もう片方の作品は普段から遅いから良いとして(良くはない)、こっちはなるべく早く投稿する様にしてたのに。
まぁそんな事は置いといて、本編をどうぞ。
それぞれが心の内に不安や悩みを抱えていた頃、何も知らない千堂はコンビニで買い物をしていた。
「えーと、リサちゃんはコーラとポッキーだったな。俺はコーヒーで良いか。後は適当に腹に貯まる物でも買っておくか」
一人でそう呟きながら千堂は一つずつ商品を手に取った。
そしてそれをレジに持って行き、会計を済ませると店員さんがいってきた。
「只今キャンペーン中でして、700円以上お買い上げのお客様にクジを引いていただいております。二枚引いてください」
そう言いながらクジ引き用の箱を差し出した。
「一等は何が当たるんだい?」
「一等はペアでのライブチケットになります」
どうやら一等は有名アイドルグループのライブのペアチケットらしい。他はそのグループの関連グッズ、ジュースや食べ物の引換券のようだ。
(あんまりクジ運ってのは自信無いんだけどな)
心の中でボヤきながら千堂は箱の中からクジを二枚引いた。
「一枚目はジュースの引換券ですね。この場で交換なさいますか?」
「ああ。お願いするよ」
「かしこまりました。では棚から好きな商品をおひとつ選んだ後にこちらまでお願いします」
店員がそう促しながら二枚目のクジを確認した。
「あ、おめでとうございます!一等のペアチケットでございます」
「え、マジかよ」
まさかの展開に千堂は店員の持つクジを確認したが確かにクジには一等の文字が書かれていた。
「ではお手数ですが、こちらに住所をお書き下さい。後日チケットの方を発送致しますので」
店員に言われ、千堂は差し出された紙に名前や住所などを書き込んだ。
「ほい。出来たよ」
「ありがとうございます。では到着をお楽しみにお待ち下さい」
「はいどうもー」
そう言い返して、千堂はコンビニを後にした。
「って言っても俺、今時のアイドルとか良く知らねぇんだよな」
今時のオッサンには今時の若い人に人気の物は良くわからんのだ。
と、そこで千堂は閃いた。
(そうだ、このチケットをリサちゃんにあげて良ちゃんと一緒に行かせたら良いじゃねぇか)
二人の音楽の趣味について聞いた事は無かったが、二人で一緒に行くと言うのがこの場合重要なのだ。
(二人が面白い展開になったら個人的には嬉しいんだがなぁ)
そんな事を考えながら千堂は店へと戻った。
自分の店が修羅場になっているとも知らずに。
それから十数分後、千堂は店に入った途端、その場の空気を悟った。
(・・・俺の店ってこんなに居心地悪かったか?)
店に入り、店員のリサ、そして常連の良司の顔を見た途端、千堂は内心でそう思わざるを得なかった。
取り敢えず千堂が気になったのは二点。一つはリサと良司の目が死んでいると言う事だ。
そしてもう一つは良司が女の子二人を侍らせて、あまつさえ片方の女の子と手を繋いでいた点だ。
(あんにゃろう、リサちゃんがいながら他の女に手を出しやがったのか)
一度彼に文句でも言ってやろうかと思ったが、千堂はその女の子を見てふと思った。
(あれ?あの子って確か良ちゃんの妹じゃなかったか?)
以前にも何度か会った事があるのでよく覚えている。もう片方の女の子は初めて見る顔ではあったが。
(・・・よくわからんが何か訳ありだな)
何となく察した千堂はそう結論づけ、一先ず事情を聞く為に良司の元へと近づいた。
「よう良ちゃん、来てたのか」
「あ、千堂さん」
「今日はどうした?女の子侍らせて。それも二人も」
問題の部分を意図も容易く聞く千堂。良司としては説明出来る相手が現れた事は救いではあったが、いかんせんタイミングが悪い事この上ない。どうしたものか。
「ちょっと彼女とその友達と会う機会が有ったのでそのついでにここに来たんですよ」
『彼女』と言う部分が小声になっていたのは良司は気づかなかった。それで千堂は大方の事を予想した。
(大方、妹ちゃんに彼氏のフリでも頼まれたって所か。もう一人の女の子を騙そうとしたが、その子の前だからリサちゃんにも説明出来ないってオチだな)
見事に大正解だった。
(この現場を見た俺が気づけたって事は、あの女の子にも分かってるんだろうな。リサちゃんの雰囲気からするとリサちゃんだけはまだ分かってないみたいだが)
「そう言う事なら楽しいデートを満喫しな。ごゆっくり」
なら自分がやる事は決まった。千堂はその場を離れる事にした。
「リサちゃん、ただいま。これポッキーとコーラね」
「店長、お帰りなさい。有難うございます」
帰ってきた千堂からお菓子と飲み物を受け取りながらリサが言った。
「お客さんの前では食べるなよ」
「言われなくてもわかってますよ」
そんな雑談をしている時、千堂の携帯が鳴った。
(良ちゃんからLINE?)
今来たLINEを見てみると、今の現状を簡単に纏めた文と助けてほしいむねが綴られていた。
(あー、なんだ、予想通りか。しかし助けてくれって、良ちゃんもだいぶ追い込まれてるな)
そう考えてる千堂の顔は少し悪そうな顔だった。
「店長、その顔で外歩いてたら間違いなく通報されますよ?」
不思議そうにリサが言ってきた。
(おっといけねぇ。取り敢えず良ちゃんの頼みを聞いて貸しでも作っておくか)
良司の方を一度軽く見ると、千堂はそう考えて動いた。
「しかしまさか良ちゃんが女の子連れて来るとは思わなかったな」
「・・・ええ、そうですね。でも彼が休みの日に誰と何処で何をしていようと彼の自由ですから。私には関係無いですよ」
(・・・わぁ、目が笑ってねぇ)
軽く探りを入れるつもりで言った千堂だったが、直前の自身の選択を恨んだ。取り敢えずは現状を良くせねば。
「まぁあの子、良ちゃんの妹だけどな」
「え?」
「もう一人は知らねぇが、妹さんの方は昔に何度かうちに来てたからな」
「それがどうして恋人同士みたいな事してるんですか?良くんもしかしてシスコンとか?」
「先生、もう少し想像力を働かせなよ。紛いなりにも小説家だろ」
「今は本屋の店員なので」
「便利なこった」
少し前までならこの手の冗談で動揺していたのだが、どうも慣れてしまったらしい。
「心配しなくて良いよ。良ちゃんはシスコンじゃないから」
そもそもここに好きな人がいるのに他の女に手を出すような奴でもないと千堂は言いたかった(先程少し疑っていたが)。
「ネタバラシしちゃうと、妹さんに恋人のフリをしてくれって頼まれたらしいよ。もう一人の友達を誤魔化したいんだってさ。だからリサちゃんも上手く誤魔化してやってくれ」
証拠にと、先程送られてきたLINEを見せた。するとリサの雰囲気が今までと変わったのがわかった。と言っても、リサの心境は良い事ばかりではなかったが。
(・・・あの子、良くんの妹さんなんだ。それに、良くんに悪い事しちゃった)
そんな自己嫌悪に襲われていた。どうにかして彼に謝らねば。そればかりが頭に残っていた。
(でも今更言いづらいよ〜)
先程の事を思い出すと如何にも言いづらさがあった。
それを見て千堂も察したのだろう。それ以上揶揄う事はなかった。
(さて、やれるだけの事はやってやったし、後は二人が如何するかだな。取り敢えず良ちゃんにはやれるだけやったってLINEしとくか)
これ以上は自分の動く場面ではないと思う千堂だった。
(・・・ん?LINE?)
千堂からのLINEを見て、良司は取り敢えずの危機が回避された事を知った。
(よ、良かった。これで最悪の事態は一先ず避けれただろ)
そうと分かれば後はこの場を穏便に済ませるだけだ。
「美希、この演技、いつまで続けるんだ?」
瑠美に聞こえないように小声で隣にいた美希に話すと美希が答えた。
「取り敢えず今日の夕方には瑠美はバイトがあるからそれまで上手くやってよ」
つまり後2、3時間はこの演技を続けなければいけない訳だ(既にバレているのだが)。
「やれるだけ上手くやってやるよ」
報酬の3000円がかかっているのだ。やるしかない。
それから数時間後、良司達三人は店を出て駅に来ていた。
「私この後バイトがあるので今日はここで失礼します」
「また大学でね」
「縦川さんもまた小説トークしましょう」
「うん。その時はよろしく」
別れ際にそう言葉を交わしながら瑠美は駅の方へと歩いて行った。その姿が見えなくなった後、美希が言ってきた。
「あー疲れたー」
「それはこっちのセリフだ。慣れない事させやがって」
「偶には良いじゃん。感謝してるって。はい。約束の3000円。これで好きな本でも買いなよ」
「あいよ。確かに」
美希に差し出された金を受け取り額を確かめる良司。
「じゃあ私は帰るから。慣れない事して疲れたし」
「そりゃ俺のセリフだよ」
「まぁお互い様って事で。じゃあまたね」
「おう。気をつけて帰れよ」
歩いて去って行く美希の後ろ姿に良司はそう言葉をかけ、この後どうするかを考えていた。
(折角金が入ったんだしもう一度千堂さんの店に行って本でも買うとするか)
「赤城さん」
「はい?」
不意に名前を呼ばれ、振り返るとそこには先程帰ったはずの瑠美がいた。
「やっぱり縦川って言うのは偽名だったんですね」
「え?あ!」
一瞬何を言われているのかわからなかったが、瑠美のその言葉で理解した。
(・・・やっぱバレてたか)
「本当は美希のお兄さんですよね?」
「バレてるなら誤魔化す必要も無いね。何時から気付いてた?」
「二人の様子が変だって言うのは本屋に行く前から何となく思ってました。お兄さんだと確信したのはさっき名前を呼んだ時ですけどね」
「なら何で俺が美希の兄かも知れないと思った?」
「二人の雰囲気がおかしい事から付き合ってない、恋人のフリをしているのかもと思い、そこから美希がすぐにそれを頼める相手は誰かって考えました」
「・・・」
良司も黙って話の続きを聞いた。
「男友達が多いとは言えない美希がそんなすぐにこの話を頼めるとも思えません。そして何時だったか、お兄さんがいるって話を聞いたのを思い出したんです」
「それで俺に声を掛けて兄だと確信した訳だ」
困った名探偵だ。
「それで?態々帰ったフリまでして俺に声をかけた理由は?妹の嘘の証拠を掴みたかったからか?」
「それはまぁ半分くらいはありました。でも本当の理由は貴方ですよ」
「俺?」
「はい。同じ本好きとしてお友達になりたかったので」
「それで態々俺が一人になるのを待ってたのか」
人気者も辛いもんだ。
「はい。なのでLINE教えてもらえませんか?」
「ああ、良いよ。それくらい」
言って二人はスマホを出してLINEを交換した。
「ありがとうございます。じゃあそろそろ行かないとバイトに遅れるのでこれで。帰ったらまた連絡しますね」
「おう。気をつけてね」
そして今度こそ瑠美は帰って行った。
「俺も帰るか。っと、その前に」
そう言いながら良司はポケットの中の3000円を手の感触で確かめながら、再度本屋へと向かったのであった。
改めて見るとこの話、1日のくせに長いなぁ。次回ももうちょっとだけ続くのでお付き合いください。
次回からはもう少し早く投稿出来る様にしますのでその際は読んでやってください。
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AugustClown様
ありがとうございました。
ご意見ご感想、誤字脱字等有ればコメントお願いします。
ではまた次回。