読書家男と本屋の彼女   作:シフォンケーキ

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本編の前に一つ謝罪を。
前回からかなり時間が空いてしまいました。
楽しみにしていた方が居られましたら大変お待たせしてすみませんでした。
言い訳をさせていただくと前回の投稿から少しして別の仕事に就いた為に話を書く余裕が有りませんでした。
と言ってもリアルが忙しいのは皆様も同じだと思いますので、こんな言い訳をせずに話を書けるよう、精進いたします。
今後ともこんな作者、及び本作を気にかけて頂ければ幸いです。
長くなりましたが、本編をどうぞ。


16話

 赤城 良司は悩んでいた。困っていた。誰でもいいから助けてくれと願っていた。

(・・・気まずいなんてレベルじゃねぇ)

 良司の悩みの種はその店にいる店員さんにあった。訳あって自分の妹に彼氏のフリを頼まれた彼は妹の友達を含めた三人で千堂の店へと来ていた。だがその際、そこの店員さんに自分と妹が恋人関係にあるものだと勘違いしているらしい。その直後から店員さんの態度がいつもより他人行儀になっていたのだ。

(と言うかあの目が怖いんだがどうしたらいいんだ)

 流石に妹の友達の前で「実は恋人のフリをしているだけです」と言う訳にもいかず、なす術が無い。

(いや、そもそも付き合ってすら無いのにそんな事を態々言うってまるでリサが俺に気があると思い込んでるみたいじゃないか。どんだけ自意識過剰なんだよ)

 そう思ってしまっては余計にネタバラシなど出来る筈も無い。

(千堂さんもいないしこれじゃあなす術が無い!)

 取り敢えずどうにかリサと話す機会が欲しいと思う良司だった。

 

 

(・・・これ、完全にヤバいよね)

 良司が頭を抱えている時、美希も同時に似た様な事を考えていた。

 リサの存在は以前から知っていたし、兄である良司がリサに対して少なからず好意を持っている事も知っていた。そんな中で自分が良司の恋人(あくまでもフリではあるが)として現れたら面倒事に発展するのは美希でもわかる。

(流石に瑠美の前で今説明する訳にもいかないよね・・・)

 流石は兄妹と言うべきか、考える事も似ていた。

 美希は自分がそこまで優しい人間では無いと自負しているので他人の恋愛がどうなろうと知ったこっちゃないが、かと言って自分が原因となれば話は別だ。それなりに負い目も感じる。

 だが、現状自分から何かしてやれる事も無い。自分で招いた結果とはいえ、何とも気まずいものがある。

(取り敢えず瑠美が見てない時にでも説明するしかないよね)

 だがそんなチャンスが果たして来るのだろうか?

(若しくはメモでも書いてこっそり渡そう。その方が確実かも)

 妹さんはそんな事を考えていた。

 

 

 美希があれこれと考えている時、良司も打開策が無いかを考えていた。

(リサの誤解をどうにかしなければ・・・。だが何て言ったらいいんだ?どう言っても言い訳みたいになっちまう。いや、俺達別に付き合ってもないんだけど)

 恋人同士と言うわけでもないのにこんな事で頭を抱えるとはこれいかに。

(千堂さんが居てくれたらこっそり事情説明とか頼めたのに肝心な時にいねぇ!)

 これで腹を立てるのもお門違いとわかってはいるが、思わずにはいられないのが人間という生き物だ。

「縦川さん、ちょっといいですか?」

 と色々頭の中で考えていると瑠美が呼んできた。普段慣れない偽名なんて使うものだから自分の事だと咄嗟に反応出来やしない。

(はっ!これをきっかけにリサが疑問を抱いてくれれば後から弁解の余地が有るんでは)

 そんな淡い期待を良司は抱いたが、とうのリサはどうも聞いていないようだ。

(くっ、効果無しか・・・)

 一先ずそのまま考えても仕方がないので良司は瑠美の元へ行った。

「今井さん、どうかした?」

「この作品、縦川さん知ってます?」

 瑠美が見せてきたのは『この愛の行く末は』だった。何かと縁のある作品だ。

「ああ、その作品ね。うん、知ってるよ。小説は勿論、少し前にやった映画も見たよ」

「縦川さん的にこの作品どうでした?あ、映画ではなくて小説の方で」

「俺は好きだよ。結局ハッピーエンドにならない辺りもそれはそれでリアルで個人的には好きだね」

「そうですか?私的にはやっぱりハッピーエンドで終わってほしかったんですけどね」

「オチに不満?」

「不満って言うより、今まで読んできた作品の殆どがハッピーエンドだったからどうにも馴染めないと言うか、何と言うか」

 成程、彼女が言わんとしている事を何となく良司も理解した。

「まぁ、俺は作者じゃないから何言われても文句も無いけどさ。だったら今回は、知らない世界に触れられたって事で良いんじゃない?そう考えた方が否定的な考えだけするより得だよ」

「そう言われたらそうですけど」

 いまいち納得がいかないと言った表情を浮かべる瑠美。

「でもバッドエンドよりハッピーエンドの方が良いじゃないですか」

「そうだね。確かに全てがハッピーエンドで終わるなら最高だ。でも全部がそうならない事も俺達はわかってる。コインの表と裏みたいなもんさ。どっちかだけなんてあり得ないし無理な話だ。物語に限らず、ね」

「なんだか難しい話ですね」

「そんな難しい事でもないさ」

 瑠美の返事を軽く受け流すと、良司は近くの本棚の本を物色し始めた。

(そう言えばこの辺の本も前に買おうとしてそのままだったな。ついでに何冊か買うか)

 そしていつもの調子で何冊かの本を選ぶと美希と瑠美をよそに、レジへと向かった。

「これお願いします」

 一度リサの顔を見たが、やはり顔つきは変わっていなかった(何も行動を起こしていないのだから変わる筈もないが)。

「・・・全部で3,650円になります」

「4,000円で」

「350円のお返しです。ありがとうございました」

 無表情のまま淡々と話すリサに困惑しながら良司はどうしたものかと頭を悩ませるしか無かった。

 

 

 今井 瑠美は少しばかり考えていた。考えている内容は今日の一連の出来事だ。

 友人の美希に呼び出され、喫茶店に行けば友人の恋人を紹介された。それはいい。その恋人は以前聞いていた通り読書が趣味らしく、先程話した感じではとても演技で瑠美に合わせている様子ではなかった。

 だが、何故かその恋人に違和感の様なものを感じていた。それが何かは明確にはわからなかったが。

(・・・何か変だ。何かはわかんないけど変だ)

 考えられる要因としたら美希が嘘をついている場合だ。何せ彼女は悪い子ではないが見栄を張りたがる性格。つい彼氏が出来たなどと勢い任せに言ってしまい、取り返しがつかなくなって友人に彼氏のフリをしてもらっている、なんて可能性は大いにある。

 もしそうならどうするのが正解か。二人を問い詰めて白状させるか、彼氏のフリをしている彼にこっそり聞くか。美希に聞くのも有りだが彼女が素直に認めるかは微妙な所だ。

(まぁ無理に問いただす気も無いんだけどさ)

 問いただす気は無いが、一度気になると答えを求めたくなるのが人間だ。

 よって瑠美は自分なりに推理する事にした。

(二人は恋人同士ではなく、あくまでも恋人のフリをしているだけだと仮定しよう。その根拠は二人の距離感が恋人のそれに感じられないから。これは感覚的なものだから根拠としては微妙ね。もう一つ、仮にも恋人である美希が近くにいるにも関わらず縦川さんがさっきからちょいちょいレジにいる店員さんに目が行っているから。それもなんか気まずそう)

 瑠美の意外な観察力に早くもボロが出そうになっているが、その事に二人は気がつく筈もない。

(美希に聞いても素直に答えると思えないし、やっぱり縦川さんにこっそり聞いてみようかな)

 そう考えて再び彼を探すと既に彼は何冊かの本を抱えてレジへと向かっていた。

(買うの早っ!と言うか量多っ!)

 良司の買った物を見ると五冊近くの本があった(全部小説)。

(普通仕事とかしてたらあんなに読めないよ。絶対積む羽目になるわ)

 良司の買い方を見て『趣味が読書』と言う点だけは嘘じゃないと瑠美は改めて確信したのだった。

 

 

 舞崎 リサはこの日少しばかりイラついていた。それは誰かに対して、と言うより自分に対してと言う方が正しい。

 その日いつもの様に仕事をしていると三人組の男女が来店して来た。それは良い。お客様が来てくれるのは店としては有り難い話だ。

 だが、この時は少し事情が変わった。別にやって来た客がリサの嫌いな相手と言うわけではない。寧ろ少なからず良く思っている相手が来たのだから悪い気はしない。

 

 だが何事も例外は有る。

 

 その相手が女連れとなれば話は別だ。

 その姿を見た途端、リサの心の中に良くない感情が広がった(それが何かは、リサは分からなかったが)。

 色で言うなら黒い感情。

 初めて体験する感情だ。

(・・・何なんだろ、これ)

 知らない感情。故に理解が出来ない。故に対処法が分からない。

 だが、不意に可笑しな出来事が起こった。

「縦川さん、ちょっといいですか?」

 一人の女の子が良司の事を縦川と呼んだのだ。

(あれ?良くんの苗字って赤城だよね?)

 何故かはわからないが彼は普段とは違う名で呼ばれていた。それは何故か?リサは自分なりに予想する事にした。

(私や千堂さんに偽名を使っていた可能性は無いとして、今回何故偽名を使うのか・・・)

 今リサが持っている全ての情報を用いて推理をしてみよう。なに、彼女も一端の小説家。話を組み立てるのは雑作もない。

(まず一つ目、良くんは何故かあの二人に対して偽名を使ってる。二つ目、仮にどちらかと付き合っていたとして、その良くんの感じだと付き合ってるって様子じゃないんだよなぁ。どっちともなんか気まずい感じだし。・・・気まずいって言うか余所余所しい感じ?)

 などの理由からリサはある仮説を立てた。

(良くんは二人いるうちのどっちかと恋人のフリをしていて、もう一人に自分達は付き合っているんだと思わせようとしてる?)

 確固たる証拠は無いが、リサはそう結論付けた。それが当たっているのだから大したものである。

 仮にそうだとすると、彼には恋人はいないと言う事になる。

 それを思いついた時、リサは心の中の黒い感情が消えていくのを感じた(勿論、その原因が何かなど彼女には分からなかったが)。

(あれ、私何で安心してるんだろ?)

 

『彼と自分は付き合っているわけでも無いのに」

 

「これお願いします」

 そんな事を思っていた時、良司がレジに商品を抱えてやってきた。やはり少し気まずそうな表情だった。

「・・・全部で3,650円になります」

「4,000円で」

「350円のお返しです。ありがとうございました」

 咄嗟の出来事に思わず素っ気ない対応をしてしまったリサ。

(・・・やっちゃった。本当はいつもみたいに話したいのに)

 そんな些細な事でまたしても自己嫌悪に落ちるリサだった。

(絶対良くん嫌な気になったよね)

 一度始まると次から次へと続く自己嫌悪に、リサは堪らずため息をついた。

 だが、自分一人でこの感情と空気を変えられる術をリサは持ち合わせてはいなかった。

(だ、誰か助けて)

 そう思わずにはいられないリサだった。




久々に小説を投稿すると後書きで何を書けばいいのかいまいちわからなくなりますね(無理に書く必要も無いんだろうけど)。
前回から4ヶ月近く経ってからの投稿は本作では初かもしれませんね(だからどうした)。
次からはもっと早く投稿しなければ。
とまぁこんな作者ではありますが、もし作品に興味を持っていただけたら次も読んでやってください。

お気に入り登録してくださった
みどりのL様
ありがとうございました。

ご意見ご感想、誤字脱字等あればコメントお願いします。
ではまた次回。
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