訳でもねぇから構わねぇけどな)

 とは言え見た目は派手だが小柄な所為か、履歴書を見なければいまいち年齢が分からなかった。

「てっきり高校生だと思ってたけど高校は卒業してるんだね」

「はい。去年の3月で卒業しました」

「まぁまずは月並みな事を聞こうか。志望理由は?」

「昔から小説や本が好きでそれに囲まれながら働きたかったので」

「本屋のバイトなら他でも有りそうだけど何で態々うちの店を選んだの?大通りにある訳でもないし、こんな面の悪い男の店なんて印象も良くないだろ?」

「前から何度もお店自体には来てましたから印象が悪いなんて事はありませんでしたよ。それにこのお店の品揃えも最高ですから。とても個人店でやってるとは思えませんよ」

「まぁ寧ろ個人店だからこそ好きな様にやれるのが強みだからな。その分売り上げにダメージを負うかもしれないがそれでも本が好きな人が来る『隠れた名店』を目指して始めたからな」

 言って、話が逸れたと千堂は話を戻した。

「接客業の経験は?」

「前にコンビニのアルバイトなら有ります」

「本は好きかい?」

 これは千堂が面接の際に必ず聞く質問だった。

「はい。本も、それを書く人もどっちも好きです」

 千堂の問いに迷わずリサが答えた。

「・・・」

「・・・」

 数秒間の沈黙がリサの不安と緊張感を余計に刺激する。

(どっかの誰かさんを思い出させるな)

 不意にそんな事を思った。

「よし、合格。これからよろしくな」

「え?もう終わりですか?」

 呆気なく終わった面接にリサは驚いた。

「何だ?もっと困らせた方が良かったか?生憎とこんな面してはいるが女の子を好き好んで脅したりする趣味は無いんだ」

 そんな冗談を言うとリサもつられて笑った。

「ふふっ。これからよろしくお願いしますね。店長」

「おう。よろしく」

 

 これがリサが面接に来た時の出来事だった。

(その後にまさか自分が新人賞を取った小説家ですって言い出すんだからあれには驚いた。まさかこんな身近に小説家の先生が居るなんてな)

 最初こそ千堂もリサの発言には半信半疑だったが、追々話を聞けば聞く程疑いの余地は無くなった。

「でも店長もよく私を雇いましたよね」

「断られると思ってたのか?」

「だって小説家として書きながらここで働きたいなんて言ったら多少は印象とか悪くなりそうじゃないですか。言ったのは後からですけど」

「言った本人が言うかね?別に俺は仕事をちゃんとしてくれさえすればこれが副業でも構わんさ。俺の採用基準は本に対してどれだけ愛があるか、だからな」

「でもそれなら良くんがここでずっと働いてそうなんですけどね」

「あいつは学生時代からここでバイトしてた事はあったけどな。それからも何かあれば時々手伝ってもらったりもしてる」

 確かに以前、彼本人もそう言っていた。

「いえ、店長と良くん仲良いからずっと働いてそうなのになって」

「良ちゃん曰く、『好きな物に囲まれるのも良いけど、その前に色んな事をまずは経験したい』とさ。確かに俺一人だけってのは何かと不便だったりはしたし、あいつがいてくれたら楽けどよ」

「この店って店長が建てたんですか?」

「ああ。もう十年近く前になるかな。色々あって前の仕事辞めて、それでこの店を開いた。まぁその話はそのうちな」

「いつか話して下さいよ」

「おう。いつかな」

 これを話し出すと空気が変わってしまうと判断した千堂は適当に話を切り上げた。

 それから話は続き、幾つかの千堂からの問いにリサが答え、程よい時間になるとリサも自分の買い物を始めた。

「それじゃあ私、買いたい本探してきますね」

「おう。売り上げに貢献してくれ」

 それから十分後、リサは大量の本を買って店を後にした。

 

 

 それから数時間後、リサは自宅にて柏木が来るのを待っていた。

「原稿も一通りチェックしたし問題無いね。あとは柏木さんが来るのを待つだけっと」

 完成している原稿を見ながらリサが呟くと同時に呼び鈴の音がした。

「おっ、柏木さん来たかな」

 リサが玄関に行き扉を開くと予想通りそこには柏木 麻依がいた。

「先生、原稿いただきに来ました」

「はい。取り敢えず中にどうぞ。コーヒーでも用意しますから」

「お邪魔します」

 柏木を自分の部屋に案内し、完成した原稿を見せている間、リサはコーヒーを作る為にキッチンへと向かった。

 

 

「それでは、確かに原稿はお預かりしました。また確認して何か有れば連絡しますね」

「お願いします」

 暫くして柏木が軽く確認をすると受け取った原稿を鞄の中にしまった。

「さて、それでは本題に入りましょうか」

「本題?」

「先生の彼氏さんの話ですよ」

「いや、だから私に彼氏はいませんから」

 案の定と言うべきか、柏木が改まって聞いてきた。と言うかそっちが本題でいいのか。

「何でそんなに隠すんですか!良いじゃないですか!くださいよ!色恋ネタを!」

「元から無いものは出せませんよ!て言うか毎回この手の話になるとキャラ変わりすぎじゃないですか!?」

「自分にそんな話が無いんだから周りからの恋愛話くらい求めたっていいじゃないですか!」

「知らないですよそんなの!」

 それぞれ言い合うとお互いに息切れして深呼吸しながら落ち着いた。

「前にも言いましたけど、私は生まれてこれまで一度も恋愛経験なんて無いんです。でも別に興味がないわけじゃないんです」

「何度も聞きましたよ。誰かを好きになっても自分が選ばれる事は無かったって」

「そうよ、そうなの、そうなんですよ!私だって青春の一つくらいしたかった!学生時代は結局勉強してるだけ!そりゃ今の仕事は楽しいけどそれでも今だって恋人くらい欲しいのよ!」

(ああ、面倒くさい事になった・・・)

 最早居酒屋で酔い潰れながら愚痴を溢してるサラリーマンみたいな有様だ。

「そ、そんな焦らないでもそのうち良い人が現れますよ」

「気休めを言うな小娘が!生まれてこの方30年、恋人がいなかった女の気持ちが貴女に分かるのか!」

 ダメだ。完全に酔って暴れるサラリーマンと化している。差し出したのはコーヒーだったはずなのだが。

「くっ、ふっ、うう」

 挙げ句の果てには泣き出す始末だ。よくこれで今までまともに仕事が出来たものだ。

 

 それから数分後。

 

「・・・すみませんでした。みっともない所を見せて」

「いえいえ」

 どうにか落ち着いたのか、漸くまともに会話出来る程度にはなったようだ。

「それで、先生の彼氏さんはどんな人なんですか?」

 前言撤回。やっぱりまだまともな会話は無理な様だ。

「いや、だから彼氏はいませんってば」

「なら言葉を変えましょう。先生の気になってる人はどんな人なんですか?」

「・・・そもそも何で気になってる人がいるって思うんですか?」

 リサの質問に柏木がゆっくりと答える。

「昨日も言いましたけど先生は締め切り日は守りますし、仮に何かあったとしても事前に連絡を入れてくださる人です。これはこちらとしても有難い話です。そんな人が締め切り日を間違える様なミスをした。そして電話で聞いた時、私の質問に先生は真っ先に『何でですか?』と聞いてから彼氏の否定をしました。一見すれば普通なんでしょうが、普段の先生なら真っ先に『彼氏はいない』と答えていました。そうなれば可能性は二つ。先生が私に嘘をついているか、恋人ではないが意識している相手はいる。そう推理しました」

 柏木の推理を聞かされてリサは思わず何も答えなかった。いや、答えられなかった。

 そして、沈黙は肯定を意味する。その時点で答えは出たと柏木は判断した。

「先生は嘘が得意な人ではありません。となれば残るは意識している相手がいると言うことになります」

 言い終わると同時にコーヒーを飲んだ。

「何か間違ってましたか?」

「見事な推理でした。名探偵」

「私はただの編集者ですよ。さて、誤魔化される前に先生の想い人のお話を聞かせていただいましょうか?」

 どうやらまだまだ(じんもん)は終わりそうにないようだ。

 




今回の話を書いて読み返すと前回と似た様な流れだな、と我ながら思ってしまいますね。決して手抜きでは無いですよ?
そして気がついたらUA数が600超えてました。(その割には感想を書かれた事がない・・・)
見てくださった皆様、ありがとうございます。
この作品を見て軽くでも楽しんでもらえたら幸いです。

お気に入り登録してくださった
パンイチ男様
はるかずき様
ありがとうございました。

ご意見ご感想、誤字脱字等あればコメントお願いします。
ではまた次回。
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