読書家男と本屋の彼女   作:シフォンケーキ

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最近色々とやろうと手を出してたら小説書くのが遅くなりましたね。
(いつも通りだけど)
今年が終わるまでにあと何話投稿出来るかな?
では本編どうぞ。


14話

「さあ、白状してもらいますよ。先生」

「も、黙秘権は使えますか?」

「残念ながらそれらが適応されるのは警察等での取り調べ、もしくは裁判において、ですから今回は適応外です」

「そ、そもそも喋らせる強制力は柏木さんには有りませんよね?なら答えなくても問題無いんじゃ?」

「ならこの原稿がどうなってもいいのか!こっちには人質がいるんですよ」

 そこまでするのか。

「いや、何かしても困るのは柏木さんも同じだと思うんですけど。それ手書きだし」

 確かに書いたばかりの原稿に何かされたらリサとしても精神的に来るが、結局柏木が困るのも目に見えている。

「いいじゃないですか。こっちは愛に飢えてるんですよ。求めてるんですよ。ラブを!」

「自分で言ってて悲しく無いんですか・・・」

「これ以上悲しくさせない為にも話して下さいよ」

(・・・なら最初から言わなきゃいいのに)

 そう思わずにはいられないリサだった。

「それで?いるんですよね?気になってる人」

「・・・まぁ確かにいますよ。気になってる人」

 これ以上絡まれても厄介なので素直に話して楽になろうとリサは考えた。

「どんな人ですか!どんな人ですか!」

「その前に一つ聞いていいですか?」

「何ですか?」

 案の定食いついてきた柏木を制してリサは前から思っていた事を聞いた。

「柏木さんは誰かとお付き合いしたいとは思わないんですか?」

「それは・・・」

「前から少し不思議だったんです。周りの恋愛話を聞きたがる割に、自分が誰かと付き合うように行動する事が少ないなって。いつも話を聞くばかりで柏木さんは『誰か良い人がいたら紹介してください』とは言いませんよね?」

 少しばかり痛い所を突かれた、と柏木は内心で思った。だが、こちらが散々聞いておいて相手の質問に対して黙秘する訳にもいかない。

「お恥ずかしいんですけどね、自信が無いんですよ」

「自信?」

「私は生まれてこの方、誰かとお付き合いをした事は有りませんし、ましてや異性の友人もいません」

 柏木が淡々と続ける。

「学生の頃なんかはそれでもいつかはって考えた事も有りました。でも結果はさっき言った通り。だからいつしか思っちゃったんですよ。『私には多分無理だ』って」

「・・・」

「一度そう思ったら後は自分に言い訳の連続ですよ。つまり、私の心が希望を持つ事を放棄してるんです」

 何をしたって自分は選ばれない。どんな時でもそれは頭から離れない。いつだってそんな呪いじみた考えが、柏木の活力を阻害する。

「最初から諦めている人間は勝負の場にも立つ事は無いんです。だから選ばれなくて当然。それが私の答えです」

 そこで柏木は話を終えた。

「少し論点がズレてる気がするんですけど、『求めている』のか、『求めていない』のか、どっちなんですか?」

「それは、私だって欲しいですよ。恋愛してみたいですよ」

 漸く、と言うべきか、彼女は本音を口にした。

「もし良かったら今度誰か紹介しましょうか?お時間がある時にでも会えるようにも出来ると思いますし」

「本当ですか?」

「はい。いつもお世話になってますしそのくらいなら」

「先生!」

 リサが言うと柏木が身を乗り出して顔を近づけてきた。余程嬉しいのだろう。

「でしたら本が好きで見た目がワイルドな人でお願いします!」

 丁度、と言うべきか、一人だけその条件に当てはまる人物に心当たりがあるので明日にでも話してみようとリサは内心で考えた。

「わかりました。話がついたらまた連絡しますね」

「ありがとうございます。では話を戻して先生の気になってる方はどんな方なんですか?」

「・・・覚えてましたか」

「誤魔化せると思ってたんですか?」

 話を逸らせると思ったが、どうやら失敗だったようだ。こうなってしまっては仕方がないのでこれ以上無駄な抵抗はやめよう。

「私と同じで本が好きな人ですよ。知り合ったのも数ヶ月前からで、特に意識もしてなかったんです。でも何度か会う度に楽しいし次いつ会えるかなとか気が付いたら考えちゃうんです。でも私も柏木さんと一緒で今まで恋愛なんてした事が無かったので、これが恋愛感情って言えるかはよくわかりませんけどね」

 柏木の言う通り、リサはとある人物の事が気になっている。だがそれははたして恋愛感情なのかと考えるといつもそこで考えが止まってしまうのだ。

「お互いに苦労しますね」

 柏木が笑って言った。

「だったら先生、いつかその人、私にも合わせてください。先生の気になっている方がどんな人なのか私も興味有りますから」

「機会が有れば」

 仮にここで嫌だと断ってもあれこれ言われるだけなのは目に見えているのでそう答えた。

「ではこれ以上お邪魔するのも申し訳ありませんからこれで失礼します」

 そう言って柏木は荷物を持って帰って行った。

「はい。お疲れ様です。また宜しくお願いします」

 リサもそう返して柏木を見送った。

「さて、また新しく書くとしますか!」

 そう言ってリサは新作の為に考えを巡らせるのだった。

 

 

 リサが柏木と話している頃、良司は少しばかり困った事が起きていた。いや、大した問題でも無いのだが。

「やばい、金が無い」

 中には1,854円。

 財布の中を見た時、中身の少なさに彼自身驚いた。いつも一度に沢山本を買っていれば当然の結果ではあるが。

「まぁ金をおろせば良いだけだから問題は無いんだが・・・」

 良司の言う様に、口座の中にはちゃんと残っているのだからおろせば問題無い、のだが・・・。

「肝心のキャッシュカードが無いんだよなぁ」

 昨晩財布の中のレシートなどを整理した際に「金を何時でもおろせると思ってたら余分に金を下ろしそうだ」と考えて家に置いてきてしまったのだ。何故その際に現金の額をちゃんと確認しなかったのか、今更ながらに後悔した。

 因みに彼はクレジットカードなど持っていない。

 そして問題なのはこの後なのだ。

「おい赤城、ちゃんと仕事終わらせてるか?」

 そんな風にあれこれと考えていると縦川が話しかけてきた。

「ああ、順調だよ」

「この後皆で飲みに行くんだから今回は逃げるなよ」

 別に今回は逃げる理由が無いのでそんなつもりは初めから無かったが、こう言われるといっそ逃げてやろうかと思う良司は性格が悪いのだろうか?

 そして悩みの種はまさにそれだった。飲みに行く、それはつまり金がいると言う事だ。だが先程も言った様に彼の財布の中身はとても寂しい状態だ。恐らく皆で行くのだから割り勘にはなるだろうが、不安な事には変わりない。金を借りれば済む話なのだろうが、彼としては人から金を借りると言う行為に抵抗があった。だが飲みに行く事は以前から決まっていたし、これに関しては完全に良司の落ち度なので文句を言うわけにもいかない。

(最悪の場合は借りるしかないか)

 非常に遺憾ではあるが、そうしよう。

 そう結論づけて残りの仕事を終える事にした。

 

 

「「「乾杯!」」」

 仕事が終わってから約一時間、良司は縦川達と居酒屋に来ていた。

「今週もお疲れー。いやぁ今週も部長が無茶振りしてくるかと思ってヒヤヒヤしたぜ」

 テーブルを囲んで乾杯すると同時に縦川が言った。今回のメンバーは良司を含めて5人。その中にはいつぞやの広瀬もいた。

「縦川君、それなりに仕事出来るけど時々不真面目で部長によく怒られてるもんねー」

 縦川にそう言ったのは同僚の女性社員、中峰 恵(なかみね めぐみ)だった。

「余計なお世話だよ、中峰」

 そんな二人のやり取りに周りが笑い出す。

「相変わらずあの二人って仲良いですよね」

 そう言ったのは良司の隣に座っていた澤口 麻耶(さわぐち まや)だ。恵と同じく良司や縦川と同期である。

「確かに、あの二人が一緒にいたら静かな試しがないね」

 彼女の言葉に良司も同意する。あの二人はどちらかと言えば常に明るい、学生で言えばいつもクラスの中心にいる様なタイプだ。対照的に良司と澤口は静かな方だろう。

「でも驚いたよ。澤口はあんまりこう言う飲み会って基本来ないだろ?」

「殆ど同僚だけの軽い物ですからね。それに恵に無理矢理引っ張られたので。上司達が集まる忘年会とかなら絶対に来ませんでしたけどね」

「あーそれわかるわ。酒楽しむより上司達の顔色伺うのに疲れるもんな」

 良司の言葉に今度は澤口が同意した。それに加え、彼女は人が多く集まる場が苦手なのでどちらにしても参加したくないのだ。

「でも先輩達も仲良さそうですけど何か接点でもあったんですか?」

 向かいに座っていた広瀬が聞いてきた。確かにどちらも静かなタイプの二人が仲良さそうにしていれば気になるのかもしれない。

「私も彼も趣味が同じなのよ。電車の方向が一緒でね。電車の中で偶然知ったのよ。お互いにお互いが好きな小説を読んでいたから」

「それから好きな小説とか作家さんの話で気が合ってな。そんな感じで仲良くなった」

「小説ってそんなに良いもんなんですか?読んでたって時間の無駄でしょ?字ばっかりですぐ疲れるんで僕は無理ですよ。漫画くらいなら読みますけど」

「「あ?」」

 広瀬の言葉を聞いた途端二人の態度が変わった。

「あなたそれ本気で言ってるの!?小説の良さがわからないなんて信じられないわ!」

「ああ全くだ!良さがわからないだけならまだいい。そんなもんは個人の勝手だ。だが読んでる間が時間の無駄だと?まともに読めもしない奴が知った様な口叩くんじゃねぇ!わかったか!」

「は、はい。ごめんなさい・・・」

 突然キレた二人に気圧されて咄嗟に広瀬が謝った。

「おいおい、どうしたいきなり」

「後輩いじめたらダメっしょ?」

 急な展開に状況がわからない縦川達が聞いた。

「そんなんじゃない。こいつが本は時間の無駄とか言い出すからお説教してやっただけだ」

「そうです。自分の価値観だけで物事を決めつけないで欲しいわ」

 二人の説明を聞くと縦川と中峰が「あー」と納得した顔を見せた。

「そりゃ広瀬、お前が悪い。言うにしても言葉と相手を選べ」

「そうだよね。二人共小説とかになると性格変わるもんね」

 二人が言うが、何処か呆れたような様子だった。

「でもそうやって考えると二人って結構気が合うよね」

「確かにそうですよね。そんなに気が合うならお二人で付き合ったりしないんですか?」

「「あー、無い」」

 少し考え、二人は同時にそう答えた。

「何で断言出来るんだよ」

「話が合う相手がいるのはいいんですけど別にそれは同じ趣味の話し相手が欲しいだけで恋愛対象ではないので」

「俺も同意見だな」

「て言うか二人共恋愛したいとか思わないの?」

「少なくとも今は思いませんね。私は本が読めればそれでいいので」

「相変わらずだねぇ、麻耶は。赤城君は?」

「俺は・・・」

「お前は違うよな」

 答えを言う前に縦川が遮った。

「縦川君何か知ってるの?」

「ああ。こいつには可愛らしいお友達の女がいるらしいからな。偶然見かけただけだがな」

「え、そうなの!?」

「あなたにしては意外ね」

「どんな人なんですか?」

 縦川の言葉にそれぞれが反応を見せる。

「俺が女の友達作るのがそんなにおかしい事か?」

「ありえねぇ」

「普通じゃないよね」

「異常よね」

「想像出来ません」

 好き勝手に皆がそう言った。

「それで、赤城君が好きになった子ってどんな子なの?」

「何で好きな子って決めつけんだよ」

「え?違った?」

 実際間違ってはいない。

「まぁ赤城君が好きかどうかは別として、相手は一体どんな子なの?」

 澤口が聞いてきた。良司としてはさっきの質問を掘り下げられなくて良かったと言うべきか。

「・・・俺と同じで本が好きな子だよ。もしかしたら俺よりもかも知れないけどな」

「『子』って事は年下なんですね。縦川先輩はその人の事を見てるんですよね?」

 広瀬まで続いて言ってきた。

「まぁな。見た目は割と派手な方で可愛らしい子だったよ。赤城と同じくらい本好きとは思わなかったけどな」

「へぇ〜、それでそれで?その子と赤城君は何処で知り合ったの?」

「お前らどんだけ興味あるんだよ!」

 それから暫くの間、良司は皆からの質問攻めにあった。




話が進む毎にペースが落ちてる気もしますが、もし良かったら次まで待ってやって下さい。
出来るだけ早く書くようにしよう。

誤字脱字、ご意見ご感想等有ればコメントお願いします。
ではまた次回。
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