読書家男と本屋の彼女   作:シフォンケーキ

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あけましておめでとうございます。
本作では年明け一発目の投稿になりますね。(もう一月も下旬だよ馬鹿野郎)
ゆったりやってたら予想以上に遅くなってました。
今年もゆったり投稿していきますので良かったら読んでやって下さい。
では本編どうぞ。


15話

「店長、一ついいですか?」

「何だ?改まって」

 原稿のやり取りを柏木とした翌日、リサはその後にした話を千堂へとしていた。

「実は私の担当さんが店長に会ってみたいそうなんですけど、いつかここに連れてきても良いですか?」

「俺は構わないが、何で俺に?」

「えーと、店長の話をしたらどんな人なのか会ってみたいって言われて」

「どんな話したら君らの会話に俺が出てくるんだ」

 流石に昨日の事をそのまま伝えるのは少し気が引けたのでリサはそれっぽく話を誤魔化しながら伝えた。

「まぁ別に会うくらいなら構わねぇけどな。でもいつ来るかだけは予め教えてくれよ」

「わかってますよ」

 取り敢えずこれで後は柏木と予定を合わせれば問題無いだろう。

(俺何かしたっけか?担当さんが態々来るって普通無いよな?)

 そんな不安が過ったが、千堂には思い当たる節など無かった。

 

 

 土曜日の昼間、仕事が休みだった良司は喫茶店に来ていた。勿論その店のコーヒーを楽しむ為、ではない。

 店に入ると既に待ち人がいた。

「やっほー、兄貴」

 妹の美希だ。

「休みに何の用だよ」

 店員にコーヒーを頼むと良司は本題を切り出した。

「今日は兄貴にお願いがありまして」

「改まってどうした」

 この時点で碌でも無い展開しか予想出来ない。

「今日一日だけ恋人のフリしてよ」

「断る」

 即答した。何が悲しくて妹とそんな真似をせねばならんのか。

「お願いだよ、もう後には引けないんだから」

「は?どういう事だよ」

「実はさ、少し前に大学の女友達とまぁ恋愛系の話になってさ。皆彼氏との惚気話になったのよ」

「まぁよくある話だな」

 女同士の恋愛話なんて惚気か他人の彼氏の悪口か浮気の疑い以外にある訳がない(極度の偏見)。

「でもほら、私は前に別れて彼氏いないじゃん?それで売り言葉に買い言葉でつい『私の事大好きで私にべったりな彼氏が最近出来た』って言っちゃった訳よ」

「お前馬鹿じゃねぇの?」

 何故そんなあからさまにすぐバレそうな事を言うのか。

「だって女の世界は舐められたら終わりなんだよ!」

「いや知らんし。何だそのヤンキー漫画に出てくる不良集団みたいな言い分は」

 そもそも自分の発言で困っているんだから自業自得だ。

「だからお願い!今日一日だけで良いから彼氏のフリしてよ!後は適当に別れたとか言って誤魔化すから」

「漫画や小説の定番みたいな事言ってんじゃねぇよ」

 創作物の中では幾度と見た展開だが、まさか自分が体験する羽目になるとは。

 幸い、と言うべきか美希の大学の友達と良司は今まで会った事が無い為、理屈の上では確かにこの作戦は問題無いだろう。

「適当に話し合わせてくれるだけで良いから。他に頼める人いないし」

「それに俺が協力して何の得が有る?」

「そう言わないでよ。終わったら本買ってあげるから」

「3000円分な」

「兄貴は私を商品券か何かだと思ってない?」

「3000円でお前のプライドが守られるなら安いと思うけどな」

 そもそも向こうに拒否する権利も無い。

「・・・わかった。それで良いよ」

 渋々と言った感じで美希は了承した。

「で?その友人とこれから会うのか?」

「うん。もうちょっとしたら来ると思うよ」

「は?お前、ここに呼んだのか?」

「そうだけど?」

「俺が断ってたらどうする気だったんだよ」

 行動力は評価するが計画性と爪の甘さが彼女の問題点だ。

「取り敢えず、今日だけお願いします!」

(・・・面倒臭ぇ)

 そう思ったが、3000円の為に頑張ってみるかと思う良司だった。

「先に聞いとくが、その友達にお前の彼氏はどんな奴って言ったんだ?」

「どんなって?」

「そいつの性格とかプロフィールとかだよ。お前の事だからあれこれ適当な事言ったんだろ。後で矛盾が起きたらすぐバレるぞ」

「あーそう言う事ね。一応歳上の社会人って言ってある。本読むのが好きな人とも言ったかな」

「お前完全に最初から俺に彼氏のフリを任せる気でいたろ」

 あまりにも特徴が被りすぎだ。まぁこの条件に合う人間など沢山いるだろうが。

「だって何かあったら一番頼りやすかったし。それにこの方が兄貴も変に演技とかしなくて良いから楽でしょ?」

(こいつ馬鹿なんじゃないのか)

 そこまで瞬時に考えられるくらいならそもそも変な見栄を張るなと思わずにはいられない良司だった。

 その数分後、話に上がった美希の友人が現れた。

 

 

「はじめまして。今井 瑠美です」

「はじめまして。あ、・・・縦川です」

 思わず自分の本名を言いかける。ここで本名を言ってしまったら即バレてしまう。

「彼氏さんは美希と仲が良いって聞きましたけど何処で出会ったんですか?」

 いきなりの質問だ。美希がこれと言って動かない辺りを見るとその辺は話していないらしい。どうにか上手い事辻褄を合わせるしかない。

「小説とかでよく有る話さ。美希が夜に変な奴にナンパで絡まれててそれを助けたのが出会った切っ掛け。その時に美希に一目惚れしてアプローチして今こうして付き合ってる」

 我ながらよくもまぁこんなに嘘をスラスラと言えるもんだ。

「美希のどこに一目惚れしたんですか?まぁ確かに可愛いとは思いますけど」

「あー、最初はそりゃ見た目から入ったよ。でもこうやって色々話してるとさ、よく笑う所とか、意外と可愛い事考えてたりとか、そう言う所を知ると余計に好きになるんだよ」

 チラッと隣を見ると美希が顔を赤くしていた。

 こんな事を実の妹相手に言ってると思うと気持ち悪くなりそうなのでやめていただきたい。

「ごめん、私ちょっとお手洗い行ってくる」

 その場の空気に耐えられなかったのか、美希が席を立った。

(馬鹿野郎。初対面の相手と気軽にトーク出来るほど俺は口が達者じゃねぇんだぞ)

 こうなってしまうと良司としてもどう話していいか分からなくなってしまうので困りものだ。

「あー、瑠美さんだっけ?美希は大学ではどう?」

「美希ですか?いつもと同じですよ。明るくて元気で、あれこれ考えるより先に行動してますけどね」

「ははっ。確かにいつも通りだ」

 まぁ美希の性格上、裏表や場所によって激しく性格を変えると言った事も無いだろう。

「縦川さんは会社勤めなんでしたっけ?」

「ああ、朝から会社に行って上司にコキ使われて帰っての繰り返しだよ。それなりに楽しくはあるけどな」

「私達も数年後にはそうなると思うとちょっと不安ですよ。これから何をしたいって夢も無いですし」

「夢なんて大層な物は無理に考えなくて良いんだよ。そんなのは気がついたら出来てるもんさ」

「そんなもんですか?」

「そんなもんさ。夢って言葉に惑わされるなら単純に『やりたい事』を考えたらいいさ」

「やりたい事?」

「夢って言うのは噛み砕いて言えば『今より先の未来でやりたい目標』だ。例えば来週この映画が見たいとか来月あの場所に旅行に行きたいとか。そう言うのを繰り返していく内に出来上がるもっと大きな目標を夢って言えばいいんだよ。そうやって考えれば夢の無い人なんて殆どいないさ」

「確かに、そうやって考えたら少し楽かも知れませんね。縦川さんは夢って有るんですか?」

「勿論あるよ。俺はね・・・」

「ただいまー」

 と良司が答えようとしたと同時に美希が戻って来た。

「お帰り」

「お帰りー」

「何の話?」

「ん?美希が可愛いなって話」

「何それ」

 瑠美が適当に誤魔化すと美希は然程気にする様子も無く流した。

 それから数十分、三人でたわいない話をすると喫茶店を出た。

「あ、私ちょっと行きたい場所有るんですけど行ってもいいですか?」

 瑠美が言ってきた。

「俺は構わないけど」

「私も良いよ」

 そして三人は瑠美の行きたいと言っている目的地へと向かった。

 そして十数分後、三人は目的地へと着いた。

「ってここかよ」

「何か問題有りました?」

「いや、特に無いよ」

 瑠美が行きたがっていたのは本屋だった。それも千堂の店だ。

(取り敢えず千堂さんの名前使わなくて良かったな)

 そんな事を考えてはいたが、良司はもう一つ気になる点があった。

「お前、何でずっと手繋いでるんだよ」

「だってこうでもしてないと瑠美に嘘だってバレるかも知れないじゃん。今日だけ我慢してよ」

 何だろう。周りから見たらイチャついている様に見えてるのかも知れないが、非常に嬉しくない。

「?二人とも、早く入りましょう」

 瑠美に急かされながらも二人も店の中に入って行った。

 

 

 時は遡って良司達が来る数分前。

「リサちゃん、悪いんだが少しだけ店を頼む。今から銀行とコンビニに行ってくる」

「店長、遂に店の売上が悪いからって強盗するんですか?」

「馬鹿。だとしたらそうなる前にリサちゃんをクビにしてるよ。振り込みと煙草を買ってくるだけさ。リサちゃんも何か欲しい物有るか?奢るよ」

「じゃあポッキーとコーラをお願いします」

「あいよ。少しの間だけ頼むな。何かあったら連絡くれ」

「はーい」

 そう言って千堂は店を後にした。

 任されたと言っても他に客も居なければ、今すぐやらなくてはいけない作業も既に粗方終わらせているので実質暇である。

 となればリサが取る行動は絞られる。

「小説のネタ考えなきゃ」

 一人でいて、尚且つ静かなこの環境は考え事をするにはもってこいだった。

 そしてネタ帳にペンを走らせて数分後。店の扉が開いた。入って来たのは千堂ではないようだ。

「いらっしゃいませー」

 店の扉が開き、反射的にリサは言った。どうやらやって来たのは三人組の男女だ。

 そしてその客の姿を見てリサの動きが一瞬止まった。

「あ、良くん」

「よ、よう。リサ」

 やって来た客の一人が良司だった。しかも見知らぬ女の子二人に挟まれて、だ。まぁそれは良いだろう。別に彼にだって異性の友人などがいてもおかしくはないし、それをリサがあれこれ口を出す権利も無い。

 しかし、だからと言って彼女が何も思わないと言う訳でもない。

 なんせ二人の女の子の内、一人と手を繋いでいたのだから。

 そこから推測される事は大概皆同じだろう。そしてそれはリサも同じだった。

(良くん、彼女いたんだ・・・)

 案の定そう勘違いしていた。

 一方の良司はなんだか気まずそうな目でこっちを見ていた。

「あのさ、千堂さんは?」

「店長でしたら現在諸事情により外出しております。御用でしたら私からお伝えしますが?」

「あ、えっと、大丈夫です・・・」

 えらく平坦な上にいつもと違うリサの雰囲気に気圧され、良司はその場を離れて行った。

(何だろう。・・・リサの目が笑ってなかった)

 僅かばかりの恐怖感を感じながらそんな事を良司は思った。

 この店に来て初めて心の底から気まずさを感じた良司だった。

(・・・誰か助けて下さい)

 それが今の彼の切なる願いだった。




新キャラとか出す度にイメージ悪くならない様にとか次にまた出しやすい様にとか考えると話を書いてる手が止まるのは最近の悩みだったりしてますね。そう言った意味では妹の美希はまぁ使い勝手がいい。
そんな冗談はさておき、ヤンデレって良いですよね。(急にどうした)
気がついたらリサをどうにかヤンデレ路線へシフト出来ないか考えてたりしてます。と言っても少なくとも当面はそんな予定も有りませんが。
こんな感じで今後も書いていくので今年もよろしくお願いします。

ご意見ご感想、誤字脱字等有りましたらコメントお願いします。
ではまた次回。
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